校長便り 2015 第8号

開拓者精神(Frontier Spirit)
四日市南高校 校長便り 2015 第 8 号
1. 学力とは何か?あなたはなぜ学ぶのか?
みなさんは「学力」とは何か、と考えたことがありますか?おそらく多くの人たちが授
業などで覚えたこと、定期テストや模擬試験、さらには大学入試であらわされる結果や数
字が学力だと考えているのではないですか?たしかにそれも学力の一部ですが、それだけ
ではないのです。これは私が勝手に言っているのではありません。2007年に改訂され
た学校教育法第30条には学力の定義として、①基礎的な知識・技能の習得、②知識・技
能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等、③主体的に学習す
る態度の3つをあげています。学力に対する考え方も10年くらい前を境に変わっている
んですね。さらに言うと次の学習指導要領の中には③の部分は主体的な態度に加えて、協
働性・多様性も盛り込まれることになりそうです。
とすると、皆さんが今認識している「学力」とは①の部分だけであって、これでは非常
に狭い意味での学力と言わざるを得ません。では、なぜそうなってしまっているのか。こ
れは、明治維新以来ずっと長い間それが「学力」だと考えられていたためです。皆さんの
お父さんやお母さん、おじいちゃんやおばあちゃんに至るまで、もっと言えば先生たちも
ずっと①が「学力」だと信じてきたからですね。実際、いわゆる高度成長と呼ばれた時代
(1970~80年代でしょうか)まではこの学力を持った人が日本の中心になっていた
んですね。欧米という進んだ文明があって、それをモデルにキャッチアップするには多く
の知識を持っていることが最も大切なことだったわけです。しかし、そのようなキャッチ
アップの時代が終わって、自分たちの頭で考えて様々な課題を解決していく必要になった
21世紀には別の能力が求められるようになっています。求められるものが変わってきて
いる以上、学力への考え方も変わってきているのになかなかみんな頭を切り替えることが
できない。いまだに「失われた20年」とか言われて、迷走しているのが現在の日本の姿
です。ぜひ、みなさんは柔らかい頭で早く切り替えて、新たな時代に向かっていってくだ
さい。
この通信の中でもいつも「四日市南の生徒のポテンシャルは高い」と言っていますよね。
いきなりそう言われてもなかなか信じられないかもしれませんが、私は本気でそう思って
います。その場合のポテンシャルとは上記の①~③までを含んだ学力ことを指しています。
ただし、あなたたちがいつまでも狭い意味での学力に一喜一憂しているのでは、持ってい
る才能を伸ばすことができない。はやく真の学力に気が付いて「行動する高校生」に変わ
ってほしいものです。残念ながら現在のあなたたちにはその才能を伸ばすためのスキルと
経験が足りない。学校の授業やさまざまなコンテンツはずいぶん変わってきているのに気
が付きませんか。今後、来年にかけては「総合学習の時間」を中心にさらに一人一人にフ
ィットした、全員の才能を伸ばすような仕掛けを打っていきます。ただし、いくら授業が
変わっても自分で学習できるツールやコンテンツがそろってもあなたたちが変わらなくて
は宝の持ち腐れです。
前回、みなさんの授業中の姿勢が主体的・積極的になってきていることをお話ししまし
た。そういう意味でいうと、まだまだみなさんの「学力向上」は成長途中にあるのだと思
います。それにしても私が本当に「もったいない」と思うのは、あなたたちが持っている
ポテンシャルに比べて、全般的に自信のない人、自己肯定感が低い人が大変多いことです。
勇気を出して前に一歩踏み出してみてください。自分の枠の中に閉じこもっていてはその
中での進歩は限られています。勇気をもって自己変革できる人だけが大きく成長し、21
世紀を生きるために必要な学力を向上できるのです。すでに全国には自ら大きく踏み出し
て「行動する高校生」に進化している人たちが大勢います。あなたも間違いなくその一人
になれるポテンシャルを持っています。
そもそもあなたたちはどうして勉強しているのでしょう。最近、中学校の生徒に話をす
る機会が増えているのですが、彼らに「なぜ、勉強するの(しなければならないの)
」と尋
ねると、一様に首をかしげます。そして恐る恐るこのように答えます。いわく、
「高校へ行
くため」
「大学へ行くため」「わかりません」。もし、これが答えなら高校へ入った瞬間に、
大学へ入った瞬間に勉強はしなくてもいいことになります。でも実際にはみなさんは高校
へ入ってからも(これは現在その状況ですよね)
、大学に入っても(これはしばらくしたら
わかります)勉強を続けます。もっというと、社会に出ても「学び」は続きます。では、
何のために学ぶのか。それは「幸せになる」ためにです。もちろん幸せの定義はそれぞれ
違うでしょうし、勉強をしたから100%幸せになるとは限らない。でも、「学ぶ」
(社会
に出てからまで考えると「勉強」より「学ぶ」といったほうが正確ですね)ことによって、
あなたの能力は高まり可能性は広がります。さらに大切なことは「幸せになる」の主語は
「あなた」ではなく、
「
(社会、世の中の)みんな」だということです。つまり、
「学ぶ」こ
とは自分が幸せになることでもあるし、周りや社会の人たちを「幸せにする」ことでもあ
るのです。これが「世のため、人のため」ということですね。そう、みなさんにはぜひと
も「周りを幸せにし、社会をよくしていく」
「高い志」を持ってほしいのです。だから「勉
強」してほしいし、
「学び続けて」ほしいのです。
繰り返しになりますが、みなさんには周りを幸せにし社会を変えていくだけのポテンシ
ャルがあります。だからこそ、早くこれからの時代に必要な「真の学力」を知って「行動
する高校生」になってリーダーシップを養っていってほしいのです(これをノブレス・オ
ブリージュ=高貴なる義務といいます)
。
2.キャリア教育における3年間最後の100日の意味
7月号で出したこの宿題、考えてくれた人はいるでしょうか。3年生は今ちょうどこの
時期に差し掛かろうとしています。中には推薦入試等で合格が決まってきた人もいるでし
ょう。一方では一般入試やセンター試験にむけて全力で勉強している人がほとんどだと思
います。いずれのケースでもキャリア教育的発想に立てば、
「大学はゴールではない」です
から、ここで「学び」を止めることはないはずです。高校卒業や大学等への入学はあくま
で通過点です。次の列車に乗るためのプラットホームに立ったにすぎません。大学に入っ
ても、社会に出ても「学び続ける」
(なぜかは1で書きましたよ)ならば、合格が決まった
人はここで休むのではなく、新たな目標に向かって進んでいくための準備、基礎となる勉
強をしなければなりません。いわゆる「受験勉強」は終わったかもしれませんが、本を読
んだりレポートを書く練習をしたり、英語の勉強をしたりしてください。受験勉強を続け
る人たちは高い志を持って新たなステージに立たなければなりません。当然、その勉強は
合格が決まっても新たな進路先に入学するまで続ける必要があります。この100日間は
誰にとっても次のステージで活躍するための貴重なつなぎの期間になっているのです。
(11月5日)