学校保健 毎日,元気に過ごせる生徒を育てる健康教育 -ライフスキルを活用する授業づくり- 1 研究の概要 本校学校保健では,生徒が生涯にわたって明るく豊かで活力ある生活を営み元気に過ごせるよう に,QOLの向上を目的としたヘルスプロモーションの考え方を取り入れ,学校教育活動全体を通 じて生徒が自らの健康問題を主体的に解決するための技能を高めていく健康教育の在り方を研究し てきた。なかでも,保健学習において,学びの連鎖を意識した小中の連携カリキュラムを構想し, 学習方法として,問題解決的な学習,参加型学習,ライフスキルの活用,養護教諭の専門性や特 性を生かした関わり,道徳教育との横断的・総合的な学習などに取り組み,自己肯定感の向上と 適切な行動を選択する実践力の育成をめざした。 2 今年度の取り組み 1年1組 -公開授業について- 「休養・睡眠と健康」 名古屋有美子 ライフスキル教育の手法を活用して,授業の企画・運営を生徒の 進行班と発表班が行う参加型学習を展開した。 課題「疲労を回復するためには,どのような方法があるだろうか」 について,心身の疲労の種類とその回復方法に関する調査・研究の 結果を,ICTの活用により発表班にプレゼンテーションをさせた。 その後,養護教諭が,睡眠のサイクルや睡眠に関わるホルモン等 図1 班活動での意見交流 睡眠の仕組みに関して補充的・発展的な助言を行った。 ここまでで得られた科学的な知識をもとに,問い「”睡眠力”アップのために,私たちはどのよ うな工夫をするとよいのか」について考えさせた。まずは各自で思考し学習シートに記入させた後, 班活動での意見交流を通してさらに考えを広げ深めさせた。問いについて思考し意思決定する際の 支援として,保健室利用者の状況や学級でのアンケートの結果などの情報を提示することより,生 徒自身の生活実態を分析させ,生徒自身の問題として”睡眠力”アップの方法を考えさせた。 3 今年度の研究について (1) 成果 ① 附属小・中学校では,昨年度まで保健指導や児童会・生徒会活動など主に特別活動において 連携を図ってきたが,本年度より保健学習における連携も開始した。この連携にあたり,新た に「カリキュラムデザイン」「学力デザイン」「学校保健連携プラン」を作成した。児童生徒 の発達段階を踏まえてステージ及びレベルごとの学力の内容を整理し,小中において一貫性の ある保健学習を展開するための重点を明確にすることができた。 ② 小・中学校で同一題材「睡眠」を設定して,其々の授業実践に取り組んだ。”睡眠の仕組み” について科学的に思考し理解できるようにするために,児童生徒の発達段階に則してどのよう な学習の展開方法が有効であるか検証を行った。また,小・中学校ともに習い事や家庭学習等 のため就寝時間が遅いという実態があり,睡眠時間の長短ではなく各自のライフスタイルに合 った睡眠プランを考えさせ実践させる必要性が明らかになった。 ③ 単元の授業課程において、生徒が自ら課題を設定し,課題を探究,まとめを報告するという 授業を展開した。課題の発見から発表までのプロセスを経験させ,さらにその成果を共有させ ることによって,学習内容への関心を高めることができた。 1時間毎の授業の企画・運営を生徒の進行班・発表班に担わせた。授業毎に行う事前打合せ に時間確保が困難な場合もあったが,生徒が授業に主体的に関わろうとする姿が見られた。 課題に対し適切な目標設定や行動選択に結びつけるために,班単位または学級全体での意見 交流を行わせた。コミュニケーション活動を通して,個々の考えに広がりや深まりをみること ができた。 ④ 昨年度に引き続き,養護教諭単独での保健学習の授業実践を行った。第1学年において,単 元「心身の発達と心の健康」と,学習項目「休養・睡眠と健康」「生活習慣病の予防」の授業 を構想した。授業において,学級集団に対し最近の保健衛生学的事象や保健室での生徒の実態 などを働きかけることによって,生徒自身に課題を自分のこと身近なこととして捉えさせ,よ り生活実態に合わせた解決方法を考えさせることができた。また,保健室等での生徒への個別 対応においても,授業で学習した内容を振り返らせて保健指導をすることができた。 (2) 課題 ① 保健学習の領域別に小・中学校の学力の系統的なつながりを検証し,「学力デザイン」と「学 校保健連携プラン」の整合性を図る必要がある。 ② 実態に即した学習内容・学習方法を検討するために,生徒の生活実態・健康実態についての 調査と分析が必要である。 ③ 健康課題に対し生徒が適切な行動を選択する実践力を育むために,保健学習における科学的 な知識理解を他教科・道徳・特別活動にも関連させる計画が必要である。 ④ 自己肯定感の向上と実践力の育成をめざす保健学習の方法について,授業における指導技 術も含めて改善していく必要がある。 4 今後の展望 ① 保健学習の領域別に「学校保健連携プラン」を見直し・修正し,発育・発達のプロセスに即 した学習内容と方法を設定する。 ② 生徒の健康実態・生活実態について調査を行い,課題を明らかにする。また,小学校におけ る児童の課題との関連を分析する。 ③ ④ 附属小・中学校ならではの課題に迫る保健教育の内容を探り,年間指導計画を作成する。 自己肯定感の向上と実践力の育成をめざし,保健学習において生徒が主体的に学ぶことがで きる学習方法とライフスキルを活用して思考力を高める授業づくりの実践・検証に取り組む。 また,他教諭や校外機関との連携や,教科・道徳・特別活動を関連させた横断的・総合的な 学習を構想する。 ⑤ 積極的保健室経営として,養護教諭の職務の特質や保健室の機能を生かした保健教育を構想 し,「21 世紀型能力」の育成について研究を進める。
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