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脳血管内治療
大阪市立総合医療センター 脳神経センター部長
小宮山 雅樹
脳血管内治療の対象疾患は、出血性病変と虚血性病変の2つに分けられます。出血性
病変には、脳動脈瘤、脳動静脈奇形などがあり、虚血性病変には、塞栓性脳血管閉塞、
頚部頚動脈狭窄、頭蓋内脳血管狭窄などがあります。出血性病変に対しては塞栓術が、
虚血性病変に対しては血行再建術が行われます。
1.頚部内頚動脈狭窄に対するステント留置術
動脈硬化の好発部位である頚部内頚動脈の狭窄症に対する外科的手術として内膜剥離
術があります。症候性の 50-70%以上の狭窄病変に対して治療適応があるとされ、無症候
性病変に対しては、80%以上の狭窄病変に適応があるとされます。 頚部内頚動脈の狭窄
症に対しステントを用いた血管形成術が行なわれるようになり、外科的治療に匹敵する結
果が報告されています。内膜剥離術のハイリスク群である高齢者や全身状態の不良の場
合などがステント治療の良い適応とされています。この治療の問題点である術中の末梢
への塞栓症に対するバルーンやフィルターの進歩とともに治療成績が向上してきました。
頚部内頚動脈狭窄の患者さんは、生活様式の変化も相まって増加の一途であり、この疾
患に対するステント留置術は、今後、益々行なわれるようになると考えられます。
2.脳動脈瘤に対する塞栓術
成人の未破裂脳動脈瘤の保有率は 2-4%と考えられています。未破裂脳動脈瘤が破裂す
ると社会復帰が可能な患者さんは 1/3 とされ、逆に死亡も 1/3 とされます。未破裂脳動脈
瘤の年間破裂率は、大きさで分けると、2-6mm で 0.1%、7-9mm で 0.7%、10-24mm で 1 年
以内は 7%、1 年以降 1.1%とされています。つまり小さな動脈瘤は破裂しにくいです。日本脳
ドック学会のガイドラインでは、未破裂脳動脈瘤の治療は、余命が 10-15 年以上期待され、
5-7mm 程度以上の大きさの動脈瘤には勧められています。未破裂動脈瘤を経過観察す
る場合は、そのリスクファクターとされる高血圧と喫煙の管理が重要です。破裂脳動脈瘤
に対して開頭によるクリッピング術とコイルによる塞栓術を比較した ISAT という研究があり、
治療の 1 年後の機能予後は、血管内治療群の方が優れていました。小さな動脈瘤で小さ
な neck であればコイルによる閉塞率も高く、逆に大きな動脈瘤や大きな neck では、neck
部分が残る場合や動脈瘤自身に造影剤が流入する場合が少なくなく、閉塞率も低くなりま
す。当院では、慎重な適応のもとで脳動脈瘤の治療を行っています。
今回、上記の 2 疾患と共に、当院の特徴である小児の脳血管内治療も御紹介します。