慢性心不全に〝和温療法〟

慢性心不全に〝和温療法〟
意思を再度確認すると、「入
これで心臓への負担を最
小限にできます。
した姿勢で入浴へ。
湯を入れて。男性患者は寝
自 動 昇 降 式 浴 槽 を 使 い、
浴槽には近くの霧島温泉の
りたい」
。
版)を開くと和温療法の記
体を心地よく温めます」
度サウナ浴+保温 あったか治療で劇的改善
心臓が悪くてねえ。心不全です。治療は主に薬で。
追加・併用して、やってみたくなる治療法があるのだ、
と。
"和温療法"
です。
(上野敏行)
たまま、上半身をやや起こ
に和温療法を組み合わせる
心地よく温める?
述 が あ り ま し た。
"薬物療
「 え え。 こ れ ま で 千 人 を 法の補助療法として推奨"
超える心不全患者(重症例
補助療法として?
も含む)の臨床経験から安 「 薬 物 療 法 な ど 確 立 さ れ
全性と有効性が十分に確認 た治療法があります。それ
されています」
『慢性心不全治療ガイド (併用する)ことを勧めて
ライン』
( 2 0 1 0 年 改 訂 いるのです」
です。けれども、時に患者
心拍出量を増やす
入院中は和温療法を1日1回、週5回実施。
退院後、週2回の和温療法を外来で継続でき
た 群 を 和 温 療 法 実 施 群、 薬 物 療 法 だ け の 群
を 非 実 施 群 と し た。 心 不 全 の 重 症 度 と 年 齢
を 一 致 さ せ て 追 跡 し た( 日 本 心 臓 病 学 会 誌
)
Journal of Cordiology 2009;53:214-218
人と、実施しな
死亡または再入院率
週2回)
人を比較。
実施群は非実施群と比
べ、
"心不全に伴う再入院
い群
追跡期間
心不全の重症度は軽度か
ら順にⅠ〜Ⅳ度の4段階。
。
い や い や、
" 和 温 療 法 " 泉に入りたい」
は違う。やってみたくなる
さっそく医学生を対象に
入浴実験を重ねました。
ところが、横のモニター
心電図は"異状なし"
。
︿入浴で血管は拡張する。 識に反して入浴させた私の
血管拡張薬の作用と同じ﹀ 医師生命は終わった…」
ッドを両手に持ちました。
に予後(将来の病気の見通
治療という。なぜか。
男性患者はⅣ度で、ちょ
っと動いても呼吸困難に陥
循環をよくし、心不全症状
新たな治療法になるかもし
れない。入浴の安全性と効
果の解明に本格的に取り組
みました」
落語こぼれ話
国策落語掲載の雑誌・本
国策落語を掲載した戦前の
雑誌としては、
『キング』
『講
談倶楽部』
(どちらも講談社
の前身、大日本雄弁会講談社
からの発行)
、産業組合中央
会家の光編集部が発行した
『家の光』などがありました。
落語本としては、新作派の
代表柳家金語楼と三代目三遊
亭金馬、七代目林家正蔵の三
人の国策落語が収録されてい
る『名作落語三人選』が代表
的なものです。
多くの新作落語をつくり、自
分の落語本を十数種類出版し
ており、その中にも国策落語
が収録されています。
それが和温療法で心地よ
い発汗で気分そう快、食欲
った三代目春風亭柳好、五代
一言
れ、二○○五年まで続きまし
た。落語の常設館である寄席
と同じように常設で落語など
蔵。 の ち の 彦 六 )、 六 代 目 三
一四)年四月二十六日に初代
さてその小冊子『昭和の名
人会』には、一九三九(昭和
演芸を提供していました。
遊亭圓生というバリバリの古
柳 家 権 太 楼 が「 空 中 戦 」
、同
郎 が「 出 征 長 屋 」
、五月六日
からも国策落語が放送されて
家権太楼が「長屋全権」とい
的な上演を余儀なくされ、名
う国策落語を演じたことが記
人会のような泰平の逸民の国
います。実際の高座ではどう
当時の落語を聴いていた年
配の方の話や、当時の新聞記
体にも、出し物の上に名前だ
されています。
録などを見ると、実際の寄席
だったのでしょうか。
など高座で国策落語は演じら
けでも戦争的なものが現れて
一九四○(昭和十五)年七
月七日は満州事変三周年とな
れていることがわかります。
線の話」
「支那語」などが演
豊吉が私的に非売品で三百部
宝名人会の演出をしていた秦
林一三の喜寿のお祝いに、東
阪急東宝グループの創業者小
じさせられていたのです。
策に順応した落語をつくり演
寄席では古典落語が中心で
あったとはいえ、その中で国
います。
記されています。
する国」にしてはならないこ
っても聴衆にとっても暗い時
に国策落語がある落語家にと
東宝名人会とは、東宝が東
京で手がけた演芸公演で、一
とを私たちに教えています。
代でした。その歴史は「戦争
九三四(昭和九)年に東宝小
年までの東宝名人会の由来が
す。ここに一九三四
(昭和九)
戦前・戦中の日本は、一方
年 か ら 一 九 四 四( 昭 和 十 九 ) に禁演落語があり、もう一方
いちぞう
だけ作成した貴重なもので
う小冊子があります。
これは、 じられていたことが書かれて
いる」と記され、
「出征」
「戦
り、
「軍部の指図により軍事
一九五○(昭和二十五)年
発行の『昭和の名人会』とい
高座で演じられていた
雑 誌・ 落 語 本 だ け で な く、 には、
三代目三遊亭金馬が
「防
レコードもつくられ、ラジオ 空 演 習 」
、 五 月 七 日 に は、 柳
もあることです。
れ た『 新 作 落 語 名 人 三 人 集 』 年五月四日には、昔々亭桃太
典派三人の国策落語が収録さ
柏木 新
劇 場 で 第 一 回 名 人 会 が 行 わ (かしわぎしん・演芸評論家)
ぽ い こ と を 言 っ て い る が、
「安倍の暴走だ」
とか批判っ
3人の憲法学者が憲法違
反だと国会で発言してから
う。
りとはいかなかっただろ
声をあげていたら、すんな
手マスコミがもっと批判の
昨年7月だ。あのとき、大
更する閣議決定をしたのは
い。そもそも憲法解釈を変
レビ、大新聞の責任が大き
目蝶花楼馬楽(八代目林家正
変な時期で、体がいうこと
をきかず、めまい、耳鳴り
大新聞の責任
も う 一 つ、 5 年 間 追 跡
温が平均1度上昇する)
医療費などが少しでも少な
(
② 保 温 出 浴 後 は 分 の 報 告 を。
Journal
of
医
者
通
い
大
変
くなるよう、健康には注意
間、毛布にくるまって安静
Cordiology
2009;53)
健康でいたい
慢性心不全患者を和温療
して、友人たちとおしゃべ
に し て 保 温。 こ の 間、
"和
日野市 小形万里子
法実施群
(外来で1日1回、
りができる機会が少しでも
温効果"は持続する。
梅雨が明け、
猛烈な暑さ。 増えればいいなあと思う。
高齢者にとってはとても大
戦争法案採決
が出て不眠も改善します。
実 際、 和 温 室 に 入 る と、
あったか。気持ちいい。
「心不全があっても元気
遠赤外線均等乾式サウナ を改善します」
治療装置(和温室)を開発
国 内 施 設 の 共 同 研 究 で明るく。和温療法は安全
しました。
の 報 告 で す。
( Journal ofで副作用なし。その応用は
式サウナ"でした。
"水圧をかけない"
。その 分間に心臓から送り出す血
発想から生まれたのが"乾 液量)を増やして、血液の
に負担がかかるのでした。 す。その結果、
心拍出量
(1
柳家金語楼は本人によると
五百余種というように、戦前
万が一に備え、鄭医師は
電気ショック(心室細動を
在籍)
。
「なんとか望みをか
なえてあげたい」
年代、心不全の治療に
は血管拡張薬が有効という
和温療法群(64 例)
および心臓死が少なかっ
正常なリズムに戻す)のパ
1989年1月、鹿児島
市の総合病院病室―。
ハビリテーションセンター
にはかなりの痛みと苦しみ
﹁いつ死んでもよか﹂
期待し、受け入れていく。
男性患者( )は心不全
の末期でした。口癖は、「死
患者はというと、病気か
ら回復・改善するなら、と
そもそも、そう快で、心
地よく、笑みがこぼれるよ
ぬ前に一度でもいいから温
心不全に対する和温療法の予後改善効果
びっくりするのは、古典落
語「野ざらし」などが得意だ
を強いてしまいがちです。
和ませ温もりの治療
心臓の働きが低下し、血
液を十分に送れない。
動けば息切れ、呼吸が苦
しいし、疲れやすい。
最悪、心臓死です。
だから、心臓に負担がか
かるのはダメ。なにかと日
常生活の制限も多い。
うな治療なんてない。
閉塞性動脈硬化症の改善
浴槽を少しずつ上昇させ
。
重症心不全患者の入浴例
③水分 発汗に見合う水 た"
全身に湯が浸ったときでし を重ねていくと、限界も明 分を補給し、終了。
つまり、長生きして、生
た。男性患者はゆっくりと らかになってきました。
和温効果の特徴を、鄭所 活の質を落とさない!
大きな深呼吸をしました。
重症心不全患者は長期入
水圧の影響で心臓に戻る 長 は い い ま す。
「全身の血
「 悪 い 予 感 で し た。 ご 臨 血液量が増え、心内圧(心 管(動脈および静脈)は拡 院や安静の生活です。
終か。茫然としました。常 臓内の圧力)が上昇、心臓 張し、血管抵抗は減少しま
し)が悪化するとか。
「 心 身 を 和 ま せ、 温 も り
のある治療だから」という
報告が続いていました。
心不全の改善
10
こんな慢性心不全の発症
は老年期に急増し、年と共
老年期、その始まりは団
塊世代のわれらですよ。
し ま し た。
「 先 生、 も う い
心 不 全、 心 機 能 で す。
「和
6カ月が過ぎ、男性患者
の心不全は進行していまし
自律神経およ
び神経体液性
因子の是正
)
つ死んでもよかです」
幅広く、高齢化社会におい
和温室で心機能などを記
Cordiology
2008;52
慢性心不全患者を和温療 て は 長 寿 を 支 援 す る 福 寿
予想外はその後でした。 録 し な が ら サ ウ ナ 浴 の 温
(1日1回2週間)( 介 護 寿 命 を 幸 せ に す る )
毎日、自動昇降式浴槽の 度・時間を検討しました。 法実施群
温泉に入って1カ月もする
医療と考えています」
結論(和温療法)です。 112人と実施しない群
と病棟内を歩き、2カ月後
①温め サウナ室内の天 人に分けて比較。
実施群は非実施群と比
には退院できたのでした。 井と床までほぼ均一の室温
" 症 状、 心 機 能・ 心 拍
「 劇 的 な 回 復 で し た。 ひ
度に設定し、 分間全身 べ、
。
ょっとしたら、体を温める を 均 等 に 温 め る。
( 深 部 体 出量とも改善した"
振り向くと男性患者は合
掌して、涙をぽろっと落と
まあ、発症は仕方ないに
しても、治療できることは
安全で、気持ちいいと感
のは、和温療法研究所の鄭 る状態でした。
忠和所長。
専門は循環器学、 ︿ 温 泉 な ん て 無 理、 不 用 じるのは、湯温 度、浸か
意に入ったら命を落とす﹀ る時間 分でした。
積極的に努力したい。
しかし、と循環器専門医
として担当した鄭医師(当
温療法の和温は、私の造語
です。訓読みで和は"なご
た。余命はわずか。入浴の
64
小平市 佐藤孝
などで医者に行くのも大変
遅いのだ。
多くの国民が反対してい
です。
私も
今の安倍内閣の国民不在 るのに、戦争法案が衆議院
東久留米市 依田丈治
の政治には怒り心頭ですが、 を通過してしまったのはテ
武蔵村山市の教科書問題
の 現 状 を「 民 報 」 で 拝 見。
育鵬社の教科書は安倍内閣
ラしないぞー。
た。思考回路だけはダラダ
ラしている自分にハッとし
れ、退職後ちょっとダラダ
間が多くなっていると話さ
武蔵野市 前田秀紀
高畑勲氏(映画監督)の
講演を聞いた。ダラダラ人
向した内容と思います。
教育の政治的中立を侵す偏
の政策を押し付けるもので
退職後は友だちと高尾山健康登
山を楽しんでいます。今年は雨続
きで、咲き始めのヤマユリが見ら
れました。 (足立区・仲恵子)
時、鹿児島大学病院霧島リ
非和温療法群(65 例)
高尾山の美しいヤマユリ
む"
、温は"ぬくもり"
。身
65
健康生活
入浴は慢性心不全に対する
1 人用の和温療法室(室内がほぼ均等の 60 度に設定された遠赤
外線乾式サウナ室)がこれ、と鄭忠和所長。「和温療法の臨床
応用は多彩で、心不全以外にも難治性疾患(閉塞性動脈硬化症、
繊維筋痛症、筋痛性脳脊髄炎、唾液分泌不全症、術後イレウス
など)に効果を発揮しています」(心不全に対する和温療法は
先進医療として承認されました)
第五十話 戦争と落語(その二)
国策落語を演じていたこと
が明記されている小冊子
『昭和の名人会』
慢性心不全患者を5年間追跡
76
41
心身の
リラックス
30
10
心機能の改善、全身
の血流増加、一酸化
窒素(血管拡張物質)
の産生、血管内皮機
能の改善、酸化スト
レスの軽減など
15
80
その最新治療事情です。
多くは病気の原因に挑み
勝利をめざす。確かに進歩
125
和温療法
60
75
60
(4)
2015 年 8 月 2 日(日曜日)
東 京 民 報
(1965 年 11 月 12 日 第三種郵便物認可)
第 1899 号