資料 1-2 幹細胞・再生医学分野の基礎研究の主な取組について (科学技術振興機構作成資料) 文部科学省研究振興局ライフサイエンス課 戦略的創造研究推進事業 CREST・さきがけ 科学技術イノベーションにつながる卓越した成果を生み出す ネットワーク型研究 (チーム型) 研究総括の運営の下、研究代表者が研究チームを率いて産・学・官にまたがるネットワークを形 成し活用しながら、科学技術イノベーションに大きく寄与する国際的に高い水準の成果の創出を 目指す。 研究費(直接経費) 研究期間 総額1.5億~5億円程度/チーム 5年以内 科学技術イノベーションの源泉を生み出す ネットワーク型研究(個人型) 研究総括の運営の下、研究者同士が交流・触発しつつ独創的・挑戦的な研究を推進することで、 科学技術イノベーションの源泉となる成果の創出と将来の研究リーダーの輩出を目指す。 研究費(直接経費) 研究期間 総額3~4000万円程度/課題(3年型) 3年 または 5年 総額5000万円~1億円程度/課題(5年型) ※5年型は、現在募集しておりません。 2 研究領域の設定 戦略目標(2008年1月) 「細胞リプログラミングに立脚した幹細胞作製・制御による 革新的医療基盤技術の創出」 1.リプログラミング技術の高度化・簡便化 2.患者あるいは健常人由来の体細胞などから幹細胞を作製 3.疾患の発症機構に基づく革新的治療戦略、 薬剤副作用の検証技術等の確立 文部科学省から提示された本戦略目標の下、下記2領域を設定 ■CREST「人工多能性幹細胞(iPS細胞)作製・制御等の 医療基盤技術」 研究総括:須田年生 ■さきがけ「iPS細胞と生命機能」 研究総括:西川伸一 3 研究実施期間 H20年度 H21年度 H22年度 公募採択 H23年度 H24年度 中間評価 H25年度 H26年度 H27年度 事後評価 1年目採択課題 CREST 2年目採択課題 AMEDに移管 3年目採択課題 領域中間評価 公募採択 事後評価 5年型研究者はH25年度まで(1) 1年目採択課題 さきがけ 5年型研究者はH26年度まで(3) 2年目採択課題 5年型研究者はH27年度まで(2) 3年目採択課題 領域予備事後評価 領域事後評価 ( )内は5年型研究者数 4 CREST採択課題一覧(1) 研究 採択 代表者名 年度 石井 俊輔 H20 所属(課題終了時点) 役職(終了時点) 理化学研究所 石井分子遺伝学 上席研究員 研究室 岩間 厚志 H20 千葉大学 大学院医学研究院 教授 埼玉医科大学 ゲノム医学研究セ 教授 ンター 鳥取大学 染色体工学研究セン 押村 光雄 H20 教授 ター 奥田 晶彦 H20 古関 明彦 H20 課題名 胚細胞ヒストンによるリプログラミング機構 造血幹細胞のエピジェネティクスとその制御法の創出 iPS細胞誘導の為の分子基盤の解明による安全性の確保 ヒト人工染色体を用いたiPS細胞の作製と遺伝子・再生医 療 理化学研究所 免疫・アレルギー グループディレク ヒトiPS細胞の分化能と腫瘍化傾向を反映するマーカー遺 科学総合研究センター ター 伝子群の探索 佐谷 秀行 H20 慶應義塾大学 医学部 教授 人工癌幹細胞を用いた分化制御異常解析と癌創薬研究 篠原 隆司 H20 京都大学 大学院医学研究科 教授 精子幹細胞のリプログラミング機構の解明と医学応用の可 能性の検討 千住 覚 H20 丹羽 仁史 H20 熊本大学 大学院生命科学研究 准教授 部 iPS細胞由来の樹状細胞とマクロファージを用いた医療技 術の開発 理化学研究所 発生・再生科学総 プロジェクトリー 分化細胞に多能性を誘導する転写因子ネットワークの構 合研究センター ダー 造解析 米田 悦啓 H20 医薬基盤研究所 研究所長 人工染色体を用いた新たな細胞リプログラミング技術開発 井上 治久 H21 京都大学 iPS細胞研究所 教授 iPS細胞を駆使した神経変性疾患病因機構の解明と個別 化予防医療開発 江良 択実 H21 熊本大学 発生医学研究所 教授 iPS細胞を用いた組織幹細胞誘導の確立と分子基盤の解 明 斎藤 通紀 H21 京都大学 大学院医学研究科 教授 生殖系列におけるゲノムリプログラミング機構の統合的解 明とその応用 5 CREST採択課題一覧(2) 研究 代表者名 採択 年度 所属(課題終了時点) 役職(終了時点) 高倉 伸幸 H21 大阪大学 微生物病研究所 高橋 淑子 H21 京都大学 大学院理学研究科 教授 神経堤細胞をモデルとした生体内での細胞リプログラミング 法の開発 妻木 範行 H21 京都大学 iPS細胞研究所 組織幹細胞/前駆細胞を誘導するディレクテッドリプログラ ミング技術の開発 西田 栄介 H21 家田 真樹 H22 慶應義塾大学 医学部 黒川 峰夫 H22 東京大学 大学院医学系研究 教授 科 iPS細胞を用いた造血器腫瘍の病態解明と治療法の探索 花園 豊 H22 自治医科大学 分子病態治療 教授 研究センター ヒトiPS細胞の高品質化とその検証・応用 宮島 篤 H22 山村 研一 吉田 稔 教授 課題名 教授 京都大学 大学院生命科学研 教授 究科 専任講師 東京大学 分子細胞生物学研 教授 究所 熊本大学 生命資源研究・支 H22 教授 援センター 理化学研究所 吉田化学遺伝 H22 主任研究員 学研究室 生理的細胞リプログラミング機構の解明とその応用 細胞リプログラミングと分化における転写調節機構 直接リプログラミングによる心筋細胞誘導の確立と臨床へ の応用 肝分化指向性iPS細胞からの高機能性肝組織の構築 iPS細胞による肝臓ヒト化モデルの構築と治療実験 核エピゲノムとミトコンドリアゲノムの化学的制御とその応用 6 さきがけ採択課題一覧(1) 研究 代表者名 採択 年度 所属(現在) 役職(現在) 課題名 佐々木 えりか H20 (財)実験動物中央研究所 応用発 部長 生学研究部 iPS細胞を用いたヒト疾患モデルマーモセット作製法 の確立 荒木 良子 H20 (独)放射線医学総合研究所 研 室長 究基盤センター研究基盤技術部 iPS法と核移植法の比較による初期化機構の解明 岸上 哲士 H20 山梨大学 生命環境学部 教授 体細胞核移植におけるリプログラミング促進技術の 開発 清野 研一郎 H20 北海道大学 遺伝子病制御研究所 教授 細胞リプログラミング技術を用いた免疫細胞再生医 療の開発 升井 伸治 H20 京都大学 iPS細胞研究所 任意細胞の樹立法開発 松田 修 H20 鈴木 淳史 H20 九州大学 生体防御医学研究所 富澤 一仁 H20 熊本大学 大学院生命科学研究部 教授 蛋白質導入法によるiPS細胞作製技術開発 山田 泰広 H20 京都大学 iPS細胞研究所 教授 リプログラミングによるがん細胞エピジェネティック異 常の起源解明とその臨床応用 長船 健二 H20 京都大学 iPS細胞研究所 教授 多発性嚢胞腎患者由来のiPS細胞を用いた病態解 析 特定講師 京都府立医科大学 大学院医学研 教授 究科免疫学 教授 非ウイルス的手段によるiPS誘導法の確立 肝細胞分化関連遺伝子の導入による皮膚細胞から の肝細胞作製技術 7 さきがけ採択課題一覧(2) 研究 代表者名 依馬 正次 採択 年度 H21 所属(現在) 滋賀医科大学 動物生命科学研 究センター 大日向 康秀 H21 山梨大学 生命環境学部 役職(現在) 課題名 教授 Klfファミリーによる幹細胞機能制御の分子機構 客員准教授 始原生殖細胞形成機構とiPS誘導機構の統一原理 慶應義塾大学 医学部 眼科学教 特任准教授 室 センダイウイルスベクターを用いた安全なiPS細胞作 製と分化誘導 房木 ノエミ H21 片岡 宏 H21 枚方公済病院 iPS技術による血液、血管内皮細胞の誘導 栗崎 晃 H21 (独)産業技術総合研究所 幹細 チーム長 胞工学研究センター 岡山大学 異分野融合先端研究コ H21 准教授 ア リプログラミングを制御するクロマチン因子の作用機 序の解明 佐藤 伸 永松 剛 H21 九州大学 大学院医学研究院 堀江 恭二 H21 本多 新 李 知英 渡部 徹郎 奈良県立医科大学 生理学第二 講座 宮崎大学 テニュアトラック推進機 H21 構 東京医科歯科大学 難治疾患研 H21 究所 H21 東京薬科大学 生命科学部 細胞リプログラミングの段階的制御 助教 生殖細胞の特性に基づく新しいリプログラミング手法 の開発 教授 順遺伝学によるiPS細胞生成機構の解析 テニュアトラック ウサギを用いたiPS細胞総合(完結型)評価系の確立 准教授 特任講師 細胞周期操作による新規卵原幹細胞の樹立 教授 リプログラミング技術を用いた遺伝性血管疾患の新 規治療標的の同定 8 さきがけ採択課題一覧(3) 研究 代表者名 採択 年度 下島 圭子 H22 竹内 純 H22 東京大学 分子細胞生物学研究所 准教授 北畠 康司 H22 高島 康弘 H22 京都大学iPS細胞研究所 伊達 英俊 H22 所属(現在) 役職(現在) 東京女子医科大学 統合医科学研 特任助教 究所 大阪大学 大学院医学系研究科 小児科学講座 渡邉 朋信 H22 H22 疾患iPS細胞を用いた大脳皮質構造形成メカニズム の解明 心臓細胞未分化性とクロマチン結合因子群 助教 染色体異常症候群における合併症の発症メカニズ ムの解明 特定拠点講師 純然たるヒトiPS/ES細胞の樹立、維持および増殖機 構の解析 東京大学医学部附属病院 神経内 特任助教 科 京都大学 iPS細胞研究所初期化機 特定拠点助教 構研究部門 大塚製薬(徳島研究所) 医薬品事 武藤 太郎 H22 業部 京都府立医科大学 大学院医学研 八木田 和弘 H22 教授 究科神経生理学部門 堀田 秋津 課題名 連鎖解析とiPS/ES技術を用いた遺伝性疾患遺伝子 同定法の開発 人為的核内環境制御による高品質iPS細胞の誘導 実験人類遺伝学の確立 リプログラミング技術で解く細胞分化と時計機構の 関係 (独)理化学研究所 生命システム 分化・発生を理解する多次元定量計測技術の基盤 チームリーダー 研究センター 開発 9 CREST 顕著な成果事例 研究 採択 役職(終了 所属(課題終了時点) 代表者名 年度 時点) 課題名 1 丹羽 仁史 理化学研究所 発 プロジェクト 分化細胞に多能性を誘導する転写因子 H20 生・再生科学総合研 リーダー ネットワークの構造解析 究センター 2 篠原 隆司 H20 京都大学 大学院医 教授 学研究科 精子幹細胞のリプログラミング機構の解 明と医学応用の可能性の検討 3 斎藤 通紀 H21 京都大学 大学院医 教授 学研究科 生殖系列におけるゲノムリプログラミング 機構の統合的解明とその応用 4 妻木 範行 H21 京都大学 iPS細胞研 教授 究所 組織幹細胞/前駆細胞を誘導するディレ クテッドリプログラミング技術の開発 5 家田 真樹 H22 慶應義塾大学 医学 専任講師 部 直接リプログラミングによる心筋細胞誘導 の確立と臨床への応用 6 井上 治久 H21 京都大学 iPS細胞研 教授 究所 iPS細胞を駆使した神経変性疾患病因機 構の解明と個別化予防医療開発 7 石井 俊輔 H20 理化学研究所 石井 胚細胞ヒストンによるリプログラミング機 上席研究員 分子遺伝学研究室 構 10 課題名:分化細胞に多能性を誘導する転写因子ネットワークの構造解析 1 研究代表者:丹羽 仁史((独)理化学研究所発生・再生科学総合研究センター プロジェクトリーダー) Esrrb遺伝子ノックアウト細胞 Esrrb遺伝子強制発現細胞 Wntシグナル伝達機構の解析 (英国ケンブリッジ大学) 共同研究によ るデータ統 合・解析 EsrrbがWntシグナルの機能標的である ことの証明(Cell Stem cell, 2012) 分化細胞に多能性を誘導する転写因子ネットワーク! 統合 Klf2, Klf4, Klf5, Tbx3の組み合 わせノックアウト細胞 Klf2, Klf4, Klf5, Tbx3の強制発現細 胞 (Niwa et al, Nature, 2009) LIFシグナル伝達機構の解析 (Niwa et al, Nature, 2009) データ統合・ 解析 +a Minimal network model 11 課題名:精子幹細胞のリプログラミング機構の解明と医学応用の可能性の検討 研究代表者:篠原 隆司(京都大学大学院医学研究科 教授) 2 GS細胞のエピゲノム不安定性がmGS細胞を誘導 GS細胞 GS細胞における エピジェネティックな不安定性 生殖細胞がん遺伝子群の 発現異常 誘導mGS細胞 Oct4/Sox2などの ES細胞コア転写因子 の活性化による脱分化 GS細胞と体細胞リプログラミングとの違いを解明! 精原細胞における多能性抑制機構の分子基盤 12 課題名:生殖系列におけるゲノムリプログラミング機構の統合的解明とその応用 研究代表者:斎藤 通紀(京都大学大学院医学研究科 教授) 3 iPS細胞の高効率・高再現性での医学的有用細胞への分化達成には 多能性幹細胞からの様々な細胞系譜形成過程の理解 iPS細胞から誘導された細胞分化の正しい評価 が必要 多能性幹細胞からの生殖系列細胞 の誘導系の確立! 多能性幹細胞からの 生殖細胞系列誘導研究の 基盤となる (Hayashi et al., Cell, 146, 519-532, 2011) 13 課題名:組織幹細胞/前駆細胞を誘導するディレクテッドリプログラミング技術の開発 研究代表者:妻木 範行(京都大学iPS細胞研究所 教授) 線維芽細胞に、リプログラミング因 子の一部と軟骨因子を混ぜて導入 することにより、軟骨細胞様細胞を 直接誘導! 4つのリプログラミング因子 c-Myc, Klf4, Sox2, Oct3/4 c-Myc, Klf4 + 軟骨因子 Sox9 iPS 細胞 多能性幹細胞 (ES細胞) 真皮線維芽細胞 表皮 外胚葉 4 筋細胞 神経 軟骨細胞 受精卵 内細胞塊 中胚葉 間葉系細胞 骨芽細胞 内胚葉 脂肪細胞 消化器 軟骨組織 の作製 14 課題名:直接リプログラミングによる心筋細胞誘導の確立と臨床への応用 研究代表者:家田 真樹(慶應義塾大学医学部 特任講師) 5 Gata4/Mef2c/Tbx5により線維芽細胞から心筋誘導 (in vitro) aMHC-GFP Actinin Merged (Ieda et al., Cell, 2010) Gata4/Mef2c/Tbx5により生体内で線維芽細胞から心筋誘導! 心筋梗塞マウス心臓に遺伝子導入 (Inagawa et al, Circ Res, 2012) 15 課題名:iPS細胞を駆使した神経変性疾患病因機構の解明と個別化予防医療開発 研究代表者:井上 治久(京都大学iPS細胞研究所 准教授) 治療薬シーズの発見 筋萎縮性側索硬化症 6 個別化医療への道筋 アルツハイマー病 患者の体細胞 患者の体細胞 iPS細胞 iPS細胞 脊髄運動ニューロン 大脳皮質ニューロン アストロサイト 細胞純化 細胞内Aβオリゴマー Control 病因タンパク質 凝集体・不溶性亢進 AD ER/酸化ストレス DHA治療 ! 分子メカニズム探索 患者の病態と薬剤反応性の 多様性を解明 ! 治療薬シーズの発見! (Egawa et al., Sci Transl Med. 2012) (Kondo et al., Cell Stem Cell, 2013) 16 課題名:胚細胞ヒストンによるリプログラミング機構 研究代表者:石井 俊輔((独)理化学研究所基幹研究所 上席研究員) 7 複数のMaternal Effect因子がリプログラミング因子であることを発見! 17 さきがけ 顕著な成果事例 研究 代表者名 採択 年度 課題名 成果内容 鈴木 淳史 肝細胞分化関連遺伝子の導入 マウスの線維芽細胞から直接肝細胞を H20 による皮膚細胞からの肝細胞 作製することに成功 作製技術 2 長船 健二 ヒトiPS細胞から中間中胚葉(腎臓のもとに 多発性嚢胞腎患者由来のiPS H20 なる細胞)への高効率の分化誘導法を開 細胞を用いた病態解析 発 3 依馬 正次 H21 Klfファミリーによる幹細胞機能 胚発生初期におけるKlf5が関与した多能 制御の分子機構 性獲得機構の一端を解明 4 本多 新 H21 ウサギを用いたiPS細胞総合(完 世界に先駆けて、ウサギiPS細胞の樹立に 結型)評価系の確立 成功 5 下島 圭子 H22 疾患iPS細胞を用いた大脳皮質 ・ iPSから神経細胞への分化誘導系、及び 構造形成メカニズムの解明 神経細胞の遊走能の評価系を確立 北畠 康司 ダウン症新生児の10%以上で発症する一 染色体異常症候群における合 過性骨髄異常増殖症(TAM)と呼ばれる造 H22 併症の発症メカニズムの解明 血異常のメカニズムの一端を解明し、さら にその責任領域/遺伝子を同定 1 6 18 「肝細胞分化関連遺伝子の導入による皮膚細胞からの肝細胞作製技術」 鈴木 淳史 (九州大学生体防御医学研究所・教授)H20.10~H24.3 ※所属は現時点 1 研究領域: さきがけ「iPS細胞と生命機能」 マウスの線維芽細胞から直接肝細胞を作製することに成功 アルブミン / E-カドヘリン 2種類の遺伝子 iHep細胞は肝細胞の形態的特徴や遺伝子・タ ンパク質発現を有し、肝細胞特有の機能(グ リコーゲンの蓄積や低比重リポタンパク質の 取り込み、アルブミンの分泌、アンモニア代 謝と尿素合成、シトクロムP450活性、脂質代 謝、薬物代謝など)をもったまま培養下での 増殖や維持、凍結保存が可能であった。 Hnf4 + Foxa (Foxa1, Foxa2, Foxa3のいずれか1つ) 肝臓へ 移植 培養 線維芽細胞 iHep細胞 肝機能不全で死に至る高チロシン血症モデルマウス の肝臓へiHep細胞を移植すると、肝細胞として障害 を受けた肝臓組織を機能的に再構築し、マウスの致 死率を大幅に減少させることが可能であった(図中、 茶色に染色された細胞がiHep細胞由来の細胞)。 19 「多発性嚢胞腎患者由来のiPS細胞を用いた病態解析」 2 長船 健二 (京都大学iPS細胞研究所・教授)H20.10~H24.3 ※所属は現時点 研究領域: さきがけ「iPS細胞と生命機能」 ヒトiPS細胞から中間中胚葉(腎臓のもとになる細胞)への高効率の分化誘導法を開発 Activin A, BMP7, CHIR99021 ヒト iPS細胞 中間中胚葉 OSR1 92.8±1.7% OSR1 (GFP) OSR1 (GFP) 中間中胚葉から分化した腎細胞 LTL Nuclei 近位尿細管 中間中胚葉より形成された 三次元の尿細管様構造 PNA Nuclei 糸球体足細胞 hMito LTL Nuclei 20 (Mae S, et al., Nature Communications 2013) 「Klfファミリーによる幹細胞機能制御の分子機構」 依馬 正次 (滋賀医科大学 動物生命科学研究センター・教授)H21.10~H27.3 3 研究領域: 「iPS細胞と生命機能」 ■成果のポイント(独創性&挑戦性) • 胚発生初期におけるKlf5が関与した多能性獲得機構の一端を解明 • Klf5が存在することで、ERKと呼ばれる細胞内シグナル伝達因子を抑制し、正 常な多能性幹細胞の出現を保証(Klf5が存在しないマウスでは、多能性幹細 胞ができない)。 • 多能性維持過程や体細胞の初期化過程において も、Klf5の関与した制御が鍵であることが分かって おり、発生段階および体細胞の多能性獲得機構に は類似性があることが示唆 ■今後2年の研究深化に向けて • 非ヒト霊長類であるカニクイザルを使用し、キメラ 貢献能を有する霊長類多能性幹細胞を化合物に よって誘導する方法の確立に挑戦 • アドバイザーおよび領域内研究者8名との積極的 な研究協力 • Cell Stem Cell誌、Development誌に研究論文 が掲載 図.体細胞初期化因子Klf5と発生段階における生理機能Klf5は山 中4因子の一つKlf4の類似因子である。Klf4が発生段階で多能性 の獲得過程に寄与しないのに対して、Klf5は多能性の獲得に必須 であるが、分子レベルではERKと呼ばれるシグナル伝達を抑制す ることで、多能性幹細胞の出現を保証しているという過程が明らか となった。 21 「ウサギを用いたiPS細胞総合(完結型)評価系の確立」 本多 新(宮崎大学テニュアトラック推進機構・テニュアトラック准教授)H21.10~H25.3 4 研究領域: さきがけ「iPS細胞と生命機能」 図 樹立したウサギiPS細胞(上)とその網羅的遺伝子発現解析(下) 上)樹立したウサギiPS細胞はマウスなどげっ歯類から樹立される 形態ではなく、ヒトから樹立されるものと同様のタイプであった。 下)ウサギiPS細胞の遺伝子発現は、継代が進むにつれてES細胞 22 に近づくが、それでもES細胞とは異なることが判明した。 「疾患iPS細胞を用いた大脳皮質構造形成メカニズムの解明」 下島 圭子 (JST さきがけ研究者/東京女子医科大学 特任助教)H22.10~H28.3 5 研究領域: 「iPS細胞と生命機能」 ■成果のポイント(独創性&挑戦性) [目的:ヒト疾患特異的iPS細胞を利用し、中枢神経障害の病態を解析する] ・神経発達障害の中で、ゲノム変異が明らかな12疾患由来のiPS細胞を樹立した。 ・ iPSから神経細胞への分化誘導系、及び神経細胞の遊走能の評価系を確立した。 ・大脳白質形成障害患者よりiPS細胞を樹立し、その変異や重複が発症の原因と して知られるPLP1遺伝子が部分的に重複した初めての症例を論文報告した。 ・LIS1異常を示す疾患iPS細胞を用いて、大脳皮質形成障害の病態解析を進め、 細胞遊走に関連する新たな因子を同定し、論文報告した。 ■今後2年の研究深化に向けて ・これまでに確立した系を活用して、 様々な中枢神経疾患における細胞 遊走能やシナプス機能を評価する。 ・モデル動物での研究では解析でき ないヒト固有の病態を明らかにし、 ヒト疾患iPS細胞を用いた中枢神経 障害の病態解析のモデルケースと したい。 小児神経疾患の患者様の細胞からiPS細胞を作製すると 脳の病気を持つ患者さん 脳の代わりに皮膚なら採取できる iPS細胞(人工多能性幹細胞) 皮膚線維芽細胞 原因は脳にあるが、 脳を直接採ってきて 分析することはできない モデル動物による研究は 進んでいるが、ヒト特有の 遺伝子異常にはモデル動 物が利用できない さらに 神経細胞に分化誘導 試験管内で患者さんの脳の状態 を再現し、一体どのようなことが 起こって病気になっているの か?どうしたら治すことができる かを研究することができる 治療法の開発? 神経細胞 23 「染色体異常症候群における合併症の発症メカニズムの解明」 6 北畠 康司 (大阪大学大学院医学系研究科・助教) H22.10~H26.3 研究領域: さきがけ「iPS細胞と生命機能」 ■成果のポイント(独創性&挑戦性)と今後の課題 【ダウン症新生児の10%以上で発症する一過性骨髄異常増殖症(TAM)と呼ばれる造血異常のメカニ ズムの一端を解明し、さらにその責任領域/遺伝子を同定】 • 患者さん由来の疾患iPS細胞を樹立し遺伝子/染色体改変技術と組み合わせることにより、 病態解明につながる正確な疾患モデルiPS細胞系を樹立 • これらを用いて、TAMが21トリソミーによる造血亢進とGATA1短縮型変異による分化障害 との相互作用で起こることを明らかにした(論文投稿準備中)。 • さらに21番染色体上の造血異常責任領域ならびに責任遺伝子の同定に成功した ■将来的なイノベーションへの 展開に向けて • TAM治療後に頻発する急性巨核芽 球性白血病の発症機序を解明する。 • ダウン症における新たなストレス経 路の存在が明らかになりつつあり、こ の新規の病態概念の確立を目指す。 • 同症の成人期に発症する認知障害 の治療法開発に向けた創薬プラット フォームの作成を目指している。 臍帯血・末梢血 からのiPS細胞樹立 ヒトiPS細胞での ゲノム編集・ 染色体改変技術を確立 ダウン症候群・ 一過性骨髄異常増殖症(TAM) TAMは 21トリソミーによる造血亢進作用 + GATA1短縮型変異による分化障害 の相互作用によって起こることが明 らかになった さらに TALEN CRISPR TAMの病態解析を可能にする 18種類のヒトiPS細胞を作成 血球分化誘導 ・トリソミーの3本のアレルでの発現の違い ・21トリソミーにより誘導されるストレス経路 の存在、が明らかになりつつある(神経系でも確認) 図: ダウン症候群における造血異常の病態解析 24 補足資料 ・領域アドバイザー一覧 25 CREST領域アドバイザー一覧 領域アドバイザー 山中 伸弥(※) 石田 功 佐々木 裕之 瀬原 淳子 高井 義美 竹市 雅俊 林崎 良英 宮園 浩平 塩見 美喜子 仲野 徹 所属 京都大学 iPS細胞研究所 帝京平成大学薬学部 九州大学生体防御医学 研究所 京都大学 再生医科学研 究所 神戸大学 大学院医学系 研究科 理化学研究所発生・再生 科学総合研究センター 理化学研究所ゲノム科学 総合研究センター 東京大学 大学院医学系 研究科 東京大学 大学院理学系 研究科 大阪大学 大学院生命機 能研究科/医学系研究科 役職 所長/教授 教授 所長/教授 任期 平成20年3月~平成22年3月 平成20年3月~平成24年10月 平成20年3月~ 教授 平成20年3月~平成22年3月 教授 平成20年3月~ センター長 平成20年3月~ プロジェクトディ 平成20年3月~ レクター 平成20年3月~ 教授 教授 平成22年5月~ 教授 平成22年5月~ 所属・役職・任期は領域中間評価(平成25年2月)時点 ※山中伸弥教授は、当領域に研究総括補佐として参加した。研究総括補佐は、当該分野の推進の為に、研究総括の任務全般について 研究総括を補佐する者を指す。他方、領域アドバイザーは、課題の選定・研究の推進・評価について意見を述べる者を指す。 26 さきがけ領域アドバイザー一覧 領域アドバイザー 山中 伸弥(※) 石野 史敏 岡野 栄之 相賀 裕美子 中内 啓光 丹羽 仁史 花園 豊 春山 英幸 所属 現役職 任期 京都大学 iPS細胞研究 所 東京医科歯科大学 難 治疾患研究所 慶応義塾大学 医学部 情報- システム研究機 構 国立遺伝学研究所 東京大学 医科学研究 所 理化学研究所発生・再 生科学総合研究セン ター 自治医科大学 分子病 態治療研究センター 第一三共RDノバーレ株 式会社 所長/教授 平成20年3月~平成22年3月 教授 平成20年3月~現在に至る 教授 教授 平成20年3月~現在に至る 平成20年3月~現在に至る 教授 平成20年3月~現在に至る プ ロ ジ ェ ク 平成20年3月~現在に至る ト・リーダー 教授 平成20年3月~現在に至る 代 表 取 締 平成20年3月~現在に至る 役社長 所属・役職・任期は領域予備事後評価(平成25年2月)時点 ※山中伸弥教授は、当領域に研究総括補佐として参加した。研究総括補佐は、当該分野の推進の為に、研究総括の任務全般につ いて研究総括を補佐する者を指す。他方、領域アドバイザーは、課題の選定・研究の推進・評価について意見を述べる者を指す。 27
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