- 57 - その夜半阿南陸相が割腹自決、さしもの陸軍も御聖断を受け入れ

その夜半阿南陸相が割腹自決、さしもの陸軍も御聖断を受け入れざるを得なかった。
14 日 23 時、ポツダム宣言受諾の外交公電が、ベルン市、駐スイス日本公使館、加瀬俊
一公使宛打電、スイス政府を通じてアメリカ政府機関に通報した。
この時アメリカ側も情報機関がスイスにあり、責任者は戦後の日本で特使として活躍し
たダレス氏で、この情報は直ちにワシントンに送られ、トル−マン大統領が承諾のサイン
をした。
同時にこの情報は、国民政府蒋介石総統にも送られた。
もう一つの公電は、ストックホルム、駐スエ−デン日本公使館岡本季正公使に送られ、
同じようにスエ−デン政府を通してイギリス政府へ通報しており、スイスとスエ−デンは
第二次大戦中中立を守り通した国だ。
そしてもう一つは交戦国になったが、まだ閉鎖されずにいたモスクワの駐蘇日本大使館
佐藤尚武大使に送られた。
公電と同じ内容の原稿が日・英二ヶ国語で同盟通信社からモ−ルス信号で繰り返し送信、
この通信波は通常新聞電報として洋上の船舶局や在外機関に対して毎日送信しているもの
で、これを利用しての放送、この通信を傍受した全世界が日本の降伏を周知した。
このポツダム宣言受諾、連合国勝利宣言は臨時ニュ−スとして全米でラジオ放送され、
また短波国際放送が全世界に向け放送した。
この夜半、NHK 録音班の技術者が皇居に参内、極秘に陛下の玉音を録音します。
当時はテ−プレコ−ダの様な便利なもはないので、レコ−ド盤に録音しております。
これを知った参謀本部の若手将校が奪い返そうと動き回るのは、1967 年東宝映画、岡本
喜八監督で製作した「日本でいちばん長い日」で描かれているが、この映画での見せ場は
三船敏郎扮する阿南陸相の自刃シ−ンで、長いカットで観ている私の方が呼吸困難になる
ような迫力があったのが思い出された。
8 月 15 日
NHK 朝 7 時のニュ−スで、本日正午重大発
表があるので必ず聴くようにと繰り返しアナウンスされ、
短波放送、国際放送でも繰り返し放送されたので、遠く離
れたラバウルでも直接聴守出来たと記録されている。
8 月 15 日 日本全国快晴の暑い日でしたが、空襲が全く
ない静かな日でした。
正午
玉音放送
『朕深ク世界ノ大勢ト帝國ノ現状トニ鑑ミ非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ収拾セント欲シ茲ニ忠
良ナル爾臣民二告ク、朕ハ帝國政府ヲシテ米英支蘇四國ニ對シ其ノ共同宣言ヲ受諾スル旨
通告セシメタリ、・・・・・今後帝国ノ受ヘキ苦難ハ固ヨリ尋常ニアラス爾臣民ノ衷情モ朕
善ク之ヲ知ル然レトモ朕ハ時運ノ趨ク所堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ以テ万世ノ為ニ太
平ヲ開カムト欲ス・・・・・・・・・・・・・・
朕ハ茲ニ国体ヲ護持シ得テ忠良ナル爾臣民ノ赤誠ニ信倚シ常ニ爾臣民ト共ニ在リ若シ夫
レ情ノ激スル所濫ニ事端ヲ滋クシ或ハ同胞排擠互ニ時局ヲ乱リ為ニ大道ヲ誤リ信義ヲ世界
ニ失フカ如キハ朕最モ之ヲ戒ム宜シク挙国一家子孫相伝ヘ確ク神州ノ不滅ヲ信シ任重クシ
テ道遠キヲ念ヒ総力ヲ将来ノ建設ニ傾ケ道義ヲ篤クシ志操ヲ鞏クシ誓テ国体ノ精華ヲ発揚
シ世界ノ進運ニ後レサラムコトヲ期スヘシ爾臣民其レ克ク朕カ意ヲ体セヨ
御
名
御
璽
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