平成26年度行政調査報告(山口県下関市)

平成26年度
西都市議会文教厚生常任委員会
行政調査報告書
日 時:平成27年1月19日(月)
~
平成27年1月20日(火)
視察先:①山口県下関市
※中学校統廃合について
※下関市立中央図書館公立化について
当委員会は、所管事務に関する調査のため、平成27年1月19日か
ら20日の間において、山口県下関市を訪問し、本委員会の所管事務
中、教育行政に関する事項に関し、行政調査を行ったので次のとお
り報告する。
委 員 長
荒川 昭英
副委員長
兼松 道男
委
荒川 敏満
随
2/13
員
〃
河野 方州
〃
狩野 保夫
〃
黒木 吉彦
行
事務局
橋口 慎
山口県下関市
■日
時 1月19日(月)14:00~15:00(図書館施設調査)
20日(火) 9:00~11:30(当局による説明・質疑応答)
■調査目的
(1)中学校統廃合について
本市においては、近年、少子化の進行に伴い、市内の児童・生徒数が急激に減少して
いる。それに伴い、児童・生徒の学習環境の整備・充実や学校運営上の問題改善等の一
つとして、小中一貫教育を掲げ、三納小中学校、三財小中学校、銀上小学校銀鏡中学校
で小中学校の施設一体型一貫教育を行っている。
下関市においても同様な状況であり、平成17年12月に下関市立学校適正規模・適正配
置検討委員会を設置し、平成20年3月に答申が行われている。下関市教育委員会では、
答申や地元説明会等での意見をふまえ、平成21年5月に下関市立学校適正規模・適正配
置基本計画を策定し、適正規模・適正配置の取り組みが始まっている。そして下関市教
育委員会と保護者・地域住民との意見交換等を実施し、平成24年4月に下関市立豊田西
中学校と下関市立豊田東中学校を統合し、下関市立豊田中学校が開校している。また第
1期計画期間が平成26年度で終了するため、平成25年10月に第2次検討委員会を設置し、
平成26年6月に答申が行われている。
本委員会としては、本市と同様な状況で中学校の統合再編を行い、また第1期計画の
検証を踏まえ第2期計画の策定に向けて検討を進めているなど、今後の西都市の教育行
政において参考になるものであり、それらを西都市の教育行政に生かすために調査を行
った。
(2)下関市立中央図書館公立化について
全国の自治体で図書館の指定管理化が進む中、下関市では下関市立中央図書館につい
て平成22年度から指定管理者制度を導入し、民間の特別目的会社が運営を行ってきた。
指定管理者制度導入後、開館日数や開館時間の拡大を図り、下関市立中央図書館の利
用者数や貸出冊数が約2倍に増えてきた。しかし運営の効率化を図るために人件費を抑
制しており、そのことにより市民サービス等の低下が懸念された。そして平成26年9月
議会文教厚生常任委員会において、指定管理期間が満了する平成26年度末で市直営にす
ることを公表し、指定管理制度導入から5年で方針転換を行っている。
本委員会としては、行財政改革の一環から図書館の指定管理者制度が進む中において、
指定管理者制度から市直営に方針転換を行うなど、今後の西都市の教育行政において参
考になるものであり、それらを西都市の教育行政に生かすために調査を行った。
■調査事項
【1】中学校統廃合について
(1)統廃合に至るまでの経緯・課題等
①小中一体型としての考え方について
②保護者・住民の意見について
③住民説明会の回数について
(2)統廃合に対するいじめ等の対策について
(3)スクールバスの活用について
(4)施設跡地の利用について
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(5)平成24年4月開校後における評価(メリット・デメリット等)
【2】下関市立中央図書館公立化について
(1)指定管理者制度になった経緯
(2)指定管理者制度における結果・評価(メリット・デメリット等)
(3)再度、公立化の図書館として運営することになった理由
■概
要
1.市の概要
下関市は、山口県西部に位置する中核市であり、本州の最西端に位置している。その人
口規模は県庁所在地の山口市をしのぎ、山口県一の規模を誇っている。下関市に本社や営
業拠点を置く企業も多い。また、関門海峡対岸に位置する北九州市をはじめとする北部九
州地域との交流も深く、下関市は北九州市とともに関門都市圏を形成している。
1889年4月1日の市町村制開始の際に市制施行した日本最初の市の一つであり、当時は赤
間関市であった。1902年6月1日に現市名の下関市となる。2005年2月13日には、下関市、
菊川町、豊田町、豊浦町、豊北町が合併し、新たに下関市が発足した。合併に伴い法定人
口が300,000人を超えたため、2005年(平成17年)10月1日より国から中核市の指定を受け
ている。2014年12月1日現在の推計人口は270,639人であり、人口減少が進んでいる状況で
ある。
2.調査内容
【1】中学校統廃合について
(1)統廃合に至るまでの経緯・課題等
①小中一体型としての考え方について
平成24年4月、下関市立豊田西中学校と下関市立豊田東中学校を統合し、新たに
下関市立豊田中学校を開校しているが、学校統合にあたって小中一体型の検討は行
っていないとのことである。
また両校の統合については、平成21年5月に策定した下関市立学校適正規模・適正
配置基本計画に基づいて進めているが、現在の基本計画上、小中一体型の統合パタ
ーンは示されていない。
基本計画については、現在、次期計画(平成27年度~)の策定に向けて検討を進め
ているが、平成26年6月に下関市立学校適正規模・適正配置検討委員会から市立小中
学校の適正規模・適正配置に関する答申が行われたとのことである。この答申の中
では、市内4か所で小中一貫化の考え方が示されており、豊田中学校区についても、
小中一貫化が示されたとのことである。
②保護者・住民の意見について
小規模化が進んだ豊田西中学校の保護者からは、部活動等で単独チーム編成が困
難になるなど、以前から学校の小規模化が課題として認識されており、統合を希望
する意見が多くあったとのことである。
豊田東中学校の保護者については、学校位置を豊田東中学校にする方向で検討が
行われたこともあり、特に反対する意見はなかったとのことである。
また各地域住民は、「中学校の統合については仕方ない」という意見が多かった
とのことであった。
③住民説明会の回数について
豊田地区の中学校統合では、平成23年1月14日に開催された豊田西中学校PTA臨時
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総会で、学校統合に向けた協議を開始するとの結論が出されたことを受け、次のと
おり地元説明会や協議会の設置を行い、平成24年4月から豊田中学校が開校している。
平成23年1月18日 豊田中小学校保護者説明会(西中校区の小学校)
21日 殿居小学校保護者説明会(西中校区の小学校)
※保護者より学校統合検討協議会を設置し、協議を本格化の要望
があった。
↓
平成23年2月4日
地元説明会
※学校統合検討協議会の設置にあたっては、自治連合会長、小中
学校PTA会長、小中学校長を委員構成としていただきたいとの
意見でまとまった。
↓
平成23年2月16日 豊田地区中学校統合検討協議会設立準備会
※委員構成(自治連合会長、小中学校PTA会長、小中学校長)を決
定。
↓
平成23年3月23日 第1回下関市豊田地区中学校統合検討協議会(全2回開催)
↓
平成23年5月16日 第1回下関市豊田地区統合中学校開校準備協議会
※委員構成は地域住民、保護者、学校教職員の計17人である。
協議会、各部会の開催数は次のとおりである。
・開校準備協議会(全8回)
・総務部会(全7回)
・学校運営部会(全3回)
・PTA、スクールバス部会(全4回)
(2)統廃合に対するいじめ等の対策について
統合前における取り組みは、次のとおりである。
・クラスマッチなど学校行事の合同実施
・部活動の合同練習等を実施
統合後における取組は、次のとおりである。
・スクールカウンセラーの派遣
・前学校からの人事異動による継続的な指導体制の確保
・学校において、アンケートを実施
・学校において、統合対象地区の生徒が混在するような意図的な班編制などを実施
統合前後の取り組みついて、現場からは「生徒からは好意的に受け止められている。
また学校においては、活気が出た」との意見が出されたとのことである。
(3)スクールバスの活用について
統合によって通学距離が長くなった豊田西中学校区の生徒を対象に、スクールバス2
台(北ルート・南ルート)を運行している。
各ルートは次のとおりである。
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(4)施設跡地の利用について
跡地利用について、下関市豊田地区統合中学校開校準備協議会で協議が行われ、次の
とおり意見が集約された。
・体育館、ランチルーム、グラウンドは引き続き地元で利用
・災害時の避難所として利用
・地域のスポーツ行事の開催場所として利用
・現状を変更する場合は地元説明会等を開催し地元の意見に配慮すること
現在(平成26年度)の利用状況は次のとおりである。
・校舎:書類、物品の倉庫
・屋内体育館:地元のバレーボール練習などで利用
・運動場:地元のグランドゴルフなどで利用
今後の活用方法については、市長部局とも連携して、検討を進めていくとのことであ
る。
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(5)開校後における評価(メリット・デメリット等)
○メリット(統合や統合準備で評価できるもの)
※クラス替えができる学校規模の実現
開校した豊田中学校は、平成24年5月現在、全校生徒131人で各学年2学級の合計6
学級となり、全ての学年でクラス替えが可能になるなど、様々な教育活動を実践で
きる教育環境が実現している。またこの学校規模について、校区の児童数の状況か
らは、今後も維持できる見通しとのことであった。
※学校行事の活性化
生徒数の増加により、体育祭などで多様な種目が設定できるようになるなど、学
校行事が活気あるものになったとのことである。
※人間関係の広がり
生徒数の増加により、人間関係が広がり、様々な個性との触れ合いを生んだとの
ことである。
※遠距離通学支援と通学の安全確保
学校統合に伴う通学区域の拡大について、旧豊田西中学校区にスクールバス2台
を運行し、遠距離通学の支援により、通学の安全を確保している。また、スクール
バス運行にあたっては、開校準備協議会等で具体的な運行案を示す中で協議を進め、
保護者の理解に基づく運行ルートの設定等を行ったとのことである。
※統合前の生徒交流
統合前、豊田西中学校と豊田東中学校は合同の華山登山やクラスマッチ、授業な
どの交流行事を実施している。さらに部活動では、野球部とバレー部で両校合同チ
ームを編成し、卓球部は週休日に合同練習を行うなど活発な交流を行った。こうし
た取り組みは、生徒同士の交流を深め、統合校の円滑な開校に貢献したとのことで
ある。
※地域全体での教育環境の検討
学校統合検討協議会及び開校準備協議会を豊田地区全ての小中学校PTAや自治会
の代表者で組織したことで、広く地域や保護者の意見を聞くことができ、地域全体
として子どもたちの教育環境を考えることができたとのことである。
○デメリット(統合や統合準備での課題)
※統合校の「学校像」と教育活動の検討
統合校の開校にあたっては、統合校の学校像などを明確にした上で、教育活動そ
の他の学校運営について十分に検討する必要があるとのことである。これには学校
教職員による検討、協議が不可欠であり、その意見を反映させることで、より専門
的かつ具体的なものとなるように取り組む必要があるとのことであった。
※学校施設等の改善
統合校の学校施設等は、既存のものを有効活用することが原則であるとのことだ
が、統合校が目指す教育活動を可能とし、統合の効果を十分に引き出すことができ
る学校施設等の整備が必要であるとのことである。
※廃校後の跡地利用
廃校施設等は、地域住民の意見や統合校の施設状況等も踏まえ、幅広く検討し、
早期に有効活用されるよう関係機関が協力して取り組む必要があるとのことであ
る。
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※十分な準備期間の確保
統合校の開校にあたっては、上記の課題を解決するためにも、開校準備協議会の
協議とその協議結果を踏まえて進められる統合の準備作業に十分な期間を確保す
る必要があるとのことである。具体的には、開校準備協議会での協議とその後の準
備に、それぞれ1年以上の期間を確保することが望ましいとのことであった。
また十分な準備期間の確保には、統合の検討を早くスタートすることが重要であ
り、学校の小規模化が進む地域では、保護者や住民への情報提供や意見交換等を通
じて、教育環境の現状や課題に関する認識を深めていく必要があるとのことであっ
た。
【2】下関市立中央図書館公立化について
(1)指定管理者制度になった経緯
下関市立中央図書館は中央公民館・下関市文化会館・下関市婦人会館を再編し、生
涯学習機能や中央図書館機能を有する社会教育複合施設「下関市生涯学習プラザ」の
一つとして、平成22年3月に開館している。
また民間の経営ノウハウや技術力を活用し、効率的かつ効果的な事業推進を図るた
め公設民営(DBO)方式としている。
主な経緯は次のとおりである。
・平成9年
議会において「文化ホールを設置することの請願」を採択
・平成11年
図書館改築基本構想策定
・平成13年
第四次下関市総合計画前期基本計画の中に、中央公民館、文化会館、
婦人会館、図書館を含めた生涯学習複合施設整備が盛り込まれる
※都市整備部において、市街地再開発事業手法での検討調査等の実
施
・平成15年
PFI手法導入可能性調査(アンケート調査、関係団体との協議)
・平成16年6月 合併協議会において、新市建設計画の中に位置付けられる
・平成17年3月 基本計画(案)の策定
・平成18年2月 整備手法の変更・決定(PFI→DBO(公設民営方式))
・平成18年3月 事業計画方針の公表、パブリックコメント公表、事業者・住民・利
用者団体等を対象とした説明会の開催
・平成18年5月 告示及び入札説明書等の公表
・平成18年7月 3グループから参加表明書が提出
・平成18年10月 最優秀提案事業者選定(三菱商事グループ)→基本協定締結→失格
・平成19年2月 次順位者(原弘産グループ)との契約交渉の終了
・平成19年3月 告示及び入札説明書等の公表(再)
・平成19年7月 最優秀提案事業者選定(合人社計画研究グループ)→基本協定締結
・平成19年8月 基本契約の締結(平成21年3月31日完成予定)
・平成20年3月 実施設計及び解体工事完了
・平成20年5月 起工式
・平成22年2月 竣工
・平成22年3月 竣工式・開館(20日)
(2)指定管理者制度における結果・評価(メリット・デメリット等)
○指定管理者制度におけるメリット
①開館日数、開館時間の拡大
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開館時間の拡大について、市直営時代は9時30分から17時までであった。指定管
理者制度導入後は9時から20時までであり、一部(5階部分)については21時までの開
館時間となっている。
また開館日数について、市直営時が年間287日開館であったが、指定管理者制度
導入後は年間342日開館している。市直営時の休館日は毎週月曜日や祝日が休館日
であり、指定管理者制度導入後の休館日は月1日や館内整備・蔵書点検期間・年末
年始のみとのことである。
②図書資料の貸出者数、貸出冊数の増加
※下関市立中央図書館の利用実績
貸出冊数
入館者数(人)
20 年度
509,669
-
21 年度
327,751
-
22 年度
873,030
614,271
23 年度
932,992
581,026
24 年度
948,679
560,564
25 年度
1,009,547
571,489
・20年度は旧下関市立図書館
・21年度は、4月から10月までの7か月間と開館後の11日間
③IC機器(自動貸出機、予約ロッカー、読書通帳機、ゲートアンテナ、自動書庫)の
導入による利便性の向上
○指定管理者制度におけるデメリット
指定管理者制度におけるデメリットについては、図書館が収益を目的としない市民
サービスであるため、指定管理による運営では運営の効率化を図るために人件費部分
を抑制することになり、市民サービスや図書館機能の低下が考えられるとのことであ
る。
下関市はこれからの図書館に求められているサービスについて、地域の課題解決や
利用者に対応したサービス、レファレンス等の情報サービスの充実ということを考え
ている。そのためにもサービス向上が重要であり、サービス向上を図るために図書館
に勤務する図書館司書や職員等の経験に基づくマンパワーが必要不可欠とのことで
ある。
しかし、収益性のない図書館業務における効率性の追求は、人件費削減に及ぶこと
が考えられ、営利を目的とする民間企業では十分なサービスが提供できない仕組みに
なりやすいとのことである。
実際に下関市においては、指定管理期間中に中央図書館スタッフの人数が最大35人
から現在の27人まで減少している。
また文部科学省が「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」(平成24年12月19日
文部科学省告示第172号)において、市町村における図書館の役割について、次のよう
に示している。
●地域の課題に対応したサービス
市町村立図書館は、利用者及び住民の生活や仕事に関する課題や地域の課題の解決
に向けた活動を支援するため、利用者及び住民の要望並びに地域の実情を踏まえ、
次に掲げる事項その他のサービスの実施に努めるものとする。
ア 就職・転職、起業、職業能力開発、日常の仕事等に関する資料及び情報の整備・
提供
イ 子育て、教育、若者の自立支援、健康・医療、福祉、法律・司法手続等に関す
る資料及び情報の整備・提供
ウ 地方公共団体の政策決定、行政事務の執行・改善及びこれらに関する理解に必
要な資料及び情報の整備・提供
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●利用者に対応したサービス
市町村立図書館は、多様な利用者及び住民の利用を促進するため、関係機関・団体
と連携を図りながら、次に掲げる事項その他のサービスの充実に努めるものとする。
ア (児童・青少年に対するサービス) 児童・青少年用図書の整備・提供、児童
青少年の読書活動を促進するための読み聞かせ等の実施、その保護者等を対象
とした講座・展示会の実施、学校等の教育施設等との連携
イ (高齢者に対するサービス) 大活字本、録音資料等の整備・提供、図書館利
用の際の介助、図書館資料等の代読サービスの実施
ウ (障害者に対するサービス) 点字資料、大活字本、録音資料、手話や字幕入
りの映像資料等の整備・提供、手話・筆談等によるコミュニケーションの確保、
図書館利用の際の介助、図書館資料等の代読サービスの実施
エ (乳幼児とその保護者に対するサービス) 乳幼児向けの図書及び関連する資
料・情報の整備・提供、読み聞かせの支援、講座・展示会の実施、託児サービ
スの実施
オ (外国人等に対するサービス) 外国語による利用案内の作成・頒布、外国語
資料や各国事情に関する資料の整備・提供
カ (図書館への来館が困難な者に対するサービス) 宅配サービスの実施
(3)再度、公立化の図書館として運営することになった理由
下関市では図書館における指定管理制度について、平成25年10月に図書館運営協議会
の委員とともに佐賀県武雄市(図書館民営化)、伊万里市(公立図書館運営)の図書館視察
を行っている。
視察後、図書館運営協議会で佐賀県武雄市、伊万里市の図書館視察を踏まえた上で協
議を行ったところ、「市民の知的財産をどのようにして市民に提供するか」「営利を目
的にしない図書館運営において、指定管理者制度はなじまなく、市民サービスの低下を
招く」などの意見が出され、「指定管理者制度ではなく、直営するべきだ」という意見
が多数を占めたとのことである。
それらの意見を踏まえた上で、下関市教育委員会においては下関市立中央図書館の公
立化という結論に達したとのことである。
またこれまでの議会においても、一般質問等で公立化を望む意見が多かったとのこと
である。
平成26年3月には教育委員会から市長に対して、下関市立中央図書館公立化について、
検討してきた経緯についての説明を行い、市長においても下関市立中央図書館公立化と
いう結論に達したとのことである。また平成26年6月議会において、「平成27年度から
の図書館運営については、直営に戻したい」という報告を行い、議会においても反対意
見はなかったとのことである。
平成26年9月における市長記者会見で、市長は「図書館はビジネスになじまない。お
金に換算できないところに価値があるので、市として責任を持って運営をやるべきでは
ないかと感じていた。市の方針が変わったということだ」と説明している
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■まとめ
【1】中学校統廃合について
現在、西都市では3校において、施設一体型小中一貫教育を実施している。これは「西
都市立小中学校の学校再編に関する西都市教育委員会方針」の中で示されている。再編の
方法としては、学校の統廃合は行わず、これまで実践してきた「連携型」や「施設一体型
小中一貫教育校の設置」などで学校・地域の実状、地理的条件などに即した一貫教育を発
展、推進している状況である。
前回調査した岐阜県瑞浪市においては、平成16年度に中学校統廃合における結論を得て、
平成22年度から小規模な住民説明会等を約80回開催しており、平成28年度から開校を目指
している。今回調査した下関市においても、平成21年5月に計画を策定し、平成23年1月か
ら住民参加型の協議会を約30回開催している。そして平成24年度から中学校統廃合による
学校を開校している。このように中学校統廃合に関しては、多くの住民説明会や協議開催
を重ね十分に議論し、中学校統廃合を実施している。しかし下関市としての反省点として、
今回以上の検討時間が必要だったとのことであり、十分な期間を確保する必要があるとの
ことであった。また準備期間確保のためにも、教育環境における検討会を早くスタートす
ることが重要であり、学校の小規模化が進む地域では、保護者や地域住民への情報提供等
を行い、教育環境の現状や課題等について協議する必要があるとのことである。
保護者や地域住民等の意見についても、岐阜県瑞浪市・山口県下関市は同様の意見が多
く見られている。保護者からは子どもたちの影響を考慮し、統廃合に前向きな意見が多く
みられる。また地域住民の方は説明会等により、中学校統廃合賛成の意見が多いとのこと
である。本市においても、保護者や地域住民に対し積極的な情報提供や意見交換会を行い、
施設一体型のメリット・デメリット、中学校統廃合におけるメリット・デメリットを議論
する必要があると感じたところである。
先日、文部科学省が小中学校の統廃合を検討する際の指針となる「手引き」を約60年ぶ
りに改定した。手引きにおいては小規模学校による課題等も挙げられている。一方で地理
的な事情や地域コミュニティーの核として小規模校を残す選択も提案されている。
本市の各中学校の状況においては、今後も生徒数の減少により、学校の小規模化、学校
規模の格差の拡大が進むことが予想される。今後の地域のあり方や子どもたちへの影響等
について、さらに調査研究を行い、住民に対し積極的に情報提供等を行った上で、住民と
ともに充実した教育環境を構築していく必要があると感じたところである。
【2】下関市立中央図書館公立化について
下関市では下関市立中央図書館について平成22年度から指定管理者制度を導入し、民間
の特別目的会社が運営を行ってきた。指定管理者制度導入後においては、開館日数や開
館時間の拡大を図り、下関市立中央図書館の利用者数や貸出冊数が約2倍に増加した。
このように下関市立中央図書館では、指定管理者制度導入し結果を出してきたところで
あるが、平成27年度から市直営で運営するとのことである。その最大の理由として挙げ
られているのは、人件費抑制による市民サービスの低下である。
全国の自治体で、行財政改革の一環から各方面において指定管理者制度導入が進む中、
下関市では公立化に戻すことを決定した。現在、図書館に求められているサービスにつ
いては、地域の課題解決や情報サービスの充実であり、そのためにも図書館に勤務する
図書館司書や職員等の経験に基づくマンパワーが必要不可欠とのことである。
今回の下関市立中央図書館公立化については、図書館運営協議会委員や議会において
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も、異論はなかったとのことである。現在、本市においても図書館運営を行っており、
文部科学省が「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」に照らし、地域の課題に対応
したサービスや利用者に対応したサービスを十分に検討し、図書館における地域の役割
を十分に考慮した上で、図書館運営を行わなければならないと感じたところである。
下関市立中央図書館が入る
下関市生涯学習プラザ
下関市立中央図書館内の様子
下関市教育委員会の説明を受ける
文教厚生常任委員会の委員
12/13
下関市教育委員会の説明の様子
(中学校統廃合について)
下関市教育委員会の説明の様子
(下関市立中央図書館公立化につ
いて)
研修会場の下関市役所庁舎前
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