Porphyromonas gingivalis ECF シグマ因子 PGN_0319の機能解析

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№10:Porphyromonas gingivalis ECF シグマ因子
PGN_0319の機能解析
太田, 功貴; 菊池, 有一郎; 今村, 健太郎; 吉川, 幸輝;
喜田, 大智; 藤瀬, 和隆; 国分, 栄仁; 齋藤, 淳; 石原,
和幸
歯科学報, 115(3): 276-276
http://hdl.handle.net/10130/3677
Right
Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College,
Available from http://ir.tdc.ac.jp/
276
学 会 講 演 抄 録
№9:EpCAM 陽性エクソソームと親和性界面との相互作用解析
1)
山本恵史1)2),岩井千弥1)2),吉田光孝1)2),吉成正雄3),矢島安朝1)(東歯大・口腔インプラント)
2)
3)
(がん研究所・蛋白創製研究部)(東歯大・口科研)
目的:エクソソームとは,細胞から放出される30−
100nm 程 度 の 細 胞 外 分 泌 小 胞 で,血 液,唾 液,
尿,羊水,腹水などの体液中に多量に存在する。エ
クソソームは,それを放出する親細胞由来のタンパ
ク質や,RNA を含んでおり,これらの分子はエク
ソソームを取り込んだ別の細胞内で発現し,機能す
る。エクソソームは,がんの進展を始めとするさま
ざまな生物現象に関与していることが次々と明らか
にされており,エクソソームを核とした新しい医療
が生まれようとしている。本研究ではがんマーカー
として知ら れ て い る EpCAM(Epithelial Cell Adhesion Molecule)分子に着目し,体液中に存在す
るさまざまなエクソソームの集団の中から EpCAM
陽性エクソソームを選別する方法の開発を目指して
いる。このために,がん研究所で開発された EpCAM 結合ペプチド「Ep114」をポリマーコート剤
と複合化した「EpiVeta」を用い,材料表面に EpCAM 親和性界面を形成し,その表面での EpCAM
陽性エクソソームの相互作用を原子間力顕微鏡を用
いて評価することを目的とした。
方法:「EpiVeta」をポリスチレンプレートへコー
トし,EpCAM 陽性エクソソー ム お よ び EpCAM
陰性エクソソームとの結合を原子間力顕微鏡(Asylum Research 社)により評価した。エクソソーム
は HCT15(EpCAM 陽 性)
,お よ び HT1080(EpCAM 陰性)より調製した。また,EpCAM 結合ペ
プチドを提示しないコート剤として MPC ポリマー
(日油社)を用いた。定量的評価は SPIP イメージ
解析ソフ ト ウ ェ ア(Image Metrology 社)を 使 っ
て行なった。
結果:EpiVeta をコートしたポリスチレンプレート
において,EpCAM 陰性エクソソームと比較して
EpCAM 陽性エクソソームでは,数倍の結合を確認
した。これにより,EpiVeta をコートしたポリスチ
レンプレートと EpCAM 陽性エクソソームとの特
異的な結合を定性的,定量的に評価することができ
た。
考察:EpCAM 結合ペプチドである Ep114により構
成されるコート剤『EpiVeta』が形成する親和性材
料表面が示す EpCAM 陽性エクソソームに特異的
な結合力を,原子間力顕微鏡を用いて定量的に評価
できることが明らかとなった。
№10:Porphyromonas gingivalis ECF シグマ因子 PGN_0319の機能解析
太田功貴1)2),菊池有一郎2)3),今村健太郎1),吉川幸輝1),喜田大智1),藤瀬和隆2)3),国分栄仁2)3),
1)
2)
3)
(東歯大・口科研)
(東歯大・微生)
齋藤 淳1)2),石原和幸2)3)(東歯大・歯周)
目的:Extracytoplasmic function(ECF)シグマ因
子は菌体外の生活環境変化に応答し,遺伝子の転写
量を制御することで細菌のストレス応答に関与して
い る。歯 周 病 原 細 菌 Porphyromonas gingivalis は6
種の ECF シグマ因子を保有しており,その一部は
DNA 修復や酸化ストレス物質の消去に関与すると
の報告がある。また,鉄は細菌の増殖に必須の栄養
素であり他のグラム陰性菌においては鉄取り込み
に関与する ECF シグマ因子が存在するが,P. gingivalis における ECF シグマ因子と鉄取り込みとの
関連性は明らかにされていない。本研究では ECF
シグマ因子の遺伝子挿入変異株を作製し,鉄取り込
み機構との関連性を検討した。
方法:P. gingivalis 33277株の6種の ECF シグ マ 因
子遺伝子内にエリスロマイシン耐性遺伝子カセット
が挿入された変異株を作製した。また,そのうち1
種の ECF シグマ因子において遺伝子とその周辺部
を PT-COW ベクターに組み込み,変異株に導入し
て相補株を作製した。野生株と変異株において通常
時およびヘミン制限条件下における増殖曲線を評価
した。また網羅的遺伝子発現を DNA マイクロアレ
イにて検討後,
野生株,
変異株および相補株において
Real-time RT-PCR にて遺伝子転写量を評価した。
結果および考察:ヘミン制限条件下において,野生
株と比較し PGN_0319変異株の増殖速度の減少が認
め ら れ た。ま た マ イ ク ロ ア レ イ 解 析 に お い て,
PGN_0319変異株において外膜タンパク質に関与す
る遺伝子発現の減少が認められた。Real-time RTPCR の結果,野生株と比較し PGN_0319変異株に
おいて P. gingivalis の鉄取り込 み 機 構 に 関 与 す る
PGN_0557(HmuR)の遺伝子転写量の減少が認め
られ,相補株において野生株と同等レベルに回復し
た。
以 上 の 結 果 よ り ECF シ グ マ 因 子 PGN_0319は
PGN_0557(HmuR)の遺伝子発現制御に関与し,
P. gingivalis の増殖における鉄取り込み機構に関与
することが示唆された。
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