HEM-Netグラフ37号(PDF)を開く - 救急ヘリ病院ネットワーク HEM-Net

37
GRAPHIC MAGAZINE OF EMERGENCY MEDICAL NETWORK OF HELICOPTER AND HOSPITAL
季刊誌 救急ヘリ病院ネットワーク 2015 年 秋号
HEM -Net グラフ
HEM - Net 対談
県民の生命と安全と
財産を守る
AUTUMN 2015
HEM-Net
故郷の隆盛を願う使命感から
知事に
篠田 知事の仕事は、県政万般に全
力投球しなくてはならない大変な仕
救急ヘリ病院ネットワーク
東京都千代田区一番町 25 番
全国町村議員会館内
TEL: 03-3264-1190
FAX: 03-3264-1431
E-mail: hemnetda
@topaz.plala.or.jp
を 豪 雨 が 襲 い(7・
水害)
、母校
た経験を故郷のために活かされ、連
た。そのとき、地元の市長から頼ま
れて災害対応を手伝っているうち
に、 日 本 全 体 を 考 え る の も い い が、
故郷も大変だから、地元の事を考え
てくれと言われたんです。
転車がずらっと並んで笑い声が響き
気が付いてみると、駄菓子屋に子
供たちが集まり、プラモデル屋に自
分が生きている間に日本が没落する
泉田 選挙の時も、災害からの復興
を訴えて回っていたのですが、就任
時間対応し
すが、実際経験されて如何でしたか。
は非常に重要ではないかと思うので
験則で、とにかく先にとお願いしま
か」という声もあったのですが、経
した。阪神・淡路大震災の時は、石
ギー庁で、どこにどれだけ石油があ
る か を 完 全 に 把 握 し て い た ん で す。
幸い通産省に勤務していたときの経
験が活きました。
井戸兵庫県知事からは、即座に阪
神・淡路大震災を経験した県職員を
が1ヶ月ぐらいしか無かったのです
が、それでも枢要な人とは面識がで
順調にいきました。
で災害対応をしましたので、比較的
から派遣された人に聞くということ
部屋を作って、何か困ったら兵庫県
あり、知事室の隣に兵庫県チームの
送ったから使ってくださいと電話が
の石油部で総括班長をしていたこ
います。私自身は資源エネルギー庁
たことがすごく役立ったのを覚えて
役割を果たしているのかを知ってい
どこにどういう人がいて、どういう
き ま し た の で、 災 害 対 応 に 当 た り、
選挙運動というのは、凄い仕組み
だなと痛感しました。選挙準備期間
ではと実感しています。
体力は無いよりもあった方がよいの
油 業 法 が あ っ た の で、 資 源 エ ネ ル
ソリンを被災地に送ってもいいの
「こ ん な に 余 震 が 続 い て い る の に ガ
れ な い こ と が 懸 念 さ れ ま し た の で、
が多く、ガソリンが切れたら暖も取
しました。特に車の中に避難する人
ソリンスタンドへの給油をお願い
り、早い段階でタンクローリーにガ
一番火事にならないという知識があ
火壁があるのでガソリンスタンドが
震災の経験から、火の手がきても防
とがありましたので、阪神・淡路大
力を失っている。危ないから近づく
生きストリート」と名前を変えて活
渡っていた、そういう商店街が「長
故郷を持続可能な社会に創りかえる
日に
の
月
という使命感に燃えて、知事をやっ
中越地震が起きまして、最初の仕事
無い国だから、資源を輸入してモノ
先生に「日本は資源もエネルギーも
の は 見 た く な い な と 思 っ た ん で す。
あるのかなと不思議で、とにかく自
いく。緩みとか慢心みたいなものが
も唐もローマも、大帝国が衰退して
泉田 中学や高校の社会科で習いま
すが、エジプトもメソポタミアも漢
か。
「男 子 の 本 懐 」と い う こ と で し ょ う
が水没するという事態になりまし
ところが、通産省から岐阜県に出
向中の2004年7月に新潟・福島
です。
づくりに関わる通産省を目指したん
自転車操業の国だ」と教わり、もの
を作り、輸出していかないと倒れる
この雑誌は、全国共済農業協同組合
連合会(JA共済連)および社団法人
日本損害保険協会のご協力により発
行しています。
続 三 期 勤 め て い ら っ し ゃ い ま す が、
事だと思います。通産省に勤務され
シンポジウムの
お 知らせ
泉田 体力的には平時でもきつい仕
事 で す が、 特 に 災 害 時 と い う の は、
強いられる。そういう点では、若さ
なくてはならないし、非常に緊張を
すが、特に災害時には
年少の知事でいらしたということで
篠田 災害の時こそ、首長の真価が
問われるといいます。当時は全国最
時間前の2004年
てみようと決断しました。そういう
が震災対応でした。
初仕事は震災対応
だと思います。
意味では、
「男子の本懐」ということ
生命、安全、財産を守る、それから
群馬県ドクターヘリ
安全研修会
14
GRAPHIC MAGAZINE OF EMERGENCY MEDICAL NETWORK OF HELICOPTER AND HOSPITAL
なと言われた工場が更地になってぺ
ん ぺ ん 草 が 生 え て い る。 何 の た め
に、日本が衰退するのを見たくない
といって官僚を目指したのか、故郷
が隆々としているのが大事だったの
ではないのか。ちょうど地方自治に
携わっているときに、それも災害か
らの復興とセットで声をかけられた
ものですから、これは何とかせねば
13
篠田 泉田知事は災害に縁が深いん
ですね。
HEM-Net グラフ 第 37 号
発行日/ 2015 年 10 月 1 日 発行者/認定 NPO 法人
13
11
聞き手:篠田伸夫 認定 NPO 法人救急ヘリ病院ネットワーク理事長
15
23
泉田裕彦新潟県知事の熱い思いを伺った。
中央防災会議、7 月 7日
に防災基本計画を改正
30
ドクターヘリの導入・効果的運用に向けて陣頭指揮を執る
HEM-Net
Up To Date
10
ドクターヘリ最前線
大分大学医学部附属病院
07
積極的に活動するとともに県民の命を救うために
01
という気持ちが沸々と湧いてきまし
た。
ドクターヘリ推進議員
連盟総会が開催される
新潟県加茂市出身
1987 年京都大学法学部卒
1987 年 4 月 通商産業省入省、資源エネルギー庁石炭部計画課、中小
企業庁小規模企業政策課、ブリティッシュ・コロンビア大学客員研究員、
資源エネルギー庁石油部精製課総括班長、産業基盤整備基金総務課長、
国土交通省貨物流通システム高度化推進調整官、岐阜県新産業労働局
長など歴任。
2004 年 10 月 新潟県知事就任(1 期目)、2008 年 10 月 再選(2 期目)、
2012 年 10 月 再選(3 期目)、現在に至る
全国知事会危機管理・防災特別委員会委員長として
AUTUMN 2015
HEM-Net グラフ 37
HEM-Net シンポジウム
「ドクターヘリの安全
運航をめぐる諸問題」
12
新潟県知事
泉田 裕彦 氏
篠田 伸夫 氏
中越地震、中越沖地震の経験を踏まえて、
HEM-Net 対談
とにかく災害から県民の皆さんの
泉 田 裕彦 氏
24
CONTENTS
県民の生命と安全と財産を守る
01
02
先進事故自動通報
システム(AACN)
通報訓練・実働訓練報告
ひろ ひこ
いずみ だ
救急ヘリ病院ネットワーク
HEM-Netグラフ 2015年 秋号
HEM - Net 対談
制作者/クリエイト21
と思っています。
きに議論していかなくてはならない
ぞれ地方の計画の中で具体化すると
なっているので、このあたりをそれ
労働省と総務省消防庁という関係に
局が所管しており、国でいうと厚生
は防災ヘリとドクターヘリを複数部
ハウが残っていないんです。人の経
ことがありましたが、その時のノウ
ビルが液状化で横倒しになるという
落ちる、
製油所が火災事故を起こす、
篠田 まさに人と人の関係で上手く
回っていますね。
した。
また活躍をするという経緯もありま
ます。その人たちが東日本大震災で
所長にしてくださいとお願いしてい
起きた時の対応も両方わかった人を
震災だけでなく中山間地型の災害が
人材を派遣していただき、都市型の
ターができましたが、京都大学から
後、 新 潟 大 学 に 災 害 復 興 科 学 セ ン
知 識 を 授 け て も ら い ま し た。 そ の
めてだということでしたが、色々な
害対策本部に入って議論するのは初
害後の検証はしたことがあるが、災
接入ってもらいました。先生方も災
ターの先生方にも災害対策本部に直
大学防災研究所の巨大災害研究セン
マネジメントスタイルを取り、京都
ま た、 知 識 を 持 っ て い る 人 が 加
わって方針を決めるというナレッジ
用できると位置づけていますが、知
送などロジスティクスのためにも活
者の搬送、不足する医療資器材の輸
広域医療搬送、DMATの移動、患
必 要 に 応 じ て D M A T の 活 動 支 援、
タ ー ヘ リ に つ い て は、 災 害 時 に は、
調 査 ヘ リ を 位 置 付 け て お り、 ド ク
等を行うためのヘリとして災害医療
都道府県、医療関係者等へ情報提供
きる。ドクターヘリ、防災ヘリ、各
捌いた方が持てる力をフルに活用で
整を行うよりも、経験を踏んだ人が
ヘリコプターの差配も同じこと
で、初めての人が災害対策本部で調
はないかと。
がサポートに入ることが重要なので
チームを作って、国が指定した人達
あらかじめ緊急時の行政の災害支援
た め に は、 D M A T と 同 じ よ う に、
が、もっと円滑に支援していただく
庫県に応援に来ていただきました
臣にお願いしているところです。兵
してもらえないかと山谷防災担当大
のための横の連携を法的に位置付け
市町村ですから、非常時の災害対応
県、市町村の業務を知っているのは
来ない。県の業務を知っているのは
から応援に来られても意思決定は出
いざという時の対応能力をつけて
おくというのが極めて重要です。国
思います。
ンテナンスにもなるということだと
になると同時に自分達のスキルのメ
派遣しますが、それは被災地の支援
か。災害があれば、積極的に職員を
験を組織の中にいかに伝承していく
す。
をやっておく必要があると思いま
ンを明確にして合意してもらうこと
ライトナースにも災害時のミッショ
といけない。フライトドクター、フ
的にどう位置付けるかを議論しない
いでなくてはならない、これを全体
け身ではなく少し前方展開するぐら
に係わるだけに、二次的で完全に受
ヘリ、そしてドクターヘリはより命
東日本大震災の教訓の一つは、受
動で救援活動をすると待機時間が長
く必要があります。
泉田 総合力を効率的に発揮するた
めには、役割分担を平時に決めてお
うにしています。
け、災害対策本部が指揮命令するよ
独立した部門として航空部門を設
C S は、 航 空 機 能 を 非 常 に 重 視 し、
があるのではと思っていますが、I
れに沿ってある程度変えていく必要
す。私は、日本の防災基本計画もそ
れるなど世界標準になりつつありま
り、近年では欧・豪各国でも取り入
ステム)という基本原則を定めてお
CS(インシデント・コマンド・シ
包括的な組織運営システムとしてI
篠田 因みに、アメリカでは複雑多
岐な災害に対応するための一元的で
思っています。
るかということも重要な課題かと
用するための災害本部要員をどうす
機関がもっているヘリを含めて、運
平成 年の航空法施行規則の改正
により、ドクターヘリも消防機関等
もっています。
会もその点に関しても非常に関心を
篠田 是非とも我々もそれに参画し
たいと思いますし、日本航空医療学
させていただけたらと思います。
EM Netともコラボレーション
きかけていくことが重要なので、H
取りまとめた上で国の関係機関に働
論しなくてはいけない。県の組織で
シュ型で助けに行くという機能をど
くなればなるほどむしろ自らプッ
ない。出動要請がどんどん来る状態
のあたりを議論しておかないといけ
のか、機種によっても異なるが、こ
交代をしてもらわなければならない
チームの一人とサポートで入る人と
らないといけない。ドクターヘリの
すぐ降りられるレスキュー隊員が乗
いわけで、おそらく上空で待機して
達に上空偵察しろというのは難し
備士と4人乗っていますが、この人
ロットの他にドクターとナースと整
うと、ドクターヘリチームだとパイ
はと思っています。何が問題かとい
察 の 結 果、 被 災 者 か ら の 要 請 が な
いう構造になっていたことです。偵
いるところはSOSを出せないと
くなり、本当に大変な事態になって
う作っていくかというところを議
だったらいいのですが、災害が大き
加をしてもらうのかを議論しなくて
機をさせておくのか、偵察飛行に参
ターヘリは要請があるまでずっと待
のが当然なんですが、加えて、ドク
くても救助が届くようにしていく
篠 田 非 常 に 大 切 な ポ イ ン ト で す
ね。日本DMAT活動要領では、災
事の言われた偵察飛行については書
場では助けを待っていても救助の手
から出動できない一方で、被災地現
策を設計してしまうと、要請がない
泉田 そこを決めておかないと、災
害が起きた時に、受け身を基本に対
入って議論すべきだと思います。
ているのか、ドクターヘリ関係者も
ターヘリがどういう役割を期待され
おっしゃったように、災害時にドク
で大活躍したわけですから、知事が
もあります。これだけ東日本大震災
れて検討していただきたいという声
か、厚生労働省にはもっと本腰を入
ヘリをどのように活用したらいいの
ず、困ることも経験しています。や
に下りてくる指示が現場で機能せ
は縦割り行政になっているので、県
長に上がってきます。ところが、国
を作れば基本的に全部統合して本部
持っているので、県で災害対策本部
泉 田 や っ て い き た い と 思 い ま す。
知 事 は、 県 行 政 全 般 の 統 合 機 能 を
検討していただきたいのですが。
を総合的にどう活用するかも大いに
知事会の中でこれらのヘリコプター
配下にあることを考えますと、全国
防防災ヘリ、ドクターヘリは知事の
ていらっしゃいます。警察ヘリ、消
篠田 現地に集結したドクターヘリ
の役割分担ということですか?
がします。
ションするというのがいいような気
ムからの情報も受けながらオペレー
とに分けて、最前線で救助するチー
泉田 イメージでいうと、待機する
ヘリと患者の救命治療に当たるヘリ
るとヒシヒシと感じています。
を担うのかを早く検討する必要があ
時にドクターヘリがどのような役割
ていると言われている時に、大災害
南海トラフ巨大地震が目の前に迫っ
になりましたが、首都直下型地震や
に場外離発着場に離発着できるよう
からの依頼・通報がなくても、自由
が 届 か な い 可 能 性 が あ る。 防 災 ヘ
はり、現場で何をしたらいいのかを
泉田 そうです。全部が同じという
リ、警察・海上保安庁・自衛隊の各
災害時のドクターヘリの役割の
検討を
害医療センターが災害時に被災地域
かれていません。災害時にドクター
25
-
泉田 新潟も、1964年に新潟地
震を経験し、信濃川に掛かった橋が
の 医 療 状 況 等 の 調 査 や 厚 生 労 働 省、
篠田 伸夫
03
04
篠田 現在、泉田知事は、全国知事
会の危機管理・防災特別委員長をし
認定 NPO 法人 救急ヘリ病院ネットワーク 理事長
有効に使えないと思うんです。
決めないと、持っているリソースを
わけには多分いかないので、役割を
る状況を十分承知しているので、こ
の話、こういった渾然一体としてい
を被る話、ヘリによって助かった人
大災害時の対応は
言という制度が無いんです。災害対
策基本法や警察法に緊急事態の布告
という言葉が入っていますが、どの
そこに留まれという命令になってい
た原子力災害だと、国民保護法では
いとなりますが、航空機テロで起き
径5㎞圏内の住民はすぐに逃げなさ
わかりやすい例でいうと、原発で
トラブルが起きると、原災法では半
と原災法が矛盾していたりする。
体系になっているため、国民保護法
テロ等を想定すると国民保護法が別
存在して事務局も違う。更に航空機
いて、総理まで上がる組織が二重に
リが飛んでいることによって不利益
カーもヘリの音で消えてしまう。ヘ
えない、防災無線の非常時のスピー
したが、取材ヘリがいると音が聞こ
のハイパーレスキュー隊が救助しま
は実体験として思っています。
と管制しないと物凄く危ない。これ
あっというまに来てしまう。ちゃん
し な が ら 有 視 界 飛 行 を し て い て も、
量のヘリが入ってくると、常時確認
るのがわかるのですが、災害時に大
いのタイミングで相手が近づいてく
で行くときには確認作業でどれくら
いて危ないんです。通常時は、ヘリ
は、ものすごく多くのヘリが飛んで
も多いのでよく乗りますが、現場で
泉田 それから災害があると、どう
してもヘリでしか往復できないこと
かる命を助けるためにドクターヘリ
きましたので、やはり命を守る、助
ないかの境目になることを経験して
自分の判断で命が助かるか、助から
り ま す し、 災 害 対 策 本 部 長 と し て、
ん経験しているからか強く感じてお
だと思います。特に、災害をたくさ
泉田 知事の使命は県民の皆さんの
生命、安全、財産を守ることが第一
しょうか。
お気持ちはどうして生まれたので
者一同感銘を受けました。そういう
ということだと思います。
ている自衛隊にやってもらうべきだ
緊急事態に対応した管制能力を持っ
いますので、通常の管制ではなくて
泉田 絶対必要だと思います。いろ
んな理由で飛んでいる複数の機体が
でしょうか。
の必要性はやはり大きいのではない
者会見でおっしゃっていますが、そ
とが必要ではないかと防衛大臣も記
強制力を持ってコントロールするこ
管制権限を自衛隊に与え、臨時的に
リ で あ っ て も 航 空 管 制 で き る よ う、
されます。有視界で低高度を飛ぶヘ
い数のヘリが飛んでくることが想定
後、大地震が起きた場合、ものすご
が来て事なきを得たわけですが、今
の際は、自衛隊の臨時の管制チーム
思いますね。中越地震や中越沖地震
良かっただけで、これでいいのかと
篠田 沢山のヘリが来ても、二次災
害にならなかったのはたまたま運が
を聞く機会もあるかなと思います。
航空自衛隊に順次お願いしていま
ないような時は海上保安庁、さらに
泉田 県警のヘリに飛んでもらって
いますが、オーバーホール中で飛べ
どうされていますか。
篠 田 佐 渡 島、 粟 島 が あ り ま す が、
夜間に患者が発生した場合の対応は
ろです。
て、承知していただいたというとこ
りディスカッションをした結果とし
で、どうしても入れるんだと、かな
簡単に行けないケースもあるわけ
は全国で5番目に大きく、救急車で
いとお願いしています。非常事態宣
実は知事会の危機管理・防災特別
委員会から緊急時規程を定めてほし
なっているんです。
さないと何も出来ないという状況に
て、通常立法では政省令を含めて直
アセスメントをどうするかに始まっ
いざという時の危険物の処理と環境
埋 葬 法 の 緊 急 時 特 例 も 無 い ん で す。
や 仮 埋 葬 を し て い い の か と い う と、
多くの方が亡くなった時に、仮安置
く苦労しています。例えば、津波で
泉田 今の日本では、国家の緊急事
態に対応する法律がないため、物凄
しょうか。
は、 そ れ に 類 す る も の は あ る の で
いう仕掛けになっています。日本に
変え、一斉に事故現場に集中すると
ヘリの勤務体制を非常時にガラッと
「大 災 害 宣 言 」を 出 し て、 平 常 時 の
ま し た が、 そ の 時 の 記 録 を 読 む と、
篠田 1998年にドイツのエシェ
デで高速列車が脱線し、101人が
ていただきたいと思います。
篠田 本日はお忙しい中、長時間に
亘りありがとうございました。これ
りでは出来ないので、
「絆」が大切だ
力だと思っています。そして、ひと
泉 田 「感 謝 と 絆 」で す。
「感 謝 」の
気持ち、これは社会を動かしていく
篠田 最後に、知事の座右の銘を伺
いたいのですが。
別措置法と災対法が縦割りになって
日本大震災では、原子力災害対策特
法では完結しない。縦割りになって
度を見直してほしいのですが、災対
ないと上手くありません。ここの制
て一定以上のことが出来る仕組みが
た後は、各機関に権限移譲がなされ
規定があって、非常事態宣言を発し
てくることになるので、本当は包括
は、場所と時代によってまるで違っ
何をどうしたらいいかということ
びかけの仕方も違った。緊急事態に
う。阪神・淡路大震災のときはまだ
周辺で、対応も必要な処置も全部違
は片や中山間地、片や原子力発電所
チュードも殆ど同じなのに、被災地
沖 地 震 と で は、 発 生 場 所 も マ グ ニ
年の中越地震と、2007年の中越
一方、災害は毎回違う形で起きま
す。例えば、同じ地震でも2004
まだまだ不十分
るんです。全然整合が取れていない
を入れたいという気持ちを強くもっ
す。
ような場合に該当するかは、限定列
法体系が個別に存在している状態な
ていました。ただ、当初、導入しよ
れについても、知事会でいろんな話
んです。だから非常事態宣言をした
うとしたときは、色々と障害があっ
篠田 新潟県では、2機目の導入に
ついて検討されていると聞いていま
がいっぱいあるのに、ドクターヘリ
と。降雪で、防災ヘリが飛べない日
入れられる病院が無いじゃないか
医 師 不 足 に 悩 ま さ れ て い て、 受 け
といけないのですが、新潟県の場合
て、ドクター、ナースが潤沢でない
ポートを備えた病院はかなりあるの
最寄の処置できる病院の中にヘリ
学 総 合 病 院 に 搬 送 す る わ け で な く、
プした患者さんを全て新潟大学医歯
数整備されていますし、ピックアッ
ところです。既にヘリポートは相当
からも是非強いメッセージを発揮し
と思っています。
いて緊急時に起動しない。例えば東
インターネットも無かったので、呼
挙なんです。
後に、権限を程度に応じて行使でき
て大変でした。
すが。
篠田 昨年の 月のシンポジウムで
は泉田知事に基調講演を賜りました
が機能するのか、それよりは、救命
で、態勢の整ったところを選んで決
亡くなるという大きな事故が起き
る機関に委任するという普通の国の
例 え ば、 ド ク タ ー ヘ リ を 運 用 す る
災害時の空の安全確保
形に変えていく必要があると思って
ためには、機材だけの問題ではなく
が、ドクターヘリに対してこんなに
救急センターを作って救急車で運べ
めていくことになると思います。
また、中越地震の時には、土砂崩
れで埋まった男の子を、東京消防庁
いるのです。
泉 田 来 年 の 運 航 を 目 指 し て、 今、
まさに基地病院の選定を行っている
も深い愛情がある知事はそんなにい
るようにすべきだと。新潟県の県土
県民の命を守るドクターヘリ
らっしゃらないのではないかと関係
05
06
10
第 37 回 ドクターヘリ最前線 大分大学医学部附属病院
(聞き手:西川 渉 HEM-Net 理事)
大分県全域を
分でカバー
︱︱ ド ク タ ー や ナ ー ス は 何 人 く ら い お ら れ ま す
か。
重光 フライトドクターは主務担当者が7人、非
常勤3人。フライトナースが7人です。ただし、
ることもあります。またフライトナースは勤務時
らでしたか。
重光 2012年
年になります。
間の関係で、4時 分以降の時間を飛ぶのは難し
まだ慣れていない人や外部の人の場合は2人で乗
︱︱どのくらい飛んでおられますか。
重光 2012年度は6ヶ月間で206
年度が457件、 年度が483
件、
いといった条件もあって、そのときはドクターが
2人乗ります。
︱︱ヘリコプターの運航は西日本空輸ですね。
現在、屋上のヘリポート横に格納庫を建設中で、
重光 そうです。パイロット、整備士、CSの皆
さんが4階の運航管理室で待機しています。なお
重光 そうです。全域を約 分でカバー
できます。今のところ最も多いのがここ
この
は151件と全県の3分の1近くになり
14
11
がれ、今もスムーズに動いているわけで
ターヘリに変わっても同じ関係が引き継
携 が 緊 密 に な り、 ド ク タ ー カ ー が ド ク
から消防本部や救急隊と医療機関との連
ターカーの運用を始めました。そのこと
からドクターが現地へ乗って行くドク
危機的状況を解消するため、5年ほど前
て大分市まで陸送されていました。その
竹田市にはしばらく二次救急病院がな
かったので、重症患者は1時間もかかっ
われるわけですね。
︱︱出動は、消防本部からの要請に応じておこな
港の格納庫に移動します。
に係留したままですが、天候が悪いときは大分空
バイします。夜もヘリコプターは屋上ヘリポート
重光 原則は朝8時過ぎにヘリコプターの飛行前
点検を終わり、8時半から日没 分前までスタン
︱︱待機の時間は、どうなっていますか。
出動要請電話は4者同時に聞く
︱︱消防本部からの要請基準はキーワード方式で
わけです。
どを考慮して、どういう手段で行くかを判断する
カーが行く場合もあります。天候、時間、距離な
これでお互いの情報共有が早くなる結果、迅速
に調整して出動します。場合によってはドクター
聞き、また通話もできるようになっています。
らにドクターヘリのCSと、4者が同時に電話を
イトドクターとドクターカーの担当ドクター、さ
ERのドクターが対応しますが、そのほかにフラ
が病棟、3階が医局になっていて、出動するとき
る状態です。なお、この建物は1階がER、2階
療を手伝ったりしていますが、いつでも手が放せ
重光 現場に行くフライトドクターは毎日、担当
を決めています。出動要請がかかるまでは外来診
け上がるわけですね。
︱︱出動となると、ドクターとナースは屋上へ駆
すので目下検討中です。
て欲しい、その方が要請しやすいといわれていま
る。事実、救急隊の方からはキーワードをつくっ
ろにはキーワード方式が良いのかなとも考えられ
はそれほど多くないと思いますが、そういうとこ
また、大分県立病院には総合周産期母子医療セ
ンターがあり、こちらも大分県の周産期医療の中
います。
ともあります。現在いろいろな連携に取り組んで
さんと一緒にヘリコプターに同乗して搬送するこ
周産期医療の専門医による治療を提供することが
う事例も増えています。こうすることで搬送中も
に乗って現場にゆき、患者さんを連れてくるとい
人科や小児科の先生が我々と一緒にヘリコプター
などに転院することになります。その場合、産婦
竹中 特に県周辺部は周産期医療が手薄な現状が
あり、地元病院で対応困難な患者さんは大学病院
豊後高田市
国東市
杵築市
20min
5min
豊後大野市
佐伯市
出来ます。また地元病院の産婦人科の先生が患者
しょうか。
はいったん全スタッフが1階に集まる。そして同
ドクターヘリがなければ危なかった
津久見市
臼杵市
竹田市
10min
大分市
由布市
九重町
15min
玖珠町
︱︱患者さんの症例は、やはり交通事故が多いの
件、脳血管疾
30
別府市
日田市
でしょうか。
性冠症候群など心臓関連の病気が
47
件ですが、周産期・小児関連の出動は 件
います。
姫島村
日出町
30
重光 2014年度の実績では、全部で432件
のうち交通事故は 件で、2割強です。ほかに急
94
で、これはもっと増えてもいいのではないかと思
患が
84
宇佐市
中津市
ます。
重 光 い い え、 従 来 の 出 動 基 準 で や っ て い ま す。
したがって慣れた消防からはどんどん呼んできま
30
心 に な っ て い ま す。 大 分 県 立 病 院 に は 屋 上 ヘ リ
ようです。
す。医療に対する救急隊員の意識も高い
運航管理室も格納庫の横に移転します。
10
20
重光 出動要請を受けるに際しては、特徴があり
ます。消防本部からの電話に対して、主としては
ました。
月か 月には完成しますから、そのときは
から南西の方へ行った竹田市で、 年度
︱︱飛行地域は大分県全域ですね。
14
45
月です。そろそろ3
︱︱大分県ドクターヘリの運航はいつか
20
10
件という出動実績です。
13
じエレベーターに乗りこんで屋上に上がるように
重光 修 医師
すが、慣れてないところは判断に迷って呼ばない
救急医学講座 教授
ポートも整備されており、既にヘリコプターでの
大分大学医学部附属病院
高度救命救急センター長
秒しかかかりませ
初め、大分大学医学部附属病院を訪ね、高度救命救急センター長の重光修先生と救急医学講座助教の竹中隆一
しています。時間的には1分
それが、8 月下旬になると不意に涼しくなり、今度は季節外れの秋雨が続く。その雨がわずかに途切れた 9 月
こ と も あ る よ う で す。 た だ し 要 請 に 当 た っ て は
今年の夏は炎天の下、大変な猛暑が続いた。7 月なかばから 1 ヵ月、熱中症で搬送された人は 5 万人を超え、
んし、ヘリコプターは要請から3分余りで離陸し
命をなくした人も例年になく多かった。
オーバートリアージを容認していますから、実際
先生のお話をうかがった。
07
08
大分大学医学部附属病院
第 37 回 ドクターヘリ最前線 大分大学医学部附属病院
置をしながら再び救急車でヘリコプターまで搬送
圧が低く、呼吸も絶え絶えでした。そこで緊急処
んがいました。我々が着いた時には患者さんは血
重光 今のところ382ヵ所です。
︱︱隣県との関係はいかがですか。
か。
︱︱ ラ ン デ ブ ー ポ イ ン ト は ど の く ら い あ り ま す
後周産期医療についてもさらに連携強化出来れば
患者さんを多数受け入れてもらっていますが、今
あのときヘリコプターがなければ医師が速やか
に現場へゆき山中で開胸することも出来なかった
が最後はうまく社会復帰できました。
療につなぐことができ、かなり時間も要しました
かなりの重症外傷でしたが、その後の専門医の治
した。検査の結果、重症胸部外傷や骨盤骨折など
処置で心拍は再開し病院に到着することが出来ま
に乗せ大学病院まで搬送したところ、幸い、蘇生
マッサージをしながら、一か八かでヘリコプター
こないため実態を把握するのは難しい状況です。
そういう案件は検証会などではなかなか上がって
竹中 本当はヘリコプターを呼んだ方がよいのに
呼べなかったという症例もあるはずです。ただ、
てゆくでしょうか。
︱︱大分県ドクターヘリは今後も出動件数が増え
す。
いるので今後連携の可能性が出てくると思いま
在も運航しています。熊本県は県境が入り組んで
重光 久留米大学が近いので、以前から福岡県の
ドクターヘリが大分県の北西部に飛んでおり、現
してきましたが、その途上で心臓が停止してしま
と考えています。
し、重症外傷に対応できる病院も近くになかった
大分県南部などは林業も盛んな地域なので、山
中での労災事故でしばしばヘリコプターが要請さ
事例があります。
プターがなければ救命できなかったと考えられる
です。これら県周辺部からの要請の中にはヘリコ
竹中 大分県の特に県境に近い地域では救急医療
が 必ずしも充実しているとは言えないのが現状
だ改善すべき点はありますが、ある程度はうまく
通じて相互の理解は進んでいるはずです。無論ま
年2回、地域の研究会を開きますので、これらを
重光 消防の皆さんも含めて2ヵ月に1回ずつ症
例検討会をしています。さらに大分救急医学会が
︱︱消防機関との連携関係はいかがですか。
運航開始3年で新たな飛躍へ
し た。 大 分 県 ド ク タ ー ヘ リ が 今 後 ま す ま す 活 躍
間をいただき、貴重なお話を聞かせていただきま
︱︱本日はお忙しいところ、お二人の先生にお時
ています。
ていくことで、新たな飛躍をしていく時期と考え
運航開始から3年経って、キーワード方式を導
入した方がいいかどうかも含めて、大分県として
いました。フライトドクターが緊急開胸して心臓
︱︱なにか、ドクターヘリがなければ、患者さん
そこをいかに拾い上げていくか。そのあたりのシ
れます。以前、作業中に重機ごと斜面を滑落した
行っていると思います。たとえば初めのうちは、
し、
県民の救護に貢献なさるよう願っております。
ステムを、また新しく考えていく必要もあろうか
患者さんがいました。ヘリコプターでは現場の山
お互いの連絡先や連絡の手順などが周知されてい
のドクターヘリ・システムの更なる改善をはかっ
と思います。
中に着陸できないので、麓で降りてそこから更に
ようにと言われました。けれども自分の会社だから、
じっとしているわけにはいかない。退院の日から仕事
矢田正行さんは、会社、事務所、店舗、病院などの
事業活動に伴って排出される事業系廃棄物の処理に当
は非常に柔和な目をしておられる。そのやさしい気持
しかし廃棄物の収集に休日はない。毎朝3時から客
先を回るというきつい本業にもかかわらず、矢田さん
をしました。ただ、なるべく控えめにやってます」
たる企業を立ち上げ、 年間にわたって1年365日、
仕事の最中に胸が痛くなり……
有難うございました。
矢田 正行さん(66 歳)
ないこともあったりしました。
例をお聞かせください。
ので、助けられなかったと思います。
竹中 隆一 医師
の命も危なかったかもしれないというような具体
救急医学講座 助教
大分県臼杵市在住
妻の秀代さんと
で収集した廃棄物をパッカー車に積みこんでいる最中
1日の休みもなく仕事をしてきた。それが突然、出先
たらしい。それを抱いて帰り、体重300キロになっ
出てきた小さなイノシシの仔を見つけた。親にはぐれ
ちから6年前、車で山の中を走っていて道ばたに迷い
した。気分が悪いからすぐに来てというので、大急ぎ
様子が珍しいというので、先頃テレビの珍百景番組に
秀代さんは毎日餌をやりながら、その背中にブラシ
をかける。たしかに毛並みはつやつやと美しい。その
た今も「サクラちゃん」と呼んで裏庭で飼っている。
で駆けつけると、お客さんのところで横になって氷で
出演、満点を獲得した。矢田さんのハートと環境ビジ
8:10 救急車にて近医へ搬送
8:35 ドクターヘリ出動要請
8:40 ドクターヘリ離陸
(大分大学医学部附属病院)
8:47 ランデブーポイント到着
8:47 患者診療開始
8:49 患者搬送開始
(東山 翔
)
ネスも満点を続けていただきたいものである。
ドクターヘリ搬送の経緯
妻の秀代さん。
すぐに救急車を呼んで、 年ほど前に心不全の治療
を受けた近所の臼杵市医師会コスモス病院に搬送して
もらった。そのときの主治医は今、副院長だが、急性
日のことである。
心筋梗塞との診断で、大学病院へドクターヘリで行く
ことになった。今年7月
ヘリコプターが着陸したのは病院近くの消防署に2
年前にできたばかりの芝生のヘリポート。乗ってきた
医 師 は 黒 澤 慶 子 先 生。 秀 代 さ ん も 付 添 い と し て 乗 り
こむ。
「ドクターヘリはテレビ・ドラマで見ましたが、
大分にもあるとは知りませんでした」
ヘリコプターはすぐに大学病院屋上に到着。直ちに
心臓カテーテル治療をおこない、2~3日で集中治療
室を出ると、順調に回復して2週間後の8月6日に退
9:02 大学病院ヘリポート着
24
退院にあたっては「先生から半年間は無理をしない
院することができた。
8:53 ランデブーポイント出発
15
冷やしたタオルを当てて貰っていました」と語るのは
「その電話を受けた瞬間、背筋が凍るような気がしま
わが家に電話した。
に胸が痛くなり、だんだん痛みが増して我慢できず、
22
30
1年365日、
早朝3時から仕事
09
10
大分大学医学部附属病院
高度救命救急センター
救急車で 分ぐらい山中へ入ったところに患者さ
心臓病にも満点で対処
先進事故自動通報システム(AACN)
通 報 訓 練 ・実働訓練報告
訓練には、群馬県の医務課、消防関
係、警察関係(交通企画課、交通規制
課、高速隊)の他に、埼玉県・栃木県・
茨城県のドクターヘリ関係者も加わ
名になりました。
るか、課題の一つとして議論されまし
た。
今回のAACN通報訓練では、重傷
事故事案を2件想定し、事故発生場所
救急車やドクターヘリを起動させる訓
報 の み の 訓 練 )と 同 実 働 訓 練(実 際 に
AACN通報訓練(実働を伴わない通
日本医科大学千葉北総病院で実施した
れます。前報では、2015年3月に
AACNが起動するドクターヘリシ
ステムは、今秋から試験運用が開始さ
ており、HEM Netホームページ
ロ モ ー シ ョ ン ビ デ オ(P V )を 制 作 し
AACN実働訓練については、君津
中央病院における実施状況をもとにプ
検討しています。
て、AACN通報訓練や同実働訓練を
人渓仁会手稲渓仁会病院)などにおい
院 組 合 立 豊 岡 病 院 )、 北 海 道(医 療 法
学部附属病院)
、 兵 庫 県(公 立 豊 岡 病
隷三方原病院)
、 佐 賀 県(佐 賀 大 学 医
実施しました。9月現在、静岡県(聖
十字病院においてAACN通報訓練を
報訓練と同実働訓練、8月には前橋赤
には君津中央病院においてAACN通
本年6月には福島県立医科大学附属
病院においてAACN通報訓練、7月
ヘリ要請ができることも分かりました。
きれば、事故発生から2分でドクター
故情報を連絡し、そこで消防が判断で
そこで、AACN情報が基地病院に
届いた時点で、基地病院から消防に事
ました。
要請の判断は困難であることが分かり
が分からず、消防によるドクターヘリ
り、この時点では、消防は負傷者情報
ンターから消防への連絡は2分後とな
きましたが、HELPNETコールセ
地病院には事故発生から1分以内に届
今回の訓練では、AACN情報(事
故の位置情報と乗員の傷害程度)は基
令」の動きを同時に再現しました。
地 病 院 の C S 」と「消 防 本 部 の 通 信 指
員が集まり、ここで「ドクターヘリ基
消防指令を想定した病院の会議室に全
ACN通報訓練や同実働訓練を実施し
定です。HEM Netでは、より多
ACN試験運用は1~2年継続する予
AACNが起動するドクターヘリシ
ステムの本格運用の実現に向けて、A
また、関係者全員が訓練の実施目的を
で 効 果 的 な 訓 練 に な っ た と 思 い ま す。
像をイメージすることができ、効率的
者全員がAACN運用時における全体
N通報訓練は、救命救急に係わる関係
いう方法で実施された、今回のAAC
基地病院と消防がタイムラグなく情
報を共有できるかどうかを確認すると
剣な議論が行われました。
路ならではの課題があり、ここでも真
ランデブーポイントの場合は、高速道
高 速 道 路 の サ ー ビ ス エ リ ア(S A )が
の 一 つ は 高 速 道 路 本 線 上 と し ま し た。
練)の概要を報告しましたが、本稿は、
の「A A C N 実 働 訓 練 P V 」か ら そ の
また、ドクターヘリの早期要請によ
り、ドクターヘリの事故現場上空到着
ていただけるよう、関係者への事前説
り、参加者総数は約
その後の進捗状況報告です。
状況を視聴できます。
が早まるため、ランデブーポイントの
招くようなことがあってはならない。それに
滝脇博之(ANA ウイングス顧問、元航空自衛隊救難司令)
は如何なる配慮と方策が必要か、という観点
木下幹巳(エアロファシリティー代表取締役社長)
から安全確保のための講演と討議がおこなわ
■ 閉会の辞:小濱啓次(HEM-Net 副理事長)
を含む組織としての対応が重要になる。ということからエラー・マネジメントの基本原則が 12 項目にわたって示
された。
たとえば「ヒューマンエラーは普遍的かつ不可避」であって、どこでも誰にでも起こり得る。したがって不注意
や “ ド忘れ ” をなくそうとするだけでは不十分。
「人間の働く条件を変えること」がエラー・マネジメントで、その
目的は「システムの防護の強化、拡張、改善であり、エラー群全体の削減をねらった継続的な取組み」でなければ
ならない。すなわち直近のエラーだけを考えて再発防止をはかるような方策は根本的な解決にならない。
「システ
ムの改善に向けた継続的努力」こそが効果的なエラー・マネジメントという結論であった。
続いてパネル討論がおこなわれ、6 人のパネリストが登壇した。ドクターヘリの現場で救急任務に当たる医師、
パイロット、整備士それぞれの立場から安全にかかわる問題が提起された。さらにパイロットの人的資源の不足
が安全を損なうのではないかという観点から、行政当局の施策、自衛隊パイロットの活用、シミュレーターの利
用と開発などが討議された。
(石川 博敏)
くのドクターヘリ基地病院においてA
−
に表れているように思います。
事前に共有していたことも、実施結果
ここでは、AACN通報訓練の一例
として、前橋赤十字病院で実施した訓
高野 滋(国土交通省航空局運航安全課長)
−
ドクターヘリである。万が一にも逆の結果を
陸できるランデブーポイントをどうす
明を積極的に行っていますので、よろ
50
早期安全確保が重要になることも分か
は何かという問題を定義や分類など幅広く取り上げ、その対応のあり方は、個々人の対応ばかりでなく、管理者
練 の 概 要 を 紹 介 し ま す。 そ の 詳 細 は、
基調講演は中村教授の「組織的取組みとしてのヒューマンエラーへの対応」。内容は、まずヒューマンエラーと
しくお願いいたします。
「ドクターヘリの安全運航をめぐる諸問題」
11
12
土川和三(朝日航洋整備士)
安全にほかならない。人命救護を目的とする
吉永辰郎(セントラルヘリコプターサービス機長)
以上。こうなると、最も留意すべきは飛行の
高橋 功(国保旭中央病院救命救急センター長)
が飛ぶようになった。出動件数は年間 2 万件
パネリスト:
ドクターヘリは今や全国 38 道府県で 46 機
(西川 渉)
詳細は近く HEM-Net 資料にまとめられ、刊行される。
ています。
(※)
れた。
りました。ドクターヘリが最も早く着
者は約 200 人。
■ 基調講演:中村隆宏(関西大学教授)
開催した。プログラムは別掲の通りで、参会
■ 開会の辞:篠田伸夫(HEM-Net 理事長)
航をめぐる諸問題」と題するシンポジウムを
■ 総合司会:西川 渉(HEM-Net 理事)
全国町村議員会館で「ドクターヘリの安全運
プログラム
HEM-Net は去る 7 月 29 日、東京半蔵門の
[ ※前橋赤十字病院ブログ URL http://drheli-gunma.blogspot.jp/search/label/AACN ]
パネル討論
中村隆宏教授の基調講演
■パネル討論
前橋赤十字病院のブログにも紹介され
HEM-Net シンポジウム
群馬県ドクターヘリ安全研修会
8 月 20 日(木)
、前橋赤十字病院において、約 150 名の参
加者を得てドクターヘリ安全研修会が開催された。 最初に塚原利夫日本ヒューマンファクター研究所副所長
による「ドクターヘリスタッフのノンテクニカルスキルを
考える」と題する基調講演が行われ、
「ドクターヘリ業務で
のエラー防止の 6 つのポイント」
、
「事故防止のための 3 つの
チームマナー」など示唆に富んだ内容に、参加者からは「早
ドクターヘリ推進議員連盟総会が開催される
去る 7 月 22 日、尾辻秀久会長の下、ドクターヘリ推進
議員連盟総会が、2013 年 2 月以来、2 年半ぶりに開催さ
れた。事務局長として新たに石井みどり参議院議員が就
任され、事務局体制が整ったことから総会開催の運びと
なった。
速実践しています」との感想が寄せられた。
HEM-Net からは、國松会長、篠田理事長、小濱副理事
また、パネルディスカッションにおいては、
「CPA 患者に
長が出席し、2012 年 7 月に続き、
「ドクターヘリの防災基
対応した一例」をもとに、消防機関、医師・看護師、運航関係者による討議が行われ、活発に意見交換が
行われた。
本計画への位置づけ」について要望を行った。また、全
日本航空事業連合会ヘリコプター部会ドクターヘリ分科会からは、ドクターヘリの操縦士の確保
等ドクターヘリ運航事業に係る要望を行った。政府側からは、厚生労働省から「ドクターヘリの現
状」について、国土交通省から「ドクターヘリ従事者の育成・確保に対する国からの支援」につい
北陸中日新聞(2015年8月24日)
富山県ドクターヘリ運航開始 要請 15 分内で到着
富山県ドクターヘリが二十四日、運航を始める。二十三日は運航開始式が、基地病院となる富山市の県中央
病院であり、患者を乗せるために着陸するランデブーポイントは県内で三百三十三カ所、共同運航する岐阜県
の飛騨地域で七十四カ所となったことが公表された。運航は午前八時半から日没まで。
消防機関が通報内容から緊急性を判断し、運航管理室に出動を要請する。要請から県内全域に十五分以内で
到着でき、搭乗する医師らが機内で診療を始める。患者は診療費用がかかるが、搬送費用は負担しない。
ランデブーポイントは、公園や運動場などの広場を利用。県内の市町村別では、南砺市が最多の四十二カ
所、富山市三十六カ所、黒部市、砺波市三十五カ所、氷見市三十一カ所など。県内の十五病院と岐阜県内
の三病院が患者を受け入れる。運航は、富山県が静岡エアコミュータと鹿児島国際航空の共同事業体に年
一億九千五百万円で委託した。
式で石井隆一知事は「県は通報から救急車が病院に患者を搬送するまで平均二九・九分と全国一短いが、最
近は高齢者の救急搬送が毎年千件増え、通報から搬送まで三十分を超えるケースが 44% に増えている」と導入
の意義を強調。関係者らとくす玉を割った。
国は視界不良時の運航を認めていないが、県が導入した機体は赤外線カメラを備えるなど性能が高く、石井
知事は「少々の悪天候でも飛べる性能がある。どんな課題があるかを勉強した上で、国に規制緩和を求めるこ
とも考えたい」と述べた。
て説明があったほか、内閣府から HEM-Net の要望である「ドクターヘリの防災基本計画への位置
づけ」について、7 月 7 日開催の中央防災会議において防災基本計画を改正し、実現した旨の回答
があった。
中央防災会議、7月7日に防災基本計画を改正
ドクターヘリを防災基本計画に位置づけるとともに災害対策本部内に
航空機の運用調整部署を設置するよう明記
HEM-Net は、2011 年 3 月 11 日発生の東日本大震災の教訓を踏まえ、同年 11 月にシンポジウムを
開催し、ドクターヘリを防災基本計画に位置づけるよう提言を行った。しかし、防災基本計画改正
の動きが全く見られなかったことから、2012 年 7 月開催のドクターヘリ推進議員連盟総会において、
首都直下型地震や南海トラフ巨大地震の発生が大いに懸念される今日、自衛隊ヘリや消防防災ヘリ
等とともに重要な戦力として期待されるドクターヘリを防災基本計画に位置づけるよう強く訴え、
決議に取り入れていただいた。また、2014 年 10 月には全国知事会危機管理・防災特別委員長の泉
田新潟県知事に面談し、要望した。その結果、本年 7 月 7 日、中央防災会議において防災基本計画
新潟日報(2015年9月15日)
ドクターヘリ基地病院に長岡赤十字
新潟県の 2 機目
県が導入を予定している 2 機目のドクターヘリの基地病院が 14 日、長岡市の長岡赤十字病院に決まった。救急
医療関係者による選定委員会が選んだ。県によると、1 機目との連携で、ほぼ全県が基地から半径 100 キロ圏に入
り、30 分以内に駆けつける体制が整う。
ドクターヘリは、救急車での搬送に時間がかかる地域などへ医師と看護師を乗せて駆けつけ、病気やけがで命
が危ない人を病院へ運ぶ。県は 2012 年に 1 機目の運航を新潟大学医歯学総合病院(新潟市中央区)を基地病院と
して始めたが、上中越を十分にカバーできないことが課題だった。
病院の医師や消防、県警などの 20 人で構成する選定委は 8 月の初会合で、長岡赤十字、県立中央(上越市)
、魚
沼基幹(南魚沼市)の 3 病院を候補にした。このうち開院したばかりの魚沼基幹病院が辞退したため、今回の会合
では長岡赤十字病院と県立中央病院のどちらを選ぶかを話し合った。
委員長の堂前洋一郎県立新発田病院長は会議後、
「県民が最大の恩恵を受けるように考慮した」と話した。長岡
赤十字病院なら糸魚川市西部を除く上中越が 30 分圏内(100 キロ)に入るほか、出動要請が重なったときなどに 1
機目と補い合う余地が大きいことを評価した。30 分圏外の地域は「富山・長野との広域連携により30 分以内で救
命センターに運ぶ考え」とした。
2 機目は来年秋の稼動を目指す。今後、県が正式に長岡赤十字病院へ要請する。
14
が改正され、以下のとおりドクターヘリの運用に係る対策が盛り込まれた(太字部分)。
第 2 編 各災害に共通する対策編
第 1 章 災害予防 第 6 節 迅速かつ円滑な災害応急対策、災害復旧・復興への備え
6 緊急輸送活動関係(抜粋)
○地方公共団体は、地域の実情を踏まえ、消防防災ヘリ、警察ヘリ、ドクターヘリなど
災害時のヘリコプター利用についてあらかじめ協議しておくものとする。
第 2 章 災害応急対策
第 5 節 緊急輸送のための交通の確保・緊急輸送活動
2 交通の確保
(8) 航空機の運用調整等(抜粋)
○都道府県は、航空機を最も有効適切に活用するため、情報収集、救助・救急、医療等
の各種活動支援のための航空機の運用に関し、災害対策本部内に航空機の運用を調整
する部署を設置し、現地対策本部と連携して必要な調整を行うものとする。 13
季刊誌 救急ヘリ病院ネットワーク 2015 年 秋号
HEM - Net グラフ 37
HEM-Net シンポジウムのお知らせ
テーマ:
「先進事故自動通報システム
(AACN)とドクターヘリの連携(仮称)」
開催日時:11 月 30 日(月)13:30 ∼ 17:30
開催場所 : 都内(未定)
詳細が決まりましたらホームページでお知らせします。
ご参加をお待ちしています。
AUTUMN 2015
寄付金のお願いと賛助会員の募集
HEM-Net への寄付等は税の優遇措置が認められます
GRAPHIC MAGAZINE
OF EMERGENCY MEDICAL NETWORK
O F H E L I C O P T E R A N D H O S P I TA L
HEM-Netは、東京都から、運営組織や事業活動が適正であり、かつ公益の増進に資すると認められた
「認定NPO法人」です。HEM-Netは、一層充実した活動を行うため、その活動の趣旨に賛同する方々か
らの寄付を募り、賛助会員を募集しております。
「認定NPO法人」への寄付には、下記のとおり、税法上
の優遇措置が認められます。
●
個人の場合
●
寄付の募集
個人の方々からの寄付金は「特定寄付金」に
該当し、寄付者のその年の寄付金の支出額
から2,000円を控除した額を、寄付者のその
年分の所得金額等の合計額から控除するこ
とができます。
●
法人の場合
●
法人からの寄付金は、特定公益増進法人へ
の寄付と同様に取り扱われ、その年の損金
算入限度額の範囲内で、損金算入すること
ができます。
賛助会員の募集
発行日/ 2015 年 10 月 1 日 発行者/認定 NPO 法人 救急ヘリ病院ネットワーク
東京都千代田区一番町 25 番 全国町村議員会館内 TEL : 03-3264-1190 E-mail : [email protected]
個人の賛助会費は、一口・年間 3,000 円。法人の賛助会費は、一口・年間 50,000 円。個人・法人とも、
一口以上、何口でも結構です。賛助会員には、
「HEM-Net グラフ」を始め、HEM-Net が発刊する資料を
送付する他、HEM-Net が主催するシンポジウム等のご案内をいたします。ただ、HEM-Net の活動への
参画をお願いすることはありません。
ドクターヘリ支援基金 寄付の募集
「ドクター
HEM-Net は、2010 年 4 月から、ドクターヘリ特別措置法にいう「助成金交付事業」として、
ヘリ支援事業」と呼称する事業を開始し、その事業に充てることを目的に、
「ドクターヘリ支援基金」を
開設しました。
「ドクターヘリ支援基金」への寄付は、法人・団体は一口 500,000 円、個人は一口 3,000
円です。現在、行われているドクターヘリ支援事業は、ドクターヘリ運航基地病院における安全研修
会開催の助成事業とドクターヘリ搭乗医師・看護師等研修助成事業です。
お手続きの方法
●
HEM-Net ホームページ ●
http://www.hemnet.jp/ に
アクセスし、そこに示された手順に従って、
お手続きください。
小誌についてのご意見・ご感想をお寄せ下さい。
●
HEM-Net 事務局に ●
直接お問い合わせ
事務局から
「申込み書」をご送付申し上げる
など、所要の手続きをとらせていただきます。
TEL 03-3264-1190 FAX 03-3264-1431
E-Mail : [email protected]
E-mail:[email protected]