37℃加温後も赤血球凝集を認めた症例についての赤血球数算定の検討

37℃加温後も赤血球凝集を認めた症例についての赤血球数算定の検討
1)琉球大学医学部附属病院
金城 和美 1)
検査部 2)田名クリニック
又吉 和哉 1)
田野口 優子 1) 杉山 偉久子 2)
【はじめに】自動血球分析装置による血球算定では自己抗体の存在などによる赤血球凝集が原因で見かけ上の
赤血球減少を起こす症例に遭遇することがある。一般的にこのような症例では寒冷凝集素による凝集が主であり,
通常 37℃に加温後測定することで凝集は改善される。今回,我々は赤血球凝集が観察されたが 37℃加温操作で
も赤血球数の測定値が改善されなかった症例を経験し,若干の知見を得たので報告する。
【対象】自己抗体を有し,赤血球凝集のみられた 2 症例および赤血球凝集のみられなかった 50 件の臨床検体
を対象とした。
【方法と結果】
I. 赤血球凝集がみられ赤血球粒度分布において 2 峰性の認められた 2 症例 (a), (b) の EDTA-2K
加静脈血について次の検討を行った。
1) 検体を 37℃に加温し 30 分後と 60 分後に,SE-9000 にて赤血球数を測定した結果,2 症例の 37℃加温前後の
測定値は症例 (a) で-11.8%から+30.0%の変動, 症例 (b) で 55.0%~83.0%の赤血球数の増加を認めたが,加
温操作による赤血球粒度分布の 2 峰性は改善されなかった。2) SE-9000 と K-1000 (両機種とも Sysmex 社) の
2 機種で測定値を比較した結果, K-1000 による測定値が SE-9000 に比べ症例 (a) で 7.8~49.2%,症例 (b) で
13.4~94.7%の赤血球数の増加が認められた。3) 検体を 3000rpm, 3 分間遠心後,血漿を除去し等量の生理食塩
水を加え混和,さらに 3000rpm, 1 分間遠心した。その後,上清の生理食塩水を除去し再度,等量の生理食塩水
を加え SE-9000 にて測定した (以下,生理食塩水洗浄法) 。その結果,洗浄前に比べ洗浄後では症例 (a)で 16.7
~65.8%, 症例 (b) で 13.1~100.0%の赤血球数の増加がみられた。また,洗浄後の検体を生理食塩水で希釈し,
血球計算板上で確認したところ凝集は改善され,赤血球粒度分布の 2 峰性もみとめられなかった。4) 同日の 2
症例の未洗浄検体を SE-9000 と K-1000 で測定。また,37℃ 加温操作後と生理食塩水洗浄後の検体を SE-9000
で測定し,赤血球数を比較した。 その結果,症例 (a) ではそれぞれ 260 万/μl, 388 万/μl, 324 万/μl, 431 万/
μl, 症例 (b) では 189 万/μl, 368 万/μl, 293 万/μl, 378 万/μl という結果を得た。
II. 赤血球凝集のみられなかった 50 件の臨床検体について,未洗浄と生理食塩水洗浄後の測定値の互換性を相関
図で評価した。その結果,生理食塩水洗浄法との比較では一次回帰式 y=1.016×4.447, 相関係数 r=0.990 と評価
された。
【考察】今回,検討した方法において 37℃加温操作では一部の検体で赤血球数の減少も確認され,症例によ
っては必ずしも凝集の改善に有効な方法とはいえなかった。未洗浄検体で K-1000,生理食塩水洗浄後に SE-9000
で測定した結果,K-1000 で 7.8~94.7%, 生理食塩水洗浄法で 13.1~100.0%と 2 症例において赤血球の増加が
認められ,両方法で同程度の凝集の改善がなされたと考えられた。しかし,検体によっては K-1000 の測定値よ
り生理食塩水洗浄後の測定値に 11.1%の赤血球の増加がみられ生理食塩水洗浄法が,より凝集の改善に効果的だ
と思われた。K-1000 と SE-9000 の 2 機種間で赤血球数の乖離がみられたのは,赤血球測定の希釈倍率の違いと
推測され,希釈倍率の高い機械の方が赤血球凝集はいくらか改善され測定されると思われる。今回,37℃加温操
作後に赤血球凝集のみられた検体を生理食塩水洗浄後に計算板上で鏡検したところ,凝集の改善が観察された。
また,SE-9000 の粒度分布においても 2 峰性を認めなかった。さらに,赤血球凝集の認められなかった 50 件の
臨床検体を未洗浄検体,生理食塩水洗浄検体で互換性を検討した結果,両方法間に大きな差は認められなかった。
以上のことから生理食塩水洗浄法は赤血球数算定への影響がなく,37℃加温後も赤血球凝集のみられた検体を生
理食塩水洗浄法で測定することは,より真の赤血球数に近い値が得られるものと結論された。