EUにおけるレイシズムの新展開 ~移民排斥からイスラムフォビアへ

EUにおけるレイシズムの新展開
~移民排斥からイスラムフォビアへ~
今年 1 月にフランス、2 月にデンマークでテロ事件が起きて以来、ヨーロッパではイスラムバッシングが再燃
し、極右政党が支持率を上げる一方、ムスリム移民への嫌がらせやヘイトクライムも後をたたない。民主主
義や人権を基本理念としてきたヨーロッパで、このような反イスラムの風が吹き荒れるのはなぜか? その
背景には何があるのか? 本企画では「文明の衝突」論とは異なる角度から問題に光をあて、1980 年代のフ
ランス移民二世の運動からスカーフ論争にいたる歴史を振り返ることにより、アラブ人排斥からイスラムフ
ォビアへと変貌するレイシズム(人種主義)の展開について考える。
ヴェールの政治学~ジェンダー・身体・植民地主義~
日時:
2015年7月17日(金)
18:40~20:40
場所:
同志社大学 今出川キャンパス 良心館 203 教室
映画上映:「マダム・ラ・フランス」
(フランス/2012 年/52 分/日本語字幕付/本邦初公開)
司会:
菊池恵介(同志社大学)
トーク:
サミア・シャラ監督
フランス・反レイシズム運動の軌跡
日時:
2015年7月18日(土)
14:00~17:00
場所:
同志社大学 今出川キャンパス 良心館 203 教室
映画上映:「平等への行進」
(フランス/2013 年/52 分/日本語字幕付/本邦初公開)
パネルディスカッション
司会 :
菊池恵介(同志社大学)
パネラー: アブデラリ・アジャット(パリ西大学)
サミア・シャラ監督
森千香子(一橋大学)
主催:科学研究費基盤研究(C)
「EUにおけるレイシズムの新展開と社会構造の比較研究」
共催:同志社大学 一神教学際研究センター(CISMOR)/ グローバル・スタディーズ研究科
フェミニスト・ジェンダー・セクシュアリティ研究センター(FGSS)
〇海外招聘者のプロフィール
サミア・シャラ(Samia Chala)
:
アルジェリア出身の映像作家。1980 年代から 1990 年代にかけてアルジェリアで女性解放運動に参加。そ
の後、軍事クーデターを経て内戦が始まると、フランスに亡命。以降、映像作家としてドキュメンタリ
ーの制作に携わる。アルジェリア、女性、亡命、移民、非正規滞在などを作品の主要なテーマとする。
今回上映する2本のドキュメンタリーのほかに、以下の作品がある。Mouss et Hakim, origines contrôlées
(2011) ; Sans papiers, sans cliché (2010) ; Le salon de Coiffure (2009) ; Bled-musique à l'Usine (2007) ; Lamine la fuite
(2005) ; Temps des femmes dans la ville (2004) ; Kabylie, au coeur de la révolte (2003) ; Les oiseaux chantent encore à
la Casbah (2002).
アブデラリ・アジャット(Abdellali Hajjat)
パリ西大学(ナンテール校)教員。社会学者。専門はフランスの移民問題・ポストコロニアル研究。近年
フランスの反差別運動の歴史やイスラムフォビアに関する学術書を刊行し、大きな反響を呼んでいる。近
著に、La marche pour l’égalité et contre le racisme, Editions Amsterdam, 2013 ; Islamophobie, Comment les élites
françaises fabriquent le problème musulman, avec Marwan Mohammed, Editions du Seuil, 2013 ; Les frontières de
l’identité nationale : L’injonction à l’assimilation en France métropolitaine et coloniale, La Découverte, 2012. 邦訳
記事に「
『シャルリー・エブド』テロ事件の淵源――過激化の要因についての非宗教的分析」
(荒井雅子訳)
(http://www.tup-bulletin.org/?p=2777)。
○作品紹介
「マダム・ラ・フランス」
(サミア・シャラ監督/フランス/2012年/52分/日本語字幕付)
サミア・シャラ監督の自伝的ドキュメンタリー。1994年、フランスに亡命してきたシャラ監督は「イスラム
原理主義と闘うアラブ人フェミニスト」として歓迎される。だがやがて9・11事件をきっかけにフランスで
反イスラム感情が高まると、しだいにイスラムへの偏見やアラブ人女性への差別的な眼差しに深い違和感を覚
え始める。西洋的な価値観やライフスタイルを選択する女性がメディアで礼讃される一方、ヴェールを着用す
る女性は蔑まれたり、悪魔化されたりするのはなぜか。本作品では、母の世代の女性たちの生き方を見つめ直
すことで、アルジェリアの征服以来、アラブ人女性に「同化」か「排除」の二者択一を迫ってきた植民地主義
の論理を問い直す。
「平等への行進」
(サミア・シャラ監督/フランス/2013年/52分/日本語字幕付)
1983年、フランスで生まれ育った移民二世の若者たちが、人種差別の撤廃と平等を求めて全国を行進した。
10月15日、マルセイユを30人余りで出発した小さな行進は、2ヶ月後パリに到着した際には10万人に膨れ上が
った。いわゆる「移民第二世代」の存在を印象づけた「平等への行進」である。だがその30年後、あの運動の
記憶を止めている者はほんどいない。「平等への行進」とは何だったのか。いかなる背景のもとで誕生し、何
を訴えていたのか。また、それが今日忘れ去られてしまったのはなぜか。2013年に「行進」の30周年を記念し
て制作された本作品は、当事者へのインタビューとアーカイブ映像を通じて、フランスの反差別運動の光と影
を映し出す。
*企画の詳細については、次のホームページをご覧ください http://kaken-eurs.jimdo.com/