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経営者が
知っておくべき
税金知識
経営者が最低限知っておきたい!
貸倒損失の税務
・ 貸倒損失の原則的取扱い
・その他の注意点
経営者が最低限知っておきたい!
貸倒損失の税務
はじめに
事業を行う上で、必ず発生する損失の一つに、貸倒損失があります。貸倒損失は、事業上必ず
発生するものであるにもかかわらず、法人税において経費とすることができる場合は非常に限ら
れています。このため、そのルールを正確に理解しておかなければ、後日行われる税務調査にお
いて、思いもよらない課税がなされることになります。
会社にとって、貸倒損失は経費に計上できるのであれば早期に処理したいところですので、決
算のたびに、貸倒損失が計上できるかどうかが問題になります。この判断基準について、本テキ
ストにおいて必要最低限のエッセンスを盛り込んでいますので、本テキストを参照しながら、処
理をすることとしてください。
なお、貸倒損失の計上基準が厳格に定められていると言っても、そのルールにはグレーゾーン
が大きいこともあって、税務署と揉めることが非常に多いと言われています。このため、最終的
な判断については専門家の見解を問うことも必要になりますので、処理に当たっては、顧問税理
士とも相談の上、慎重に判断することとしてください。
本テキストが、皆様のビジネスにとってわずかなりともお役にたつのであれば、これに勝る喜
びはありません。
目次
Ⅰ 貸倒損失の原則的取扱い
Ⅱ その他の注意点
≪注意点≫
本小冊子は、平成 27 年 2 月 1 日現在の法令等に基づいて作成されております。今後の税制改正等により、本小冊子の内容等の
全部または一部につき、変更があり得ますので、ご注意ください。
Ⅰ 貸倒損失の原則的取扱い
【Q1】
<貸倒損失の取扱い>
法人税は、貸倒損失の計上に対して非常に厳しいと聞きましたが、どのような要件を
満たせば貸倒損失が認められるのでしょうか?
【A1】
<法律上の貸倒れ、事実上の貸倒れ、形式上の貸倒れ>
法人税において、貸倒損失の計上ができる場合は、①法律上の貸倒れ、②事実上の貸
倒れ、③形式上の貸倒れのいずれかに該当する場合とされています。
【解説】
ビジネス上、売掛金や貸付金の回収が困難になり、債権の貸倒れを認識せざるを得ないケース
は非常に多いですが、法人税は税収を確保する観点から、貸倒損失の計上を非常に限定していま
す。具体的には、客観的に貸倒損失が発生したと認められる、①法律上の貸倒れ、②事実上の貸
倒れ、③形式上の貸倒れのいずれかに該当する場合に限り、貸倒損失の計上が認められるとされ
ています。
詳細は後述しますが、これらの事由に該当したとしても、貸倒損失が無条件に認められるわけ
ではありません。上記のうち、②と③の貸倒れについては、所定の経理をしなければ法人税の経
費として認めない、という取扱いも設けられています。
以上、法人税の貸倒損失の要件について図解すると、
(図1)のとおりとなります。
(図1)法人税の貸倒損失の取扱い
事由
内容
経理上の要件
法律上の貸倒れ
法的な手続きで切り捨てられた場合
なし
事実上の貸倒れ
債務者の状況等に照らし回収不能となった場合
貸倒損失として損金経理
形式上の貸倒れ
取引停止後、1年以上経過した場合
備忘価額を残す
【Q2】
<法律上の貸倒れの意義>
法律上の貸倒れについて、具体的な内容を教えてください。
【A2】
<更生計画認可決定や所定の債権放棄など>
法律上の貸倒れは、更生計画認可決定や所定の債権放棄により、強制的に債権の全部
または一部が切り捨てられた場合に認められるものです。
【解説】
会社更生法などの法律の規定や、所定の債権放棄により、債権が強制的に切り捨てられるケー
スがありますが、このような場合に認められるのが法律上の貸倒れです。強制的に切り捨てられ
ますので、貸倒損失が発生していることは誰の目にも明らかですから、経理上の要件も必要なく、
その事実が発生した時点で無条件に、その切り捨てられた金額を貸倒損失とすることができます。
法律上の貸倒れが認められる場合についてまとめますと、以下の(図2)のとおりとなります。
(図2)法律上の貸倒れ
発生した事実等
貸倒損失の金額
更生計画認可の決定による切捨て
再生計画認可の決定による切捨て
特別清算に係る協定の認可の決定による切捨て
以下の関係者間協議決定による切捨て
〇債権者集会の協議決定で合理的な基準により
切り捨てられることと
なった部分の金額
債務者の負債整理を定めたもの
〇行政機関又は金融機関その他の第三者のあっせんによる
当事者間の協議によりされた契約で合理的な基準によるもの
書面による債務免除(債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、
その弁済を受けられないと認められる場合に限られます。)
債務免除の通知を
した金額
上記のうち、実務で最も多いのが「書面による債務免除」
(図3参照)です。ここでいう書面に
ついては、書面の交付の事実を明らかにするために、内容証明郵便等により債務者に交付するか、
債務者から受領書を受け取ることが望ましいとされています。
加えて、債務者の債務超過の状態が、相当期間継続する必要があります。相当期間とは、債権
者が債務者の経営状態をみて回収不能かどうかを判断するために必要な合理的な期間をいいます
ので、一律何年と決まっているわけではありませんが、実務上は3~5年程度と考えるケースが
多いようです。
(図3)書面による債務免除の注意点
書面による通知
内容証明郵便等が
望ましい
書面による債務免除
債務者の債務超過が
相当期間継続
3~5年程度が
一般的(※)
(※)債権が回収不能か否かを判断するための期間であり、例外も認められます。
【Q3】
<債務者が破産した場合>
法律上の貸倒れの要件に債務者の破産はありませんが、債務者が破産した場合、法律
上の貸倒れは認められないのでしょうか?
【A3】
<原則、破産手続の終結決定があった場合の貸倒れとされる>
債務者が破産した場合の貸倒損失の取扱いは、法人税においては明確にされていませ
んが、債務者である破産法人の破産手続の終結決定または廃止決定時点において、貸
倒損失とすることができると判断された事例があります。
【解説】
実務上、売掛先が破産したというケースは非常に多いですが、債務者が破産した場合の取扱い
は、明確にされてはいません。ただし、破産手続の廃止決定又は終結決定がなされれば、破産法
人は消滅しますので、この段階で貸倒損失が計上できると判断した事例
(http://www.kfs.go.jp/service/JP/75/21/index.html)があります。
実務上はこの事例に基づき、債務者について破産手続の廃止決定又は終結決定があった時点で、
法律上の貸倒れとして貸倒損失を計上することとしています。
なお、債務者の破産手続の廃止決定又は終結決定を待たずとも、その債務者に対する債権につ
いて、後述する事実上の貸倒れに該当するのであれば、その事由に該当した時点において貸倒損
失を計上することもできます。
【Q4】
<事実上の貸倒れの意義>
事実上の貸倒れについて、具体的な内容を教えてください。
【A4】
<債務者等の資産状況等から全額回収不能が明らかな場合>
事実上の貸倒れは、債務者の資産状況や支払能力等から見て、債権の全額が回収不能
である場合に認められるものであり、回収不能が明らかになった事業年度において損
失処理することで法人税の経費とすることができます。
【解説】
法律上強制的に債権が切り捨てられるような場合は最終段階であり、債務者の資金繰りなどを
見れば、債権の全額が回収できないことは明白である、といったケースの方が実務上は多いと考
えられます。このような場合に、所定の要件を満たすことで認められるのが事実上の貸倒れです。
法人税の世界では、売掛金等の①債務者の資産状況や支払能力から見て、債権の全額を回収す
ることができないことが明らかである場合、②その明らかになった事業年度において、その債権
の全額を貸倒損失として経理処理することで、貸倒損失として法人税の経費とすることができる
とされています(図4参照)。
(図4)事実上の貸倒れ
債務者の資産状況や支払能力から見
て、債権の全額を回収することが
できないことが明らかであること
事実上の貸倒れ
債権の全額を回収不能が
明らかになった事業年度で貸倒損失
として経理処理すること
(※)債権に担保物がある場合などは、原則として、その処分をするまでは事実上の貸倒れは認められ
ません。
事実上の貸倒れは、①の債権の全額を回収することができないことが明らか、という要件に該
.
当するかどうか、税務署と揉めることが非常に多いと言われています。この要件については、客
...
観的に債権の全額を回収できないことが明らかであるかどうかで判断することとされているとこ
ろ、事実上の貸倒れを計上する場合には、税理士に相談しながら判断するとともに、税務調査に
備えて債務者の財務状況等について、資料を揃えておく必要があります。
【Q5】
<担保物がある場合の事実上の貸倒れ>
貸付先である A 社が倒産の危機にあるようで、今後の返済が非常に難しいと A 社の社
長から相談を受けました。A 社は、当社が抵当権を設定している土地以外にめぼしい
資産はないようで、全額が回収できないことが明らかです。事実上の貸倒れは認めら
れますか?
【A5】
<原則、担保物を処分するまでは認められない>
事実上の貸倒れは、債権の全額が回収できないと客観的に認められる場合に認められ
ます。担保物があれば、それを処分することで債権の全部又は一部の回収ができると
いうことになりますから、原則として担保物を処分するまで事実上の貸倒れは認めら
れません。
【解説】
事実上の貸倒れは、債権に担保物があれば、それを処分するまでは認められない、というのが
原則です。債権の全額が回収不能であることが客観的に認められる場合に、事実上の貸倒れが認
められますので、担保物があるのであれば、その処分後の状況によって回収不能かどうかを判断
すべきである、とされているからです。このため、担保を設定している債権については、担保の
処分がなされないかぎり、事実上の貸倒れは原則として認められません。
ただし、担保があったとしても、その適正な評価額からみて、実質的に全く担保されていない
ことが明らかである場合には、担保物はないものと取り扱って差し支えないとされています。
なお、債権について保証人がいる場合の事実上の貸倒れも、原則として担保を設定している場
合と同様の取扱いとなっています。保証人がいる場合には、原則としてその保証債務の履行があ
り、かつ保証人からも債権の回収ができないときに初めて、事実上の貸倒れが認められるとされ
ています。
【Q6】
<一部のみの貸倒れ>
事実上の貸倒れは、
「全額が回収不能」である必要があるということですが、一部でも
回収できると認められれば、事実上の貸倒れは認められないのでしょうか?
【A6】
<一部のみの貸倒れは認められない>
ご指摘のとおり、一部でも回収可能性があると判断される債権については、事実上の
貸倒れは認められないとされています。
【解説】
銀行借入れの審査の際、銀行から売掛先の回収可能性を厳しくチェックされ、回収可能性に疑
義がある売掛金については、回収可能額まで債権金額を減額すべき、といった指導を受けること
があります。銀行は会社の資産を担保として融資を行うこともあり、売掛金等の回収可能性を厳
格に判断しますが、法人税においては銀行の判断は関係なく、あくまでもその全額が客観的に回
収不能であると認められるか否かによって、貸倒損失の計上を判断することとなっています。
事実上の貸倒れは、その全額を貸倒損失として処理する必要がありますので、例えば 100 万円
の債権のうち回収できる見込みの金額が 20 万円ある、といった場合に、80 万円だけ事実上の貸
倒れを認識することはできません。
【Q7】
<債権者の事情と事実上の貸倒れ>
事実上の貸倒れは債務者の資産状況等からその全額が回収できない場合に認められる
ということですが、支払が滞っている B 社に対する貸付金を回収するとなると、裁判
費用など、相当の取立費用が掛かる見込みです。
このような場合も、事実上の貸倒れは認めてもらえないのでしょうか?
【A7】
<債権者の事情も考慮される場合がある>
事実上の貸倒れは、
「債務者の資産状況や支払能力から見て、債権の全額を回収するこ
とができないことが明らか」という債務者の事情をその要件としていますが、債権者
側の事情も考慮される場合がある、と判断された事例があります。
【解説】
事実上の貸倒れは、債務者の資産状況や支払能力から見て、その債権の全額を回収することが
できないことが明らかである場合に認められるとされているところ、債権者の事情については、
要件とされていません。しかし、債権の回収を行う場合には、取立費用も発生することになるわ
けで、この取立費用が大きければ、債権の回収を断念する、という経営判断がなされます。
このような常識を踏まえて、事実上の貸倒れについて、一義的には債務者の資産状況、支払能
力等の債務者側の事情を検討する必要があるものの、場合によっては、債権回収に必要な労力、
債権額と取立費用との比較衡量、債権回収を強行することによって生ずる他の債権者とのあつれ
きなどによる経営的損失等といった債権者側の事情、経済的環境等も踏まえるべき、と判断され
た最高裁判決があります(参考:国税庁ホームページ:
https://www.nta.go.jp/shiraberu/sodan/jizenshokai/kinsensaiken/01.htm)
。
これを踏まえれば、債務者の資産状況等から見て債権の全額が回収不能と認められない場合で
あっても、債権者が債権回収を断念せざるを得ない事情があることが客観的に明らかであれば、
事実上の貸倒れが認められる可能性があります。
ただし、債権者側の事情も考慮する場合があるとは言っても、①一義的には債務者の事情を検
討する必要があること、②債権者が債権回収を断念せざるを得ない事情があることが客観的に明
らかであるかどうかはケースバイケースの判断であることから、専門家に相談しながら慎重に判
断する必要があります。
【Q8】
<形式上の貸倒れの意義>
形式上の貸倒れについて、具体的な内容を教えてください。
【A8】
<取引停止後、一年以上経過した場合等>
形式上の貸倒れは、売掛債権について認められるもので、債務者との取引停止後1年
以上経過した場合などに認められます。ただし、形式上の貸倒れについては、1円以
上の備忘価額を決算書に残して貸倒損失を計上する必要があります。
【解説】
実務上、法律上の貸倒れが発生することは多くはありませんし、事実上の貸倒れについても、
その要件が厳しいこともあって、簡便的な方法として、形式上の貸倒れが認められています。
形式上の貸倒れは、一定の売掛債権などについてのみ認められるもので、①債務者との取引停
止後1年以上経過し、又は、②同一地域の売掛債権の総額が取立費用に満たない場合において、
督促しても弁済がないときに、③決算書に1円以上の備忘価額を残し、残額を貸倒損失とする経
...
理処理を行うことで、その1年以上経過した日又はその弁済がないとき以後の事業年度において、
貸倒損失の計上が認められます(図5参照)
。
(図5)形式上の貸倒れ
債務者との取引停止後1年以上経過し
ていること
又は
決算書に1円以上の
備忘価額を残す
経理処理を行うこと
同一地域の売掛債権の総額が取立費用
に満たない場合において、督促しても弁
済がないこと
形式上の貸倒れ
(※1)形式上の貸倒れは、一定の売掛債権などについてのみ認められます。
(※2)担保物がある場合などは、原則としてその処分をするまでは形式上の貸倒れは認められません。
なお、形式上の貸倒れについても、その債権に担保物がある場合には、現実に担保物の処分が
なされないかぎり、貸倒損失の計上は原則として認められないとされています。
【Q9】
<一定の売掛債権の範囲>
形式上の貸倒れは、一定の売掛債権についてのみ認められるということですが、それ
が認められる売掛債権の範囲について具体的に教えてください。
【A9】
<継続的な取引を行っていた債務者への売掛債権>
形式上の貸倒れは、継続的な取引を行っていた債務者につきその資産状況、支払能力
等が悪化したためその後の取引を停止するに至った場合に認められるという趣旨か
ら、継続して取引を行っていた債務者への売掛債権についてのみ認められます。
【解説】
形式上の貸倒れは、継続的な取引を行っていた債務者につきその資産状況、支払能力等が悪化
したため、その後の取引を停止するに至った場合に認められるものですから、継続的な取引を行
う売掛先への売掛債権のみがその対象となります。
このため、不動産取引のように、通常継続して行うことのない取引を行った債務者に対して有
する売掛債権や、貸付金や前払金などの売掛債権以外の債権については、一年以上弁済がなかっ
たとしても、形式上の貸倒れは認められません(図6参照)
。
(図6)形式上の貸倒れの対象となる債権の範囲
債権の種類
対象有無
備考
売掛金、受取手形
〇
売掛債権
倉庫業者等の未収保管料等
〇
売掛金と同視できるため
工事業者等の未収請負金等
〇
売掛金と同視できるため
不動産等固定資産の譲渡の未収金
×
継続取引と言えないため
貸付金、前払金など
×
売掛債権でないため
Ⅱ その他の注意点
【Q10】
<貸倒損失と寄附金>
子会社が債務超過に陥ったため、子会社に対する貸付金1億円につき債権放棄をしま
した。この債権放棄は、内容証明通知を発送するなど、所定の要件は満たしており、
法律上の貸倒れとされる「書面による債権免除」に該当すると考えています。
しかし、当社の顧問税理士から、この債権放棄は子会社に対する寄附金に該当し、貸
倒損失を税務署から否認される可能性が大きい、と聞きました。
このような債権放棄が寄附金とされないためのポイントを教えてください。
【A10】
<債権放棄等をせざるを得ない合理的理由の有無>
事業関係者に対する債権であっても、貸倒損失の要件を満たすのであれば、貸倒損失
を計上できることになっています。しかし、事業関係者に対する債権放棄は、安易な
節税につながりやすいこともあり、税務署も厳しいチェックを行います。
このため、債権放棄等を行わざるを得なかった、という相当の理由を用意しておく必
要があると思われます。
【解説】
子会社など、いわゆる事業関係者に対する債権であっても、貸倒損失の要件を満たすのであれ
ば、貸倒損失を計上することはできることになっています。しかし、事業関係者に対する債権の
貸倒れについては、それが安易な節税につながる可能性があるため、税務署もかなり厳しいチェ
ックを行うのが通例です。
御社の債権放棄ですが、仮に放棄した債権について回収可能性がある、とされれば、子会社に
対する利益供与として、寄附金に該当すると判断されます。寄附金に該当すれば、経費とできる
金額が制限されることになります。
事業関係者に対する債権放棄が寄附金になるかどうか、その判断は非常に難しいところですが、
子会社等のより大きい損失を回避するためにやむを得ずに行った、といった相当の理由があれば
原則としては寄附金に該当しないとされています。
ここでいう相当の理由があると認められるか否かについてですが、実務上は(図7)のような
ポイントから、総合的に判断することが多いようです。
(図7)相当な理由の判断項目の一例
①
経営危機に陥っているか(倒産の危機にあるか)。
倒産の危機に至らないまでも経営成績が悪いなど、放置した場合には今後より大きな損失を
蒙ることが明らかであるか。
②
債権放棄等を行う、相当な理由があるか。
③
債権放棄等する金額は合理的であるか。 etc.
.
.
いずれにしても、相当な理由があるため債権放棄をせざるを得なかった、この証明ができるか
がポイントになりますので、事業関係者の財務資料や今後の経営予測など、債権放棄に係る検討
資料を整理しておく必要があります。
【Q11】
<貸倒損失と消費税>
法人税において貸倒損失が認められた売掛金について、消費税の取扱いはどうなりま
すか。
【A11】
<原則として控除できる>
法人税において貸倒損失が認められた売掛債権については、原則として、その売掛債
権に係る消費税を貸倒損失とした事業年度の消費税から税額控除することができま
す。
【解説】
法人税で貸倒損失が認められた売掛債権については、その債権が発生した時点において、消費
税が課税されています。しかし、その売掛債権の回収ができなければ、消費税を過大に納税する
ことになりますから、貸倒損失とした事業年度の消費税の計算上、貸し倒れた売掛債権に係る消
費税は、税額控除することができます。
この消費税の税額控除については、下記の点に注意して下さい。
① 免税事業者時代に発生した売掛債権については、控除対象とならない
二期前の売上高が1千万円以下である事業年度など、一定の要件に該当する事業年度について
は、消費税の納税義務が免除されます。納税義務が免除されている期間に発生した売掛債権につ
いては、そもそも消費税が課税されていませんので、貸倒損失が発生したとしても、その売掛債
権に係る消費税を税額控除することはできません。
② 控除できる金額は課税された税率で計算する
すでに納税した消費税につき、貸倒損失が発生した事業年度において控除することになります
ので、平成 26 年 4 月 1 日前に発生した売掛債権が貸し倒れたのであれば、その当時の税率(5%)
で計算される部分が、税額控除の対象となる金額となります。
③ 貸付債権など、消費税がかからない債権の貸倒れは対象外
お金を他人に貸しても消費税がかかりませんので、貸付金などの債権が貸し倒れたとしても、
納税した消費税はそもそもありませんから、消費税の税額控除の適用もありません。
【Q12】
<取引停止処分等があった場合の債権>
C 社の手形について、手形交換所の取引停止処分が行われたため、その回収はほぼ絶
望的です。取引停止処分は法律上の貸倒れの要件には該当しませんが、50%だけを経
費にできる、という特例があると耳にしました。
この特例について、教えてください。
【A12】
<貸倒引当金の計上が認められる>
貸倒損失の要件を満たさない債権のうち、回収可能性に問題があるとされる一定の債
権については、個別評価金銭債権として、貸倒引当金の計上が認められます。
取引停止処分があった債権については、個別評価金銭債権に該当します。
【解説】
法人税の貸倒損失の要件は非常に厳しいため、回収可能性に問題があると判断される債権につ
いても、実際に貸倒損失を計上するためには大きなハードルがあります。この点を踏まえ、資本
金が1億円以下などの所定の法人については、回収可能性に問題があるものの、貸倒損失までは
至らないとされる所定の債権について、個別評価金銭債権として、一定の金額を貸倒引当金とし
て法人税の経費とすることができます。
実務上、一例として(図8)のような事由が生じた債務者に対する債権については、個別評価
金銭債権に対する貸倒引当金を計上することができ、一定の金額を法人税の経費にすることがで
きます。
(図8)個別評価金銭債権の一例と経費とされる金額
債務者に生じた事由
法人税の経費とすることができる金額
会社更生法等に関する法律の規定による
{(債権金額)-(担保権の実行等により取
更生手続開始の申立て
立て等の見込みがある金額(※1))-(実質
民事再生法の規定による再生手続開始の申立て
的に債権とみられない金額(※2))
}×50%
破産法の規定による破産手続開始の申立て
会社法の規定による特別清算開始の申立て
手形交換所による取引停止処分など
(※1)担保権の実行、金融機関等の保証債務の履行その他により取立て等の見込みがある金額をいいます。
(※2)その債務者に対する買掛金など、その債権と相殺できるとされる一定の金額をいいます。
なお、貸倒引当金を法人税の経費とする場合には、上記のほか、下記(図9)のような要件を
満たす必要があります。
(図9)貸倒引当金の要件
① 決算において貸倒引当金を費用計上する経理処理を行うこと
② 所定の明細書を法人税の確定申告書に添付すること
③ 貸倒引当金を経費とした事業年度の翌事業年度において、その経費とした金額を収益とす
ること(翌事業年度においては、再度費用計上する処理を行うことになります。
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