共同店舗運営研修全国大会 通常総会に引続き、平成 27 年度全国大会が 7 月 22 日(水)、東京グランドホテルで開催し た。第一部は、有限会社 商売繁盛応援団の木越和夫氏より、「商売繁盛の特効薬」のテー マについて、また第二部は、経済産業省 中小企業庁経営支援部商業課 伊藤三郎課長補佐 より、 「免税店一括カウンター設置申請手続」のテーマについて、ご講演頂きました。会場 には、約 60 名の組合員の役職員が参加した。 【第一部の基調講演】 講 師 有限会社商売繁盛応援団 団長 木越 和夫氏 テ ー マ 「商売繁盛の特効薬」 講演内容 木越氏は、福井県小浜市の郊外で「お箸 の専門店(箸匠せいわ)」を創業し、観光 バスで来るお客様を相手に商売している お土産店です。近年、業法改正により観 光バスの集客数が約 50%減少し、大変厳 しい経営状態であったが、 「箸匠せいわ」 (有)商売繁盛応援団 団長 木越和夫氏 の経営学「なぜ売れる? 一膳あれば いい箸が;」にそって、 「小さな知恵」 「小さな工夫」 「小さな努力」の積み重ねにより、 「売り手の発想」を、完全に 「お客様の立場」になって、「どのような店」 「どのような商品」 「どのような接 客」であれば買いたくなるか、という「買い手の発想」に大転換し、知恵を絞っ て演出や工夫を重ね、数々のアイデア商品等を生み、お店を繁盛させた成功事例 について、大黒衣装姿で熱く語り、また実際に生みだした商品(箸)を見せ、また 生みだしキッカケ等についての「知恵」 「工夫」「努力」等を説明し、たまにダジ ャレ(ゴロ合わせ)を入れ、ユニークで楽しいご講演を頂きました。 1. 「小さな知恵」 「小さな工夫」 「小さな努力」の積み重ねで新商品を生み出した事例 ●売上を 10%(10/100)アップさせる基本理念 どのようにして、売上を10%上げるかについて、 「集客数」 「客単価」 「来店頻度」 等について、成功する確率が 1/100 の「知恵」と「工夫」を 10 個考え、その 10 個 を行動に移すことで 10/100(1 割)になります。成功する確率が 1/100 の小さな知恵・ 小さな工夫・小さな努力の積み重ねが大切である。 ●アイデア商品の成功実例とお客様に感謝の言葉を伝えるフレーズ(ゴロ合わせ) 〇「商売繁盛箸」 普通の箸に「鈴」と「ひょうたん」をあしらっ た商品で、この箸で食事をすると「鈴生り」に なり、明日から「商売繁盛」しますというフレ ーズで、縁起のいいお箸を工夫して生みだした 商品。不景気になればなるほど売れるアイデア 商品で、一般企業、新年会、新春講演会等の参 加者に配布されている大変人気商品です。 また、店内で「商売繁盛箸」を買われたお客様には「この箸は鈴とひょうたん でお客様が鈴なりになるという縁起のいい箸です。明日から、商売大繁盛です。 おめでとうございます。 」と言ってお礼を伝えると同時に、「売れる、売れる、 大繁盛」といったテンポで鐘を鳴らしながら踊るというお客様を巻き込んでい くアクションを付けたパフォーマンスを披露する。笑いはお客様に感動を与え、 心を和ませ、お客様と社員が親しみやすくなり、その結果として買い上げにつ ながる重要な要素である。 〇「金運独楽」 普通の民芸玩具「独楽(こま)」に「金」という文字 を入れ、金まわりがよくなるというキャッチコピ ーを入れたアイデア商品で、生損保等の販促品に 利用されている。 ●お箸に「鈴とひょうたん」をつけ、独楽に「金」と印字しただけで、小さな知恵と 工夫により、本体となんら変わらない商品を新しい市場に提供する。今は、明るく、 元気の出る、笑いのある商品が求められています。 2.不良品から生まれた新商品の事例 《もったいない精神を活かす⇒無料のものに知恵と工夫を考えて付加価値をつける》 〇「防災ばし」 お客様の声をヒントに、普通より細くて長い竹製の菜箸 (さいばし)に「防災ばし」という文字を入れた商品で、全 国の消防署や自治体などが地域の住民の防災意識を高める ために行う防災イベントで、参加者への記念品・粗品とし て配っている。この商品も語呂合わせからできた商品です。 〇「ダイエット箸」 「防災ばし」の素材は、天然の竹で細く長く仕上げる段階で曲がってしまい、 多く不良品が出やすく、ゴミとして廃棄処分されていたが、大きく曲がって食 べにくい箸を、「ダイエット箸」と名付けて商品として販売した。「太る人は早 食い」の傾向があるので、一善の箸をヒモで止め、曲がっている箸は、食べに くいことから食事をゆっくり食べることで、ダイエットに繋がる商品として販売 している。 〇「はしブロック」 箸を作るときに発生する端材(2~3 センチ)をもったいないので、それを利用し て「楽しいはしブロック組立」を考え説明書をつけて、保育園・幼稚園・小学 校低学年の子供たちの夏休み教材として、また「セメダイン」もセットで販売 した子供用の大人気商品です。 〇その他一本の箸から生まれた売れ筋商品 「果物やお菓子用のフォーク」 「納豆かきまぜ棒」「コーヒー・水割り用等の マドラー」 「焼酎に入れる梅干をつぶす梅つぶし棒」 3. 「困っている」ことを解決する商品が売れる事例 《お客様のつぶやき「あつたらいいなあ」をヒントにした新商品》 〇「ご縁結びはし」 普通の一善の箸に赤い糸で五円玉を結び付けた商品で、良縁に恵まれるよう にと、お客様の「つ・ぶ・や・き」から生まれた商品の一例で、全国仲人協 会や結婚相談所等で大変人気商品です。 店内で販売するときは、「この箸を使って毎日食事をしていると、すぐに良 縁が舞い込んでくるかもしれません」と前置きし、買ったお客様やまたプレ ゼントするときに、 「きっと幸せになれますよ、頑張って下さい」と声をか けることを店員に徹底している。 ○「健康箸」 健康を願うお客様の「つ・ぶ・や・き」で大ヒット商品を開発し、当社の売 上げの30%を占めている。この健康箸は、持ちやすく、指のツボを刺激す るように、ねじれた窪みをつけている商品です(健康サンダルからヒント)。 〇「子宝箸」 「子供を授かる箸がないかな」というつぶやきから生まれた商品 〇「安産箸」 安産を祈願する箸で、親等の祈りを買っている商品 〇「競馬箸」 競馬で勝つ「馬よ箸れ」 ○「勝 箸」 パチンコ等の勝負に勝ちたい ○「元気箸」 この箸を使って食事をすると、元気になる ● お客様の「つぶやき」をヒントに商品開発することから、コストもかからない ので、あまり難しく考えず、とりあえずやってみることが大切である。 ● 物を売るな、価値を買っていただくことが大切で、人が困っていることを解決 する商品をお客様に提供することによって、夢、希望、快適、幸福を買ってい ただける、これが商売の基本。 ● 困っていることの解決につながるネーミングを考える。 4.人にプレゼントして喜ばれる商品が売れる事例 ○「夫婦円満の箸」 新商品の企画にあたって、 「簡単に手に入りそうにないもの」 「話のネタになり、 話題として取り上げられやすいもの」を考え、両親、息子夫婦、娘夫婦等の幸 せと円満を願って企画した「サプライズ商品」で、商品のしおりには「夫婦円 満の秘訣」を書き、 「箸匠せいわ」の話題性もアピールすることが大きな付加 価値となる。 ● お箸という商品自体にほとんど違いはなくても、ネーミングを工夫することで、 お客様にプレゼントすると喜ばれる。小さな知恵と小さな工夫を考えることが大 切で、自分が相手に「プレゼントしたいと思う商品」は売れる。 5.時代の流れに沿ったアイデア商品は売れる事例 ○「就職祈願の箸」 昨今の就職氷河期を逆手に取った新商品で、五角形 にした五角(=合格)の箸を朱色にし、「就職」とかけ たダジャレですが、採用試験に合格して就職できる ように願いを込めた考えたアイデア商品で、時代に 即応したお箸を提供したヒット商品です。 ○「幸福のかけはし」 《女性の大好きな言葉を使用する》 虹色で、ロマンチックなペアの箸で、女性は「幸福」 という夢が広がる言葉が大好きで、形・色・デザイ ン・ネーミングを考えて、この箸を使うと「倖せに なりそう」 「倖せがつかめそう」そんなイメージが 広がる箸で、女性の心をキャッチすることが大切と 思われる。結婚祝い等に喜ばれている。 6.商品の価値を伝えるには「わかりやすさ」が大切 ○「六角知能ばし」 幼児・子ども用として年齢別(2歳~5歳)に鉛筆と同じ六角形で持ちやすい開 発し、正しいお箸の持ち方・練習の仕方を文章と絵(キャラクターのデザイン 「ポポとミミ」)を使って、お客様に「この箸を使うと字も上手になり、手先 が器用になり、頭の体操になり、よりお利口な子供さんに育たれます。よろこ ばれますよ」とキャッチフレーズを使い、感謝の基持ちを「わかりやすく」伝 える。 現在は、全国約1万8千ヵ所の保育園、幼稚園での使用実績を持ち、幼児用の 箸の販売で日本一の実績となっている商品です。 ●商品に価値があるから売れるのではなく、その商品の価値をお客様の伝え、お客様 が認めることによってはじめて売れる。その共通点は、 「わかりやすさ」なのです。 それには、価値を伝える工夫と知恵が不可欠です。 ○「当選箸」 1本の5角形の箸を2本(一善)で十角、すなわち「トウカク」。 一本の箸に紅白の五本線を入れて一善で十線、すなわち「トウセン」とい 語呂合わせで、箸の先には「すべり止め」の加工を施し販売した。 現在は、公職選挙法が改正され有権者に金品を配ることができない、当時 は空前の大ヒット商品となりました。 ○「宝くじ当選ばし」 「当選箸」に佐賀県の宝当神社のお札とラ ッキナンバーを占うための数字のシールを 付け、占い方の説明を加えると「宝くじ当 選はし」に変身し、商品を買うことによっ て、夢が叶うかなという遊び心で売ってい る。また、 「宝くじ当選はし」を購入すると 店のスタッフが、お客様に「何等が当たっ てほしですか」と尋ね「一等」と答えます。 店内に響き渡るよう大きな声で、「当たる、 当たる、一億円。はい、おめでとうございます」と周囲の客様を巻き込ん でいくアクションを付けたパフォーマンスを披露することによって、笑い はお客様に感動を与え、心を和ませ、お客さと社員が親しみやすくなり、 買い上げにつながる重要な要素である。 ●商品を売りに行くのではなく、お客様が困っていることを見つけ、それを解決す る商品を作ることが、売上アップに繋がる。 ●お箸というモノを売っているのではなく、このお箸を使ったら、「こんないいこ と」 「楽しいこと」 「幸せ」 「満足がある」ことを遊び心で企画することが大切で す。 ○「合格祈願箸」 受験生の合格祈願用の箸で、買われたお客様には、 「受験生さんお持ちでいらっしゃいますか。大変で すね。このお箸で一杯食べてもらって風邪を引かな いように受験して下さい。五角形ですから、合格マ チガイナシです」というフレーズで、お礼の言葉を 一言、加える運動している。 7. 「お客様を呼び込む経営(集客なくして売上なし)」 ⇒ お客様を呼び込む仕掛け(具体案と手法) ① その店その商品のイメージのあった看板を出す ○「絵」は、理屈抜きで「楽しさ」が伝わり、イメージしやすく、 「リアリティー」 を伝えるには「写真」も効果的で、業種によっては、店長の似顔絵、その商品 のイメージのキャラクターを描くことが大切。 ② 買いたくなる、入りたくなるキャッチコピー等を研究する 《お客様は、 「セール」という言葉には飽きている》 ○若者層をターゲットとする場合は、「四コマ漫画」で文面は横書き、折込チラ シよりポスティングやハンディングの方が効果ある。 ○正確なデータがるなら、 「年間約 10,000 円の節約になります」より「9,875 円 の節約になります」の方が伝わります。 ○ポジティブな言葉で伝える お客様の購買意欲を高めるには、 「ワクワク」 「ウキウキ」 「ドキドキ」 「楽し い」 「うれしい」 「ユニーク」 「わあ~、素敵」 「びっくり」 「ハッピー」 「幸せ」 「ありがとう」 「かっこいい」「明るい」「最高」 「感謝」「感激」「満足」「ス ゴイ」「いますぐ」 「いまだけ」 「○限定」等のポジティブな言葉をセールス トークに多く取り入れ、チラシ等を作成して下さい。 ○ネーミング・キャッチフレーズで伝える ・商品に価値があってもネーミングが悪いと売れませんから、ネーミング でおいしさが伝わり、食べてみたいという食欲を刺激する言葉を考える。 ・高齢者向けターゲット商品の場合は、縦書きにした方が親しみをもって読 まれる「懐かしい」 「お母さん」「おやじ」「ふるさと」等 ・たとえば、 「天使のモンブラン」 「女王様のメロン」「牛肉ど真ん中弁当」 等また、大手企業等のテレビ、新聞、雑誌、CM,広告等を参考にして、 独自のキャッチフレーズを考え、ホームページ、パンフレット名刺、ポス ター、チラシなどでアピールする。 ③ 名刺を工夫する アイデアを売る会社なら、アイデアいっぱいの名刺、楽しさを売る会社なら、楽 しさを全面に出した名刺等で、自分を知ってもらい、会社、お店のアピールでき るように工夫すること。 「似顔絵」「顔写真」「キャッチフレーズ入り」等 ④ 店舗の演出(遊び心と楽しさが必要) 〇商品は昔の駄菓子屋さんふうに、ゴチャゴチャ感のある陳列にする「大盛況を 演出するには、売場を狭く感じさせ、ゴチャゴチャ感のある陳列方法が効果的 で、整然とした陳列方法より、ある程度ゴチャゴチャ感の遊び心のある売り場 の方が、楽しくお買い物をしていただける」 ○売り場スペースを狭くし、縁日やバーゲン会場のような活気に満ちた雰囲気を 演出 ○観光客を取り込む方法として、天井からのぼりや手書きのディスプレイ、のれ ん、すだれ等を吊るして注目を集め、お客の目が自然に手元の商品に向く工夫 している。また、壁に当店の理念やお客様へのメッセージ、商品の説明書を拡 大しいたるところに貼っている。 8. 「商売は演出(ストーリー)、小売りは祭りの経営」 ○店の中央に大きな福助の人形が置いてあ り、 「この福助に触れると、ご家庭に福 がやってくる」と案内をして福助に触っ てもらい、瞬間に造花の花を髪に差して 「とってもおきれいですよ」と話しかけ、 福助の隣に並べてある絹の小石(軽石)を 右手に「これが今評判の小石です。これ をお使いになると、お顔も、お肌もツル ツルになりますよ」と商品を手に握らせ てします。買っていただいた時は、「い ま、素敵な奥様に、お顔も、お肌もツル ツルになる「絹の小石」をご購入いただ きました。と周囲の人にも聞こえる大き な声でアピールすると、 「え? そんな 商品あるの?」とお客様が集まるように ストーリーを女性スタッフ全員に販売ストーリーを教育し、パフォーマンスであり、 演出であり、仕掛けなのです。こうした方法でお客様と社員が意気投合し販売に結 び付ける。 ○「宝くじ当選はし」を購入すると店のスタッフが、お客様に「何等が当たってほしで すか」と尋ね「一等」と答えます。店内に響き渡るよう大きな声で、 「当たる、当た る、一億円。はい、おめでとうございます」と周囲の客様を巻き込んでいくアクシ ョンを付けたパフォーマンスを披露する。 ○「商売繁盛箸」を購入した場合は、「売れる、売れる、大繁盛」といったテンポで 鐘を鳴らしながら踊る。 ○「ありがとうございます」をいわない運動 *ある美容院の例を参考にして 「ありがとうございます」 「ありがとうございました」という言葉は大変便利な フレーズな反面、お礼を一言で済ませるのでお客様にこちらの気持ちが伝わりに くい。そこで、ある美容室では、セットが済んでお客様を送り出すときに、 「そ の髪型、とてもお似合いですよ」「素敵になられましたね」というように声をか けてお客様を見送っている。 「店員はキャスト」 、 「売場は舞台」、 「店長は演出家」で、お客様に芝居を観るよ うに「ワクワク」 「ドキドキ」 「笑い」 「興奮する」しながら買い物を楽しんでもら うこと。 ●こういったパフォーマンスによって、笑はお客様に感動を与え、心を和ませ、お客 さと社員が親しみやすくなり、買い上げにつながる重要な要素である。 事務局:この他にたくさんのご講演の内容がありましたが、もっと詳しく知識を習得 したい方は、木越和夫氏の「臆病者の経営学」「小さな会社の商売繁盛の特 効薬」等の著書のご購読をお勧め致します。
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