講演要旨

「価値ある地域差資源活用と地域経営戦略」
【株式会社 玄 代表取締役 政所利子氏 講演要旨】
ただ今、ご紹介いただきました政所利子と申します。自称「北の政所」といっています(笑)。
私は地域ブランドづくりを一番仕事の基軸にしておりまして、本日は地域ブランドに関連したお
話をしたいと思います。
最近歴史の検証で、女性の活躍がクローズアップされてきています。実は豊臣秀吉が天下を取
ることができたその裏で、かなり色々なサポートを、北の政所のねねさんがしていて、窮地を回
避させ救ったことが克明に検証されてきています。ですから私は、地域経営者でいらっしゃる皆
さんが、まさに戦っておられる後押しをさせていただければと日々感じております。
さて、いろいろなビジネスをしていく上で、一番掴まなければいけないのは時代の風。その風
が今どのように吹いているかということです。地域の資源を総体化し、地域産業として、活用し
ていく際に、どのようなことが地域差なのかということを見極めることが重要です。今後、人口
が減り始めると、当然、お客さんと呼ばれる観光客・顧客など総人口も減ってきます。ここで、
全てのことにおいてリピーターを勝ち取るということが非常に重要なことになってきます。その
時に、戦略のない地域、活性化についての議論を行っていないところは生き残れなくなるでしょ
う。
これまでの日本を振り返ってみましょう。物が無かった戦後の時代。次は高度経済成長の時代。
このあたりから人々は美味しいものとか、価値のあるものを求め始めました。五感センサーを豊
かに持ち始める時代になりました。そしてバブルになりますと、もっとセンサーは複雑化してき
て、物を脳で選ぶ、感じる時代になってきたのです。さらに人々の欲求は高くなっていき、今は
心の時代、ハートで感じ選択するようになってきているのです。また、その背景にあるストーリ
ー性というのも大切な要因になってくるでしょう。地域の資源の中にいかに感動を封じ込められ
ているかということを人々は求めているのです。
地域には資源がたくさんあります。それらをいかに活用させることができるでしょうか。例え
ばものづくり。ものづくりについて日本はとてもすばらしいものを持っています。安くなきゃ売
れない、大量生産じゃないと売れないというような時代は終わったのです。すばらしいものづく
りの技術を持っている地域において、改めてどうしたらそれら地域資源を活用して勝負できるの
か、そのあたりを時代の風を凝視し風を受けつつ、見極めていただくことが大事だと考えます。
次に美しくないところは生き残れないと思います。これはそんなに難しいことではありません。
地域それぞれの持つ美しい風景、伝統の技など、これはというものはたくさんあるはずであり、
それを今まできちっと検証し伝えて来なかったのではないでしょうか。美しく、個性的であり、
地域の違いをはっきり伝える資源を明らかに伝えるということがとても大事なのではないかと思
います。
それから、他力本願ではいけません。人任せでは何も始まりません。譲合いの精神と言います
か、他力本願なところは、もうこのスピード時代・本物時代難しい。自らが動き、発見していく
ことが大切です。
現在のキーワードは、「空」と「不」。商店街は空洞化、空き農地、空き教室。とにかく空いて
しまっています。そしてコミュニティがなくなると人々は、非常に大きな不安を抱きます。そし
て人々の心の中に不安だとか、不正だとか、不運、不満、これらが蔓延してきています。
これらの社会背景を受けて再生を行うためのキーワードは、「安心」「信頼」「公正」。これによ
ってコミュニティの再生、創出が始まるのです。
地域コミュニティの課題はたくさんあります。持続的に地域経営を戦略的にしていくために何
が必要か。「空」「不」このキーワードを社会課題として受け止め、これらに適正な対応策を施し
て何とか埋めていく、これが産業戦略として重要であると考えます。かつて、地域の産業という
のは、風土、景観、文化、気質、愛着、これ全部トータルで分かりやすかったように思います。
そして地域の方々が持っている精神性の一番根っこの部分にある豊かな気質や、地域への愛着や
見守るおおらかさが必要になってくるでしょう。
これから大事なのは、今まではビジネス、BtoB という言い方をしますが、私たちはもう1度
原点に戻るということで、コンシューマー、消費者という視点からビジネスを考える、CtoBtoC
というのが、今これから、ものづくり、地域経営の中で一番大事だと考えています。
現在、新産業創造ということで私が着目している例として1つ、スポーツ食育というのがあり
ます。スポーツという事が、もし、まちづくりのテーマだとしたら、これから人々がコンシュー
マーとして欲求しているものは、運動、栄養、休養、ハードのみならず総合的視点なのです。生
活習慣病、ダイエット、美容・・・。薬膳料理のメニューのある宿泊施設なども増えています。この
ようなことを考えると、元々地域が持っている資源がたくさん使えるのではないでしょうか。専
門の料理人がいないからだめ、そのようなことは絶対ありません。シンガポールでは、人間ドッ
クと観光がセットになったものに大変人気があります。また、1週間ヘルシーな美容食だけをと
り、ダイエットをして帰るのが旅行の目的だったりするのです。
これは新しい新産業のように見えますが、かつて各地域にあった、既存の資源を工夫して活用
しただけのものなのです。地域で取れた旬のものを『その地域で食す』これは地域差を感じるこ
とのできる一番簡単な方法です。そのようなことを地域文化として、後世に伝えるように高校の
体育の授業にも、スポーツと食事という講習会を取り入れているところもあります。
このようなことを考え、持続的地域経営の基本とまちづくりの目標の原点に返って、地域の資
源を、地域の経営資源に移しかえていく、銭化していくという手立てが色々な方法であるのでは
ないか、そのように考えます。これからも地域のトップ経営者でいらっしゃる皆さまのご活躍を
本当に、陰ながら応援したいと思いますので、またご縁がありましたらと思います。どうもあり
がとうございました。