新規オイル産生藻類の探索と評価

(一社)建設コンサルタンツ協会 近畿支部
第48回(平成27年度)研究発表会 論集
プレゼンテーション発表アブストラクト №238
新規オイル産生藻類の探索と評価
近畿技術コンサルタンツ株式会社
1.序論
平井
凌
今回の目的である生産効率で最も優れている種を探
近年、化石燃料が枯渇状態に近づいていることから
すため増殖速度とオイル産生量の積を指標に使用する。
その代用となる代価エネルギーの開発が本格化してき
最も積の値が高いのは No223 株の C 培地によるものだ
ており、その中でも光と水で恒久的に生産できるオイ
っ た 。 こ の 藻 類 の 積 と NIES641 株 ( 脂 質 生 産 効
ル産生藻類が注目され始めている。しかしこのオイル
率:14mL/L/day)の最も高い積と比較してみると No223
産生藻類はコストが高く実用化は本格化していない。
株が約2倍大きかった。このことから No223 株の脂質
このコスト削減のためにはよりオイル生産効率のよい
生産効率はおおよそ 28mL/L/day であると考えられる。
種の発見が不可欠である。そこで本研究では生産効率
この値は実用化に向け研究されているオイル産生藻類
の確認のためオイル産生量だけでなく増殖速度も重要
の Botryococcus braunii(脂質生産効率:64mL/L/day)に
視した新規藻類の探索を目的に実験を行った。また本
及ばなくコストの削減を期待できない値であった。
今後、コストの削減を目指していくためにはもっと
実験では培養液を4種類用意し特定の条件でのみポテ
ンシャルを発揮する藻類も評価の対象とした。
多くの藻類を性能評価にかけ有力種を探していくこと
2.実験方法
が必要となるだろう。
本実験では淡水域からの藻類の採取とその採取した
藻類の性能評価の2つを行った。
藻類の採取では様々な淡水域から水を採水し、その
中の藻類をマイクロピペット法、寒天培地法で単離を
行った。単離した藻類はナンバリングし培養培地の入
表1 C 培地に対する平均相対比
った試験管に移し変え、25℃の恒温機で培養した。
性能評価では単離をした藻類の評価以外に性能が確
認されている CroNIES 641 株との比較を行った。実験
に使用する藻類はまずイオン交換水と遠心分離機を用
いて洗浄を行い、各培養液に植え付けていった。この
ときに培養前のサンプルの採取を行った。この植え付
増殖速度
オイル
産生量
培地
X
N
S
X
N
S
C培地に対する相対比
0.417
0.194
0.251
11.8
15.9
11.7
けた藻類は25℃の恒温機で、ある程度藻類が増殖す
るまで培養し、それを培養後サンプルとした。これら
のサンプルはフローサイトメーターを用い葉緑体の自
然蛍光である BL3 の粒子密度を測定した。また培養後
サンプルは密度を約 100ev/uL に希釈或いは濃縮しフ
ローサイトメーターを用い未染色状態の BL2 蛍光強度
を測定した。次にナイルレッド(500ug/L)2uL 添加し、
再び BL2 蛍光強度を測定した。オイル産生量は染色後
の BL2 値から染色前の BL2 の差分から求めた。
3.結果
はじめに培養液ごとの増殖速度とオイル産生量の変
化を見てみる。C 培地に対する他の培地の増殖速度、
オイル産生量の相対比の平均値を表1に示す。表1か
らは増殖速度では C 培地が他の培養液より増殖するこ
とが確認できる。オイル産生量では C 培地以外が C 培
地より平均値では 10 倍近くオイルを作ることが確認で
きる。このことからオイル産生量を高くする方法とし
て藻類に負荷を掛けることが有効であるのではないか
と考えられる。
- 218 -
図1 増殖速度とオイル産生量の関係