日本語翻訳版

「ADA法とIBMの取り組み」
IBM ワークフォース コミュニケーション
ディレクター James Sinocchi
みなさん、こんにちは
私はニューヨーク州アーモンクにある IBM 本社で、ダイバーシティーのワークフォー
ス・コミュニケーション・ディレクター、障害のある人々へ向けたグローバル・エグゼ
クティブ・タスクフォース兼任のジム・シノッキと申します。
このビデオを通してみなさんにお話でき、大変光栄です。今回のフォーラムへ出席を
予定しておりましたが、体調がすぐれないため出席かなわず、みなさんに直接お目に
かかれず大変残念です。映像になってしまいますが、みなさんにお話しようと用意し
ていた全てをこのビデオでお話したいと思います。
今回、特にご説明させていただく内容は次のとおりです。
・IBM という会社の特徴
・IBM が障害のある人々を重要な人材と考える理由
・障害のある人々がビジネスでどのような貢献をしているか
入社以来 29 年間、私は IBM がビジネスに対する多様な能力を受け止める会社である
ことを体験してきています。次の映像で、その IBM の特徴をご覧ください。
ナレーター
グローバル企業としての蓄積から、IBM は多様であることを尊重してきました。
IBM は他企業よりもひと足早く、社内もそれぞれの地域社会と同等の人材構成である
べきだと受け止めていました。
これは論理的に正しいだけではなく、ビジネスとしても大変有益なのです。なぜなら、
お客様はお客様の立場を理解してくれる販売員やお客様が良いと思う会社と取引され
るからです。
IBM がテクノロジーの先端企業として世界各国で成長し続けてきたのは、ひとえに世
界各国の様々な人の貢献に拠ります。様々な人が加わり人材が多様になると、企業の
能力はより豊かに、創造力により幅が出るようになります。
IBM は、誰もが能力を最大限に発揮できる職場環境をこれからも目指していきます。
また、全ての人が幸せであるためには、どのコミュニティも健康で豊かでなければな
らないと信じています。
そのために、IBM ではフィランソロピー活動や社員のボランティア活動を積極的に推
進しています。このような企業方針に基づき、様々な人から成り立っている企業です。
これからも全世界の人に快適な場所となるようにテクノロジーを提供するべく、あら
ゆる人を尊重し、受け止めることに努めていきます。
1899 年、帝国議会から 10 年後、初めて黒人男性一人と女性三人を採用したのが、
ダイバーシティーの始まりでした。
1914 年には初めて障害のある人を採用しました。アメリカで ADA(Americans with
Disabilities Act)が制定される 76 年前のことです。
1941 年には心理学者マイケル・スプタ(視覚障害の方)を採用し、彼に障害のある
181 人を IBM のために採用してもらいました。スプタ博士のモットーは「ふさわしい
仕事を与えられたなら障害を持つ人はいない」というものでした。
これは ADA の制定49年前のことです。
1990年に制定されたアメリカの ADA は、障害のある人にとって、大きな前進でし
た。障害を持つ市民を職業上の差別から守る法的な枠組を政府が創設したのは、
アメリカが世界初でした。
ADA は、民間の雇用、すべての州政府および自治体、美術館、映画館や劇場、および
レストランなどの公共の場での雇用において、障害の有無により差別することを禁じ
ています。さらに、視覚、聴覚、および言語障害のある人でも問題なく利用できる
コミュニケーションのサービスを義務付けています。
さらに、ADA は、従業員15人以上の企業は障害をもつ従業員が使えるように、
ある程度の設備や IT を整えることを義務付けています。
ADA は対象となる IT を明確に定義していませんが、既存の政令と照合しつつ
「ある程度」の中身を定めています。
IBM 草創期のダイバーシティーに投じた一石が、ADA の制定・発展に大きく貢献しま
した。今、世界中で障害のある人を職場で活用することを義務づける法律が制定され、
その社会的要請も強まっています。
障害のある人は人口的に増加の一途にあります。日本では人口の4.8パーセントに
当たる6百万人、EU では 1700-2400 万人、アメリカでは5千万人います。そして、
アメリカでは労働人口の11.7パーセントを障害のある人が占めています。
必要手段や育成する環境を用意すれば、障害のある人もない人と同様に貢献でき、
成功できることを IBM は以前から認めていました。この精神は、アメリカ労働省のロ
イ・グリザード博士によって ADA にも盛り込まれています。
ロイ・グリザード博士
障害のある高校・大学卒業間近の人や若者には、今までにない雇用の大きな機会があ
ると思います。これから出て行く社会は、彼らと彼らの障害に対してオープンで理解
があります。私はこのような社会で活躍していく彼らから大きな成功を期待できると
思います。
グリザード博士がおっしゃるとおり、今、アメリカでは障害のある人にとって、
これ以上にない機会があります。次の世代のために、更なる貢献をするべきだと思い
ます。ADA の成功により世界各国が自国でも法律を成立し、IBM などのグローバル企
業が包括的な社会の優位さを証明できることを期待しています。
IBM は世界各国の政府や団体と協力し現状を変えようとしています。
オーストラリアでの法律制定が障害のある人々の環境を変えていることは、ひとつの
例にすぎません。1996年、オーストラリアでは「障害者差別禁止法」が成立し、
以来大きな成果をあげています。次のビデオ画像では、今日オーストラリアでの環境
がいかなものか、そして、IBM がどのような役割を果たしているかご覧いただけます。
ケン・ブラッドショー
IBM オーストラリアは、過去何年も企業側から障害のある人々のための改革を推進し
てきました。結果として、過去数年間にオーストラリアにあるほぼすべての賞を
受け取ることができました。つまり、オーストラリアにおいて、私たちの活動や貢献
が認められているということです。さらに、私たちの活動は偶然おきたものではあり
ません。私たちが意識的に決定したのです。私が IBM にいた25年間、上級管理者か
ら力強い支援を受け続けています。
ADA の例にならい、1996年に成立されたテレコミュニケーション法 255 条では、
できる限り電気通信機器、加入者宅内機器、ソフトウェアなどが障害のある人たちで
も、利用できることが義務付けられています。
簡単に言い換えますと、どのような人でも利用できる電気通信機器が設備されなけれ
ばいけないということです。移動、視覚、聴覚、認識などの障害があったとしても、
他の人と同じようにハイテクな機器が使えるようになっていなければいけません。
1998年にはアメリカ合衆国では、連邦政府は購入したすべての新しい IT 機器と
サービスが障害のある人々にも利用できるものでなければならないという法律を成立
しました。508条として知られているこの規定を言い換えると、利用しやすい機能
がある製品を製造している IBM などの会社を、優先的に連邦政府が製品を買い求めて
くれるということです。これは、利用しやすい製品を開発し、サービスを提供する
IBM にとっては、またとない機会なのです。
法律以外にもいくつかの指標をみることによって、アクセスのしやすいものが求めら
れていることがわかります。例えば World Health Organization による発表ですが、
世界には7.5億人が障害のある人々であり、彼らの購買力を総合すると4610億
ドルになります。さらに、人々の老齢化によってますます利用しやすいテクノロジー
が必要とされるでしょう。
世界各国で法律が制定される度に、ビジネスの機会が増えていくと IBM では信じてい
ます。さらに、政府間よりも民間企業でのアクセシビリティの技術の利用の機会は、
成熟した従業員が増えるに従って、増加すると思います。
IBM の世界規模のアクセシビリティ・センターでは、いくつものチームが編成され、
既存のまたは将来の IBM のテクノロジー製品がアクセシブルであるかどうか、
評価しています。現在、9つのアクセシビリティ・センター が
アジア・パシフィック、ヨーロッパ、南アメリカそしてアメリカ合衆国にあります。
IBM 会社方針のコーポレイト・インストラクション 162 の中では、アクセシブルな
製品を提供すべきだと書かれています。さらにグローバル・ポリシーレターの中には
「資質のある障害のある人々のために IBM は法律に見合った職場だけでなく、働きや
すいだけでなく必要で正当な環境をつくっていきます。」と書かれています。
ADA は世界各国の政府が、障害をもった市民たちにどのようなことをできるか、考え
る動機付けとなりました。日本では経済産業省などの省庁が、国民にどのように
アクセシブルな IT を提供していけるかなどの提案をしています。一度認められたな
ら、このような提案は規律となり政府省庁とのビジネスを行う上のガイドラインとな
ります。
ここアジア・パシフィック地域では、よい成果が上がっており、より積極的な行動が
約束されています。国際労働機構(ILO) のデボラ・ペリーはこの地域での活性
化にとても感動しました。
デポラ・ペリー
地域全体に注目すべき発展が、過去10年ほどの間に起こりました。1992年には、
アジア・パシフィック地域にある国々が国連の支援を受けて。一致団結し「障害者年
10 年」 を開始しました。これは1993年から2002年の間に起こりました。こ
れは、障害のある人たちの生活のあらゆる面を認識し、そして彼らが日々どのような
障害を乗り越えているのかを理解し、さらにこれらの課題をどのように解決していく
かなどの大きな取り組みでした。2002年には最初の10年計画に参加した国がも
う一度あつまり、まだ成果が足りないということでさらに10年計画を開始しました。
10年の期間のなかで各国は目標を決めそれに向けて活動します。
IT を購入する時に、人間工学的な規制を適用するヨーロッパでは、EU 各国にそれぞ
れ独自の規定を当てはめねばなりません。EU からは、ガイドラインをそれぞれの国の
規定や世界標準機構からの規定に沿って成立していくことを期待できると思います。
スウェーデンにある HAREC 障害者リハビリテーション研究所のスティグ・ラーソン教
授は、ヨーロッパ各地での異なる法定の変化を追及しています。
スティング・ラーソン教授
EU では新しい反差別の法律が成立し、特定の国、たとえばイギリス、スウェーデンな
どでは、すでに実行されています。これはつまり、アメリカ合衆国の ADA をみて自国
でも似た法律を成立しようという動きがあったということを表します。
これはとても重要なことです。
北欧や他の国では独自のアクセシビリティー・ガイドラインを発表しています。ポル
トガルやタイでは、ウェブへのアクセシビリティーを義務付ける法律を成立しました。
オーストラリアやカナダでは障害のある人々が特定の情報に、アクセスできるような
市民権利を保護する法律が成立されました。
今日のアメリカ IBM では障害のある人々の58パーセントが、中心となる技術系の
仕事を保持しています。これはつまり、ビジネスに多大な貢献をし、テクノロジーの
進歩、また独自の仕事に特許を受け、また、IBM がアメリカのなかで12年間連続し
て特許取得ナンバーワンの業績に貢献しています。
ホームページ・リーダーという視覚障害のある社員が、ウェブへアクセスできるソフ
トウェアの開発に貢献した浅川さんのような方たちのおかげで、IBM はテクノロジー
の指導者として存在しています。
浅川さんのプロジェクトは11ヶ国語に訳され、この業績で Women in Technology
International (WITI)の栄誉の殿堂 への参加を2年前に認められました。さらに名
声のある IBM Academy of Technology にも参加を認められました。ここで、浅川さん
についてもうすこしご紹介したいと思います。
ナレーター
ビジネスへの貢献
浅川智恵子は IBM 東京基礎研究所 でグループリーダーをしています。彼女はエンジ
ニアの博士号をもち、過去20年間を盲目や視覚障害をある人たちの生活を向上させ
るアクセシビリティーの技術開発に専念してきました。
野田晴義(東京基礎研究所 マネジャー)
智恵子は全盲ですが、これは障害ではありません。私は彼女の特性だと思います。こ
の特性のために彼女は、新しい工夫やアクセシビリティー技術などを想像することが
でき、そして、それが彼女の仕事でもあるのです。
ナレーター
浅川さんは、独自の特許を10個持っています。そのうちのひとつは全盲の PC ユー
ザーが点字書類を入力、編集、送信、そして印刷することができる点字編集システム
を開発したことで取得しました。
吉永 秀志(元東京基礎研究所 アクセシビリティ・センター マネジャー)
彼女の業績は大変すばらしいものです。彼女はホームページ・リーダーや点字編集シ
ステムなど数多くの重要なソフトウェアを提案し開発しました。この二つは日本でも
幅広く使われており、ホームページ・リーダーについては世界的に利用されています。
浅川 智恵子
最近では、アクセシビリティはだんだん周知されてきています。
私が研究を始めた20年前では知らない人が多かったと思います。
しかし、最近になって状況は変わってきていると思います。IBM のお客様が、アクセ
シブルなサイトになれば、ビジネスにとっても有益であると考えられた時には、まず、
最初に IBM に相談してくださいます。だからこそ、IBM のアクセシビリティへの長期
的な努力は、今になってビジネスにも貢献していると思います。
ナレーター
浅川は、全盲の人にウェブサーフィンを可能にしたホームページ・リーダーの開発に
一番誇りに思っています。この技術はテキストや画像を声に変換することができ、そ
して、マウスの代わりに数字のキーパッドやキーボードを利用することによって、サ
イトを自由に移動できます。
浅川 智恵子
私はアクセシビリティーの技術が、パーベイシブなコンピューター環境に貢献すると
強く信じています。
ポール・ホーン
広範囲なコンピューター環境で、一番重要なのは IT を使いながらコンピューターと
交流することです。しかし、頻繁にこの交流はスクリーンの見えない環境で行われま
す。これを改善したのが千恵子の技術なのです。
去年、浅川さんは東京大学 Graduate School of Engineering Department of
Advanced Interdisciplinary Studies より博士号を取得しました。専門家としての
成果だけでなく、彼女は結婚をしており、二人の娘と一緒にショッピングに行くこと
を楽しみにしています。
浅川さんは障害のある人々にについて非常に重要な点を指摘しています。障害のある
人々はただ単に障害のある人なのではありません。障害のある人々にも妻や夫、父母、
息子や娘がいます。障害のある人々という表現は「ただ単に障害がある人」以上の何
かを持っています。
ナレーター
コンクリート、アスファルト、レンガで埋め尽くされた世界のなかにジムは、オアシ
スを見つけます。水泳への情熱を持ち始めた公共のプールです。
水泳選手としての成果が、海の救命員としての仕事をみつけ、そしてコールゲート大
学へのスポーツ奨学金を受け取ることができました。卒業後彼は IBM に入社しました。
25歳の時、彼の人生は完璧であったといえます。
悲劇は1980年に起こりました。一瞬の間にボディーサーフィンの事故が、ジムの
世界を変えてしまったのです。
折れた首と麻痺した体で、卓越した水泳選手は自身を沈まないようにすることで、精
一杯でした。恐怖の数瞬間が過ぎた後、彼は姉と友達によって助け出されました。何
でもこなせた彼が、今では他人に頼らなければならないと生きていけないという状況
に落ちてしまったと考えました。
シノッキ
私は障害のことを考えません。何をすれば業務を完成することができるのかを考えま
す。
マギー(奥様)
彼が職に的確であると判断したならば、彼にその地位を提供してください。彼ができ
ることと、できないことを実際に見た目ではなく、想像での判断は下さないでくださ
い。ジムは誰よりも自分の限度を理解しています。
シノッキ
すべてはここにあるのです。私の足、腕、手とはなんのかかわりもありません。
すべては、頭脳で何ができるかです。
この圧倒的なエネルギーを前にして、車いすを意識し続けることは無理でした。私の
前にあったのは、この何でもできるという気力だったのです。
こうして、私はジムにとって障害を持つことで苦労した経験は、これから別の環境に
おいては有意義に生かすことができるのだと、認識し始めました。私はジムを厄介な
人間ではなく、厄介な問題を解決することができる人材として見始めました。
シノッキ
私はジャック・バトラーを人事からはずした。彼はこれからオーディオ・リンク の
担当をしてもらう。
ハリス
彼は IBM 収入の半分を占める組織の通信を管理しているのです。半分は言い過ぎかも
しれないが、それでも IBM のなかでも有数の組織だ。
あの組織で働いているすべての社員にとって、コミュニケーションをとる相手はジム
です。とてつもなく責任の重い地位にいるのですよ。
オブライエン
今日は、会えてとてもうれしいです。
シノッキ
こちらこそ
オブライエン
最近、調子はどうですか?
シノッキ
まあまあです。なんとか、がんばっています。
オブライエン
ジムは上層部経営者と頻繁に対応します。戦略的にも大変必要ですが、コミュニケー
ションだけではなく、私の場合、人事部にとっても大変必要な存在なのです。
ハリス
相手が車いすで近寄ってきても意識しないという人は、完全に真実を述べているわけ
ではないと思います。誰しも、第一印象を乗り越えなくてはならないのです。
シノッキ
ほとんどの人にとって見かけはどうでも、仕事ができると認められるまで時間が、
かかります。外見で人の意見が左右されるということは、ある意味釈然としません。
私は皆さんのように障害のない人生とある人生、両方を経験しました。
サーフィンの事故の後、以前障害がなかったころの自信と熱望を取り戻すのに、長い
時間がかかりました。しかし、時間が経つにつれて、実際は肉体的に立てるかという
ことではなく、精神的に独立し成長できるかが、大事なのだと気づきました。IBM は
私自身が変わるために個人を試し、認め、私自身が自分に挑戦することを支援してく
れました。そして昇進することができました。
価値があるという感覚、そして成果をあげたときの感覚が自分の中に新しい態度の変
化を生み出すものです。私は新しく持った自信で結婚し家庭を持つことができました。
これらは、事故直後の暗澹たる日々の中では、生涯無理だとあきらめていた夢です。
職場での成果が個人生活を充実させ、そして、今度はそれが私をさらに職場で活躍す
るために必要な活力になるのです。
IBM の責任あるポジションにある者として、私は自分が持ちうるすべて力を職場に提
供すべきだと考えます。IBM から提供されることをすべて受け止め、そして自分のす
べてで会社に貢献する。こうすることによって責任あるポジションとしての役割を担
えるのです。IBM への参加意欲を見せることによって、雇用されるのです。
それでは、IBM の内外ではどのようにして社員が公平な扱いを受けることを保障する
のでしょうか?
私たちは設備、姿勢、そして、アクセシビリティーの技術を通して実現します。
IBM が提供する設備とは社員がより、自立して成果を上げられるような環境をつくる
ことです。設備の中には連邦政府によって定められたものがあります。具体例として
は、自動ドアの設置、坂の設置、エレベーター内の点字標識、低めの水のみ場、大き
目のドア、リアルタイムのキャプショニングやスクリーン・リーダーなどのサービス
です。
姿勢とは障害のある人々に対する社員や人々の価値感や心情を変えていくことです。
人を見た目で判断するのではなく、成果に基づいて判断することです。または、判断
自体を下さないことかもしれません。この心情に基づいて、IBM は積極的に障害のあ
る人々を採用します。
姿勢とは差別しないことです。機会を提供することです。促進することです。姿勢と
は障害のある人々を管理職や重役の地位につけることを検討することです。障害ある
誰かのために働くということです。
皆さんは、障害のある上司のもとで働くことを考えたことはありますか?
IBM でのアクセシビリティーの技術とは、職場や市場に必要なテクノロジーを提供し
ていくことです。例えば、ホームページ・リーダーや音声認識のソフトウェアやビデ
オ電話など最新鋭の支援コンピューター技術を開発する IBM の世界9箇所のアクセシ
ビリテティ・センターです。
IBMer であるマイク・チンも支援コンピューター技術を使用しています。
彼の経験を話してもらいましょう。
ナレーター
目の不自由な人が PC をどのように使うか
マイク・チンが使う唯一のアクセシビリティーの技術はスクリーン・リーダーです。
スクリーン・リーダーは、障害のない人の世界で、マイクが対等に成果を上げていく
ために必要なソフトウェアです。
マイク
スクリーン・リーダーとは、画面上にある文字を読み上げてくれるソフトウェアです。
しかし、問題点が1つあり、通常、人間の話す速度は、読む速度よりずっと遅いので
す。この問題点を解決し、目が見えている人と同等のスピードで情報を取得するため
に、私はスクリーン・リーダーを通常会話の 1.5 倍の速度に再生しています。
初めて聞く人は、みなさん驚いていますね。
ナレーター
マイクは通常のキーボードを使いながら、スクリーン・リーダーを併用して
書類の校正をします。
ところで、マイクが使っているスクリーン・リーダーは浅川さんの作成したソフト、
ホーム・ページ・リーダーを基に、何年も前に作られたものです。このような技術が、
マイクのような人たちも大きな夢を描けるように道を拓いたのです。
マイク
いくつかの会社から内定をもらったとき、私は今日、明日のことではなく、5年後の
状況を想定しながら考えました。
ナレーター
2003年にマイクはスタンフォード大学コンピューターサイエンス修士を好成績で
修め、卒業しました。IBM の面接と同時にマイクロソフトからも新入社員として内定
を受けていました。
トム・トロング
マイクに内定を出すことにした後、今度はマイクが IBM を訪れ、マイクロソフト
より IBM をなぜ選ぶのかなど私たちと話しました。
マイク
私は大きな夢を持っています。マネージャーになりたいのです。そしていつか一流企
業全米 500 社が掲載される雑誌『フォーチュン 500』に掲載されるような企業の経営
者になりたいのです。
マイクは IBM に二年前に入社し、何名かのプログラマーのマネージャーになるという
最初の目標を達成しました。
マイクはグリザード博士が前に話したような新しい世代の一人なのかもしれません。
マイクの世代は早い段階から多くの機会とアクセシビリティーな環境を与え
られてきたため、従来の世代よりも高い教育を受け、大きな夢を持ち、ずっと活動的
です。
テクノロジーを扱う企業は障害のある人にとって絶好な環境です。なぜならテクノロ
ジー関連の仕事は、頭脳と頭脳の対話だからです。必要があれば、電話、チャット、
そして e-メールを使います。対話している相手に障害があると気づかない人も多いで
しょう。あくまでも、知性によって人に尊敬をしてもらえる世界なのです。
IBM があなたを雇用するときは、あなたのすべてを雇用します。そしてみなさんは
優れた頭脳を使って自分の給料を稼ぐのです。
IBM は障害のある人を採用する企業として、数多くの団体に認められています。
私たちと働いてくれる障害のある人を見つけるために、IBM は大学やプロの組織、
障害者向けのサービスの人たちと長年にわたり関係を築いています。さらに、障害の
ある学生にも、学校で習得したことを現場で試してみるインターンシップの機会を
積極的に作っています。
たとえばアメリカ科学振興協会と連携し、一年間大学で教わりつつ実際には
IBM などの企業で仕事の経験を重ねる「エントリー・ポイント」というインターン
シップを提供しています。
私たちはアメリカ障害者協会とも強固な協力関係を持っています。この団体に
は夏季インターンのための機器を寄付したり、プログラムを充実させるために
アンケートを実施したり、そしてサイトから無料でホームページ・リーダーが
ダウンロードできるようにしました。
IBM はさらに障害のある子供たちへ、理科系科目やテクノロジーが楽しい教科である
ことを体験してもらったり、将来のキャリア形成に役立つようなキャンプをしたりし
ています。
IBM 社員は、障害のある学生たちにメンター・プレース・アンド・エンジニア・
ウィーク・プログラムなどでメンタリングをしています。
あなたが障害のある人で IBM での就職をお考えなら、わが社では大きなサポート
があることがお分かりいただけると思います。私たちには、障害のある社員に対して
数多くのダイバーシティー・ネットワークを構築していますし、視覚や聴覚
に障害がある人たちのためのフォーラムを設けています。
さらにテクニカル・リーダー・フォーラムもあり、参加者はキャリア向上のための
セミナーをオンラインで受けることができます。
IBM アコモデーション・チームは、あなたが快適で生産的であるために必要なものを
提供することを保障するチームです。
IBM は今まで6億円以上の資金を社員の設備のために投資してきました。
コスト・リカバリー・プロセスを利用することによって、設備導入にかかった費用は、
社員の所属部門ではなく、社員が所属するビジネス組織に加算されます。
さらにグローバル・ビルディング・ガイドライン は、すべての IBM の建物が内外と
もに利用しやすい仕組みになっていることを保障しています。
障害のある人へ向けたグローバル・エグゼクティブ・タスク・フォースでは、IBM の経営
陣とともに市場のチャンスなどを論じ、新しい製品やサービス、職場の環境改善に
尽くしています。このタスクフォースが、今までにあげたいくつもの改善案を打ち出
しています。
このタスクフォースは、IBM グローバルのダイバーシティ戦略を打ち出す、
8つのタスクフォースの 1 つです。
ダイバーシティの戦略を打ちたて実行する責任者がテッド・チャイルドです。
ここで皆さんに、障害のある人を雇用することに対するチャイルズの意見を
話してもらいます。
チャイルズ
障害のある人を雇うことは、ビジネス上の収益をもたらすものではないと思います。
ビジネスの収益をもたらすのは、能力のある人を雇うことです。能力がありながら
障害のある人はいます。忘れてはならないことは、能力があるということです。
彼らは、良きプログラマーであり、良きエンジニアであり、良き営業マンになれるの
です。彼らはさらに、よきスタッフであり、よきコミュニケーションのプロであり
よき人事部長になれるのです。
このようにオープンな考えを持っていれば、今まで差別していたために目の前にあり
ながら見逃してきた能力を見つけるころができるのです。
IBM が一番多様で、一番能力を持つ人材を確保するのが、私たちの目標なのです。
テッドが話すとおりすべては、能力の問題なのです。
私はみなさんに、次のように尋ねましょう。
あなたは障害のある人を見かけた時、まず何を見ますか?
全盲の人が見えますか?
聴覚に障害のある人が見えますか?
車いすの人が見えますか?
今度、障害のある人に出会ったとき、ぜひ、仕事の同僚、または次の上司、
組織の CEO でありうる人間としてみていただきたいのです。
成功とは他人が認めるものではなく、私たち個人が自分のなかに認めるものなのです
。もしあなたが障害のある人なら、私はあなたに夢を追求して欲しいのです。
私はあなたに IBM で就職されることを、または IBM がさらに能力のある障害
のある人を獲得できるように、支援していただければと思います。
命を落としかけるほどの事故にあいながらも、私は想像できなかったほどの満ち足り
た生活を送っています。これは、IBM が私に与えてくれた数多くの機会の
のおかげだと信じています。
IBM で就職するとすぐにレッテルを貼られます。これは避けられない事実です。
このレッテルは障害の有無や、男女、または皮膚の色などともまったく関係が、
ありません。あなたに張られるレッテルとは IBMer といものなのです。
この企業に勤める私たちは、どのような人間も全員このレッテルを持っています。
そして、このレッテルは世界で尊敬に値するものとして認められています。
今日みなさんにお話しすることができ、大変光栄です。
このようなフォーラムに参加することで、これからも自分の中にある一番高い目標を
目指して活動していただければと思います。
最後になりましたが、私は障害をある人達のために努力しているグローバルの仲間に
感謝したいと思います。
特にこのフォーラムを企画実行した日本 IBM のチームにも感謝します。
ビデオの最後に彼らの名前を記したいと思います。
どうもありがとう。