公開特許公報 特開2015

(19)日本国特許庁(JP)
〔実 15 頁〕
公開特許公報(A)
(12)
(11)特許出願公開番号
特開2015-167537
(P2015−167537A)
(43)公開日 平成27年9月28日(2015.9.28)
(51)Int.Cl.
A01G
FI
テーマコード(参考)
9/14
(2006.01)
A01G
9/14
S
2B024
A01G 13/02
(2006.01)
A01G
13/02
D
2B029
C08F 14/18
(2006.01)
C08F
14/18
4J100
審査請求 未請求
(21)出願番号
特願2014-46489(P2014-46489)
(22)出願日
平成26年3月10日(2014.3.10)
請求項の数7 OL (全25頁)
(71)出願人 000002853
ダイキン工業株式会社
大阪府大阪市北区中崎西2丁目4番12号
梅田センタービル
(74)代理人 110000914
特許業務法人
(72)発明者 田中
安富国際特許事務所
義人
大阪府摂津市西一津屋1番1号
ダイキン
工業株式会社淀川製作所内
(72)発明者 神原
將
大阪府摂津市西一津屋1番1号
ダイキン
工業株式会社淀川製作所内
(72)発明者 久保田
浩治
大阪府摂津市西一津屋1番1号
ダイキン
工業株式会社淀川製作所内
最終頁に続く
(54)【発明の名称】農業用フィルム及び農業用被覆資材
(57)【 要 約 】
【課題】防曇剤との親和性、透明性、紫外線透過性及び耐候性に優れた農業用フィルム、
及び、農業用被覆資材を提供する。
【解決手段】含フッ素オレフィン単位及びビニルアルコール単位を有する含フッ素共重合
体からなることを特徴とする農業用フィルム。
【選択図】なし
( 2 )
JP
1
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A
2015.9.28
2
【特許請求の範囲】
生じやすく、これによって太陽光線の透過率が低下し、
【請求項1】
農作物の成長に悪影響を与えることがある。このため、
含フッ素オレフィン単位及びビニルアルコール単位を有
農業用被覆資材としては、通常、結露や曇りを防止する
する含フッ素共重合体からなることを特徴とする農業用
ために、樹脂フィルムの表面に防曇剤を塗布して親水性
フィルム。
の塗膜を形成したものが使用される。例えば、特許文献
【請求項2】
3∼6には、ETFEフィルムの表面にコロナ処理等の
前記含フッ素オレフィンは、テトラフルオロエチレンで
表面処理を施したうえで、その面上に防曇剤を塗布する
ある請求項1記載の農業用フィルム。
ことが記載されている。
【請求項3】
【先行技術文献】
前記含フッ素共重合体における含フッ素オレフィン単位 10
【特許文献】
の含有率が40モル%以上である請求項1又は2記載の
【0005】
農業用フィルム。
【特許文献1】特開2001−206913号公報
【請求項4】
【特許文献2】特開平11−343315号公報
前記含フッ素共重合体における含フッ素オレフィン単位
【特許文献3】特開2007−063477号公報
とビニルアルコール単位との交互率が94%以下である
【特許文献4】特開2009−234048号公報
請求項1、2又は3記載の農業用フィルム。
【特許文献5】特許第2535185号公報
【請求項5】
【特許文献6】特許第4294152号公報
前記含フッ素共重合体は、含フッ素オレフィン単位、ビ
【発明の概要】
ニルアルコール単位及びビニルエステルモノマー単位を
【発明が解決しようとする課題】
有する請求項1、2、3又は4記載の農業用フィルム。 20
【0006】
【請求項6】
軟質塩化ビニル樹脂フィルム等の非フッ素系樹脂フィル
前記含フッ素共重合体は、含フッ素オレフィン単位及び
ムは、紫外線により劣化しやすいため、農業用被覆資材
ビニルエステルモノマー単位を有する共重合体を水酸基
に用いる場合は、紫外線吸収剤が配合されるのが一般的
化して得られた共重合体である請求項1、2、3、4又
である。しかし、紫外線吸収剤を配合したフィルムは紫
は5記載の農業用フィルム。
外線を遮蔽するので、紫外線を必要とする作物(例えば
【請求項7】
、ナス、ある種の花類)の栽培や、活動するために紫外
請求項1、2、3、4、5又は6記載のフィルムと、該
線を必要とするミツバチやマハナアブ等の昆虫により受
フィルムの少なくとも一方の面上に設けられた、防曇剤
粉される作物(例えば、イチゴ、メロン、スイカ、ピー
からなる防曇剤層とを有する農業用被覆資材。
マン等)の栽培には不向きであるという問題がある。
【発明の詳細な説明】
30
【0007】
【技術分野】
また、ETFEフィルムを使用すれば、軟質塩化ビニル
【0001】
樹脂フィルム等と比較して紫外線による劣化は抑制され
本発明は、農業用フィルム及び農業用被覆資材に関する
るが、特許文献3∼6に記載されるように、防曇剤を塗
。
布するために表面処理が必須であるため、製造工程が煩
【背景技術】
雑であり、製造コストが増大するという問題がある。
【0002】
【0008】
従来、トンネルハウスやパイプハウス用の農業用被覆資
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、防曇
材には、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体
剤との親和性、透明性、紫外線透過性及び耐候性に優れ
、ポリエステル樹脂、軟質塩化ビニル樹脂等のフィルム
た農業用フィルム、及び、農業用被覆資材を提供するこ
が使用され、なかでも施工性、価格、保温性等の面で有 40
とを目的とする。
利であることから、軟質塩化ビニル樹脂フィルムが多用
【課題を解決するための手段】
されている。
【0009】
【0003】
すなわち本発明は、含フッ素オレフィン単位及びビニル
また、耐候性等を向上させる目的で、テトラフルオロエ
アルコール単位を有する含フッ素共重合体からなること
チレン−エチレン系共重合体(以下、ETFEともいう
を特徴とする農業用フィルムである。
。)のフィルムの使用も検討されている(例えば、特許
【0010】
文献1∼2参照。)。
本発明は、上記フィルムと、該フィルムの少なくとも一
【0004】
方の面上に設けられた、防曇剤からなる防曇剤層とを有
ところで、農業用被覆資材に使用される樹脂フィルムは
する農業用被覆資材でもある。
、単独では表面の親水性が高くないため、結露や曇りを 50
【発明の効果】
( 3 )
JP
3
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4
【0011】
される少なくとも1種の含フッ素オレフィンであること
本発明によれば、防曇剤との親和性、透明性、紫外線透
が好ましい。
過性及び耐候性に優れた農業用フィルム、及び、農業用
【0020】
被覆資材を提供することができる。
上記CH2 =CZ (CF2 )n
【発明を実施するための形態】
体としては、CH2 =CFCF3 、CH2 =CHCF3
【0012】
、CH2 =CFCHF2 、CH2 =CClCF3 等が挙
以下、本発明を具体的に説明する。
げられる。
【0013】
【0021】
本発明の農業用フィルム(以下、本発明のフィルムとも
上記PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエ
いう。)は、含フッ素オレフィン単位及びビニルアルコ 10
ーテル)〔PMVE〕、パーフルオロ(エチルビニルエ
ール単位を有する含フッ素共重合体からなる。
ーテル)〔PEVE〕、パーフルオロ(プロピルビニル
【0014】
エーテル)〔PPVE〕、パーフルオロ(ブチルビニル
本発明の農業用フィルムは、後述する防曇剤との親和性
エーテル)等が挙げられ、なかでも、PMVE、PEV
に優れる。このため、本発明のフィルムの表面に表面処
E又はPPVEがより好ましい。
理を施したり接着剤層を設けたりすることなく、防曇剤
【0022】
を直接塗布することが可能であり、製造工程の簡略化や
上記アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体として
製造コストの低減が可能である。
は、Rf
【0015】
あるものが好ましく、CF2 =CF−OCH2 −CF2
本発明の農業用フィルムはまた、紫外線によって劣化し
CF3 がより好ましい。
にくいため、紫外線吸収剤を含まなくても、充分な耐候 20
【0023】
性を発揮することができる。このため、必要以上に紫外
上記含フッ素オレフィンとしては、TFE、CTFE及
線を遮蔽することがなく、紫外線を必要とする作物の生
びHFPからなる群より選択される少なくとも1種がよ
育や、受粉に寄与する昆虫の飛翔性が良好になる。
り好ましく、TFEが更に好ましい。
【0016】
【0024】
本発明の農業用フィルムはまた、透明性に優れるため、
上記含フッ素共重合体は、含フッ素共重合体における含
太陽光線を充分に透過する。したがって、作物の生育が
フッ素オレフィン単位の含有率が40モル%以上である
良好になる。
ことが好ましく、含フッ素オレフィン単位が40モル%
【0017】
以上80モル%以下であり、ビニルアルコール単位が2
本発明の農業用フィルムを構成する含フッ素共重合体は
0モル%以上60モル%以下であることがより好ましい
、含フッ素オレフィン単位及びビニルアルコール単位( 30
。本発明における含フッ素共重合体の各モノマー単位の
−CH2 −CH(OH)−)を有する。
含有率がこのような範囲であることによって、得られる
【0018】
フィルムの機械的特性や耐久性、耐候性が優れたものと
上記含フッ素オレフィン単位とは、含フッ素オレフィン
なる。各モノマー単位の含有率としては、含フッ素オレ
に基づく重合単位を表している。
フィン単位が45モル%以上75モル%以下であり、ビ
該含フッ素オレフィンは、フッ素原子を有する単量体で
ニルアルコール単位が25モル%以上55モル%以下で
ある。
あることが更に好ましく、含フッ素オレフィン単位が5
【0019】
0モル%以上70モル%以下であり、ビニルアルコール
上記含フッ素オレフィンとしては、テトラフルオロエチ
単位が30モル%以上50モル%以下であることが特に
レン〔TFE〕、フッ化ビニリデン〔VdF〕、クロロ
好ましい。
トリフルオロエチレン〔CTFE〕、フッ化ビニル、へ 40
【0025】
キサフルオロプロピレン〔HFP〕、へキサフルオロイ
上記含フッ素共重合体は、含フッ素オレフィン単位とビ
ソブテン、CH2 =CZ
1
Z
2
で示される単量
が炭素数1∼3のパーフルオロアルキル基で
(式中、
ニルアルコール単位との交互率が94%以下であること
が好ましい。交互率がこのような範囲であると、得られ
1∼10の整数である。)で示される単量体、CF2 =
るフィルムが可撓性に優れるという効果が得られる。よ
1
はH、F又はCl、Z
CF−ORf
1
2
1
は、炭素数1∼8のパー
り好ましくは90%以下であり、特に好ましくは80%
フルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロ
以下である。また、好ましくは30%以上であり、より
(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕、及び、CF
好ましくは35%以上であり、更に好ましくは40%以
2
(式中、Rf
1
Z
2
2
1
はH、F又はCl、n1は
Z
(CF2 )n
1
=CF−OCH2 −Rf
2
(式中、Rf
2
は、炭素数
上である。交互率が低すぎると耐熱性が低下するおそれ
1∼5のパーフルオロアルキル基)で表されるアルキル
があるため、好ましくない。
パーフルオロビニルエーテル誘導体からなる群より選択 50
【0026】
( 4 )
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5
6
含フッ素オレフィン単位とビニルアルコール単位との交
酸ビニル、ベオバ−9(昭和シェル石油(株)製)、ベ
互率は、重アセトン等の含フッ素共重合体が溶解する溶
オバ−10(昭和シェル石油(株)製)、安息香酸ビニ
媒を用いて、含フッ素共重合体の
1
H−NMR測定を行
ル、バーサチック酸ビニル。
い、以下の式より3連鎖の交互率として算出できる。
これらの中でも、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バ
交互率(%)=C/(A+B+C)×100
ーサチック酸ビニルに由来するモノマー単位が好ましい
A:−V−V−V−のように2つのVと結合したVの個
。より好ましくは、酢酸ビニルモノマー単位、プロピオ
数
ン酸ビニルモノマー単位であり、更に好ましくは、酢酸
B:−V−V−T−のようにVとTとに結合したVの個
ビニルモノマー単位である。
数
【0030】
C:−T−V−T−のように2つのTに結合したVの個 10
上記含フッ素共重合体が、含フッ素オレフィン単位、ビ
数
ニルアルコール単位及びビニルエステルモノマー単位を
(T:含フッ素オレフィン単位、V:ビニルアルコール
有する場合の、各モノマー単位の含有率としては、含フ
単位)
ッ素オレフィン単位が40モル%以上80モル%以下で
A、B、CのV単位の数は、
1
H−NMR測定のビニル
あり、ビニルアルコール単位が0モル%より多く60モ
アルコール単位(−CH2 −CH(OH)−)の3級炭
ル%未満であり、ビニルエステルモノマー単位が0モル
素に結合する主鎖のHの強度比より算出する。
1
H−N
%より多く60モル%未満であることが好ましい。各モ
MR測定による主鎖のHの強度比の見積もりは、水酸基
ノマー単位の含有率がこのような範囲であることによっ
化前の含フッ素共重合体で実施する。
て、得られるフィルムの機械的特性や耐久性、耐候性が
【0027】
優れたものとなる。各モノマー単位の含有率としては、
上記含フッ素共重合体は、更に、−CH2 −CH(O( 20
含フッ素オレフィン単位が45モル%以上75モル%以
C=O)R)−(式中、Rは、水素原子又は炭素数1∼
下であり、ビニルアルコール単位が5モル%以上50モ
17の炭化水素基を表す。)で表されるビニルエステル
ル%以下であり、ビニルエステルモノマー単位が5モル
モノマー単位を有するものであってもよい。このように
%以上50モル%以下であることがより好ましく、含フ
、本発明における含フッ素共重合体が、含フッ素オレフ
ッ素オレフィン単位が50モル%以上70モル%以下で
ィン単位、ビニルアルコール単位及びビニルエステルモ
あり、ビニルアルコール単位が10モル%以上40モル
ノマー単位を有することもまた、本発明の好適な実施形
%以下であり、ビニルエステルモノマー単位が10モル
態の1つである。そして更には、実質的に含フッ素オレ
%以上40モル%以下であることが更に好ましい。
フィン単位、ビニルアルコール単位及びビニルエステル
【0031】
モノマー単位のみからなる含フッ素オレフィン/ビニル
上記含フッ素共重合体が、含フッ素オレフィン単位、ビ
アルコール/ビニルエステルモノマー共重合体であるこ 30
ニルアルコール単位及びビニルエステルモノマー単位を
ともまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
有する場合、含フッ素オレフィン単位とビニルアルコー
【0028】
ル単位及びビニルエステルモノマー単位との交互率は、
上記ビニルエステルモノマー単位は、−CH2 −CH(
94%以下であることが好ましい。交互率がこのような
O(C=O)R)−(式中、Rは、水素原子又は炭素数
範囲であると、得られるフィルムが可撓性に優れるとい
1∼17の炭化水素基を表す。)で表されるモノマー単
う効果が得られる。より好ましくは90%以下であり、
位であるが、上記式中のRとしては、炭素数1∼11の
特に好ましくは80%以下である。また、好ましくは3
アルキル基が好ましく、炭素数1∼5のアルキル基がよ
0%以上であり、より好ましくは35%以上であり、更
り好ましい。特に好ましくは、炭素数1∼3のアルキル
に好ましくは40%である。交互率が低すぎると耐熱性
基である。
【0029】
が低下するおそれがあるため、好ましくない。
40
【0032】
上記ビニルエステルモノマー単位としては、中でも、以
含フッ素オレフィン単位とビニルアルコール単位及びビ
下のビニルエステルに由来するモノマー単位などが例示
ニルエステルモノマー単位との交互率は、重アセトン等
される。
の含フッ素共重合体が溶解する溶媒を用いて、含フッ素
ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビ
共重合体の
ニル、イソ酪酸ビニル、バレリン酸ビニル、イソバレリ
鎖の交互率として算出できる。
ン酸ビニル、カプロン酸ビニル、へプチル酸ビニル、カ
交互率(%)=C/(A+B+C)×100
プリル酸ビニル、ピバリン酸ビニル、ペラルゴン酸ビニ
A:−V−V−V−のように2つのVと結合したVの個
ル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン
数
酸ビニル、ペンタデシル酸ビニル、パルチミン酸ビニル
B:−V−V−T−のようにVとTとに結合したVの個
、マルガリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オクチル 50
数
1
H−NMR測定を行い、以下の式より3連
( 5 )
JP
7
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8
C:−T−V−T−のように2つのTに結合したVの個
【0039】
数
以下に、本発明における含フッ素共重合体の製造方法に
(T:含フッ素オレフィン単位、V:ビニルアルコール
ついて説明する。
単位又はビニルエステルモノマー単位)
通常、本発明における含フッ素共重合体は、テトラフル
A、B、CのV単位の数は、
1
H−NMR測定のビニル
オロエチレン等の含フッ素オレフィンと酢酸ビニル等の
アルコール単位(−CH2 −CH(OH)−)及びビニ
ビニルエステルモノマーとを共重合して、その後、得ら
ルエステルモノマー単位(−CH2 −CH(O(C=O
れた共重合体を水酸基化することにより製造することが
)R)−)の3級炭素に結合する主鎖のHの強度比より
できる。上記含フッ素共重合体の重合方法としては、含
算出する。
1
H−NMR測定による主鎖のH
フッ素オレフィンとビニルエステルモノマーの組成比を
の強度比の見積もりは、水酸基化前の含フッ素共重合体 10
、ほぼ一定に保つ条件下で重合を行うことが好ましい。
で実施する。
すなわち、上記含フッ素共重合体は、含フッ素オレフィ
【0033】
ンとビニルエステルモノマーの組成比を、ほぼ一定に保
上記含フッ素共重合体は、本発明の効果を損なわない範
つ条件下で重合して、含フッ素オレフィン単位とビニル
囲で、含フッ素オレフィン単位、ビニルアルコール単位
エステルモノマー単位とを有する共重合体を得る工程、
及びビニルエステルモノマー単位以外の他の単量体単位
及び、得られた共重合体を水酸基化して、含フッ素オレ
を有していてもよい。
フィン単位及びビニルアルコール単位を有する共重合体
【0034】
を得る工程、からなる製造方法により得られたものであ
上記他の単量体としては、フッ素原子を含まない単量体
ることが好ましい。
(但し、ビニルアルコール及びビニルエステル単量体を
【0040】
除く)として、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブ 20
上記ビニルエステルモノマーとしては、ギ酸ビニル、酢
テン、2−ブテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニ
酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸
ルエーテル単量体、及び、不飽和カルボン酸からなる群
ビニル、バレリン酸ビニル、イソバレリン酸ビニル、カ
より選択される少なくとも1種のフッ素非含有エチレン
プロン酸ビニル、へプチル酸ビニル、カプリル酸ビニル
性単量体が好ましい。
、ピバリン酸ビニル、ペラルゴン酸ビニル、カプリン酸
【0035】
ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、ペン
上記他の単量体単位の合計含有率は、含フッ素共重合体
タデシル酸ビニル、パルチミン酸ビニル、マルガリン酸
の全単量体単位の0∼50モル%であることが好ましく
ビニル、ステアリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、ベオ
、0∼40モル%であることがより好ましく、0∼30
バ−9(昭和シェル石油(株)製)、ベオバ−10(昭
モル%であることが更に好ましい。
和シェル石油(株)製)、安息香酸ビニル、バーサチッ
【0036】
30
ク酸ビニル等が挙げられるが、中でも入手が容易で安価
本明細書において、含フッ素共重合体を構成する各単量
である点から、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バー
体単位の含有量は、NMR、FT−IR、元素分析を単
サチック酸ビニルが好ましく用いられる。
量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる
上記ビニルエステルモノマーとしてはこれらの1種を用
。
いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
【0041】
上記含フッ素共重合体の重量平均分子量は、特に制限さ
含フッ素オレフィンとビニルエステルモノマーとを共重
れないが、9,000以上であることが好ましく、10
合させる方法としては、溶液重合、塊状重合、乳化重合
,000以上であることがより好ましい。更に好ましく
、懸濁重合等の重合方法を挙げることができ、工業的に
は、20,000∼2,000,000であり、特に好
実施が容易であることから乳化重合、溶液重合又は懸濁
ましくは、30,000∼1,000,000である。 40
重合により製造することが好ましいが、この限りではな
上記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(
い。
GPC)により求めることができる。
【0042】
【0038】
乳化重合、溶液重合又は懸濁重合においては、重合開始
上記含フッ素共重合体は、後述するように、含フッ素オ
剤、溶媒、連鎖移動剤、界面活性剤、分散剤等を使用す
レフィン単位及びビニルエステルモノマー単位を有する
ることができ、それぞれ通常用いられるものを使用する
共重合体を水酸基化することにより製造することができ
ことができる。
る。すなわち、本発明における含フッ素共重合体が、含
【0043】
フッ素オレフィン単位及びビニルエステルモノマー単位
溶液重合において使用する溶媒は、含フッ素オレフィン
を有する共重合体を水酸基化して得られた共重合体であ
とビニルエステルモノマー、及び、合成される含フッ素
ることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。 50
共重合体を溶解することができるものが好ましく、例え
( 6 )
JP
9
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10
ば、酢酸n−ブチル、酢酸t−ブチル、酢酸エチル、酢
.001∼10質量%の範囲で使用される。
酸メチル、酢酸プロピル等のエステル類;アセトン、メ
【0048】
チルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ヘ
重合温度としては、含フッ素オレフィンとビニルエステ
キサン、シクロヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素
ルモノマーの反応中の組成比がほぼ一定になる範囲であ
類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素
ればよく、0∼100℃であってよい。
類;メタノール、エタノール、tert−ブタノール、
【0049】
イソプロパノール等のアルコール類;テトラヒドロフラ
重合圧力としては、含フッ素オレフィンとビニルエステ
ン、ジオキサン等の環状エーテル類;HCFC−225
ルモノマーの反応中の組成比がほぼ一定になる範囲であ
等の含フッ素溶媒;ジメチルスルホキシド、ジメチルホ
ルムアミド、又はこれらの混合物等が挙げられる。
ればよく、0∼10MPaGであってよい。
10
【0050】
乳化重合において使用する溶媒としては、例えば、水、
酢酸ビニルに由来するアセテート基の水酸基化は従来よ
水とアルコールとの混合溶媒等が挙げられる。
く知られており、アルコリシス、酸や塩基を用いた加水
【0044】
分解等の従来公知の方法によって行うことができる。こ
上記重合開始剤としては、例えば、ジイソプロピルパー
の中で塩基を用いた加水分解は一般にケン化と呼ばれて
オキシジカーボネート(IPP)、ジ−n−プロピルパ
いるが、この明細書においては、以降、ビニルエステル
ーオキシジカーボネート(NPP)等のパーオキシカー
モノマーの水酸基化を方法によらず、ケン化と呼ぶ。こ
ボネート類に代表される油溶性ラジカル重合開始剤や、
のケン化によって、アセテート基(−OCOCH3 )は
例えば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭
、水酸基(−OH)に変換される。他のビニルエステル
酸のアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等の水
モノマーにおいても同様に、従来公知の方法によってケ
溶性ラジカル重合開始剤等を使用できる。特に乳化重合 20
ン化され、水酸基を得ることができる。
においては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムが好
【0051】
ましい。
含フッ素オレフィン単位とビニルエステルモノマー単位
【0045】
とを有する共重合体をケン化して本発明における含フッ
上記界面活性剤としては、通常用いられる界面活性剤が
素共重合体を得る場合のケン化度は、本発明における含
使用でき、例えば、非イオン性界面活性剤、アニオン性
フッ素共重合体の各モノマー単位の含有率が上述した範
界面活性剤、カチオン性界面活性剤等が使用できる。ま
囲となるような範囲であればよく、具体的には50%以
た、含フッ素系界面活性剤を用いてもよい。
上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上
【0046】
が更に好ましい。
懸濁重合において用いられる上記分散剤としては、通常
【0052】
の懸濁重合に用いられる部分鹸化ポリ酢酸ビニル、メチ 30
上記ケン化度は、含フッ素共重合体のIR測定又は
ルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキ
−NMR測定により、以下の式から算出される。
シプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセル
ケン化度(%)=D/(D+E)×100
ロースなどの水溶性セルロースエーテル、アクリル酸系
D:含フッ素共重合体中のビニルアルコール単位数
重合体、ゼラチンなどの水溶性ポリマーを例示できる。
E:含フッ素共重合体中のビニルエステルモノマー単位
懸濁重合は、水/単量体の比率が通常重量比で1.5/
数
1∼3/1である条件下で行なわれ、分散剤は単量体1
【0053】
00重量部に対し0.01∼0.1重量部が用いられる
本発明における含フッ素共重合体は、含フッ素オレフィ
。また、必要に応じて、ポリリン酸塩のようなpH緩衝
ンと脱保護反応によりビニルアルコールに変換されうる
剤を用いることもできる。
【0047】
1
H
保護基(R)が結合したビニルエーテル単量体(CH2
40
=CH−OR)(以下、単にビニルエーテル単量体と記
上記連鎖移動剤としては、例えば、エタン、イソペンタ
述する)とを共重合させて含フッ素オレフィン/ビニル
ン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;ト
エーテル共重合体を得る工程、及び、上記含フッ素オレ
ルエン、キシレン等の芳香族類;アセトン等のケトン類
フィン/ビニルエーテル共重合体を脱保護することによ
;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;メタノ
り含フッ素オレフィン/ビニルアルコール共重合体を得
ール、エタノール等のアルコール類;メチルメルカプタ
る工程、からなる製造方法によっても得ることができる
ン等のメルカプタン類;四塩化炭素、クロロホルム、塩
。
化メチレン、塩化メチル等のハロゲン化炭化水素等が挙
【0054】
げられる。
上記含フッ素オレフィンとビニルエーテル単量体とを共
上記連鎖移動剤の添加量は用いる化合物の連鎖移動定数
重合させる方法、及び、上記含フッ素オレフィン/ビニ
の大きさにより変わりうるが、通常重合溶媒に対して0 50
ルエーテル共重合体を脱保護する方法は、従来からよく
( 7 )
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知られており、従来公知の方法を本発明でも行うことが
率として算出できる。
できる。含フッ素オレフィン/ビニルエーテル共重合体
交互率(%)=C/(A+B+C)×100
を脱保護反応させることによって、保護基アルコキシ基
A:−V−V−V−のように2つのVと結合したVの個
が水酸基に変換され、含フッ素オレフィン/ビニルアル
数
コール共重合体が得られる。
B:−V−V−T−のようにVとTとに結合したVの個
【0055】
数
上記含フッ素オレフィンとビニルエーテル単量体とを共
C:−T−V−T−のように2つのTに結合したVの個
重合させて得られる含フッ素オレフィン/ビニルエーテ
数
ル共重合体は、含フッ素オレフィンとビニルエーテル単
(T:含フッ素オレフィン単位、V:ビニルアルコール
量体とのモル比である(含フッ素オレフィン)/(ビニ 10
単位又はビニルエーテル単位)
ルエーテル単量体)が(40∼60)/(60∼40)
A、B、CのV単位の数は、
であることが好ましく、(45∼55)/(55∼45
アルコール単位(−CH2 −CH(OH)−)及びビニ
)であることがより好ましい。モル比が上記範囲内にあ
ルエーテル単位(−CH2 −CH(OR))の3級炭素
って、かつ、脱保護が後述の範囲内にあることにより、
に結合する主鎖のHの強度比より算出する。
各重合単位のモル比が上述した範囲にある含フッ素共重
R測定による主鎖のHの強度比の見積もりは、水酸基化
合体を製造することができる。
前の含フッ素共重合体で実施する。
【0056】
【0061】
上記含フッ素オレフィン/ビニルエーテル共重合体の脱
上記含フッ素オレフィンとビニルエーテル単量体とを共
保護は、脱保護度が1∼100%になるように行うこと
重合させる方法としては、溶液重合、塊状重合、乳化重
が好ましく、30∼100%になるように行うことがよ 20
合、懸濁重合等の重合方法を挙げることができ、工業的
り好ましい。
に実施が容易であることから乳化重合、溶液重合又は懸
【0057】
上記脱保護度は、
1
H−NMR測定のビニル
1
H−NM
濁重合により製造することが好ましいが、この限りでは
1
H−NMRにより、脱保護前後での
ない。
2.1ppm付近のアセチル基(CH3 C(=O)O−
【0062】
)由来のプロトンの積分値と、0.8∼1.8ppmの
上記乳化重合、溶液重合又は懸濁重合においては、重合
主鎖メチレン基(−CH2 −CH−)由来のプロトンの
開始剤、溶媒、連鎖移動剤、界面活性剤、分散剤等を使
積分値を定量することにより測定できる。
用することができ、それぞれ通常用いられるものを使用
1
することができる。
H−NMR:Varian社製のGEMINI−30
0
【0063】
【0058】
30
上記溶液重合において使用する溶媒は、含フッ素オレフ
上記ビニルエーテル単量体は、フッ素原子を含まないこ
ィンとビニルエーテル単量体、及び、合成される含フッ
とが好ましい。当該ビニルエーテル単量体としては、脱
素共重合体を溶解することができるものが好ましく、例
保護されるものであれば特に制限はないが、入手の容易
えば、酢酸n−ブチル、酢酸t−ブチル、酢酸エチル、
さから、ターシャルブチルビニルエーテルが好ましい。
酢酸メチル、酢酸プロピル等のエステル類;アセトン、
【0059】
メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;
上記含フッ素共重合体が、含フッ素オレフィン単位、ビ
ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水
ニルアルコール単位及びビニルエーテル単位を有する場
素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水
合、含フッ素オレフィン単位とビニルアルコール単位及
素類;メタノール、エタノール、tert−ブタノール
びビニルエーテル単位との交互率は、94%以下である
、イソプロパノール等のアルコール類;テトラヒドロフ
ことが好ましい。交互率がこのような範囲であると、得 40
ラン、ジオキサン等の環状エーテル類;HCFC−22
られるフィルムが可撓性に優れるという効果が得られる
5等の含フッ素溶媒;ジメチルスルホキシド、ジメチル
。より好ましくは90%以下であり、特に好ましくは8
ホルムアミド、又はこれらの混合物等が挙げられる。
0%である。また、好ましくは30%以上であり、より
乳化重合において使用する溶媒としては、例えば、水、
好ましくは35%以上であり、更に好ましくは40%で
水とアルコールとの混合溶媒等が挙げられる。
ある。交互率が低いと耐熱性が低下して好ましくない。
【0064】
【0060】
上記重合開始剤としては、例えば、ジイソプロピルパー
含フッ素オレフィン単位とビニルアルコール単位及びビ
オキシジカーボネート(IPP)、ジ−n−プロピルパ
ニルエーテル単位との交互率は、重アセトン等の含フッ
ーオキシジカーボネート(NPP)等のパーオキシカー
素共重合体が溶解する溶媒を用いて、含フッ素共重合体
ボネート類に代表される油溶性ラジカル重合開始剤や、
の
1
H−NMR測定を行い、以下の式より3連鎖の交互 50
例えば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭
( 8 )
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酸のアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等の水
含フッ素共重合体の各モノマー単位の含有率が上述した
溶性ラジカル重合開始剤等を使用できる。特に乳化重合
範囲となるような範囲であればよく、具体的には50%
においては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムが好
以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以
ましい。
上が更に好ましい。
【0065】
【0072】
上記界面活性剤としては、通常用いられる界面活性剤が
上記脱保護度は、含フッ素共重合体のIR測定又は前述
使用でき、例えば、非イオン性界面活性剤、アニオン性
の H−NMR測定により、以下の式から算出される。
界面活性剤、カチオン性界面活性剤等が使用できる。ま
脱保護度(%)=D/(D+E)×100
1
た、含フッ素系界面活性剤を用いてもよい。
【0066】
D:含フッ素共重合体中のビニルアルコール単位数
10
E:含フッ素共重合体中のビニルエーテル単量体単位数
懸濁重合において用いられる上記分散剤としては、通常
【0073】
の懸濁重合に用いられる部分鹸化ポリ酢酸ビニル、メチ
本発明の農業用フィルムは、本発明の効果を損なわない
ルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキ
範囲で、上記含フッ素共重合体以外の他の成分を更に含
シプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセル
んでもよい。
ロース等の水溶性セルロースエーテル、アクリル酸系重
【0074】
合体、ゼラチン等の水溶性ポリマーを例示できる。懸濁
上記他の成分としては、光安定剤、酸化防止剤、滑剤、
重合は、水/単量体の比率が通常重量比で1.5/1∼
熱安定剤、顔料・染料等の着色剤、防霧剤、帯電防止剤
3/1である条件下で行なわれ、分散剤は単量体100
等が挙げられる。
重量部に対し0.01∼0.1重量部が用いられる。ま
【0075】
た、必要に応じて、ポリリン酸塩のようなpH緩衝剤を 20
本発明の農業用フィルムは、実質的に紫外線吸収剤を含
用いることもできる。
まないことも好ましい。本発明のフィルムは、実質的に
【0067】
紫外線吸収剤を含まなくても、耐候性に優れる。したが
上記連鎖移動剤としては、例えば、エタン、イソペンタ
って、必要以上に紫外線を遮蔽することがなく、紫外線
ン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;ト
を必要とする作物の生育や、受粉に寄与する昆虫の飛翔
ルエン、キシレン等の芳香族類;アセトン等のケトン類
性が良好になる。
;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;メタノ
【0076】
ール、エタノール等のアルコール類;メチルメルカプタ
上記紫外線吸収剤としては、紫外線吸収剤として知られ
ン等のメルカプタン類;四塩化炭素、クロロホルム、塩
ているものが挙げられ、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤
化メチレン、塩化メチル等のハロゲン化炭化水素等が挙
、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸エス
げられる。
30
テル系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収
上記連鎖移動剤の添加量は用いる化合物の連鎖移動定数
剤等が挙げられる。
の大きさにより変わりうるが、通常重合溶媒に対して0
【0077】
.001∼10質量%の範囲で使用される。
実質的に紫外線吸収剤を含まないとは、本発明のフィル
【0068】
ム100質量%に対し、紫外線吸収剤が1質量%以下で
重合温度としては、含フッ素オレフィンとビニルエーテ
あることをいう。
ル単量体の反応中の組成比がほぼ一定になる範囲であれ
【0078】
ばよく、0∼100℃であってよい。
本発明の農業用フィルムは、上記含フッ素共重合体に必
【0069】
要に応じて他の成分を配合し、押出成形法、カレンダー
重合圧力としては、含フッ素オレフィンとビニルエーテ
成形法、溶媒キャスト法等の公知のフィルム成形法によ
ル単量体の反応中の組成比がほぼ一定になる範囲であれ 40
り成形することにより製造することができる。
ばよく、0∼10MPaGであってよい。
【0079】
【0070】
本発明の農業用フィルムの厚さは、要求特性に応じて適
上記ビニルエーテル単量体の脱保護は、酸、熱、光等の
宜決定すればよいが、10∼1000μmであることが
従来公知の方法によって行うことができる。この脱保護
好ましい。より好ましくは、20∼500μmであり、
によって、脱離基(例えば、−C(CH3 )3 )は、水
更に好ましくは、30∼400μmである。厚みが薄過
素に置換され、水酸基を得ることができる。
ぎるとフィルムが破れやすくなり、また厚過ぎるとフィ
【0071】
ルムの切断、接着、展張作業等に不便であり、更に光線
上記含フッ素オレフィン単位とビニルエーテル単量体単
透過率も低下するおそれがある。
位とを有する共重合体を脱保護して本発明における含フ
【0080】
ッ素共重合体を得る場合の脱保護度は、本発明における 50
本発明の農業用フィルムは、ヘイズ値が10%以下であ
( 9 )
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ることが好ましい。より好ましくは、7%以下であり、
ことにより、より一層の防曇効果と持続効果が得られる
更に好ましくは、5%以下である。また、下限は特に限
。
定されず、低い方が好ましい。
【0090】
【0081】
本発明における防曇剤層は、防曇剤からなる層である。
本発明の農業用フィルムは、可視領域における全光線透
防曇剤層は、防曇剤のみからなるものであってもよく、
過率が80%以上であることが好ましい。より好ましく
防曇剤と、他の成分とからなるものであってもよい。
は、90%以上であり、更に好ましくは、93%以上で
【0091】
ある。
上記防曇剤層は、他の成分としてバインダーを含むこと
【0082】
が好ましい。バインダーとしては(メタ)アクリル酸エ
本明細書において、ヘイズ値及び可視領域における全光 10
ステル樹脂、酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。
線透過率は、ヘイズメーターを用いてASTM
【0092】
D10
03に従って測定したものである。
上記防曇剤層は、上記防曇剤に必要に応じて他の成分を
【0083】
添加した塗布組成物を、本発明のフィルムの少なくとも
本発明の農業用フィルムは、紫外線透過率が60%以上
一方の面に塗布することにより、形成することができる
であることが好ましい。より好ましくは、65%以上で
。
あり、更に好ましくは、70%以上である。
【0093】
本明細書において、紫外線透過率は、分光光度計を用い
上記塗布組成物には、作業性向上、表面平滑性向上等を
て380nmにおける全光線透過率の値を測定したもの
目的として溶媒、添加剤等を添加してもよい。溶媒とし
である。
ては、例えば水、各種アルコール、ケトン、エステル、
【0084】
20
エーテル等を適宜用いることができる。
本発明は、上述した本発明のフィルムと、該フィルムの
【0094】
少なくとも一方の面上に設けられた、防曇剤からなる防
上記塗布組成物を本発明のフィルムに塗布する方法とし
曇剤層とを有する農業用被覆資材でもある。
ては、はけ塗り、ローラー塗布、手塗り、回転塗布、浸
【0085】
漬塗布、各種印刷方式による塗布、バーコート、カーテ
上記防曇剤としては、防曇剤として効果のある界面活性
ンフロー、ダイコート、フローコート、スプレーコート
剤、親水性重合体、微粒子状無機物又はこれら2種以上
等が挙げられる。必要に応じて、公知の乾燥処理を行っ
を混合したものが挙げられる。
てもよい。また、塗膜の機械的強度を高める目的で、必
【0086】
要に応じて、加熱したり、紫外線や電子線等の照射を行
上記界面活性剤としては、たとえば、ソルビタン脂肪酸
ってもよい。
エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ジグリセリン 30
【0095】
脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタ
本発明の農業用被覆資材において、本発明のフィルムと
ン脂肪酸二塩基酸エステル、ソルビトール脂肪酸二塩基
防曇剤層とは、他の層を介さずに直接接着していること
酸エステル、ジクリセリン脂肪酸二塩基酸エステル、グ
が好ましい。上記他の層には、本発明のフィルムの表面
リセリン脂肪酸二塩基酸エステル及びこれらとエチレン
をプラズマ処理、コロナ放電処理等の表面処理方法で処
オキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキ
理して得られる表面処理層も含まれる。本発明のフィル
サイドを付加した化合物等が挙げられる。
ムは防曇剤との親和性に優れるため、表面処理を施した
【0087】
り、接着剤層を設けたりしなくても、本発明の農業用被
上記親水性重合体としては、例えば、ポリビニルアルコ
覆資材は、本発明のフィルムと防曇剤層との密着性に優
ール、ポリビニルピロリドン等のほかに、−SO4 、−
れる。
SO3 H、−COOH、−NH2 、−CN、−(OCH 40
【0096】
2
CH2 )x −(ここでxは、例えば1∼20程度の整
上記防曇剤層は、本発明のフィルムの片面のみに設けて
数)等の親水性官能基を有する重合体が挙げられる。
もよく、両面に向けてもよい。片面のみに設ける場合、
【0088】
もう一方の面には熱可塑性ポリマー層、防汚性膜、帯電
上記微粒子状無機物としては、シリカ、アルミナ、酸化
防止膜、断熱性膜、紫外線カット性膜等を設けることも
チタン等が挙げられる。
できる。
【0089】
【0097】
上記防曇剤としては、界面活性剤、親水性重合体又は微
熱可塑性ポリマー層を構成する熱可塑性ポリマーとして
粒子状無機物だけでも充分効果は認められるが、シリカ
は、溶融成形可能な、上記含フッ素共重合体以外のポリ
、アルミナ等の微粒子状無機物とポリビニルアルコール
マーであればよく、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステ
、ポリビニルピロリドン等の親水性重合体とを併用する 50
ル、ポリカーボネート、アクリル樹脂等が挙げられる。
( 10 )
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熱可塑性ポリマー層を設ける場合は、上記含フッ素共重
農園芸施設に好適に展張することができる。この場合、
合体と熱可塑性ポリマーとを共押出するか、又は、予め
上記防曇剤層がハウスの内側になるように適用されるこ
作成した熱可塑性ポリマー層上に溶媒キャスト法により
とが好ましい。
本発明のフィルムを形成することにより、本発明のフィ
【実施例】
ルムと熱可塑性ポリマー層とからなる積層体を製造した
【0106】
後、本発明のフィルムの、熱可塑性ポリマー層と反対側
次に本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はかか
の面に上記防曇剤層を形成すればよい。
る実施例のみに限定されるものではない。
本発明のフィルムと熱可塑性ポリマー層とからなる農業
【0107】
用積層体も、本発明の1つである。
【0098】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
10
【0108】
コスト削減の観点からは、本発明の農業用被覆資材は、
〔NMR(核磁気共鳴法)によるフルオロポリマーの組
本発明のフィルム及び防曇剤層のみからなることが好ま
成、および交互率の測定〕
しい。
1
【0099】
270(JEOL社製:270MHz)を用いた。溶媒
上記防曇剤層の厚さは、0.01∼50μmであること
は重アセトンを用いた。
が好ましい。より好ましくは、0.05∼20μmであ
【0109】
り、更に好ましくは、0.1∼10μmである。薄過ぎ
〔分子量及び分子量分布〕
ると、親水性やその効果持続性が低下するおそれがあり
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)に
、厚過ぎると、クラックが入りやすくなったり、干渉縞
より、東ソー(株)製のGPC
が発生したり、傷が入った場合にはその傷が目立ちやす 20
い、Shodex社製のカラム(GPC
くなるおそれがある。
を1本、GPC
【0100】
806Mを2本直列に接続)を使用し、溶媒としてテト
本発明の農業用被覆資材は、実質的に紫外線吸収剤を含
ラハイドロフラン(THF)を流速1ml/分で流して
まないことも好ましい。本発明の農業用被覆資材は、実
測定したデータより、平均分子量を算出した。
質的に紫外線吸収剤を含まなくても、耐候性に優れる。
また、THFにサンプルが溶解しない場合は、以下の方
したがって、必要以上に紫外線を遮蔽することがなく、
法にて平均分子量を算出した。日本分光社製の高速液体
紫外線を必要とする作物の生育や、受粉に寄与する昆虫
クロマトグラフを用い、分析カラムセットは、ガードカ
の飛翔性が良好になる。紫外線吸収剤については、上述
ラム(Shodex
したとおりである。
【0101】
H−NMR(核磁気共鳴法)測定には、JNM−EX
I.D.×
30
実質的に紫外線吸収剤を含まないとは、本発明の農業用
D−806M
L]
HLC−8020を用
KF−801
KF−802を1本、GPC
GPC KD−G
10mm
KF−
[4.6mm
L])1本、分析カラム(K
[8.0mm
I.D.×
300mm
3本を使用した。移動溶媒に10mM
LiB
被覆資材100質量%に対し、紫外線吸収剤が1質量%
rを含むN−メチル−2−ピロリドンを、検出器にはR
以下であることをいう。
I、検量線サンプルはポリスチレン標準サンプルを使用
【0102】
し、流速1ml/分、サンプル打込量200μLで測定
本発明の農業用被覆資材は、ヘイズ値が10%以下であ
を行った。データ解析にはデータステーション(Chr
ることが好ましい。より好ましくは、7%以下であり、
omNAV)を使用した。
更に好ましくは、5%以下である。また、下限は特に限
【0110】
定されず、低い方が好ましい。
〔ガラス転移温度(Tg)〕
【0103】
DSC(示差走査熱量計:SEIKO社製、RTG22
本発明の農業用被覆資材は、可視領域の全光線透過率が 40
0)を用いて、−50℃から200℃までの温度範囲を
80%以上であることが好ましい。より好ましくは、9
10℃/分の条件で昇温(ファーストラン)−降温−昇
0%以上であり、更に好ましくは、93%以上である。
温(セカンドラン)させ、セカンドランにおける吸熱曲
【0104】
線の中間点をTg(℃)とした。
本発明の農業用被覆資材は、紫外線透過率が60%以上
【0111】
であることが好ましい。より好ましくは、65%以上で
〔融点(Tm)〕
あり、更に好ましくは、70%以上である。
DSC(示差走査熱量計:SEIKO社製、RTG22
【0105】
0)を用いて、10℃/分の条件で昇温(ファーストラ
本発明の農業用被覆資材は、層間密着性、透明性、紫外
ン)−降温−昇温(セカンドラン)させ、セカンドラン
線透過性及び耐候性に優れるため、農作物の施設栽培の
における融解熱曲線における極大値に対応する温度をT
ためのトンネルハウス、パイプハウス、大型ハウス等の 50
m(℃)とした。
( 11 )
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【0112】
【0118】
〔IR分析〕
Perkin
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合成例2
Elmer社製フーリエ変換赤外分光光
3Lステンレス製オートクレーブに純水1000g、酢
度計1760Xで室温にて測定した。
酸ビニル23.2g、ネオコールP(ジオクチルスルホ
【0113】
コハク酸ナトリウムの76.4質量%イソプロピルアル
〔フッ素含有率〕
コール溶液:第一工業製薬(株)製)を入れ、窒素置換
酸素フラスコ燃焼法により試料10mgを燃焼し、分解
し、テトラフルオロエチレン37gを加え、槽内を80
ガスを脱イオン水20mlに吸収させ、吸収液中のフッ
℃まで昇温した。その後、テトラフルオロエチレンを3
素イオン濃度をフッ素選択電極法(フッ素イオンメータ
0g加えた。このとき槽内の圧力は0.809MPaと
ー、オリオン社製
なった。これに撹拌下、過硫酸アンモニウム(APS)
901型)で測定することにより求 10
めた(質量%)。
の1質量%水溶液22gを加え、反応を開始した。反応
【0114】
開始時に酢酸ビニルの追加を開始し、6時間かけて28
合成例1
3gの酢酸ビニルを追加した。反応中は酢酸ビニル/テ
2.5Lステンレス製オートクレーブ中に溶媒として酢
トラフルオロエチレンの比率が一定になるように、電磁
酸ブチル980gとビニルエステル単量体として酢酸ビ
弁を用いてテトラフルオロエチレンを連続供給した。撹
ニル17gを仕込み、重合開始剤としてパーブチルPV
拌速度は500rpmであった。
(製品名、日油株式会社製)6.2gを加え、フランジ
【0119】
を締め、オートクレーブを真空置換して、槽温を60℃
具体的には、テトラフルオロエチレンが消費されて槽内
まで昇温した。これに攪拌下、フッ素オレフィンガスと
が0.775MPaになると自動的に電磁弁を開いてテ
してテトラフルオロエチレンを93g封入して反応を開 20
トラフルオロエチレンを供給し、0.800MPaにな
始した。このとき槽内の圧力は0.74MPaとなり、
ると自動的に電磁弁を閉じてテトラフルオロエチレンの
攪拌速度は200rpmであった。
供給を停止するサイクルでテトラフルオロエチレンの供
反応開始時に酢酸ビニルの追加を開始し、4時間かけて
給と圧力を制御しながら、テトラフルオロエチレンの消
93gの酢酸ビニルを追加した。
費量に合わせて酢酸ビニルを追加した。
反応中は酢酸ビニル/テトラフルオロエチレンの比率が
【0120】
一定になるように、電磁弁を用いてテトラフルオロエチ
反応開始から6時間後にテトラフルオロエチレンと酢酸
レンを連続供給した。撹拌速度は200rpmであった
ビニルの供給を停止した。その後1時間反応させた後に
。
、槽内を常温常圧に戻して重合を停止し、酢酸ビニル/
【0115】
テトラフルオロエチレン共重合体のエマルション166
具体的には、テトラフルオロエチレンが消費されて槽内 30
1g(固形分濃度38.5質量%)を得た。
が0.720MPaになると自動的に電磁弁を開いてテ
【0121】
トラフルオロエチレンを供給し、0.740MPaにな
得られた酢酸ビニル/テトラフルオロエチレン共重合体
ると自動的に電磁弁を閉じてテトラフルオロエチレンの
(ポリマーA2)のガラス転移温度は40℃であり、粒
供給を停止するサイクルでテトラフルオロエチレンの供
子径は116nmであった。なお、粒子径は、レーザー
給と圧力を制御しながら、テトラフルオロエチレンの消
光散乱粒径測定装置(大塚電子(株)製、商品名ELS
費量に合わせて酢酸ビニルを追加した。
−3000)を用いて測定した。
【0116】
【0122】
反応開始から4時間後にテトラフルオロエチレンと酢酸
合成例3
ビニルの供給を停止した。その後槽内を常温常圧に戻し
3Lステンレス製オートクレーブ中に溶媒として酢酸ブ
て重合を停止し、酢酸ビニル/テトラフルオロエチレン 40
チル1200gとビニルエステル単量体として酢酸ビニ
共重合体の酢酸ブチル溶液1110g(固形分濃度21
ル140gを仕込み、重合開始剤としてパーブチルPV
.0質量%)を得た。
(製品名、日油株式会社製)7.2gを加え、フランジ
反応終了後、ポリマー溶液を大量のメタノール溶液に再
を締め、オートクレーブを真空置換して、槽温を60℃
沈させ、ポリマーの精製を行い、ポリマーA1を得た。
まで昇温した。これに攪拌下、フッ素オレフィンガスと
【0117】
してテトラフルオロエチレンを封入して反応を開始した
ポリマーA1の組成をフッ素の元素分析から求め、フッ
素オレフィンとビニルエステルとの交互率を
1
。このとき槽内の圧力は1.00MPaとなり、攪拌速
H−NM
度は500rpmであった。重合圧力が降下しているこ
Rから計算し、重量平均分子量および分子量分布(Mw
とからガスモノマーの消費を確認し、6時間で槽内を常
/Mn)をGPCから求めた。またガラス転移温度をD
温常圧に戻して重合を停止し、残ガスをブローして反応
SCから測定した。結果を表2に示す。
50
を終了した。
( 12 )
JP
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A
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22
【0123】
オロエチレンを26.7g封入し、60℃の振とう式恒
反応終了後、ポリマー溶液を大量のメタノール溶液に再
温槽に入れて反応を開始した。重合圧力が降下している
沈させ、ポリマーの精製を行い、ポリマーA3を得た。
ことからガスモノマーの消費を確認し、3時間で振とう
【0124】
を止め、残ガスをブローして反応を終了した。
ポリマーA3の組成をフッ素の元素分析から求め、フッ
素オレフィンとビニルエステルとの交互率を
1
反応終了後、ポリマー溶液を大量のメタノール溶液に再
H−NM
沈させ、ポリマーの精製を行い、t−ブチルビニルエー
Rから計算し、重量平均分子量および分子量分布(Mw
テル/テトラフルオロエチレン共重合体(ポリマーC1
/Mn)をGPCから求めた。またガラス転移温度をD
)を得た。
SCから測定した。結果を表2に示す。
【0125】
フッ素の元素分析より求めた、t−ブチルビニルエーテ
10
ル/テトラフルオロエチレン共重合体の組成は、52/
合成例4
48(モル比)であった。反応条件を表1に、得られた
300mLステンレス製オートクレーブ中に酢酸ブチル
ポリマーの物性を表2にまとめる。
溶媒50gとステアリン酸ビニルモノマー10gを仕込
【0130】
み、重合開始剤としてパーブチルPV(製品名、日油株
【表1】
式会社製)を0.4g加え、フランジを締め、オートク
レーブを真空置換して、フッ素オレフィンガスとして、
8.0gのテトラフルオロエチレンを封入し、引き続い
て2.6gのヘキサフルオロプロピレンを封入し60℃
の振とう式恒温槽に入れて反応を開始した。重合圧力が
降下していることからガスモノマーの消費を確認し、1 20
5時間で振とうを止め、残ガスをブローして反応を終了
した。
【0126】
反応終了後、ポリマー溶液を大量のメタノール溶液に再
沈させ、ポリマーの精製を行い、ポリマーB1を得た。
【0127】
ガラス転移温度の代わりに融点を測定した以外は合成例
1と同様の分析を行った。結果を表2に示す。
【0128】
合成例5
30
300mLステンレス製オートクレーブ中に溶媒として
酢酸ブチル50gとビニルエステル単量体として酢酸ビ
ニル10gを仕込み、重合開始剤としてパーブチルPV
(製品名、日油株式会社製)を0.4g加え、フランジ
を締め、オートクレーブを真空置換して、フッ素オレフ
ィンガスとして、17gのクロロトリフルオロエチレン
を封入し、60℃の振とう式恒温槽に入れて反応を開始
した。重合圧力が降下していることからガスモノマーの
消費を確認し、4時間で振とうを止め、残ガスをブロー
【0131】
して反応を終了し、ポリマーB2を得た。反応条件を表 40
【表2】
1に、得られたポリマーの物性を表2にまとめる。
【0129】
合成例6
(t−ブチルビニルエーテル/テトラフルオロエチレン
共重合体の合成)
300mlステンレス製オートクレーブ中にt−ブタノ
ール150gとt−ブチルビニルエーテル26.7g、
炭酸カリウム0.48gを仕込み、触媒のパーブチルP
Vの70%イソオクタン溶液0.46gを加え、フラン
ジを締め、オートクレーブを真空置換して、テトラフル 50
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24
ン共重合体のエマルションを凍結凝析させ、純水で洗い
流した後乾燥させたTFE/酢酸ビニルポリマー(ポリ
マーA2)を50gTHF溶媒中に濃度が10質量%に
なるように均一溶解させた。その後、0.6NのNaO
H溶液をポリマー中の酢酸ビニル当量になるように添加
し、24h攪拌後に1NのHClで中和後、大量の純水
に再沈させ、イオン交換水でよく洗浄し、再沈したポリ
マーを吸引ろ過し、乾燥機で80℃2hr乾燥させた。
IRにより、カルボニルピークの相対強度より、加水分
10
解率を計算した結果、96%である、TFE/ビニルア
ルコール/酢酸ビニルポリマー(A2−96)を得た。
結果を表3にまとめる。
【0136】
合成例15(脱保護工程)
(加水分解:ビニルアルコール/テトラフルオロエチレ
ン共重合体の合成)
100mlナスフラスコに、合成例6で得たt−ブチル
ビニルエーテル/テトラフルオロエチレン共重合体(t
−ブチルビニルエーテル/テトラフルオロエチレン=5
20
2/48(モル比))5.26g、1,4−ジオキサン
2.4ml、4N
HCl水溶液100mlを入れ、8
0℃で加熱撹拌した。2時間後、加熱を止め放冷し、析
【0132】
合成例7(ケン化
出したポリマーを純水で3回洗浄した。ポリマーをテト
均一系)
ラヒドロフラン(THF)に溶解させ、エタノール/水
合成例3で得られたTFE/酢酸ビニルポリマーA3を
(50/50体積%)の溶液に再沈殿し、真空乾燥する
50gTHF溶媒中に濃度が10質量%になるように均
ことで精製したビニルアルコール/テトラフルオロエチ
一溶解させた。その後、0.6NのNaOH溶液をポリ
レン共重合体を得た(C1−95)。脱保護度は95%
マー中の酢酸ビニル当量になるように添加し、30分後
であった。
にポリマーを大量の水中に再沈させた。1NのHClで
結果を表3にまとめる。
洗浄後、イオン交換水でよく洗浄し、再沈したポリマー 30
【0137】
を吸引ろ過し、乾燥機で80℃2hr乾燥させた。IR
【表3】
により、カルボニルピークの相対強度より、加水分解率
(ケン化度)を計算した結果、34%である、TFE/
ビニルアルコール/酢酸ビニルポリマー
A3−34を
得た。結果を表3にまとめる。
【0133】
合成例8∼10(ケン化
均一系)
合成例7のケン化時間を変えることにより、TFE/ビ
ニルアルコール/酢酸ビニルポリマーであるA3−45
、A3−86、A3−96を得た。結果を表3にまとめ 40
【0138】
る。
実施例1
【0134】
合成例11∼13(ケン化
合成例7で得られたポリマー(A3−34)を酢酸ブチ
均一系)
ル溶液に40質量%になるように溶解させた。その後、
合成例7のケン化時間を1日とし、合成例1および合成
農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムである、旭化成ケ
例4∼5で得られたポリマーを用いる以外は合成例7と
ミカルズ社製のサンテック
同様にして、ケン化ポリマー、A1−98、B1−97
531にバーコート(#10)を用いて塗布した。室温
およびB2−96を得た。結果を表3にまとめる。
で30分予備乾燥後、120℃で送風式乾燥機中で30
【0135】
分乾燥させた。乾燥後の膜厚をマイクロメーターで測定
合成例14
した結果、25μmであった。
合成例2で得られた酢酸ビニル/テトラフルオロエチレ 50
得られた塗膜を、下記の項目について評価した。評価結
T
M
−EVAフィルムEF1
( 14 )
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25
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A
2015.9.28
26
果を表4に示した。
【0139】
(碁盤目密着試験)
JIS
K5600の碁盤目セロハンテープ剥離試験に
より評価した。塗膜にカッターナイフで1mm間隔の碁
盤目状の切込みを入れ、セロハンテープを貼り付けた後
剥離し、剥離部分が無いものを10点、0%を超え5%
未満のものを8点、5%以上15%未満のものを6点、
15%以上35%未満のものを4点、35%以上65%
未満のものを2点、65%以上のものを0点と評価した 10
。
【0140】
(ヘイズ、全光線透過率の測定)
ヘイズメーター(東洋精機社製
用いてASTM
ヘイズガードII)を
D1003に従い、ヘイズ値、および
全光線透過率を測定した。
【0141】
【表4】
【0144】
実施例10
合成例14で得られたポリマーA2−96を酢酸ブチル
溶液に40質量%になるように溶解させた。その後、キ
【0142】
ャスト製膜することにより、厚み400μmの自立フィ
実施例2∼9
ルムを得た。得られたフィルムのヘイズ値、全光線透過
ポリマーA3−34の代わりにポリマーA3−45、A
率を実施例1と同様に測定した。また、下記の方法で紫
3−86、A3−96、A1−98、B1−97、B2
外線透過率も測定した。結果を表6に示す。
−96、A2−96、C1−95を使用したこと以外は
【0145】
実施例1と同様にして、農業用ポリオレフィン系樹脂フ 30
(紫外線透過率の測定)
ィルム上に塗膜を形成し、各種物性を測定した。乾燥後
分光光度計(株式会社
日立製作所製
の膜厚は、いずれも25μmであった。結果を表5に示
photometer
U−4100)を用い、波長3
す。
80nmについて測定した。
【0143】
【0146】
【表5】
【表6】
Spectro
【0147】
実施例11(促進耐候性)
実施例10で得られたフィルムに関して下記の促進耐候
性試験を実施した結果、評価はAであった。
【0148】
(促進耐候性試験)
岩崎電気(株)製アイスパーUVテスターW−13型(
Light/Dew/Rest=11/11/1HRを
1サイクルとする)にて促進耐候性試験を500時間行
50
なったのち、外観を目視で観察する。評価はつぎの基準
( 15 )
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27
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A
2015.9.28
28
で行なう。
【0150】
A:異常なし
(対水接触角)
B:多少の変色あり
接触角計(協和界面科学(株)製のCA−DT・A型)
C:著しい変色あり
を用いて測定した。
【0149】
【0151】
実施例12(防曇剤の直接塗布及び密着性評価)
比較例1
シリカゾル(日産化学工業社製、商品名:スノーテック
25μmのETFEフィルム(ダイキン工業社製
スIPA―ST、1次粒子径10∼20nm)にイソプ
025)を実施例10で得られたフィルムの代わりに用
ロピルアルコールを添加して、固形分濃度6質量%に希
いた以外は実施例12と同様にして防曇剤層を形成した
釈した。実施例10で得られたフィルムにバーコータで 10
サンプルを得た。実施例12と同様に各種物性を測定・
塗布した後、80℃で10分間乾燥して、0.3μmの
評価した。結果を表7に示す。
塗膜(防曇剤層)を形成して防曇剤層を形成したサンプ
【0152】
ルを得た。
【表7】
EP
得られたサンプルについて、上記の方法で碁盤目密着試
験を行うとともに、全光線透過率、ヘイズを測定した。
また、下記の方法で対水接触角を測定した。結果を表7
に示す。なお、碁盤目密着試験及び対水接触角の測定は
、防曇剤層表面について行った。
────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者
三木
淳
大阪府摂津市西一津屋1番1号
ダイキン工業株式会社淀川製作所内
Fターム(参考) 2B024 DB01
2B029 EB02
EC02
EC09
EC19
EC20
4J100 AC22P AC23P AC24P AC26P AC27P AC31P AE09P AG02Q AG03Q AG04Q
AG05Q AG06Q AG18Q AG24Q BB18P BC43Q CA04
DA25
DA62
FA19
JA01
JA64
CA25
DA01
DA04