アール・リサーチ NewsLetter081 号 責任編集 柳本信一 110115 「テレビの没落と逆襲」メディアの興亡(前編) 拝復 新年が明けたと思ったら、もう一月も中旬。まるで冷凍庫の中にいるような寒い、冷たい 気候です。日本海側の雪は想像を超えています。あの中で働いたり学んだりすることが太平洋岸 育ちの私には見当が付きません。受験生を抱えていらっしゃる方も多いかと思います。風邪なぞ 引かずに持てる力を発揮されるようにお祈りします。受験当時のことは今でも夢に見ます(笑)。 さて、今日のお題は「テレビ」 。長らく娯楽の王様と言われ、現在でも強力な影響力を誇る「テ レビ」。ところが最近ではその影響力に翳りが見えています。いくつかの観点から現在のテレビ が置かれている状況を整理します。その上で今後のテレビの可能性について論じます。今号はそ の前編です。 「テレビ」ここでは特別な断りがない限りは、東京民放キー局に絞って考察を行います。最 近「テレビ離れ」と言う言葉があちらこちらで散見されています。これは本当なのでしょうか。 NHK の「放送文化研究所」が発表している調査を見ると、ここ数年を見てもそれほど一日あた りのテレビ視聴時間は変化をしていません。 突然ですが、年賀状の当選番号です。 一等 DRC エシュゾー 0538 番 二等 ワイン会無料ご招待 1452 番 三等 馬橋煎餅フルセット 0168 番 四等 馬橋煎餅ミニセット 1018 番 当選された方は弊社にご連絡をお願い します。メールでも郵便でも結構です。 あて先はこの NewsLetter の一番最後 をご覧ください。 外れた方、ごめんなさいm(_ _)m これによると「テレビ離れ」はそれほど大きな現象ではない、と言うことになってしまい 1 ます。しかし、中身を見てみると深刻な状況が明らかになります。ビデオリサーチが発表 している年代別の視聴時間を見てみましょう。 ■性・年齢別1日1人当たり平均視聴時間(2008年/関東地区/6~24時) 0.00 1.00 2.00 3.00 4.00 全体 4~12歳 2.38 13~19歳 2.23 2.25 2.55 2.33 35~49歳 6.00 (時間) ←これは厳しいデータですね。 4.05 年齢別 20~34歳 5.00 男性 女性 男女平均 個人全体 結局お年寄りが暇に任せてみているのが 現在の状況であると言うことです。 NHK はこれに輪をかけて高齢者視聴 4.32 若い人はほとんど見ていません。 5.23 5.53 50歳以上 これはかなり厳しい。20 代~30 代の若い人は全体平均の 6 割程度しかテレビを見ていませ ん。現在のテレビ視聴を支えているのは 50 代以上の男女でその視聴時間は一日 6 時間に迫 ろうとしています。テレビの CM の多くが狙うのが F1、M1 と呼ばれる 15 歳~35 歳の人々 です。若い人たちはなぜテレビを見なくなっているのか。現役世代ですから「仕事が忙し い」と言うのは大きなファクターでしょう。それ以外には「NET やケータイ」に時間をと られているのではないでしょうか。 さて、次に考えなければならないことは「視聴態度」です。「ながら視聴」が増えているのでは ないかと言うことです。私自身は生粋の「テレビっ子」です。子供のころの最大の娯楽は テレビでした。だって、それしかなかった(笑) 。長じて中学に入ると「ラジオ」 がそ れに加わりました。今でも家に帰るとまずテレビをオンにします。しかし選択肢が増えた。地上 波放送、BS、CS.。我が家は CATV に加入していますので局数は総計で 50 は超えています。 次々にチャンネルを切り替えて番組をチョイスします。5局しか選択肢がなかった時代とは様変 わりです。 しかしこの年末年始の特別番組。年々ひどくなる。 大人の鑑賞に堪える番組は少な かった。いくつか感銘を覚えた番組もあったのですが、それらはすべて「NHK」の番組でした。 特番に関わらずなぜ最近は「若手芸人をたくさん出演させる番組」が増えたのか。これには苦し くなった民放各局の経営状況が大きく影響しています。コマーシャルの収入が激減。経済の低迷 が長引く中で、企業の宣伝費に大なたが振るったからです。民放テレビ局の収入源はコマーシャ 2 ルの販売収入しかありません。ここでの収入減は製作現場を直撃しています。番組の制作費用の 大幅なカットです。そうした中で製作現場としては莫大な費用がかかるドラマやドキュメンタリ ーをどうしても作りにくい。安いギャラで使えるお笑い芸人が大量に必要とされたわけです。数 年前に息子が「なんか、テレビを見ていると頭が悪くなるような気がする」と言う 名言を吐きましたが、これに反論できるメディア関係者がいるでしょうか。 すべてのバラエティがくだらないというつもりはありません。好きな番組もあります。しかし、 私はそれらをすべて録画して見ています。スポーツを除けばテレビの番組を「生」で見 る必然性はありません。ニュースもしかり。ここで重大な問題が露呈します。 言うまでもなくテレビ局のビジネスモデルは「FREE」モデルです。「ただで番組を見せて あげるからその代わり CM を見て、その商品を買ってね」と言う仕組みです。メデ ィアがラ・テ・新聞しかなかったころはこのモデルが成立していました。今日これが危機に瀕し ています。 前述したとおり私は「生」でテレビを見ることはありません。見たい番組はすべて「録画」をし ます。非常に簡単に録画が出来ます。テレビをつけて電子番組表を呼び出して HDD に録画をす るようにという設定するだけです。本質的には民生用の VTR が出回った時点から起 こっていた問題でした。しかし、そのころの録画は非常に面倒でした。何回録画を失敗した ことか。 当然ながら、再生をしてみるときには CM はすべて早送りです。拙宅のブルーレイはカーソル を送るだけで全く CM を見ないで済みます。私は仕事柄「逆ザッピング」をして CM だけを見 ることがありますが、こんなことをしている人はほとんどいません。なぜでしょう。ここに根源 的な問題があるのですが、「CMはノイズ」です。確かに中には面白いCMもある。ソフト バンクの「白戸家」シリーズは作品としてエンタテイメントとして優れていると感じます。しか し、大半のCMは面白くなく、番組視聴の邪魔であり、生活に必要のないものです。これは昨年 日本マーケティング協会で行われたセミナー上、電通の最優秀クリエータであるお二人からはっ きりと聞きました。 「CM はノイズであり、邪魔なもの」だと。それを前提として作品を 作ると。 私は民放で映画を全く見なくなりました。映画のような、思わず引きずり込まれていくような 瞬間に、入ってくる CM は許せない存在です。ドラマも同様。いくつかのドラマはやはり録画 お正月の CM はパチンコとケータイゲーム(T_T)→ をして見ます。シリアスなドラマの最中に「パチンコのCM」 「携帯ゲームの CM は見たくないのです。もちろん、それでは民放の経営が成り立たなくなるのは承知をしています 3 が、邪魔なものは邪魔です。「ただなんだからCMくらい見てよ」というのは民放側の勝手な理 屈です。 に毎月 2500 円を払っています。映画がハイビジョンでしかもノーカットで見られ 私は るからですが、それだけであったら私は契約をしていないかもしれません。一つだけキラー・コ ンテンツがあります。「エキサイト・マッチ」 月曜日の 20:00 からの「ボクシング 番組」です。一ヶ月を 4 週と換算すれば、一回当たり約 650 円。これで世界のボクシングの名 勝負を見られる。この番組があるからこそ私は月額利用料金に納得をしています。 戦後娯楽の王様であり続けた「民放」のビジネスモデルが崩れようとしています。 現在の民放は「番組制作」すらしていない、といったら驚かれるでしょうか?プロデューサー、 ディレクターといった管理職には各局の正社員が座っていますが、番組を実際に作っているのは 「制作プロダクション」であり、フリーの脚本家や構成作家です。 これは流通業の「百貨店」とよく似た構造です。百貨店は自ら苦労して売るよりも、建物の中に 店子を入れて管理するほうが楽に儲けられることに気がついたのです。この瞬間に百貨店はただ の「不動産屋」へとなってしまった。 テレビ局も同じ轍を踏みました。放送法という法律に守られたきわめて新規参入が難 しい業界です。キー局はテレビ東京を最後に新しいテレビ局は出来ていません。そんな中では、 面倒なテレビ制作は外注をして、外に出すほうが楽だった。ニュースでさえそうです。さらに、 自分たちの商品である CM 枠は「広告代理店」が売ってくれます。こんな楽な商売はないです ←これが本当の左団扇です。 ね(笑) 。 これを繰り返した結果、民放には独自ノウハウが全くといって良いほど 残っていません。制作も販売もできない。まさに不動産会社なのです。 現在でもテレビは一日 4 時間近く見られており、その影響力は大きい。しかし、先がない。 一方、テレビには物凄い可能性が残されています。それはネットとの連携における情報端末とし ての可能性です。これについては次回に検証します。 次回は 2 月上旬。寒いんだろうなぁ。あ、お仕事もよろしくお願いしますm(_ _)m 株式会社アール・リサーチ 代表 柳本信一 Tel 047-342-3181 mobile 090-7428-8999 mail: [email protected] ブログ、ほぼ(笑)毎日更新しています→http://rresearch.blog103.fc2.com/ 4
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