授与機関名 順天堂大学 学位記番号 甲第 1533 号 SPARC was overexpressed in human endometrial cancer stem-like cells and promoted migration activity (SPARC は子宮体がん幹細胞で過剰発現しており、細胞の遊走能を亢進した) 努尔司曼古力 玉素甫(ぬるすまんぐり ゆすぷ) 博士(医学) 論文審査結果の要旨 SPARC はマトリックス細胞から分泌されるタンパク質で、最初に 1981 年骨組織に 含まれる非コラーゲン性タンパク質として検出されており、細胞外マトリックス と細胞との結合調節や細胞増殖、形態形成、創傷修復などにも関与していること 報告されており、卵巣癌、大腸癌、黒色腫、髄膜腫、乳癌、腎癌、肝細胞がんな ど様々な悪性腫瘍で過剰発現を示した。 本論文は 子宮体癌幹細胞でおける SPARC の過剰発現についての初めての レポートであり、我々は以前、子宮体がんにおけるSP(side-population cells) 細胞ががん幹細胞の性質を持っている事を明らかにした、子宮体癌SP細胞は遊 走能の亢進性質・間質への分化能を持ち、これらの特性は上皮間葉移行 (EMT)が 関与していた。 本研究ではEMTに関連する過剰発現遺伝子の中から secreted protein acidic and rich in cysteine(SPARC)を選択し、機能解析を行った。 方法としては SPARC 発現ベクターをヒト子宮体癌細胞 Ishikawa(IK)に形質導入 し、IK-SPARC 過剰発現細胞株を樹立した後、細胞増殖能、造腫瘍能、遊走能、浸 潤能、および Hec1-SP 細胞由来の腫瘍と子宮体癌組織でおける SPARC の発現解析 を行った。 SPARC はヒト子宮体癌細胞株 Hec1 の SP 細胞でも non-SP 細胞に比べて発現が上昇 し、IK 細胞に SPARC を過剰発現させると、fibronectin 発現上昇、細胞遊走能亢 進、腫瘍増殖抑制、腫瘍間質形成促進をみとめた。 SPARC は Hec1-SP 由来の腫瘍や子宮体癌組織の低分化腺癌の間質に高発現してい たが正常子宮内膜には発現が認められなかった。 本研究では子宮体癌幹細胞でおける SPARC の機能解析初めて明らかになっており、 SPARC の過剰発現は子宮体癌細胞の遊走能亢進と間質の形成に関与することを証 明した。 よって、本論文は博士(医学)の学位を授与するに値するものと判定した。
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