JA 国際協議会 講演集 米国カリフォルニア州サンディエゴ 2015年1月18日〜24日 2015年国際協議会 講演集 世界へのプレゼントになろう 1 RI会長エレクト K.R. ラビンドラン ロータリーブランドの世界的な影響 5 元RI会長 ウィリアム B. ボイド ロータリーの会員増強 8 RI会長 ゲイリー C.K. ホァン 会員増強におけるバランス:入会、維持、新クラブ 11 RI元会長 カルヤン・バネルジー 21世紀における会員組織 14 The Nexgen Group創始者 マイケル・マクイーン ロータリー職員からの支援 18 RI事務総長 ジョン・ヒューコ 私自身への課題、皆さまへのお願い 22 RI会長エレクト K.R. ラビンドラン 2015-16年度ロータリー財団目標 25 ロータリー財団管理委員長エレクト レイ・クリンギンスミス オーケストラの指揮者のように 28 元RI会長 クリフォード L. ダクターマン JA 世界へのプレゼントになろう RI会長エレクト K.R. ラビンドラン 「ワールドクラス」のガバナーの皆さん、 この素晴らしき組織のリーダーとなる準備を整えるために、私たちはここに集まりました。皆さんと過ごすこのひ と時は、私にとって喜びであるだけでなく、 おそらく人生で最も大切なときとなるでしょう。 人生には、物事を一変させるような、極めて重要な瞬間というものがあります。 その後のあらゆる経験は、 この 瞬間を基軸として測られることになります。 自分の人生を形づくった出来事を振り返るとき、私たちは、 その出来事が起こる 「前」 と 「後」に分けて考えま す。 「あのときにすべてが変わった」 と言えるような瞬間です。 今晩ここにおられる皆さんにとって、 まさに今がそのときだと思います。 自宅、職場、家庭、 クラブなど、世界はいつもと変わりなく存在しています。 しかし、 ここサンディエゴで、私たちの 世界は変わりつつあります。私たちのビジョンが形を成し、理解、大志、意欲が広がりつつあります。 今週、 ロータリーという組織の幅と深さ、 そして、 それを取り巻く複雑さをご理解いただけるでしょう。 これまでは、 ロータリーを批判的に論じることがあったかもしれません。今、私たちには、 ロータリーにおいて改めるべき点を 正そうと努める特権、 そして重要な責任があります。 目の前に広大な地平線が広がっていますが、限りがないわけではありません。私たちがリーダーでいられるの は1年間だけです。7月からの366日間、一日一日が限られた貴重な時間であり、 この時間は二度と訪れませ ん。 時間が限られていると知れば、 その時間は一層貴重なものとなります。何かを成し遂げ、創造し、 「自分は大切 な存在としてここにいた」 という証を残したいという気持ちが、 ますます強まります。だからこそ、多くの方が、 ロー タリー役員としての1年を、 その証を残す一生に一度のチャンスだと考えるのです。 しかし、私はこう申し上げます。 もし本当に変化をもたらしたいなら、 自分の存在の証をロータリーに残すのでは なく、 ロータリーの活動を一番に優先して、 ロータリーの存在の証を世界に残すためにこの1年を捧げてくださ い、 と。 私たちの命は永遠ではなく、人生にはいつか終わりが訪れます。 しかし、 そのことを忘れがちです。 インドの詩 人、 タゴールの言葉のように、 「 楽器の弦の張替えばかりをしていて、肝心な歌を歌わずに」毎日を過ごしてい ます。 毎時間、 毎日、 毎年が、 自分に与えられたものであり、 貴重で、 あっという間になくなり、 かけがえのない時間であ ると、 私たちはどうしたら気づくでしょうか。 生まれると同時に、私たちはいろいろなものを授かります。最初に授かるのは、命です。 そして、愛、思いやり、 家族を授かり、教育、健康を授かり、学びを通じて才能と能力を授かります。人生において、親、友人、伴侶、子 ども、生計手段、物質的な豊かさなどは、 どれも私たちに授けられたプレゼントです。 2015年国際協議会 講演集 1 ありがたさに感謝の気持ちでいっぱいになることもあるでしょう。私は、数カ月前に初孫が生まれたとき、 そして、 皆さんと過ごす今晩も、 そのような気持ちです。 今皆さんはこうお思いでしょう。 このようなありがたいプレゼントに、一体いくつ恵まれてきただろうか、 と。私は自 分に、 そして皆さんに、次のように問います。 どうしたらその恩返しができるでしょうか? 人生の終わりを迎えるとき、与えられたものを無駄にし、後世に何も残さなかったと悟るのでしょうか。 それとも、 人生を振り返り、 この世を去るときに自分の善き行いが後世に生き続けると知るのでしょうか。 人生は1度しかありません。 そして、2015-16年度のチャンスも1度しかありません。 その時間はあまりに短く、 成すべきことはあまりに多くあります。 私たちの第一の課題、 そして最も重要な課題は、 ポリオの撲滅です。 25年以上前に私たちがポリオ撲滅の誓いを立てたとき、 125カ国にポリオが常在し、 毎日1,000人以上の子 どもがポリオによる麻痺 (まひ) 障害を患っていました。 現在、 ポリオ常在国は3カ国、 そして昨年のポリオ症例数はわずか333件となりました。 そのほとんどは、 パキスタン一国から報告されたものです。 この国で私たちが闘う相手は、 ポリオウイルスだけ でなく、無知、残忍さ、抑圧の力です。私たちの課題は、 ワクチンを子どもの口に届けるだけでなく、殺戮者たち から予防接種従事者を守ることでもあります。 タリバンが、幼子の予防接種に向かう女性たちをオートバイから 銃撃し、罪のない子どもたちを教室で殺害するという残忍な手段に訴える中、 パキスタン政府と市民は、 ロータ リーとともに、 ポリオのない未来を実現するために力を尽くしています。 このような事態になるとは、25年前には誰も想像できませんでした。 しかし、25年分の活動、 そして何百万と いう人たちの信念、献身、信頼が、卑劣な敵によっておとしめられることはありません。私たちは闘い続け、必 ずや勝利します。 なぜなら、私たちは、 ポリオのない未来をプレゼントすると世界の子どもたちに約束したからで す。私たちは必ずや、 このプレゼントを子どもたちに贈ります。 ロータリーは膨大な可能性を秘めています。 しかし、多くのクラブや地区の現実に目を向けると、 ロータリーのあ るべき姿が映し出されていません。 当組織を形づくった基本に立ち返る方法を見つける必要があります。 それは、人生のあらゆる場での高い倫 理基準、 そして、各クラブに会員の多様性をもたらす職業分類です。 これらは、会員増強の足を引っぱる障害にすぎないと見られることがあまりに多いのが現実です。 しかし、 これ らはロータリーの成功に欠かせない要素であり、 なおざりにすれば、 自らの存在を危うくすることになるでしょう。 一度決めたことをやり抜くための豊富な知識とスキルを備えた、誠実な会員がいるクラブこそ、真の「プレゼン ト」 となるのです。 しかし、 ご承知とは思いますが、今日のロータリーを一世紀前と同じように語りながら、 それと同時にロータリー の成長を期待することはできません。私たちは今、新しい現実に生きています。 ブランディングの新たな取り組 みは、確かに必要なことなのです。世界の多くの地域で薄れつつあるロータリーのイメージをあらためて明確に 打ち出す必要があります。 時に、 リーダーとしての私たちのロータリーの見方と、 クラブのロータリアンの見方との間に隔たりがあることが あります。 ロータリー財団への寄付をもっと奨励し、 もっと多くの善いことを行いたいと考える一方で、 しつこくお願いした り、 あまりに高額な寄付をお願いすれば、会員は離れてしまいます。 2 2015年国際協議会 講演集 若い会員を迎え入れたいと考える一方で、 ロータリーの基幹を成す年配の会員を遠ざけたり、 まだ大いに貢献 できる、最近退職した会員たちを見過ごすべきではありません。 クラブのレベルを超えた活動に参加し、 ロータリーのネットワークにもっとかかわるよう会員に奨励したいと考え る一方で、時間や寄付を要求しすぎて負担をかけたくはありません。 これらの課題を解決できる簡単な答えはありません。 しかし、何とかして答えを見つける必要があります。 それを 見つけるのは、 ほかでもない私たちです。 皆さんはロータリーの現場を知る方々です。 クラブが何を必要とするか、 クラブに何ができるかを、皆さんは心 得ておられます。ロータリーをまとめ、 その可能性を引き出し、 みんなで一緒に前進できるよう導くのは、皆さん です。 今後私は、皆さんに多くのことをお願いしていきます。 信念、情熱、傾倒、思いやりを捧げるよう、 お願いいたします。 これらだけでなく、 もっともっと多くを捧げてください。なぜなら、次年度には、 自らを世界へのプレゼントとして捧 げていただきたいからです。 ロータリーで私たちは、善き行いを目指しています。人類に大きなプレゼントを残した、歴史上の偉大な人たち を尊敬し、称えます。大勢の人に人間の尊厳を与えたアブラハム・リンカーン。疎外された人たちに慈悲の心 を捧げたマザー・テレサ。虐げられた人たちに平和的な変化を与えたマハトマ・ガンジー。 彼らは皆、人びとのために人生を捧げ、 自らが世界へのプレゼントとなって、 自分自身を捧げました。 もちろん、私たちは彼らと同じではありませんし、同じ人生を歩みたいとは望んでいないかもしれません。 しかし、 これら歴史上の人物から刺激を受け、模範とすることはできます。 この人生において、 自分が大切にする諸々 の責任をおろそかにせずに、 どうしたら自らを世界へのプレゼントとして捧げられるだろうか、 と。 それは可能なことであり、私たちはそれを実行します。 なぜなら、私たちは一体となってこのチャレンジに挑むからです。 「世界へのプレゼントになろう」。 これが、私か ら皆さんにお願いすることであり、 私たちを導いていくテーマです。 ロータリーで私たちはリソースを捧げますが、何よりも大切なことは、 自分自身を捧げることです。 ただ 「手渡す」 のと 「手を差し伸べる」のには大きな違いがあります。特に、思いやりの心をもった温かい手であればなおさら です。 幼い頃、思いやりと愛のこもったささやかなプレゼントは、気持ちのこもっていない高価なプレゼントよりも貴重 であると、誰もが子ども心にも理解していたと思います。 ここサンディエゴでも、人のために何かするときには、全身全霊を込めてはじめて価値があるということを、私た ちは理解しています。 だからこそ、皆さんにお願いします。 「世界へのプレゼントになろう」、 と。 このテーマを考えているとき、 ヒンドゥー教を通じて私が学んだある教訓を思い出しました。 ここで、 スダマの物 語を皆さんにご紹介したいと思います。 非常に貧しい少年スダマは、神の化身として王家の一族に生まれたクリシュナの親友でした。2人の少年は、 成長するにつれて少しずつ疎遠になり、 クリシュナが軍を率いる名高き王となった一方で、村人スダマはつつ ましく、 どちらかというと貧しい暮らしをしていました。 2015年国際協議会 講演集 3 何年も経った頃、 スダマは生活に困り、子どもに食事を与える十分なお金さえなくなってしまいました。妻は、幼 い頃に親しくしていたクリシュナに助けを求めるよう提案しました。最初は躊躇していたスダマも結局同意し、 手ぶらでは申し訳ないと、 いくらかの米を布に包んで持っていきました。 スダマを見たクリシュナは大喜びし、親切に愛情をもって迎えました。 その高貴な生活ぶりに圧倒されたスダマ は、恥ずかしさのあまり持参した米を差し出すことができません。 クリシュナは 「何を隠しているのか」 と尋ね、布 を開いて中の米を見ると、喜んでこれを食べました。数時間後、変わらぬ友情に感激したスダマは、助けをお願 いすることをすっかり忘れてクリシュナの元を去りました。 帰り道、 スダマは、当初の目的を忘れていたことに気づき、子どもたちがまだ腹を空かせていることを思い出しま した。 しかし、 自宅に着くと、 そこにあったのは、彼が出たときと同じ小屋ではなく、美しい家でした。家の前には きれいな服を着た家族が立っています。十分な食事を済ませた家族は、 スダマを出迎えようと待っていたので す。 これはなぜでしょうか?クリシュナは、 スダマが自分のためにプレゼントをもってきてくれたこと、 ありったけの米を 自分にくれたことが分かっていたからです。 そのお返しに、 クリシュナは、 スダマが必要とするすべてを与えたの です。 この逸話の教訓は、受け手にとって大切なのは、 その物質的な価値ではなく、贈り主の心がどれだけ込められ ているか、 ということです。 私たちには選択肢があります。授けられたものを自分の元だけにとどめるか、 またはそれを生かして自らが「世界 へのプレゼント」 となるか、 です。 私からの皆さんへのお願いは、授けられたものを、入念に、賢明に、 そして惜しみなく生かすことです。 授けられたものを生かして、今は家で座っているだけの少女が、誇らしげに歩き、来年には学校に通えるように してあげることです。 灌漑設備のない不毛な土地が、来春には農作物で青々となるようにすることです。 貧困の輪を断ち切って、貧しい人たちを救い、社会の底辺に生きる人たちに希望というプレゼントを与えること です。 ここにおられる皆さんは、多くを授けられた方々です。 そして今、皆さんに最高のプレゼントが与えられようとして います。 それは、授けられた才能と持ちうる力の限りを尽くして、 「世界へのプレゼント」 となることのできる1年で す。 可能性を現実にするために皆さんに与えられた時間は1年です。地区のクラブを導き、人びとの人生を変える ために与えられた時間は1年です。永遠に続くモニュメントを築くために与えられた時間は1年です。 このモニュ メントは、御影石や大理石に彫られるのではなく、今後何世代にもわたって人びとの人生と心に刻まれるもの です。 この機会は二度と訪れるません。今を逃さずに生かそうではありませんか。 世界へのプレゼントになりましょう。 ご清聴ありがとうございました。 4 2015年国際協議会 講演集 ロータリーブランドの世界的な影響 元RI会長 ウィリアム B. ボイド 私は、青少年奉仕団体に所属した経験がありましたので、人を助けることの満足感を知っていました。 ロータリ ーに入会したかった私は、 ドアを叩いて 「入れてください」 と叫びましたが、私の職業分類は上司に取られてしま っていたので、彼の転勤を待つしかありませんでした。 クラブの会員は地元のリーダーたちであり、 その評判か ら私も多くの方を知っていました。仲間になれることを誇りに思うとともに、入会するのは恐れ多いという気持ち もありました。 しかし、会員たちは私と同じ価値観を持っていました。 プロジェクトでほかのクラブと協力し、友人の輪が広がりました。間もなく、南太平洋地域のクラブとも協力する ようになり、世界観が広がりました。 さらに、 ロータリー代表として地元の他団体と交わり、経験も広がりました。 ロータリーはこんなに特別な団体なのに、 なぜ人びとは私のようにドアを叩かないのか、理解できませんでし た。 ロータリーには人生を変える力があることを私は知っていました。 ロータリーが私の人生を変えたからです。 ほかの人たちがなぜそれを理解できないのか、不思議でなりませんでした。 あれから何年も経って気づいたのは、私たちロータリアンは、考えが甘く、少し傲慢でさえあったかもしれない、 と いうことです。 プロジェクトでロータリーの歯車を表示すれば、当然、 ロータリーとは何か、 ロータリーは何をする 団体なのかを地元の人たちに分かってもらえると高をくくっていたのです。地域社会のほとんどの人が「ロータ リー」 という名を聞いたことがない、 あるいは、聞いたことがあったとしても何をする団体なのか知らないという結 果が、調査で繰り返し出ていたにもかかわらず、 です。 なぜロータリーの話題が人びとに届かないのか。 その理由を探るために、 ある日、理事会はプロを雇うことを決 定し、 さらに、 この問題に取り組むロータリアンのグループを任命しました。大規模な調査の結果、 ロータリーの 価値観は今の時代にも重要であり、社会の人びとが欲しているものであることが確認されました。ロータリー 独自の理念が問題ではなかったのです。問題は、 ロータリーが人びとを混乱させていたことでした。長年にわた って120以上のロゴが蓄積し、12種類もの使命声明が飛び交う中で、一体どうやって明確な焦点を定めるこ とができるでしょうか。 ロータリーに内在する何かが悪いわけではありません。 しかし、 ロータリーを人びとに提示する方法を改める必 要がありました。 ロータリーのメッセージを明瞭で分かりやすく提示する必要があったのです。私たちはもっぱら 内輪だけでコミュニケーションをしてきましたが、 ほかの人たちも共感できるメッセージを発信し、 ロータリーが地 域社会で行っていることをしっかりと伝える必要があるのです。 ロータリーへの入会理由は、 まず第一に地域社会への貢献、次に、 自分と同じ行動志向の人たちとの交流 による人間関係であることが分かっています。 それなら、私たちが発信するメッセージはどうあるべきでしょうか。 「ロータリーに入会し、気の合う仲間とともに、 より良い地域社会をつくろう」。 これは、魅力的な謳い文句でし ょう。 どんなセールスマンも、顧客へのメリットを打ち出すようアドバイスするはずです。 ロータリアンは、社会的、倫理的に責任あるリーダーであり、互いに、 そして地域社会と強い関係を築いていま す。 そのことを、 しっかりと伝える必要があるのです。 ロータリーが何であり、何をする団体なのかを言い表した、企業でいう 「エッセンスステートメント」 となる文章が 作成されました。 これは、 モットーというよりは、確認リストのようなものです。 2015年国際協議会 講演集 5 「ロータリーでは、 さまざまな国、文化、職業のリーダーが結び付き、 アイデアを広げながら、世界中の地域社 会のために行動しています」 ロータリアンではない人と話すとき、 これらの真実を織り交ぜながら、 なぜロータリーが他団体と異なるのかを 説明する必要があります。私たちは単なる奉仕クラブではありませんし、単なる人道的支援団体でもありませ ん。 ロータリーはほかのどのカテゴリーにも該当せず、 それ自体が唯一無二のカテゴリーを形づくっているので す。 考えてみてください。 ロータリアンは、 異なる視点で物事を見ます。職業分類の下で、 さまざまな職業をもつ会員 が集まっています。 このような多様な視点による知恵を生かして、問題や課題に取り組むのがロータリーです。 ロータリアンは、異なるアプローチで課題に取り組みます。 リーダーとして高いレベルを目指し、経験とスキルを 奉仕に生かしているのがロータリーです。 私たちには熱意と粘り強さがあります。 クラブに目を向ければ熱心な会員がいますし、 ポリオ撲滅に粘り強く取 り組んでいます。 4つ目の例は、 ロータリーの存在理由として一番深く考えさせられるものです。 それは、 「地域社会への貢献」 で す。私たちは、世界の34,000以上の地域社会で奉仕活動を行っています。あるクラブが海外で奉仕活動を すれば、現地のクラブも地元地域に奉仕できます。全世界の地域社会で奉仕する……これは、驚くべきコン セプトです。 ロータリーには数々の素晴らしいストーリーと無限の可能性があるにもかかわらず、 なぜ入会希望者が殺到し ないのでしょうか。今日の午後、 ロータリーのメッセージがどのようなものであるべきか、 それをどう伝えるかにつ いて、 アイデアを話し合う機会があります。 それぞれの地域でのロータリーの可能性は、皆さんがメッセージをう まく伝えられるかどうかにかかっています。 こうしたことに真剣に取り組んでいただけることを願っていますが、問題は地域社会のレベルにあるということ も申し上げたいと思います。 ロータリーブランドの世界的影響がもたらした成果について考えてみてください。 地域社会の人びとの多くがロータリーを知らないということは、 ロータリーの発展にとって重大な問題ですが、 その一方で、 ロータリーの活動を現場で見ている他団体は、 ロータリーが何をする団体で、歯車のマークが何 を意味するかを理解しています。 「水と衛生のロータリアン行動グループ」 (WASRAG) 委員長としての私の経験を基に、 ロータリーブランド の直接の結果ともいえる現在の活動例をいくつかご紹介します。 「シルク・ ドゥ・ソレイユ」の創設者であるギー・ラリベルテ氏が設立した団体「One Drop Foundation」 から当 グループに連絡があり、 マリでの水・衛生プロジェクトで協力したいという申し出がありました。マリは、世界でも 最も貧しい国の一つです。One Drop Foundationが500万ドルを拠出し、私たちが今後5年間に同額を上 乗せします。ほかのすべてのロータリープロジェクトと同様、 まずはクラブや地区と協力し、 マリ国内のプロジェク トを実施地を選びました。 フィジーでは、僻地に住む人びとに水を提供するためにロータリアンが「フィジー水財団」 を設立しました。 この 活動では、330万ドルが費やされ、既に65,000人以上の生活が改善されました。ニュージーランド政府、国際 的な携帯電話会社であるボーダフォン、 オーストラリア最大の銀行であるウエストパック銀行、地元企業などが 主な後援者となっています。 これらの企業や政府が支援してくれたのは、 ロータリーがそのブランドに相応しい力をもっていると考えられて いるからです。 6 2015年国際協議会 講演集 メキシコ政府は、都市部の水道システムの改善に力を入れていますが、人口2,500人未満の小さな町や村 の行政支援にまで手が回らないことを懸念しています。 ロータリーの活動を知る同政府は、 ロータリー地区お よびWASRAGと提携し、小さな地域社会での水・衛生システムの改善にかかる費用の80%を政府が負担す ることに同意し、残り20%をロータリーが支援することとなりました。 この活動の開始にあたり、最も切迫したニ ーズを抱える地域社会5つにまずは対象を絞りましたが、80%という政府の負担は、 ロータリーに対する信頼 の証と言えます。 ウガンダでは、複数のクラブが合同で 「ウォータープラス」委員会を設置し、高額なグローバル補助金の効果 的な活動モデルを作成しました。 この委員会には、世界銀行の代表者や複数の支援組織が含まれており、 ウ ガンダ政府も協力しています。 ロータリーは、実績があり、従来の問題に新しい解決策をもたらすことのできる 団体だと見なされているのです。 米国の最大手企業の一つ、P&G (プロクター・アンド・ギャンブル) は、 「Wash in School (学校に衛生を) 」 プ ログラムでロータリーや他団体と協力しています。 このプログラムに必要な資金の50%とプロジェクトマネジャ ーの給与を同社が負担し、 ロータリーが25%を負担しています。私たちは、 ナイジェリア南部、 および他のアフ リカ2国にある数多くの学校で活動しています。 インド政府は、去る10月、5年間にわたる水・衛生プロジェクトを立ち上げましたが、開始にあたり、首相自らが ロータリーの名に言及しました。 その後、省庁から、 ロータリーがこのキャンペーンに参加することを要請する書 簡が届きました。 私が会長だった年度に目にした素晴らしいロータリープロジェクトの一つに、 2004年の津波の後の学校再建 プロジェクトがあります。 このプロジェクトは、 ラビンドラン氏 (現会長エレクト) 率いる委員会の主導によるもの で、 スタンダードチャータード銀行からの100万ドルの寄付がきっかけとなって始まりました。同銀行は、数ある ほかの救援団体に寄付することもできたはずですが、 ロータリーを選びました。 これもロータリーブランドの力で す。 大きな意味でのロータリーブランドについてご紹介しましたが、個人的な思いが含まれることもあります。妻ロ ーナと私がフィリピンで出会ったインダイ・ミハレスさんは、子どもの頃にポリオに感染しましたが、 その後回復 し、1990年代には事業を経営し、 ロータリアンとなって、家族と幸せに暮らしていました。 しかし、 あるとき足に 痛みを覚えた彼女は、医師から 「ポリオ後症候群」 と診断され、残りの人生を車いす生活で送ることになると 宣告されました。自宅に戻った彼女は、寝室に閉じこもり、慰めようとする家族に怒鳴り散らし、 「なぜ自分がこ んな目にあうのか。不公平じゃないか」 と何度も問いました。 しかし、 ある日、神様がキャンドルを贈ってくれ、 それ がロータリーの歯車の形をしていた言うのです。寝室から出てきた彼女は、家族と和解し、 センテニアル・ケソ ンシティ ・ロータリークラブの創立会長となって、後に3度もガバナー補佐を務めました。 「神様がキャンドルを贈 ってくれた。 それはロータリーの歯車の形をしていた」 という彼女の言葉を、私は決して忘れません。 先日、溜まりに溜まったロータリーの写真をアルバムに貼りながら、考えました。私のような小国ニュージーラン ドの一市民が、一体どうやって、 コフィー・アナンや潘基文、 ビル・ゲイツ、一国の大統領、 さまざまな国際組織 のトップリーダーと会う機会に恵まれたのか。 ロータリアンだったからこそこのような機会に恵まれたことに、謙 虚さと誇りを覚えました。 「ロータリアンだったから」。 それ以外に理由はないのです。 2015年国際協議会 講演集 7 ロータリーの会員増強 RI会長 ゲイリー C.K. ホァン ニーハオ! サンディエゴに、 ようこそいらっしゃいました。サンディエゴは、寒くて雪の多いエバンストンとは大違いで、 いつも 素晴らしい天気です。 この素晴らしい気候のサンディエゴを国際協議会の開催地として選んだのは、一つに、 皆さまがガバナー年度に向けて幸先の良いスタートを切れるようにとの思いがあるからです。 しかし、 より重要なのは、サンディエゴが、 ロータリーが強い存在感を示している街だということです。サン ディエゴ・ロータリークラブのホームページを見ると、 サンディエゴの美しい夜景の写真とともに、 「 We are Everywhere」 (ロータリーはいたるところに) というキャッチフレーズが目に付きます。 ロータリーの影響力と強さ を端的に表現したこのキャッチフレーズを、私は気に入っています。 私はこの2年半、世界中を旅してロータリアンに会い、 ロータリーのプロジェクトを見てきました。訪問国が米国 であれ、 デンマークであれ、 ナイジェリアであれ、 ペルーであれ、 またその街が大都市であれ、小さな町であれ、 ロ ータリーは確かに、 いたるところにあります。辺地でさえ、校舎や水車に表示されたロータリーのロゴから、 ロータ リーの存在を感じ取ることができます。 世界206の国と地域に120万人の会員を擁するロータリーは、 いたるところに存在していると言えます。 ロータ リーを影響力のある、 力強い団体にしているのは、 その会員です。ですから、 ロータリーの力を維持するには、 す べての次期ロータリーリーダーが、会員の勧誘と維持を優先しなければなりません。本日は、 このことについて 皆さまにお話しいたします。 まず、私見をいくつか申し上げたいと思います。 第1に、 ロータリーの中核をなしている会員を維持し、 また拡大することを、皆さまにお願いいたします。 ご存知と は思いますが、 ロータリアンの7割は50歳以上で、多くのロータリアンは既に現役から退いた方々です。 50歳以上の方は、若い方と比べて、資力があり、 ビジネス界や地域社会での知り合いも多く、地域社会への 恩返しという点では意欲と寛大な心をもち、賢く、経験豊かでもあります。すなわち、最も熱意のある、 いわばロ ータリーの屋台骨です。 ですからぜひ、 この人たちに常に目を向け、強く入会に誘ってください。私たちはロータリーとして、 またロータリ アンとして、 この現実を受け入れ、私たちの強みを最大限に発揮していく必要があります。 そして、50歳以上の会員を屋台骨として、若い会員の勧誘にも力を入れてください。 これは重要な点です。活 力とフレッシュなものの見方をもった若い会員は、 ロータリーの未来をかたちづくる人たちですから、彼らに目を 向けることは極めて重要なことです。 第2に、女性、特に退職した女性に、 ロータリアン会員となっていただきたいと思います。中国では、 「天の半分 は女性が支えている」 とよく言います。私の家族では間違いなくそうでした。私は、強い女性が6人いる家庭で 育ちました。今は96歳になる母と、5人の姉妹ですが、 うちでは間違いなく、女性が天の半分以上を支えてい ます。 ロータリーで女性が重要となることは、 ロータリーリーダーである皆さまにもご賛同いただけるでしょう。去る10 月、行動する12人の女性ロータリアンを称えて、 ホワイトハウスでロータリーデーが開かれ、 その女性たちから、 8 2015年国際協議会 講演集 感動的な話を聞かせていただきました。 そこには、戦争で心身に傷を負って戻ってきた軍人の支援、 ビジネス 界でリーダーとなろうとしている女性たちへの指導、医療保健が受けられない人たちへの援助、暴力に苦しむ 女性たちへのカウンセリング、学校でのボランティア活動などを通じて活躍している女性たちがいました。 インド で人身売買や未成年の結婚を防止したり、 ロシアで精神障害児たちに教育を提供したり、 アフリカや中南米 で医療を提供したりしている女性たちもいました。私は胸を打たれました。 ロータリアンの数は、 この数年間、世界で全体的に減少しています。 しかし、一つ明るい材料は、女性会員が 増えているということです。現在、 ロータリアンの5人に一人が女性です。世界で24万人の女性会員が、女性 ならではの観点をもたらし、 ロータリーを一層力強く、豊かなものにしています。 これをさらに進めていかなければ なりません。思いやりがあり、時間と労力を捧げる意欲的な女性たちを、地域社会で積極的に探しましょう。 さ らには、私たち自身の家族にもロータリーに入ってもらうよう働きかける必要があります。 私は、次のような経験があります。10月に第7360地区を訪問した時のこと、40歳にも満たない地区ガバナー であるジェイソン・ピアットさんにいろいろとお世話になりました。 その地区における例会からプロジェクト実施地 へと移動しながら、 すべてが予定通りに進むよう常に手はずを整え、傍らで私たちに気を配ってくれている女性 がいることに気が付きました。実はその女性は、 ジェイソンさんの母親のアンジェラさんでした。アンジェラさんは 長年、 ご主人がロータリアンであったころからロータリーの手伝いをしてきた人でした。 そのようにロータリーに尽 くしてきた人がロータリーに入会を勧められていなかったことに驚いた私は、 アンジェラさん、 そしてジェイソンさ んのお友達のエリザベスさんに、 「ロータリーに入りませんか」 と尋ねたのです。するとお二人はとても喜んで、 承知してくれました。 そればかりかお二人は、数クラブの取り合いになったということです。 私はこの数カ月間、 スウェーデンで最も歴史ある大学の学長や、 ペルーの第一副大統領など、 アンジェラさん らと同じく卓越した女性を数人、 自ら勧誘しました。 では、新会員の勧誘における的を絞ったら、 目標達成のために何をすればよいでしょうか。 私の経験から言いますと、 その答えは唯一つ、 「声をかけてみる」 ことです。時には、機会を見て声をかけるだけ で、入会してくれる人がいます。私は、新しい知り合いができた時や、 スピーチをしに招かれるたびに、 いつも声 をかけてみます。 それだけで、思いがけなく多くの優秀な人たちが喜んで入会してくれるものです。 私がカリフォルニアに出張した時のことです。 ロータリーのポリオ撲滅活動を称えるレセプションに、地元出身 のエド・ロイス下院議員が来て、 ロータリーを絶賛していました。 それに対して私が、 「なぜロータリーに入会しな いのですか」 と問うと、 「誰も声を掛けてくれなかったから」 だと言うのです。 そこで私が「では、 ぜひ入会してくだ さい」 と言って、私の襟ピンを差し上げると、 「分かりました」 と答えて、 その場で入会してくださいました。 この話を聞いて、 「その人は恐らく、失礼に当たらないように首を縦に振ってくれただけで、2度とロータリーの 会合には現れなかったのでは」 と考える方もいるかもしれませんが、 そんなことはありません。 その数週間後、 そ の地区のガバナーから私に電話があり、 「ゲイリーさん、 ロイス下院議員が会費を全額払ってくれましたよ」 と 連絡してきました。ですから皆さま、 ワシントンでロイスさんに会う機会があったら、 「ロイス議員」 と呼ばずに、 「ロ ータリアンのエド・ロイスさん」 と呼んであげてください。 このような例は、 ほかにもあります。ザンビアのルサカでは、副市長のムレンガ・サタさんに声をかけ、 この方も 入会してくれました。サタさんは現在、 市長さんだそうで、 いずれ大統領に立候補すると考えられているそうです。 トルコでは、 イスタンブール市長と会見しました。 その方が「20年前ローターアクターだったので、 ロータリーが 大好きです」 とおっしゃるので、私が「では、 なぜ入会しないのですか」 と聞くと、 やはり 「誰も声を掛けてくれなか ったから」 という答えが返ってきました。私は 「では、 ぜひ入会してください」 と言って、 その方にも私の襟ピンを差 し上げました。 2015年国際協議会 講演集 9 ローマでは、 イタリアの厚生大臣にお目にかかりました。その方は、若干39歳。イタリアで最も若い大臣で、 「公衆衛生に対するロータリーの貢献に感銘を受けている」 とおっしゃったので、 なぜ入会しないのか伺うと、 やはり答えは、 「誰も声を掛けてくれなかったから」 でした。 この調子で襟ピンを挙げていたら、私は襟ピンが何個あっても足りませんので、 ぜひ皆さまもお手伝いくださ い。 私は中国で生まれましたので、中国には思い入れがあります。去る9月には、中国での今後のロータリー拡大 計画を立て、上海で開かれた第2回ロータリー中国大会に出席しました。23カ国から280人のロータリアンが 出席し、中国で3番目のロータリークラブとして、東南部の都市、成都のロータリークラブが結成されるのを目 の当たりにしました。 そのほかにも、五つのインターアクトクラブと、二つのローターアクトクラブが結成されまし た。未来のロータリアンであるこれらの青少年たちは、中国で活発に活動しています。 私は、中国への拡大に高い目標を掲げているロータリーの理事会に感謝しております。理事会は6月の会合 で、中国で今後、十の新クラブを結成することを承認しました。中国のロータリアンは、理事会の期待に応える ことができる方々です。 ここで、 ロータリーが現在までに中国の五つの暫定クラブから加盟申請を受け、 その中 で、初の中国語クラブとなる上海西ロータリークラブが、5月21日をもって加盟する予定であることを、皆さまに ご報告いたします。 このクラブにはすでに35人の創立会員が集まっております。誠にうれしいことです。私は、 中国でのロータリー拡大によって、 ほかの国々でも意欲が高まることを願っています。 世界のどの地域社会でも、 ロータリアンになりたい方、入会を待っている方が多くいるはずです。にもかかわら ず、 きっと断わられるだろうと決め付けて、声をかけないことがあるものです。 「何か達成したいことがある時は、 一番多忙な人にお願いしろ」 という諺があります。逆に言えば、 「多くのことを手がける人ほど、 さらに多くのこと ができる」 という意味です。来年度は、皆さんにとって多忙な一年となりますので、 どうぞ、 ほかの多忙な人たち へのロータリー入会のお声がけを忘れないようにしていただきたいと思います。中にはもちろん、断わる人もい るでしょう。 しかし、 その人たちが、 ただ 「誰も声をかけてくれなかった」 ために、 ロータリアンにならないということ が、 あってはなりません。 ロックミュージシャンにアマンダ・パーマーという人がいます。 この人は、 自分の曲を無料で提供することで、多く のファンを勝ち取り、最終的に多くの利益を得ました。 「The Art of Asking」 (お願いの技法) という題名の本 を書き、彼女が出演しているビデオはインターネットで600万人に視聴されました。 そのパーマーさんがこう述べ ています。 「私は、人がやりたくないことをさせたことは、一度もありません。声をかけて、 その人と心のつながりを つくっただけです。つながれば、 その人はお願いを聞いてくれます」。パーマーさんは、声をかけることは無害であ り、逆に相手に対する信頼を示す行為だと考えます。私たちがパーマーさんから学ぶべきことは多いと思いま す。ぜひ、将来のロータリアンを信じ、心のつながりを築いて、 「ロータリアンになってくれませんか」 とお願いし てみましょう。 私たちは皆、 ロータリーを誇りに思い、世界で大きな、好ましい影響を与えたいと願っているはずです。 しかし、 願っているだけでは、偉業を成すことはできません。懸命に努力し、強いクラブを築くこと、 ロータリーを愛する会 員から成るロータリーであることが必要です。 ロータリーのルーツと価値観を再認識しましょう。 ろうそくを灯す時間とリソースのある人たちに注目しましょう。 一本のろうそくが放つ光は弱いかもしれませんが、地域社会の人びとが手をつなげば、 ロータリーは地域をより 明るく輝かせることができるはずです。 そうすることで、 「世界へのプレゼントになろう」 ではありませんか。 ご清聴ありがとうございました。 10 2015年国際協議会 講演集 会員増強におけるバランス: 入会、維持、新クラブ 元RI会長 カルヤン・バネルジー 今朝、 この素晴らしい会合に集まった皆さまを見て、私は驚きを禁じ得ません。世界210以上の国と地域から 来た535人を超える人びととその配偶者が一堂に会するこの協議会に、 皆さんも私と同じように少し圧倒され ているかもしれません。 会場ホテルのエレベーターに乗り込むと、見たこともないような衣装に身を包んだ人たちが、聴いたこともない 言語で会話している。 このような経験をするたびに、 ロータリーが真に奇跡であることを思わずにいられません。 私たちがここに集っている理由は、 皆同じです。 ロータリーを愛しているから、 ロータリーに寄与できることがある から、 そしてもっと貢献したいから、 ここに集っているのです。 しかし国際協議会で心に残ることは、私たちがクラブや地区ではあまり気に留めていない、 ロータリーの驚くべ き多様性、 そして、私たちの所属クラブや地区から世界に至るまで、 さまざまなレベルで友情を育む機会ではな いでしょうか。 ただ、 これらの共通認識にもかかわらず、 もし私が、 「ロータリーとは何ですか」 と皆さんに尋ねたら、 おそらく 540通りの答えが返ってくるでしょう。 「ロータリーとは何ですか」 と聞かれて、何と答えてよいかよくわからない時は、100年以上にわたりロータリー が強い団体でいられた理由を、答えとすることができると思います。ロータリーの中核的な価値観である、奉 仕、親睦、多様性、高潔性、 リーダーシップについて説明してあげましょう。 これらの価値観は、 ロータリーがこれまで一貫して活動の中心に置いてきたものです。34,000を上回るクラブ を通じて、高く、広く、 力強く枝を伸ばしてきた、 ロータリーという木の根源です。 リチャード・エバンズ元RI会長が よくおっしゃっていたように、生きとし生けるものは、 すべて成長しているのであれば、 ロータリーという巨大な木 は、今も成長していると言えるのかもしれません。 しかし、 なぜロータリーの会員数がほぼ20年間にわたり、停滞しているのでしょうか。2007年に122万人だっ た会員数は、2015年の今、118万人です。 それは、 アジア、 アフリカ、東ヨーロッパでの増加分が、南北アメリ カ、 ヨーロッパ、 オーストラリア、 日本での減少を、 ほぼ補ってきた結果です。 ということは、 アジアやアフリカで見られるように、地元で活発に奉仕活動を行っているクラブほど、新会員を引 き付けているのかもしれません。 ここで興味深い世界地図をご覧いただきましょう。緑色の上向きの矢印が表示されているのは、 ロータリー会 員が増えている地域 (アジア、 アフリカ、東ヨーロッパなど) 、 オレンジ色の下向きの矢印は、会員が減っている 地域を示しています。すなわち、減少傾向にある地域において地元での社会奉仕または国際奉仕プロジェク トにもっと力を入れれば、会員の増加を促進できるのではないかとういうことです。 これは、財団が近年導入し た新しい補助金モデルを活用すれば、 この方向に進むことは、比較的簡単でしょう。 そうすれば、世界全体とし て会員を増加することは可能だと思いますが、結果は数年たたなければ判らないと思います。 ただし、既に良い結果を生み始めていることがあります。 それは、地域によって異なる方法で会員増強に取り 2015年国際協議会 講演集 11 組む必要性の認識です。アジアにおける会員増強のニーズや方法は、 ヨーロッパやオーストラリアやアメリカ 大陸と異なります。特にアメリカ大陸では、北米と南米では、 ニーズと優先事項が異なりますし、米国内でも、 西部と中部・東部とでは、地域社会の人びとの生活・労働形態が異なるため、実践方法が一貫しているわけ ではありません。 そのため、異なった方法や手段を試みる例が増えています。 例えば、若い会員だけのクラブ、元ローターアクターやロータリー学友の集まり、Eクラブなどがあります。Eクラ ブでも、会員の所在国が複数にわたるため、例会をすべてインターネットで行うEクラブもあれば、会員が皆同 じ地域に住んでいて、例会を時々、 じかに顔を合わせて行うEクラブもあり、 このようなクラブのかたちは増えて います。 また、前回の規定審議会の決定に沿って、週一回より頻繁に、近隣地域で会場を変えながら例会を 開くクラブも増えてきました。 これは、今日、 フェイスブックやWhatsAppなどのアプリを通じて、親睦活動をできること、最近一般的になって いるいろいろな選択肢にロータリアンが気が付き始めていることを表しています。規定審議会は、少しずつ変 化に対応し始めているとはいえ、3年に1度のみ会合を開く、比較的古風で、保守的な機関です。 そこで理事 会は、 このような新しいオプションの試験的な実施を許可することで、変革を推進しているのです。 日本の第1、2、3ゾーンで今年度、会員数が好転していることも、 これが理由かもしれません。私は数カ月前 に、 日本の27歳のロータリアンと知り合いました。 その方はEクラブの会員で、 ロータリー会員としての経験をと ても楽しんでいる様子で、友人も多くできたようでした。 ロータリーへの愛着が強いこの国で、 とても大きな変化 が起こっているようです。 ロシア、 デンマーク、 スウェーデンでは、 ローターアクターが既に多くのロータリークラブを結成しています。 インド を含め東南アジア全体では、会員増加が続いています。 その理由の一つは、 自分の地域社会を改善するプ ロジェクトを実施する機会が得られること。 もう一つは、 それらの地域では3代、4代にわたって家族が近くに住 み、協力し合うのが伝統であり、 それがロータリー活動にも当てはめられていることです。 次に逆の例を見てみましょう。 西ヨーロッパ、英国、南米のクラブも、会員増強上の課題を抱えています。ヨーロッパではロータリークラブの 会員となるのが非常に名誉なことで、 ステータスシンボルでもあるため、本当に選ばれた人たちだけがロータリ アンとなれることが理由の一つかもしれません。若い会員候補者を探すことが難しい国々もあります。 しかしこ れらの地域では、会員維持率が非常に高いため、会員数は安定しており、会員維持が大きな問題となってい るアジアやそのほかの高度成長地域とは、 そこが異なっています。 地区にお帰りになったら、会員維持を、増加と同様の重要課題ととらえるよう、各クラブにお勧めください。アジ アでは時として、 クラブ会員の「家族」のような結束を重視しながらも、一人、 また一人と 「家族」 が離れていく のを傍観する傾向があるのかもしれません。 ヨーロッパではそれと反対に、人を 「家族」の一員に迎え入れるこ とに慎重な一方、一度迎え入れたら、離れていかないように心がける傾向があるのでしょう。いずれにしても、 現行を改めて見直し、変化を加えることを検討すべきでしょう。 ホァン会長が数週間前、 ガバナーとガバナーエレクトに配布した資料によりますと、以前の対照的な状況 が、本2014-15年度も続いているようです。 インドの地区にあるクラブでは、本年度、 これまでだけで会員が 9,425人増加しており、急成長が続いています。一方、西ヨーロッパの第11ゾーンと、第15,16ゾーンでは、 世界で唯一、本年度これまでのところ、会員が減少しています。 それ以外のすべてのゾーンでは、各70人から 400人の会員増加が見られています。 ご覧のように、 日本を含めアジア全体はなかなか健闘していますが、 カナダと南米は少し苦しい状況にありま す。米国全体は、本年度、会員数が多少増加しており、 いくつかの地区で減少しているものの、米国のゾーン は全体として、増加傾向にあるといっていいかもしれません。 12 2015年国際協議会 講演集 皆さま自身が行くにしても、 ガバナー補佐にお願いするにしても、 クラブに公式訪問をされる際、 また公式訪問 に限らずクラブを訪問される際は、 おそらく、 ロータリーにおける最重要課題である、 クラブ会員基盤と、 ロータ リー財団への寄付について、 お話しされることになると思います。 ロータリー財団への寄付は比較的好調です が、会員増強は、 ロータリーが新世紀に突入して以来、 ロータリーで最も注目を浴びてきた課題です。 これは私 見ですが、地域別会員増強計画、中核的価値観の重視、戦略計画への取り組みなど、過去数年内に始まっ た推進活動のおかげで、少なくとも前述の地域では、急速な減少を阻止することができたのではないかと思い ます。ただし、会員数が本当に安定し、 そして願わくは穏やかな増加傾向に転じるまでには、 もう少し努力が必 要だと考えられます。 地区、 ゾーン、国、文化圏によって、私たちローアリアンは、会員増強の異なる課題を抱えています。従って、世 界共通の最良の対策というものはなく、各地域に最も適した対策があるのみです。会員規定の文言はこれか らも世界共通かもしれませんが、 これらの規定の解釈と実施方法は、地域によって異なる場合があるかもしれ ません。 新会員を推薦することは、 ロータリアン全員の任務ですが、北米 (米国とカナダ) で最も大事な役割を担ってい るのは、 クラブ会長だと思います。 クラブ会長が、現会員にモチベーションを与えて、新会員を増やしてもらう重 大な責務を担っています。会長は、 クラブの管理者ではなく、毎週クラブを高めていく、 クラブのリーダーとなる 必要があり、 そのための計画を検討、作成、実施しなければなりません。 ガバナーエレクトの皆さま、 クラブ会長が優秀で、思いやりがあり、 自己犠牲を惜しまず、 目標達成を重視する 人であれば、会員は納得して協力してくれます。例えば、会員の半数に、年度中に新会員を推薦するようお願 いする。 そして、残りの会員には、家族や友人にクラブを招いて、先ほど申し上げたロータリーの中核的価値観 について知ってもらい、同時に、 ポリオの撲滅、識字率の向上、 きれいな水の提供、疾病予防に関するロータ リーの活動についても知ってもらう。 そういったことも、 できるのではないでしょうか。 いずれにしても、皆さまが重視していることに、 自分なりの方法で取り組んでいただきたいと思います。 クラブの 中には、若くして退職し、活力と熱意があり、往々にして60代前半の会員を募ることに力を入れているクラブも あります。確かにその方々は、 エネルギッシュで影響力があるようです。 ここ米国で私が参加した多地区合同 PETSでは、各クラブを 「VIPクラブ」 とすることを目標とし、達成に努力するよう、会長エレクトに呼びかけてい ました。 「VIP」 とは、会員であることの高い価値 (Value) 、 クラブのよいイメージ (Image) 、会員体験という 「製 品」の充実 (Product) の略です。 また、私の経験では、 クラブ会長が、 ラジオ、 テレビ、新聞、場合によってはフ ェイスブックなどのメディアを活用することで、会員増強にいい影響があるようです。 そして忘れてはならないのは、 フランク・デブリン元会長がよくおっしゃっていたように、 ロータリーの襟ピンを会 話のきっかけとすることです。 先ほど、会員であることの価値と、 クラブのイメージと、 クラブという 「製品」 について触れましたが、 それらを充実 させれば、必ず 「VIPクラブ」の名にふさわしいクラブが実現します。第6860地区、米国アラバマ州にあるバー ミンガム・ロータリークラブは、会員数611名。 しかも入会を待っている人たちが、300人ほどいます。 しかしクラ ブの会員数が多いから入会候補者が多く集まるのではありません。会員数が10人に満たないクラブでも、活 発に活動しているクラブがあります。 クラブが地元地域で行っている活動に対して、会員自身がいいイメージを 抱いていれば、 自ずとたくさんの会員候補者が集まるはずです。 これらのアイデアを、 ぜひいくつか試してみてください。 ご成功を祈ります。 2015年国際協議会 講演集 13 21世紀における会員組織 The Nexgen Group創設者 マイケル・マクイーン 温かくお迎えいただき、 ありがとうございます。 こうしてまたお話しする機会をいただき、誠に光栄です。 思い当たる方がいたら手を挙げてください:退屈なプレゼンテーションや自分と関連性のないプレゼンテーショ ンを最初から最後まで聞かされた経験のある方はおられますか?では、 そのようなプレゼンテーションをしたこと のある方はおられるでしょうか? 本日は、退屈で関連性のない話はしないようと心に決めてまいりました。 皆さんは、近年の世界の変わりようについて考えてみたことがあるでしょうか。私たちは今、 ダイナミックで面白 い時代に生きています。 ここでいくつかの事実をご紹介します。 • • • 昨日のこの時間以来、 インクトインに173,000人が加入しました。 これは、毎秒2人に相当します。 事実、 リンクトインの加入者数は、 アメリカの人口を上回っています。 最近の研究で、人が集中できる時間は平均7秒間であることが分かっています。 これを金魚が集中 できる時間と比較すると、人間は金魚よりも1秒短いことになります。 現在、世界における携帯電話所有者の数は、歯ブラシの所有者よりも多くなっています。 より多くの人がつながり、 より多くのことに注意しなければならず、 より忙しい今日の世界において、組織はどう すれば重要であり続けることができるでしょうか。 チャールズ・ダーウィンはかつて、生き残るのは強者でも賢者でもなく、最も変化に適応できる者だと述べまし た。 これは、生き物だけでなく、組織にも当てはまります。 この5年間、 リサーチャー兼ビジネスコンサルタントとしての仕事を通じて、私は、極めて重要なある問いを中心 に扱ってきました。 それは、 「存続と絶滅の分かれ目は何か」 という問いです。 実は最近、 ある本の執筆のために、500あまりの組織とブランドを調査し、 「時代に即しているダイナミックな組 織やブランドがある一方で、失墜して脇に追いやられている組織やブランドがあるのはなぜか」 を探ってみまし た。例えば、 レゴ (Lego) とメガノ (Meccano) 、 ボルボとサーブ (Saab) 、 アップルとデル、 といった具合です。 こ の調査で学んだことの多くは、 ロータリーの未来を考える際にも大いに示唆に富むものす。 本日は、時代に適応し続けているすべての組織に共通する3つの「習慣」 をご紹介したいと思います。 これか らも末永くクラブ、地区、 そしてロータリーという組織が時代に即していくには、 これらが極めて重要となります。 習慣1:常に「再調整(Re-calibrating)」を心がける 時代に即すための第一歩は、 「調節 (alignment) 」の一言に尽きます。 今後、 ロータリーが変化を取り入れるにあたってとても重要なのは、 ロータリーをロータリーたらしめている DNA、 つまり、 ロータリーの本質と存在理由を念頭に置いて変化することです。 14 2015年国際協議会 講演集 このことがどれだけ大切かは、 これを怠った組織がどうなるかを考えればお分かりいただけるでしょう。 例えば、 コダックは、 自らの存在理由を見失い、代わりに事業内容で自らを定義しようとしたときに、時代との関 連性を失い始めました。前世紀半ば、 コダックは 「思い出を保存するフイルムを販売する会社」 という存在理由 を忘れ、 自らを単なる 「フイルム製造会社」 と見なすようになったのです。 テクノロジーの変化に合わせて再調整していれば、 「どうしたらもっと自社のフイルムを買ってもらえるか」 と問う 代わりに、 「お客様がフイルムを使わずに思い出を保存できるようにするには、 どうすればよいか」 という賢明な 問いを立てていたでしょう。 そうすれば、 デジタル時代に押しつぶされずに、今ごろは業界を独占していたかもし れません。 ロータリーが組織として、 コダックが陥った罠にはまらないことが極めて重要です。 そのための最良の方法は、 「ロータリーのDNAは何か」 という問いへの答えを明確に理解することです。 今後、入会を促進する取り組みにおいて重要となるのは、決して変わらない価値観、優先事項、奉仕への献 身を絶対に見失わないことです。 ここで大切なのは 「時代に即すことと、妥協することは違う」 ということです。時代に即すためにDNAをあっさり と捨ててしまうような組織は、長続きしません。信じる土台がなければ、 たやすく流されてしまいます。 習慣2:変化する世界との関連性を保ち続けるために、時代やニーズの進化とともにやり方を「再設計(ReEngineering)」する 伝説的なCEOジャック・ウェルチは、 「組織の内部の変化が、外部の変化についていけなくなったとき、終わり はすぐそこに来ている」 と述べました。私たちは、世界の変化についていかなくてはなりません。 ウッドロウ・ウィルソン大統領はかつて、 「敵を作りたいと思うなら、何かを変えようとしてみなさい」 と冗談を言い ました。次期ガバナーである皆さんは、任期の終わりには、 この言葉の意味がきっと分かるでしょう。 変化が多くの人にとって厄介なものであることは、十分に理解できます。習慣に縛られやすいのが人間です。 しかし、 クラブで大事にしている伝統や手続きが、 ロータリーを時代はずれにしている場合もあり得ます。私た ちが当たり前で常識だと考えていることが、入会見込者にとってはなじまず、場合によっては不快にさえ感じさ せることもあります。 変化や革新はフレッシュな視点をもつ人たちから生まれるものであり、 こうした人たちこそが、 クラブと地区にと って最も貴重な財産です。最近入会したロータリアン、例会のゲストスピーカー、 あるいは、 ロータリアンでない にもかかわらず、入会式やロータリーの特別行事に義理がたく出席してくれる息子さんや娘さんたちは、皆、 フ レッシュな視点をもっています。 フレッシュな視点をもつ人たちは、 “型にはまらない考え方” ができます。 なぜなら、 その “型” がどんなものかさえ知 らないからです。彼らの最大の強みは、 “なぜ?” という疑問を感じられることです。 このような人たちは、 クラブや例会にやってきて、悪気もなく 「なんでこんなやり方をしているんですか?」 と尋ね てきます。実は、 この問いこそが、一番肝要なのです。私たちは単に過去を踏襲するだけで、 「なぜ」 をしばしば 忘れがちです。同じ 「型にはまったこと」 でも、理由があってそうするのと、単に過去を踏襲しているのとでは、微 妙ながら大きな違いがあります。問題は、 その違いに気づいていない人が大勢いることです。 最近、 フレッシュな視点が軍に革新をもたらすきっかけとなった、 ある事例を読みました。新米兵たちの基礎訓 練で、教官が大砲の使い方について説明しているときのことです。 2015年国際協議会 講演集 15 「弾を込めた後、8秒数えてから発射するように」 と教官は言いました。 教官が先に進もうとしたとき、新兵の一人が、軍隊では通常タブーとされている行動に出ました。手を挙げて質 問したのです。 「教官、 なぜ8秒待たなければならないんですか?」 明らかに面食らった教官は、 それには答えずに次の説明を続けました。 しかし、 その質問が頭から離れず、数日 後、 「8秒のルール」について同僚に聞いてみました。軍事史マニアだった同僚が調査をした結果、 「8秒のル ール」の由来が明らかになりました。昔は馬を使って前線に大砲を運んでおり、発射音で馬が怯えないよう大 砲から遠ざけるのに必要な時間が8秒だったのです。 ここ数十年、馬は使っていないにもかかわらず、 ルールだけが残ったというわけです。 おかしな話だと思われるかもしれませんが、実は私たちはロータリーでそれと同じことをしています。50年前や5 年前に目的があって定められたルールや手続きや伝統が、 もはやその目的がなくなったにもかかわらず、現在 も使い続けられているのです。 今後、新会員がクラブに入会し、悪気もなく次のように質問してくるでしょう : • • • • 例会の開始時になぜ鐘を鳴らすのか? なぜ毎回の例会で卓話があるのか? なぜクラブ会長はたすきをかけているのか? アフターファイブのコーヒーやワインで簡単に済ませられるのに、 なぜわざわざ食事をしながら例会を するのか? もちろん、 これらの伝統自体が悪いわけではありません。 しかし同様に、 それが必勝法だと思い込む罠にはまっ てはなりません。結局、成功したと思った次の瞬間には、過去のものとなってしまうのです。 問題は、 どんな変化であれ抵抗するクラブにどう対処するかです。 そういうクラブに、皆さんも心当たりがあるで しょう。 これについては、皆さんの不安を多少和らげるために私から申し上げられることは、 「 死者を蘇らせるよ りも、生むほうが楽」 ということです。やる気のない人に無理強いするよりも、 エネルギッシュで新鮮な考え方が できる人たちの新クラブを作り、何が可能かを見本となって示してもらうことです。私は先週、最近設立された サンフランシスコ・イブニング・ロータリークラブを訪問する機会があり、 これが実践されているのを目にしました。 とても良い刺激になりました。 習慣3:入会見込者たちの変化に応じて、ロータリーブランドと価値命題の「位置調整(Re-Positioning)」 をする 以前に私の話をお聴きくださったことのある方はご存知だと思いますか、 ここ数年の私の仕事の大半は、組織 がいかにして若い世代、 しばしば「Y世代」 と呼ばれる世代の巻き込みを図れるかが中心となっています。 ダイナミックなこの若い世代は、会員増強という点でロータリーに大きな機会をもたらしています。彼らはネット ワークを築く達人であり、一般に考えられているよりも、市民としての義務に対する強い意識をもっています。 さ らに、現在の世界人口の半分が30歳未満であることを考えれば、 この層は非常に大きな人材の宝庫です。 私は最近、若い会員の巻き込みをどう図るかについて、 クラブ向けのDVD2枚組みセットを編纂しました。多く のクラブにこのDVDをご利用いただいており、 とても有用なフィードバックをいただいています。 参加してもらいたいのが若い世代であれ、地元のほかの人たちであれ、極めて重要となるのが、状況に合わせ て自らの位置づけを調整することです。 16 2015年国際協議会 講演集 法人のお客様と仕事をする際、私は、 その企業の位置づけをどう決めるかを判断するために、一連の質問を 尋ねることにしています。数カ月前、 クラブの位置づけを調整することについて、 この7つの質問を含んだ記事 をロータリークラブ用に執筆しました。関心のある方は記事をお送りしますので、休憩中に名刺をお渡しいただ くか、 Eメールをお送りください。 この記事をぜひクラブにも転送してください。 変化と改革というテーマを考える際に、 セーリング (帆走) から学べることが多いと思います。特にここサンディ エゴではぴったりの喩えのように思われます。 セーリングで一番大切なスキルは、向かい風で前に進むことだと聞いたことがあります。簡単ではなく、 ちょっと した技が必要だそうですが、 セーリングをする人なら誰もが時折必要とするそうです。 変化は、各方向から吹き付けてくる向かい風に喩えることもでき、次年度にロータリーのリーダーとなる皆さん にとって、 これはとても良い喩えだと思います。 セーリングをする方はご存知のように、向かい風で前進する唯一の方法は、 タッキング、 つまり、風に逆らわず に、風を利用することです。 これこそが、私たちが向き合う課題と機会です。風向きを変えることはできませんが、帆の位置を調整すること はできます。 冒頭でご紹介したダーウィンの言葉を繰り返すかのように、 ロータリー創始者ポール・ハリスは、何十年も前、 今の時代にかつてないほど重要と思われる言葉を私たちに残しています。 「ロータリーがしかるべき運命を切り 開くには、常に進化し、時には革命的にならなければならない」 ロータリーという素晴らしい組織の舵を取っていく皆さんに、今日、私からもこれと同じことをお願いしたいと思 います。皆さんは、 クラブと地区が切実に必要とする進歩的リーダー、 ひいては革命的リーダーとなりますか?そ うなっていただけることを心から望んでいます。なぜなら、間違いなく、 ロータリーの未来はその点にかかってい るからです。 2015年国際協議会 講演集 17 ロータリー職員からの支援 RI事務総長 ジョン・ヒューコ こんにちは。 本日は、 ガバナーエレクトの皆さまにお話ができることを心から光栄に思います。 皆さまにとって、国際協議会が学びとインスピレーションの機会となると同様に、私たち国際ロータリー職員に とりましても、 ガバナーエレクトから多くの学びとインスピレーションを得るまたとない機会となります。米国エバ ンストンにある国際ロータリー本部と世界各地の国際事務局は、世界34,000のクラブの強化と、会員120 万人のサポートという共通の目標の下、 クラブが力を合わせて多くの活動に取り組めるよう、役立つツールを 作成し、補助金を管理するほか、情報、交流の機会、 その他さまざまなリソースを提供しています。 また私たちは、世界中のゾーン、地区、 クラブの会員傾向と財務の安定性に関する包括的な情報を管理して おり、世界レベルでのロータリーの影響力を強め、地元と海外でのロータリー活動の情報基盤を提供するた めに戦略的分析を行っています。 国際協議会は、 このような事務局によるサポートを最大限にご提供し、皆さまのご活動や地区で直面している 課題とその対応について、私たちの認識を深める機会となります。 また、事務局で作成したツールがどのように 使用されているかを把握し、 これらをさらに改善するための方法を話し合う機会ともなります。私たちの成すべき ことは、知識と熱意あふれる会員である皆さまの目線で、 “活動している “ロータリーを捉えることです。 2014年、 ロータリーでは多くのことが達成されました。 そのいくつかを、皆さまにご紹介いたします。 第一にお伝えすべきは、 ポリオ撲滅活動の前進です。ハミッド・ジャファリ氏からお話しいただいたとおり、 アフリ カでは、昨年8月からポリオ感染の報告が出ていません。 確かに、 この前進には不安要素もあり、活動が後退する可能性もあることは、皆さまにもご理解いただいてい ると思います。 しかし、 それでもなお、 ポリオ撲滅活動において皆さまの活動が生み出す影響は、言葉で表現で きないほど大きなものです。一度ポリオが撲滅されれば、人類がこの惑星に暮らす限り、 その恩恵は永久的に 続きます。私は、 そのような偉業を達成しようとしている団体に関与できることを、 日々誇りに感じています。 この誇りは、 ロータリーでの達成のみに起因するものではありません。現在アフリカでポリオ感染が抑制されて いること、 インドでポリオフリーが認定されたこと、 そしてポリオが常在する一部の国を除く世界中でポリオフリ ーとなっていることは、 いずれも誇りとできることです。世界ポリオ撲滅推進活動 (GPEI) を通じた過去25年間 に及ぶ活動規模は、信じられないほど大きなものです。 現在までに、実に巨額の資金がロータリーを通じてポリオ撲滅活動に投入されました。 しかし、 このような資金 的貢献は、 ロータリーを物語るストーリーのごく一部でしかありません。 これまでに私たちが取り組み、今後も力 を注いでいくべきことに、 アドボカシー (支援の呼びかけ) の取り組みがあります。私たちは、人びとにポリオへ の関心をもってもらうために、 ニュースを通じてポリオを伝え広めてきたほか、政府に資金援助を要請し、援助 の約束が守られるよう呼びかけを継続してきました。 18 2015年国際協議会 講演集 また、資金が効果的に活用されるよう細心の注意を払いながら、 リソースを拡充するためのパートナーシップを 提携してきました。昨今のビル&メリンダ・ゲイツ財団とのパートナーシップでは、5年間の枠組みでロータリーか らの寄付に対して2倍の額がゲイツ財団から上乗せされ、最大で5億2,500万ドルの資金をポリオ撲滅活動 に充当することが可能になります (上乗せの対象となる寄付額は毎年3,500万ドルまで) 。 このパートナーシッ プにおいて、 ロータリーは2年間続けて最大限の上乗せが可能となる寄付を達成しており、各年に、 ゲイツ財 団から7,000万ドルの寄付が行われました。 さらに、付随的な恩恵として、 ポリオ撲滅活動を通じて世界各地に築かれた保健設備・システムは、 その他の 保健問題への取り組みにも活用でき、 ポリオと闘うための実験室、運営システム、 データ、専門知識も、 マラリ ア、 はしか、 エボラといったほかの疾病対策に応用できます。ポリオ撲滅活動は、保健の取り組みにおける成 功例であり、模範となるべきものです。 だからこそ、私たちはあきらめてはならないのです。ポリオ感染のない状態を継続し、2018年にポリオ撲滅を 宣言できるよう、 目標からそれずに活動を続けていく必要があります。 世界的に見て、 ロータリー活動の量的な面だけでなく、 活動の質に対する認識も高まっています。2014年、 ロ ータリー財団は、米国拠点の非営利団体を格付けするCharity Navigatorより、4つ星の最高評価を受けま した。 ロータリーでは、 ファンドレイジング (寄付推進) に力を入れるかたわら、 ロータリアンからの寄付が末永い 変化を生む活動に活用されるよう資金管理を徹底しており、寄付額に対する財団運営費の割合は、年々低く なっています。 このような運営が可能となるのは、 ボランティアや地域社会から得られる専門知識と、 ロータリ ーのネットワークを最大限に活用しているからです。 過去2年間、 ロータリーにおいて、当初は 「未来の夢」 と呼ばれていた新しい補助金モデルが全世界に導入さ れたことを筆頭に、 さまざまな取り組みが実施されました。 これらの取り組みには、 “ロータリーブランド” を強化す る取り組みや新しいビジュアルアイデンティティの導入のほか、 ロータリークラブ・セントラル、 ロータリーショー ケース、 アイデア応援サイトと連結したロータリーウェブサイトの一新や、 ソーシャルメディアの幅広い活用が含 まれます。 また最近では、 クラブ請求書の導入が決定されました。 これらの取り組みはいずれも、 ロータリアンに よる活動を促進し、奉仕の第2世紀におけるロータリーの発展を可能とするものです。 これらは、単に導入して満足するためのものではありません。 これらを活用し、 さらなる発展の土台とすれば、私 たちたちは、 より多くのパートナーシップを提携し、活動の規模を拡大し、政府の関心を引き、支援の裾野を広 げ、会員を増やすことが可能となります。一つの成功がさらなる成功を呼び、 やがては、 ロータリー史に残る偉 業、 ポリオの撲滅を達成できるでしょう。 これまでの成果に満足し、歩みを止めるようなことがあってはなりません。 ロータリーの第2世紀において、私た ち一人ひとりが自らに問うべきこと。 それは、私たちは組織として何をしなければならないかということ、 そして、 ロ ータリーの強みを生かしつつ、 これまでの成功の上に何を築いていくべきか、 ということです。私たちは、可能な 限り多くの人たちを支える最大限の善を尽くすために、 これまでの成功をどのように生かしていけるでしょうか。 この壇上から皆さま全員を前にしますと、世界34,000の地域で多くの成功を遂げているロータリーのすべて が見えてくるような気がいたします。 そして、皆さまにもお分かりいただけると思いますが、本日こうして皆さまにお会いして、 もう一つ、見えてきたこと があります。 それは、私たちが実現できるロータリーとしてのあるべき姿です。 ロータリーは素晴らしい団体です。 しかし、 さらに驚くべきことができるはずです。 ロータリーを通じて毎日、世界 中の人びとの生活に変化がもたらされています。 しかし、 もっと多くの、 さらに末永い変化を生み出す活動がで きるはずです。 2015年国際協議会 講演集 19 私たちは、 ロータリーで多くのことを実施しています。 しかし、 ロータリーの会員が今の2倍3倍と増え、 パートナ ー団体と協力してリソースを最大限に活用できれば、 どれほどの素晴らしい活動が実現可能となるでしょうか。 また、今こそ徹底して話し合い、 ロータリーのさらなる進展を阻んでいる課題に真摯に向き合うときだと皆で決 意できれば、 どれほどの成果が生まれるでしょうか。 では、私たちに何ができるか。 その答えは、質問と同様にシンプルなものです。私たちが心に決めたことであれ ば、何でもできます。 自分ならもっとできると、皆さんもお感じになっているかと思います。私たちが決めることは、私たちに 「できるこ と」 ではなく、 「意欲をもってやってみよう」 とすることです。皆さんは、成長を遂げるために、必要とされる変化に 取り組んでみようと思いますか。 また、末永いロータリーの成功という第一の優先事項を果たすために、伝統を 見直すことに前向きになれますか。 確かに、高い倫理基準、 クラブの多様性といった、時代を問わず普遍的に私たちの組織の根幹を築き、 ずっと 変えるべきではない一部の伝統もあります。 しかし、恩恵をもたらすよりむしろ、障害となってしまっているような 伝統もあります。 例えば、 リーダーが毎年交替する伝統を見てみましょう。明らかに強みもありますが、大きな弱点が一つありま す。新しい取り組みにおいて真の成果をもたらすには、5年~10年かけた継続的な努力が必要です。毎年、 ク ラブ、地区、 ゾーン、国際レベルのガバナンスが変わり、 その年ごとに方向性が変わりますが、私たちには道を ジグザグに進んでいくような余裕はありません。 新しいリーダーが新しい目標を掲げる代わりに、5年か10年のサイクルを取り入れたと仮定して、 ロータリーは どんな組織になるかを想像してみましょう。 このサイクルでは、新しいリーダーが前任者のバトンをスムーズに受 け継ぎ、詳細かつ長期的な戦略計画に基づく目標をめざして活動します。 さらに、戦略的な焦点の一つとして、出席要件よりも参加を重視すると決めたら、 ロータリーはどんな組織にな るでしょうか。神聖化された伝統の一部を真剣に見つめ直し、 クラブが一番よいと思うやり方で運営するため の柔軟性をもたせる時期が来ているかもしれません。参加しやすいクラブをつくれば、 より多くの人にとってもっ と魅力的な組織になるのではないかと考えます。繰り返しますが、重要なのは出席ではなく参加です。 クラブや地区の会費構造を、視点を変えて考えてみてはどうでしょうか。国際ロータリーへの人頭分担金54ド ルがよく話題となりますが、 クラブ会費、地区会費、食費が大部分を占めるロータリアンの実際のコストと比べ れば、 これはスズメの涙です。 退会会員一人ひとりと、退会時に面談したらどうでしょうか。面談で得られた情報を基に、毎年10万人が退会 する要因を理解し、 それを変えるために努力したら、 どうなるでしょうか。 ローターアクトクラブを同等の存在と見て協力しあい、 もっと意義あるやり方でロータリークラブの活動に融合 させ、 またローターアクトの活動を支援するよりよい方法を見つけたらどうなるでしょうか。 ローターアクターは、 ま さにロータリーが必要とし、 ロータリーの将来の大部分を担う人たちです。彼らを失うわけにはいきませんが、現 実には、 ロータリークラブに入会してくるのはわずか5%。 ローターアクトのほとんどを失っているのです。 皆さまへのお願いは、 次年度、 ロータリーで可能なすべてに取り組もうと呼びかけることです。簡単で、 やりやす いこと、 これまでいつもやってきたことばかりではありません。慎重、前向き、長期的な変化を促すことです。 ロー タリーでの素晴しい伝統、 それは私たちがつくった伝統です。伝統をつくって実践してきましたが、私たち自身 が伝統に乗っ取られるべきではありません。 もはや目的を果たさなくなったのであれば、私たちがそれを変えられ るのです。 20 2015年国際協議会 講演集 地域社会とのかかわりを強めることも大切です。 ロータリー内での対話も重要ですが、 ロータリーの外の世界 に向けてコミュニケーションに力を入れる必要があります。地元地域で、 ロータリアン以外を対象としたロータリ ー行事をもっと積極的に実施すべきです。 ここで提言させていただくとしたら、私たちはロータリーがどのように 見られているかを厳しく見つめる必要があります。地元の人が入会したいと思うようなクラブになるには何が必 要か、考えてみましょう。 これが刺激、 そしてロードマップとなって、私たちを新しい方向に導いてくれるでしょう。 私たちは純粋に、 こう自問すべきです。 どのようなロータリーになりたいと願うか、 と。 この問いに正答も誤答も ありません。明らかに、現行のモデルは世界の多くの地域で機能しており、 そこで余計な手を加える必要はあり ません。 しかし、会員数が減少しているほかの地域、 つまり過去と同じ方法では私たちの「商品」 をもはや買っ てくれなくなった 「市場」 では、見直しが必要です。 また、私たち自身も変化に適応する心構えがないといけませ ん。今のままのロータリーに満足しているロータリアン、 自分のクラブの枠内にしか関心がないロータリアンが 大勢いることを、私もよく承知しています。 しかし、 ロータリアンがクラブや活動に打ち込むほど、 ロータリーでで きることを実感し、 さらなる活動意欲と関心をもって新しいやり方で多くを成し遂げたいと思うようになることを、 皆さまもよくご存知のことでしょう。 私の見果てぬ夢は、会員数が200~300万人となったロータリー。会員はあらゆる地域社会で活動し、地域 社会と結びつき、関係を築きます。 リーダーシップ、職業、個人、社会、教育、 その他の面で成長したい人に助 言を与えます。地元と世界の政府やNGOと手を組んで、貧困緩和、予防可能な疾病の撲滅、紛争の予防に 努めます。社会貢献をしたいと考える人が真っ先に思い浮かべ、一番話題となるのがロータリー。 それと同時 に、職業人が交流し、生涯にわたる友情を築き、 スキルや専門知識を伸ばせるのがロータリー。地域社会の 優秀な人材がクラブに集まり、 皆が自分の能力を最大限に引き出せるのがロータリー。 これが私の夢見るロー タリーです。 空想のように聞こえるかもしれません。確かに少し野心的で、 今の私たちの力を超えているかもしれません。 しかし、 ポリオ撲滅は不可能、野心的、私たちの力を超えていると思われたのは、 そう遠い昔のことではありま せん。 それでも私たちは活動を止めませんでした。 「目標が高すぎる」 と言われても、 すぐにあきらめなかったから です。 ロータリアンの根気強さを心強く思います。無理だと話す人に耳を貸さず、野心を持って懸命な活動を続けた 120万人のロータリアンのおかげで、 ポリオの感染をまぬがれた1,000万人の子どもたちも、 私と同じ思いでし ょう。 本日、私の講演の最後に、 ロータリーで最も古い伝統の一つをもって結びとしたいと思います。 これはずっと変 わらずにいてほしいと思う伝統の一つ、 ロータリーの素晴しき創設者、 ポール・ハリスの引用を紹介することで す。 何年も前に、 ハリスはこう記しました。 「ロータリーがしかるべき運命を切り開くには、常に進化し、時には革命 的にならなければなりません」。当時に的を射ていたこの言葉は、今日にも通じるものがあります。 皆さまは、世界へのプレゼントとなり、新年度、 そしてその先の将来も、 ロータリーがその運命を切り開いていく のを助けることとなります。私たちロータリー事務局は、 そんな皆さまを、可能な限りあらゆる方法でサポートいた します。私を含め、国際ロータリーのスタッフは、毎朝、 とても誇らしい思いで事務局に出勤します。 それは、 自 分の仕事が皆さまを支え、皆さまの活動が世界を変えていると実感しているからです。日々、一つひとつの地 域社会を変えているのです。 ご清聴、誠にありがとうございました。 2015年国際協議会 講演集 21 私自身への課題、皆さまへのお願い RI会長エレクト K.R. ラビンドラン 日曜の夜は、私たちの野心と理想についてお話ししました。 ロータリーにおける私たちの役割にも触れ、 「世界 へのプレゼントになろう」 と呼びかけました。 会長としての私の役割、地区ガバナーとしての皆さんの役割は、会員の意欲を引き出すことに限りません。 ロ ータリーが、 あらゆる面で、可能な限り最高のレベルで機能できるようにすることも私たちの役割です。今日は、 次年度に私たち全員が担う、組織管理者としてのこの重要な役割についてお話したいと思います。 まずは、皆さんが各自の職業に捧げているのと同じくらいの熱意と基準をもって、 ロータリーの組織運営にあた っていただくようお願いします。 私は自社のCEO (最高経営責任者) として、 あらゆる決定において、倫理を一切妥協することなく、株主に最 大の利益をもたらすことを目標としています。 ロータリーでも同じことが言えるのではないでしょうか。 ロータリーリーダーとしての行為や決定は、私たちが代表し、私たちに信頼を託してくれた会員のためのもので なければなりません。 ロータリーの外の世界で求められるのと同じくらいの効率、生産性を、 ロータリー内でも妥 協せずに追求する必要があります。 会長の成功は、 ガバナーの成功次第です。 また、 ガバナーの成功はクラブ会長の成功、 クラブ会長の成功は 個々のロータリアンの活動にかかっています。誰しも人の力を借りずに成功を収めることはできませんから、 こ れから皆さんにお話しすること、 お願いすることは、私自身にも当てはまります。 まず、会員、地域社会、 そして支援者や投資家にふさわしいロータリーの組織づくりが必要です。最初にお話 ししたいのは、 「 説明責任 (アカウンタビリティ)」についてです。本日私たちがここに集えるのは、 ロータリアン が払ってくれた会費のおかげです。次年度の出張やそのほかの経費も、 ロータリアンの会費で賄われます。 ロ ータリアンは、私を含むシニアリーダーの経費、職員の給与も支払っていることになります。ですからそのお金 に対する費用効果を求めるのは当然のことです。 これを念頭に、私は自己目標を立て、 この目標を達成する責任があります。 さらに、全理事のKPI(key performance indicators、 重要業績評価指標) も設定します。 来年度の理事会では、3カ月ごとに開かれる会合の初日に時間を割き、四半期の活動結果をじっくり検討す るつもりです。同様に、事務総長の業績も精査し、委員会の活動もしっかりと確認します。 ロータリー組織全体の目標は、会員増強であれ、財団寄付であれ、大きな目標を細分化し、地区レベルでの 達成をめざす必要があります。 ガバナーは、理事と協議して、地区独自の目標を決めてください。 さらに、 その目 標に関連する具体的な課題、例えば地区再編成、資金管理、青少年、選挙といった地域の問題について話 し合います。 ガバナーは、理事と話し合った目標をさらに細分化し、 クラブごとの内容に分けていきます。 全理事は、任期中、 ゾーン内の全地区を訪れ、 目標に向けた行動計画を話し合うよう求められています。事情 により難しい場合は、少なくとも、電話会議を行うこととなります。 皆さんへのお願いは、理事をご自宅に泊めたり、宿泊先を手配することで、理事訪問の費用負担にご協力い ただくことです。 ここで強調したいのは、理事は皆さんを支援するために訪れるのであり、地区を検査しに来る 22 2015年国際協議会 講演集 のではないという点です。理事の豊富な知識や経験を最大限に活用する方法を考えておくとよいでしょう。理 事は目標設定を助けるだけでなく、 その後の進捗を確認したり、地区のリーダー、後任のガバナーと会ってリー ダーシップチーム全体と協力し、地区が長期的に取り組むべき点が明確になるように支援します。 理事を通じて地域リーダー (RPIC、RC、EMGA、RRFC) とも協力できます。地域リーダープログラムにかかる 相当の費用も、会費で賄われています。 この「投資」 がよい「リターン」 を生むようにしなければなりません。 そし てこの「リターン」 は、会員数または財団寄付の増加、大口寄付、 メディア広報といった測定可能なかたちで 表れてこなければなりません。 ロータリー組織の成功、 すなわち、 リソースを活用して次年度の目標を達成する力は、理事、 コーディネーター、 地区ガバナーの協力にかかっています。理事と同じく、地域リーダーも皆さんを支援する立場にあります。 ガバ ナーの成功は地域リーダーによるところが大きく、 また地域リーダーの成功も地区ガバナーにかかっています。 密接な連携を深めるほど、 リソースが有効に活用され、全体の成果も格段に上がるのです。 優れた経営の基本的なコツの一つは、優秀な人材を集めて、彼らの仕事に必要なリソースと権限を与えてあ げることです。 ここで率直かつ明確に申し上げますと、人選においては、友人関係や義理を優先しないようお願いします。 ク ラブ内のトップの職業人や専門家を探してください。戦略計画、 コミュニケーション、財務など、特に専門技術 や知識が必要とされる分野で皆さんをサポートできる人を選んでください。 このお願いは、私自身にも当てはまります。会長としての大きな権限、 つまり任命をする力を、意識的かつ意図 的に放棄してしまわないようにすることです。 私が任命した重要職はすべて実績に基づくものです。協議会の研修リーダー、次期地域リーダーは、全世界 のロータリーシニアリーダーが特定した人たちで、独立チームが適性評価を行い、職員が過去の業績を調査 確認しました。つまり、彼らはロータリー世界の精鋭です。 財団の管理委員も同じ手法で選ばれています。いずれも、私が候補者を推薦したことはありませんし、選考委 員会のメンバーと話をしたこともありません。 会長代理をどのように選ぶか、皆さんご関心があることでしょう。 これについては、 まだ会長代理を務めたことが なく、私の設けた要件に最も見合う人を理事と元会長から推薦してもらう予定です。全体の15パーセントから 20パーセントは、私の裁量で、元会長、理事といったシニアリーダーの中から選びますが、 あくまで私の代理で すからこれについては特に異議は出ないことと思います。 現在、会長代理の業績を評価するためのオンラインツールを開発中です。 ツールが完成次第、 リンクと説明が クラブ会長に送られ、 クラブ会長または地区大会に出席したクラブ代表者がオンラインで評価を記入します。 これにより、会長代理についての正確なフィードバックを集めて、 フィードバックを提案者にも転送できるように なる予定です。 ビジネスを成功に導く秘訣の一つは、常に革新と成長の道を模索することです。 ロータリーでも同じアプロー チが必要です。 ロータリーとはどのような団体で何を行っているか自ら明確に認識し、 ロータリーの公共イメージ を向上させるため、 ロータリー活性化 (ブランディング) に多くのリソースを投じてきたことは皆さんもよくご存知 でしょう。 ロータリー活性化の取り組みでは、 ロータリーの現代的なロゴと歯車をプロがデザインしました。デザインで特 に配慮されたのは、一貫性があること、人目にとまって魅力的なものであることです。ぜひこの新しいデザイン を使い、地区内のクラブでも使用を奨励してください。見た目に対する個人的な印象はともあれ、皆さんのご 2015年国際協議会 講演集 23 協力をお願いいたします。国際協議会の研修中は、認められたデザインの使用例をスクリーン上で見ることが できます。いかに印象的かつ現代的で一貫されているか、実際に見て実感していただけることでしょう。 趣向やデザインに関しては、満場一致の合意は困難です。ほかの色がいい、 ほかのデザインがいいという人 が必ず出てくるものです。 しかしそうした討議の段階はもう終了しています。 この決定は皆さんの代表者が決め たものであり、今はそれに従って私たちが投資した 「プロダクト」 を使用し、最高の「リターン」 を追求するときで す。 ロータリーで開発され、 これからもっと活用すべきりソースはほかにもあります。事務局職員が皆さんに提供し ている、 ロータリーウェブサイト、 ロータリークラブ・セントラル、 その他のオンラインツールです。すべて、多くの時 間と熟考の産物であり、 これもまた私たちの投資です。開発され提供されたのには理由があります。会員が奉 仕活動を計画し、RIがデータを総合的に集計するのを助けるためです。今年は、新しいツールの活用法を学 ぶ参加型研修に丸一日を確保してあります。皆さんのPETSでも、 クラブ会長エレクトがこうしたツールの活用 法を十分に学べるよう、同様の研修を実施してください。 クラブの表彰もオンラインツールを使ってリアルタイ ムで照合が行われますから、 そのような研修がなければ、地区のクラブが非常に不利な立場に置かれる可能 性もあります。 ロータリーのブランド、 テクノロジーの分野では革新を重視してきました。会員増強の分野でも同じ姿勢が必 要です。 ここでは会員増強の重要性をあらためて強調することはしません。 それには、協議会のほかのセッショ ンで十分に時間をとってあります。常に挙げられる声として会員であることの価値をもっと高めるべきだというも のがあります。 「会員になる価値とは何か?」私たちはこの問いに答えなければなりません。 これを考慮して、7月1日から新しい特典カードが発行されます。 これは全会員に自動的に発行されるものです。 「カード」 と言いましたがこれは会員証ではなく、携帯端末用のアプリを使った新しいプログラムです (アンドロ イド、 アップルのいずれも利用可) 。 このアプリを使えば、世界各地で定評あるサービス、施設、組織から割引 や特典が受けられるようになります。特典だけを目当てに人々が入会することを期待しているわけではありませ んが、入会を既に検討している人やクラブ退会を考えている人にとって、少しでも会員であることの価値を高 めるものとなれば幸いです。入会を後押しするもの、退会を思いとどまらせるものとなればと考えています。世 界の全ロータリアン誰もがこの特典に賛成する、 またはそれを使用するとは考えがたいでしょう。 それも理解で きることです。 しかし、 その一方でこのようなプログラムを心待ちにしている人が大勢いることも事実です。 ここでお話しすべきもう一つのトピックとして、2015-16年度は規定審議会に参加する機会があります。 ご存 知の通り、審議会は3年に一度のみ開かれ、地区の声を世界レベルで表明する場となりますから、 ロータリア ンの関心が高い立法案について地区が十分研究する時間を設けるようにしてください。 またロータリーの民 主主義がどのように機能し、 ロータリーの規定がどのように決定されるかを会員に紹介する機会ともなります。 ロータリーの特徴は、多様な人々がリソースやスキルを持ち寄り、 それを奉仕に生かせる点です。 ただし、 それを 最大限に生かして最高の成果、最高の奉仕を実現するには、効率よく、透明性を保って、全身全霊で取り組 まなければなりません。 ロータリー会員にふさわしい、最高の組織をめざす必要があります。 皆さんへのお願いは、私自身への課題でもあります。変化を取り入れ、 ロータリーの第一線でよいガバナンス、 説明責任、効率性を図ることで、 ロータリーの模範を示し、 ガバナーからクラブへ、 そして末永い未来へ「プレゼ ント」 を贈りましょう。 私たちに与えられた時間は今です。 この機会は二度と訪れるものではありません。任務を着実にこなし、 このチ ャンスを逃すことなく、世界へのプレゼントになりましょう。 ご清聴ありがとうございました。 24 2015年国際協議会 講演集 2015-16年度財団目標 ロータリー財団管理委員長エレクト レイ・クリンギンスミス (『カウボーイ・ロジック』の音楽とともに登場) なかなかいい音楽だと思いませんか。 この陽気な音楽を聴くと、世界中で行われるロータリー会合の温かな雰 囲気が脳裏によみがえってきます。歌のタイトルは 『カウボーイ・ロジック』です。本日は、 いかに私がロータリー で幸運な男であるかをお話ししたいと思います。私は1950年代、小さな町で育ち、海外を旅行することなど、 ま ずありえないと感じていました。 しかし、素晴らしい書物を読んだり、映画を見たりすることで、夢は膨らんでいき ました。 そんなとき突然にも、 ロータリー奨学生として南アフリカのケープタウン大学に留学するチャンスがやっ てきたのです。私は、 アフリカ全土やほかの大陸から集まった5,000名もの学生と交流し、壮大な大地が広が るアフリカ南部で16,000マイルの旅をしたほか、 アフリカ4カ国の38クラブでスピーチを行い、実に多くのロ ータリアンと出会い、彼らから1961年当時の世界観について話を聞かせてもらいました。 あれは、人生を変え る以上の体験、私の人生を形づくる経験でした。すべては、 ロータリーの奨学生であったから可能となったので す。 ロータリー奨学生としての経験を通じて、私は、母国と留学先の地区ガバナーが、 この留学を実現してくれた のだということを実感しました。地区内のクラブから尊敬され、 歓迎される地区ガバナーは、 クラブに情報を提供 し、模範を示すことで会員の意欲を高める人たちです。私も、人生の早い段階でインスピレーションを受け、地 区ガバナーに就任いたしました。 かれこれ40年も前のことですが、 その役割は今日でも変わっていません。 クラ ブがリーダーとして信頼し、模範とするのが地区ガバナーです。皆さんが次年度の地区における成功の鍵を 握っていることは明らかです。ですから皆さんには、単なる地区の管理者ではなく、真のロータリーリーダーにな っていただきたいのです。 これは、皆さんのベストが求められる任務であることをご理解ください。 アフリカから帰国して間もなく、私は再び幸運に恵まれました。奨学金の提唱クラブとして親身にサポートして いただいたユニオンビル・ロータリークラブ (米国ミズーリ州) から入会のお誘いを受けたのです。私はすぐさま 誘いを受け入れ、 24歳でロータリアンになりました。1961年のあの日、 私は、 これから自分がロータリーでさまざ まな任務をこなすチャンスを与えられ、 ゆくゆくは財団管理委員長エレクトとしてこの壇上に立つ日が来るとは 夢にも思っていませんでした。私は本当に幸運な男です。すべては、 ロータリー奨学生としての経験が原点と なって実現したのです。 さてここで、皆さんがガバナーに就任される次年度に、 この幸運がどのようなストーリーにつながるのかとお感 じの方もいるでしょう。私は過去のどの管理委員長よりも財団への “借り” があり、 それだけ財団と密につながっ ているような気がいたします。手短に言えば、私はロータリー財団の “生けるプロダクト (生産品) ” です。 それだ けに私は、次年度を財団史上最高の年度とするために、 できることを全力で取り組む所存です。 「世界でよい ことをする」 ための基金を開始すべきだとアーチ・クランフ元RI会長が述べた1917年のロータリー大会に遡 る、長い歴史が財団にはあります。 その小さな始まりから、 どれだけ多くの成功が生まれてきたことでしょう。財 団は疑いなく、 クラブや地区が国際的な役割を担うための土台を提供し、世界の舞台に立つロータリーの真 のパートナーとして貢献してきました。 皆さんのガバナー年度は財団99年目にあたり、2016-17年度の100周年に向けた準備を整える一年となり ます。私は、財団の計画作りにおいて管理委員会が最近取り組んできた改善について皆さんにお伝えできる ことを光栄に感じています。管理委員会は、RI戦略計画に基づく4つの優先項目を承認し、 これらは今後3年 間、 ロータリーの継続性と効率の向上に役立てられます。 2015年国際協議会 講演集 25 これらの優先項目は、 この場で暗唱するには少し長すぎるのですが、 この本会議後に行われる討論グループ にて、優先項目が記されたものを皆さんにお渡しいたします。優先項目の一つは、当然、 「 永久にポリオを撲 滅する」 ことです。今週、 ハミッド・ジャファリ氏よりご説明いただいたとおり、 この恐ろしい病、 ポリオの撲滅は、 本当に “あと少し” に迫っています。 これまでのロータリーによる貢献が忘れられるようなことがあってはなりませ ん。私たちがポリオ撲滅活動を開始してから30年以上ものあいだ、断念したり、活動を止めたりすることは一 度もありませんでした。私たちは、 ポリオプラスの成果によって、 ロータリアンであることを強く誇りに感じること ができ、 これもまた幸運なことだと言えるでしょう。 管理委員会が採択した他3つの優先項目は、 いずれもRI戦略計画に基づいています。端的に言えば、財団を 強化し、人道的奉仕を増加させることに加え、 ポリオプラスの成果と 「世界でよいこと」 をしてきた100年の歴 史に特に注目して、財団のイメージと認識を高めることです。 また、 これらの優先項目は毎年、具体的な目標を基にその進捗が測定されることになります。 これらは、次年度 のガバナーとして皆さんが最大の関心を寄せるべき目標です。 なぜなら、年次目標のいくつかは地区レベルで 測定されるためです。 たとえば、 目標の一つは、 「Every Rotarian, Every Year」の寄付レベルに到達するク ラブの数を、全地区で少なくとも15%増やすことです。 これはガバナーにとって、 やりがいがあり、生産性の高 い目標となり、 かつ簡単に成果が測定できるものです。 ガバナーが時間と注意を向け、最初に模範を示せば、 すべての地区で目標を達成できるでしょう。 また、年次目標には、 グローバル補助金による奨学金の数を全地区で少なくとも1口増やすことも含まれてい ます。 これは、 とても重要な目標です。 まだ国際親善奨学金の数が少なかった頃、 それだけロータリアンも親身 になって奨学生の世話をし、奨学生もロータリーに深く関心を抱いたものですが、 グローバル補助金による新 しい奨学金は、 まさにこのような恩恵を再び取り戻す機会となるでしょう。 グローバル補助金の奨学金では、 6つの重点分野のいずれかを通じてより良い世界の構築を目指す大学院生を特定し、1年に限定せず、最長 4年間まで奨学生を支援できます。 また、国際親善奨学金よりもロータリーの目的に沿うかたちで支援でき、 ク ラブと地区のいずれも学生をサポートできます。ぜひグローバル補助金奨学金についてお調べいただき、皆さ んの地区で優秀な学生を探していただけますようお願いいたします。地区でサポートした学生が、 いずれ地区 ガバナーとなり、 さらに財団の管理委員長となる日が来ないとも限りません。 ほか複数の年次目標は、 それほど具体的な内容ではありませんが、 とても魅力的です。例えば、 ほかの人道的 プログラムにも同じようなアドボカシーを取り入れることを視野に、 ポリオ撲滅におけるロータリーによるアドボ カシーを見直す、 という目標があります。 この目標は、 ロータリーのブランド強化の取り組みでコンサルタントとな ったSiegel+Gale 社が提示した、 「仕事と社会的大義をつなげる」 という課題に応えるもので、私は特に関 心を寄せています。 とても興味深い課題だと思いませんか。 ロータリーが政府やNGOに対するポリオ撲滅アド ボカシーで大きな成果を挙げているのは、一つに、 ロータリー会員がビジネスや職業に精通した人たちで、 その 高潔性とビジネススキルのために尊敬を得ているからだと思います。 ロータリーは、 仕事と社会的大義をつなげ る上で、 世界最大の資質を備えた団体ということにならないでしょうか。私はそのように思います。皆さんも、 この 「仕事と社会的大義」 という言葉を胸に刻んでいただきたいと思います。 次に、財団プログラムについてより良く学ぶために、新しく効果的なタイプのコミュニケーション方法を例会で 活用することをクラブに奨励する、 という目標があります。皆さんは、 クラブによる新しいコミュニケーション方法 の活用をサポートする準備はできていますか。準備ができていないという方は、 コンピューターに詳しい友人を 見つけて、新しい方法についてクラブに伝えることを手伝ってもらう必要があります。 財団の従来の慣習から最も異なるのは、 クラブにおける会員増強の必要性について認識を高め、 周知を図る ための新しい財団イニシアチブを、少なくとも2つ立案する、 という財団目標でしょう。管理委員会は、 クラブが 「より大きく、豊かで、大胆な」 クラブにならない限り、 より大規模で持続可能な人道的奉仕プロジェクトを継 続していくことはできないとの認識に至りました。 ロータリーは数十年もの間、毎年3%の割合で安定した成長 26 2015年国際協議会 講演集 を遂げましたが、私たちは、未来においても力強くダイナミックであり続けるために、成長を続けていく必要があ ります。 ロータリーに入会すれば、 自らの人生と地域社会を豊かにし、 ロータリーのネットワークで自分の時間と 素質を最大限に活用して、 より良い世界をつくることが可能になります。財団はこのことを、 ロータリアンやそれ 以外の人により積極的に伝えていかなければなりません。 この度の私の話から、 ロータリー奨学生としての経験から始まる54年間のロータリー体験を通じて、私がいか に幸運な男であるかをお分かりいただけたかと思います。 この幸運はこれからも続きます。なぜなら、私が財団 委員長となる年度、 また、財団100周年直前の年度を通じて、多くの素晴らしいことが実現されるからです。 こ の年度にガバナーとなる皆さんにも幸運が巡ってくることでしょう。 また、 より重要なこととして、 ラビンドラン氏 がRI会長となる年度にガバナーとなるということも、運の巡り合わせではないでしょうか。彼は傑出したビジネス マンかつロータリーリーダーとして、皆さんの成功を、新たな高みへと導いてくださるでしょう。彼のような特別な 方と同じ年度にガバナーとなれることは、疑いようもなく幸運なことです。 地区ガバナーとは的確な仕事が求められる極めて重要なロータリー任務であるため、皆さんには、 ぜひ本気 でお取り組みいただきたいと思います。 ロータリーは世界最高峰に位置する民間の奉仕団体です。 その成功 は、地区内クラブに情報と熱意をもたらすガバナーの肩にかかっています。 ラビンドラン氏が呼びかけた 「世界へのプレゼントになろう」 という次年度テーマ。 とても素晴らしいテーマだと 思いませんか。深く、熱意を奮い起こすものでありながら、簡単に行動で示せるテーマです。 このテーマに真剣 に取り組み、世界へのプレゼントになるべくクラブや地区の意欲を高めることができれば、地元の地域社会、 さ らには世界中の地域社会を発展させることができるでしょう。 より良い世界をつくることにかけて、 ロータリーほ ど優れた団体はこの世にないという大きな誇りとモチベーションを胸に、 ロータリアンとしてのご活動にご尽力 いただきたいと思います。 2015年国際協議会 講演集 27 オーケストラの指揮者のように 元RI会長 クリフォード L. ダクターマン 来年度、皆さんは、地区内のクラブ会長、幹事、地区委員会を導くために、 どんなリーダーになろうとお思いでし ょうか。 インターネットで 「leadership (リーダーシップ) 」 という言葉を検索すると、400万件以上の検索結果が出てき ます。 しかし、 その中で、 ロータリー地区ガバナーのリーダーシップに触れたものはないでしょう。 リーダーシップ にはさまざまなスタイルがあります。 しかし、 ボランティアであるロータリアンの集まりを指導するリーダーとして皆 さんが担う仕事は、一般的なリーダー職とは異なります。地区ガバナーにふさわしいリーダーシップのスタイルと は、具体的にどのようなものでしょうか。 軍隊の曹長のように振舞うガバナーは長続きしないでしょう。 どんなにがんばっても、 クラブ会長が兵隊のよう に列を成して指令に従うことはないでしょう。 また、鞭で動物を調教するようなリーダーシップも、 まったく効果的とはいえません。 クラブ会長を思いのままに あやつることなどできません。 あるいは、 フットボールのコーチのように選手たちを怒鳴り散らして指導するのも、 ロータリーのガバナーにふさ わしいスタイルとは思えません。 ボランティアであるロータリアンのリーダーとして成功するために必要なスキルは、 特別なものであり、 個人的な スキルです。ボランティアを解雇することもできなければ、新しいクラブ会長を雇うこともできません。 長年、 ロータリーの優れたリーダーたちを見てわかったことは、彼らはオーケストラの指揮者のようなリーダーシ ップスキルと気質を備えているということです。オーケストラにさまざまな楽器、 スキル、才能を持つ演奏者が集 まっているように、 ロータリーでも地区やクラブのリーダーは、 さまざまな能力、関心、経験を備えた人びとです。 まず、 バイオリンやチェロなどの弦楽器のセクションがあります。 ロータリーでそれに相当するのは、地区にとっ て非常に重要な存在である一方、常に神経を使って課題に敏感に反応できるロータリアンが思い浮かびま す。彼らは、次年度のテーマを支える人びとです。 クラリネット、 オーボエ、 ファゴットなどの木管楽器は、幅広い音域を担います。 ロータリーで木管楽器に当たる のは、 リーダーシップチームの中でも物静かなメンバーで、 ありとあらゆる仕事を根気よく担当してくれる人たち です。 たまに、 キーキーという音が1~2回聞こえてくるかもしれません。 そして、 トランペット、 トロンボーン、 チューバなど金管楽器のセクションがあります。 このセクションは、 いつも大 声で明確に声が聞こえてくるロータリアンたちです。声が挙がれば、何か意見があるとすぐわかり、 それも明確 に表現されます。時々、 チューバのような人だと、 「バーン」 と力強い声が聞こえるだけかもしれません。 オーケストラの後部には、 ドラム、 シンバル、 ベルなどの打楽器が並びます。 どのロータリークラブにも、 こうした 打楽器のような会員がいるのではないでしょうか。つまり、 クラブや地区の定番プロジェクトで太鼓をたたいて 盛り上げたり、新しい会員や活動をドラムロールで盛大に迎え入れてくれる、 クラブに欠かせない会員です。 28 2015年国際協議会 講演集 どのオーケストラでも、裏方で働く人びとがいます。彼らは、舞台を設営し、椅子を並べ、照明や音響を担当し ます。 ロータリーの地区で言えば、仕事を着実にこなしてくれる堅実な会員です。常に準備ができていて、苦情 を言うことはほとんどありません。彼らは、会場監督やRI会長代理のエイドによく任命されます。 そしてもちろん、 コンサートでは実際の演奏が行われます。 この演奏こそが、何時間もの練習、終わりのないリ ハーサル、入念な準備の最終結果です。地区では、地区大会がこれに当たるでしょう。地区大会は、地区の 素晴らしさを実際に見てもらえる大舞台であり、次年度の一番大きな公演となります。 交響楽団には、音楽評論家がついてまわります。毎回の演奏について、意見や感想を述べます。ロータリー で、 こうした評論家に当たるのは、 パストガバナーでしょう。 オーケストラにさまざまな楽器や演奏家が参加するように、地区内でも多様なクラブがあることに気づくでしょ う。皆さんの役割は、 オーケストラの偉大な指揮者のように、 リーダーシップを発揮して、弦楽器、木管楽器、金 管楽器、打楽器を取りまとめ、美しく調和されたシンフォニーを奏でることです。 では、 どうしたらそれが可能でしょうか。2015-16年度に皆さまがガバナーとして、地区内のロータリアンをまと めるには、 どのようなリーダーシップやマネージメントのスキルが必要でしょうか。 オーケストラ指揮者のスキルに注目してみましょう。 1. 準備ができている。指揮者は、演奏する音楽についてよく知っています。楽譜をよく理解し、優れたリ ーダーになるために、毎日練習し、勉強を積みます。最高の演奏に欠かせない一つひとつの音符や 記号を把握しています。自分の準備も整えるとともに、演奏家の準備も整えます。 2. 耳を傾ける。偉大な指揮者は、常に耳を傾けます。少しでも音程が外れていればそれをキャッチできま す。音の組み合わせを聴いて、絶妙なコンビネーションを生み出すことができます。つまり、聴く耳を持 っています。 3. 分かちあう。オーケストラの指揮者は、 自らの経験を分かち合い、 自分の知識に基づいて指導を行い ます。 リーダーが音楽のテンポ、 ボリューム、 そして雰囲気を決めますが、 いつも分かち合いの心がなく てはなりません。 4. 励ます。偉大な指揮者は、音楽家を励まし、優れた演奏を称えます。全体の構成を見て、一部を強め たり、 ほかの部分を弱めたりします。演奏が終わると礼をしますが、常にオーケストラ全体に拍手を送 り、 ソロの演奏家を称えます。指揮者はすべての演奏家を励まし、称えるのです。 5. 発展を促す。演奏家は技能の高い順に着席しますが、上のレベルへ進めるよう、指揮者が演奏家を 育成します。 ご存知の通り、第一バイオリンの首席奏者がコンサートマスターとなり、指揮者に最も近 い席に座ります。各楽器ごとに演奏者の音楽的才能を伸ばし、高いレベルの演奏ができるよう指揮 者が指導します。 6. 演奏する。オーケストラの最終目的は、人びとに喜んでもらえる演奏をすることです。 さまざまに異なる 部分が一体となって、美しいコンサートを作り出します。指揮者のスキルが一般の目にとまるのは、 こ のときです。指揮者の下、 すべての演奏者が最高のコンサートを実現します。 興味深いことに、 オーケストラの指揮者が持つこれら6つのリーダーシップのスタイルは、 ロータリーの地区ガ バナーに求められるリーダーシップのスキルとほぼ同じです。 「優れたガバナーは入念に準備を整えている」 地区で、国際ロータリー会長の計画や目標を一番良く把握しているのは地区ガバナーです。ガバナーは、方 針、細則、 ロータリーの地区内外の慣習にもよく通じています。 ガバナーは、地区でリーダーシップに全力を注 ぐ準備ができています。 2015年国際協議会 講演集 29 「優れたガバナーは聞く耳を持っている」 自分の話より、人の話に耳を傾けるガバナーほど、 よいリーダーといえましょう。 よく聞くことで、伸ばすべき強み と取り組むべき弱点が分かってきます。聞くほどに、学ぶことがたくさんでてくるものです。 クラブの課題を理解 しているガバナーほど、効果的に対処することができます。 「優れたガバナーは経験や知識を分かち合う」 ガバナーの多くは、奉仕プロジェクト、 クラブ活動、 ロータリー財団、青少年プログラムなどの経験があり、 この 経験をクラブ会長や地区委員会と分かち合うことができます。 この一週間、皆さんは数々の話し合いを通じ て、地区の方々と分かち合える情報やアイデアを得られたことでしょう。思いやりある、親切なアドバイスをぜひ クラブや地区のロータリアンに提供してください。 「優れたガバナーは人を励まし、活躍を称える」 素晴らしい活躍を称えることはモチベーションをさらに高めます。人前で感謝の意を表したり、感謝状を送ると いったことは、 ガバナーのリーダーシップスキルの一つです。大いに人を励まし、 また誠意を持って貢献を称えま しょう。 そうすれば、地区で強力なチームを築くことができるでしょう。表彰は、 ガバナーの思慮深さを示す手段と なります。 「優れたガバナーは力強い地区を築くための新リーダーを育成する」 毎年、新しいロータリアンを育て、未来のリーダーとして開花させる必要があります。地区ガバナーは、将来の 地区リーダーを探し、選りすぐり、育成する上で理想的な立場にあります。潜在的な能力や隠れた才能を持つ ロータリアンが大勢います。 こうした能力や才能を伸ばし、 ロータリーの未来のために役立てる機会を提供す べきです。 「地区ガバナーとしての成果は地区の最終的な演奏によって評価される」 これは成果の究極的な集大成であり、重要なものです。皆さんのリーダーシップは、地区大会で人びとの目に 留まることになります。オーケストラ演奏の場合、 チューバや第二バイオリンなど、一つの楽器の音色が評価さ れるわけではありません。評価されるのは、多くの楽器のパートを綿密かつ見事にまとめ上げる指揮者の力量 です。 それが地区大会です。 あと数週間で、皆さんは、7月1日から始まる新年度に向けて、 クラブ会長や地区委員に研修を行い、新年度 の目標と計画について説明します。 また地区委員会は地区大会、 ロータリー財団、 会員増強、 そのほかの各プ ログラムに取り組みます。 7月1日には、 ここにおられる一人ひとりが、指揮棒を手に演台に立ち、 それぞれの “交響曲” を始めます。 (ラベルの「ボレロ」 が流れ、指揮棒を持って指揮者のふりをする) ソリストの音色が聞こえてきますか。ガバナーの公式訪問の開始がまさにそれです。後方から聞こえてくるの は、委員会の活動です。 さらに、 インターアクターやローターアクターも交え、青少年交換学生も参加します。 その後ろで奏でられている音が聞こえますか。地区委員会が着々と、 ロータリー財団補助金の活用法を検討 しています。物静かに地区大会の準備を進めるグループもあります。 それぞれのグループが役割を果たすこと で、全体のハーモニーが生まれます。 30 2015年国際協議会 講演集 公式訪問が続きます。財団の募金活動も見過ごしてはなりません。広報委員会にもがんばってもらいましょ う。RYLAのグループからもメロディが聴こえてきます。 引き続き、公式訪問が続きます。Eメールも絶え間なく入ってきます。地区大会の計画も進行中です。 ソウル 国際大会の推進も続けます。 ガバナー補佐が進捗を報告してくれます。 すべての公式訪問がやっと終わる頃でしょうか。ただし、 月信の発行が続きます。他地区からの職業研修チー ムを紹介します。 それと並行して、新クラブが加盟する準備ができているかどうか確認します。一つひとつの活 動が “演奏” に深みを与えます。 軽やかな音が時々聞こえてきます。5カ月遅れてクラブが計画と目標を提出してきたようです。 「アフリカ支援 (Reach Out To Africa)」の報告書も届きました。ポリオ撲滅支援のミニマラソン大会も忘れてはなりませ ん。地区大会に出席するラビンドラン会長の代理との連絡も欠かせません。 特別訪問、 ソウル国際大会への旅行の準備、委員会会合、感謝状、 ポール・ハリス・フェローの認証、地区大 会の詳細など、 すべての活動がクライマックスに向けて高まりを見せます。 また、 ポリオプラスの報告書が届き、 ガバナーエレクトとノミニーとの協力も進みます。 音楽が脈打つ様子を体全体で感じられるようになります。皆さんのエネルギーが音楽に注ぎ込まれます。 そし て美しいクライマックスがやってきて、 (音楽が泊まる) 交響曲が終わりを迎えます。 拍手喝采の中、 お辞儀をし、 オーケストラ全員が真の称賛に値することを示します。 またソリストにも感謝の意 を表します。最後には、 オーケストラ全員が皆さんのリーダーシップを絶賛してくれるでしょう。 最高の瞬間は、 指揮棒をガバナーエレクトに手渡すときです。間もなくコンサートプログラムの次の楽曲が始ま ります。 これがロータリーのサイクルです。 これがロータリー地区を導くということです。多岐多様な地区委員会やクラ ブ会長をまとめて、地区の素晴らしい活動を成功させます。優れた指揮者としてのリーダーシップスキルがあっ てこそ実現できることです。 まだ余韻が残る中で、皆さんは 「よくやった!」 と言えるでしょう。 しかし地区のロータリアンは、 自分たちが素晴ら しいガバナーをリーダーとして選んだのだと、改めて実感するでしょう 皆さん、 これこそがロータリーの優れたリーダーシップです。 さあ、 がんばってまいりましょう。 2015年国際協議会 講演集 31 JA—(215)
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