【研究の背景及び概要】 【研 究 成 果】 安武大輔,芦塚由紀,堀 就英

【研究の背景及び概要】
カネミ油症は昭和 43 年、食用油の製造段階で使用されていた熱媒体(PCB)が混入した
ライスオイルを多くの人が食べて起こった日本最大の食中毒です。その原因となったライ
スオイルには PCB の他に使用中に PCB が熱変性して生成した毒性の強い少量のダイオキ
シン類やかなり大量のポリ塩化クオーターフェニル(PCQ)が含まれていました。これら
のダイオキシン類や PCQ は一旦体内に取り込まれると長期間体内に留まります。このうち
PCQ は PCB やダイオキシン類と異なり、環境中に殆ど存在しないため、血液中の PCQ を
測定することは、一般の人と油症患者とを区別するために非常に有効な手段です。現在、
この血液中の PCQ は、約 30 年前に開発された完全塩素化という方法で、放射性同位元素
を使う検出器を持つガスクロマトグラフ(ECD 付き GC)を使用して測定されています。
この方法は、PCQ を感度よく測定出来ますが、分析操作が大変煩雑で多大の労力と時間を
必要とします。また、この測定機器自体、放射性同位元素を使用するなど時代に合わなく
なってきています。そこで、私たちは PCQ の塩素を全て取り除いた化合物として測定する
方法を検討しています。
これまで通常の測定機器ではこれらの化合物を高感度に測定す
ることが不可能でした。しかし、現在では技術の進歩に伴い最新の高分解能質量分析装置
付きガスクロマトグラフ(HRGC/HRMS)を使用すれば、十分な感度も確保でき測定が
可能になっています。この方法が開発できると、血液中の PCQ をこれまで以上に精密に短
時間で多くの検体を測定することが可能となり、油症患者の検診、治療や油症の認定等に
貢献することが期待されます。
【研
究
成
果】
安武大輔,芦塚由紀,堀 就英,黒川陽一,梶原淳睦,平田輝昭,石黒靖尚,
飯田隆雄,内 博史,古江増隆:高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計を用
いた異径キャピラリーカラムによる血液中ポリ塩化クアテルフェニルの迅速測
定,福岡医誌 102(4):145-152,2011.