水頭症のスク・・リ一ニヲタ`を行なう準めの基準とし戸 -~

内藤他;水頭症のスクリーニソグを行うためマ》基準とし て・ 乳児の頭囲の異常増加率の分折検討
水頭症のスクリー;ングを行なうための碁準として
乳児の頭囲の異常増加率の分析検討
(昭和43年度厚生科学研究)
『主任研究者 副 所1長
内藤.寿七
分担研究者 研究第3,部
松 島 富 之 助
緒
郎
冒
口
1 水頭症の概要11)水頭症(Hydrocephalus)は
しかし、こゐ方法でもチ5一ブの先端がつまった
側脳室や蜘蛛膜下腔(Subarachnoid Space)}こ髄液が
敗血症を起こしたりゾ血栓症を起こしやすいなど種々 の
過度にたまる疾患である。
問題点がある。
水頭症には交通性(側脳室と背髄腔との間に自由な交
4)手術の結果:一般に必ずしもよいとはいえない。
通路のあるもの)と閉塞性(上記の交通路のないもの)
Ne亙sonnによると、1
の2種類があり{まな髄液の準まる場所を二;よρて、.』内水
なんらかの原因で死亡し、・一方手術例では、約菟は生存
頭症(Hydrocepha旦us internus l一倶ll悩室尋こ過度壱こ髄液
し、’その状態も改善されるものが大部分を占めていると
り、
術をしない群では約%「は早期に
がたまる型)と外水頭症(Hy璽『cep塊適$exte晦us一
いう。
蜘蛛膜下腔に髄液が多量にたまる型)に分けられる。
生存者のうち、約%は知能指数が70以下、約%は90以
陣害の最も多く起こるのは髄液の流れが・』髄液産生の
下であり、110以上を占めるものは5%以下に過ぎなか
場所と吸収の場所との間に機械的な閉塞が起こる場合で
ったという。
ある。その変化の逸こ1る原因どしては、 ①先天性奇型
楽観的な報告者そも治療した小児のうち15∼20%が心
(Aquedu¢tUSめ閉塞及び脳の奇型)…②炎症性閉塞
(髄膜炎及び生下時の蜘蛛膜下腔の出血など)、③脳腫瘍
(Gargoylism及びその転移、・脳腫瘍、脳膿瘍、血管の
身ともに企常に保七る程度そあろうという。
Foltz
Shurtleff21は水頭症のうち非手術46例、手術
例64例について、』5年以上生きのびたものについて調査
奇型及び嚢腫など)があげられているn。
した。手循例酋は、5年以上の生き残りは6L8%レヒ対
2)水頭症の症状=①初期症状としては、イ)大泉門
し、非手術例では22.2%に過ぎず、I Q75以上は手術例.
が拡大し、膨隆する。P)頭蓋がすべての方向に拡大す
33,8%、非手術例5.5%、1 Q75以下のものは、手術例
る。しかし、頭囲が拡大しないで水頭症が進行すること
では27.6%、非手術例では16.7%であって、手術の有効
もある6その理由は側脳室が頭囲の拡大なしに大きくな
なことを力説している。
ることが時々あるからである。
5)以上のことから、水頭症の治療には早期発見、r卑
②症状が著明となると、額が膨隆し、雛膜一(Sclera)
期治療が大切であり・ 逆に異常に進行したものに対して
が黒目rの上に見え、限球は下方に圧迫されるので・上方
はRehabi夏itationを考えて、手術の適応を充分に考慮
をみつめることができなくなる。斜視があらわれ、光に
しなければならない。
その水頭症の早期発見には、頭囲の測定が重大な意義
対して敏感になる。
③更に進むと軽度の手足の麻痺と視神経萎縮を伴う。
を有し、その急速な拡大と、脳神経学的な異常の発見へ
頭蓋はうすくなり、頭蓋の静脈は拡大してくる。刺激に
の努力が必要となる。
対して過敏となり、・ 発育不良を伴いhigh・pitch1のなき
狂 頭囲の標準値:戦前に乳児の頭囲を月令別に測定
したのは、吉永(昭5 )3,、戦後では船川ら(昭38〉qの報
声になる。
室から静脈、1特に右心房へ、弁つきのポ,リエチレンチュ
告があるが、何れもCross・sectionaL Studyで・同一
乳児をFoibw upした成績は{「宮崎、内薦松島(昭
rブを挿入する方法が疲も・よく用いられている。
40)51の報告があるのみである。
3〉治療:1外科的手術が最も有効といわれ、特に側脳
一105一
日本総合愛育研究所紀要
しかしこの報告も、水頭症への分析的研究に応用され
てはいない◇∵ …、
ぐ1
といわれる。
臥蹴このζか室踏嘩9慈野計ングを行う
・
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皿7k頭症の発生頻度一iNe1$6nユ11『「
Pediat「icsによれば・水臓昏よ姓1・…
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↑叡主bQ砿6f
麹聾級)
研1
第5集
ために、頭囲の増加がどの程度になれば水頭症の早期発
・♪見づ・璽手参揮身5壷塾う酔乳を擁討転な裂、i蕃
究 方 法1
〔1〕研舞へのApproachの仕方=前記の通り水頭症
第1図 M+σ袋示とパーセンタイル表示との関係
は1000:約3の発生須度があり、レかも乳児期初期から
発症し・そめ大部分のものは舷禅経学的変化は先がけて
M
一1σ
頭囲の異常拡大を主脈とするので、頭囲の測定が重大な
意義を有することになる。
一2σ
そこで、頭囲の平均値とその標準偏差値を求めると、
第1
図の如く、・M±σは全体の68%を》.、M±2σ、は全体の
95%を・
十1σ
十2σ
一3σ
十3σ
D
B C
E F G
A H
ii多ノ1㌦,1
M±3σは全体の99%を肖めることが理論値と
して分っているので、M+3σ以下みものは、1.全体の99.5
%を占めることになる。
即ち、M十3σ以上のCasqよ0,5%の頻度にみられる
ことになり、水頭症の発生頻度の0.3%に近づく。
そこで、
M十3σをこえた頭囲は、危険信号を発せら
れるであろうし・M+4σをこえれば危険といえるだろ
うと・考え拳。
〔豆〕 この構想のもとに・乳児の頭囲の正常値を求め
月イト温
るための作業を行った。
1)頭囲測定の対象乳児=昭和36年12月より昭和43年
し、集計牽行い、,平均値と標準偏差緯を求めた。
12月までの間に愛育病院で出生し、 以後12か月まで定期
②生下時体重別に頭囲の測定を12か月まで行なレ)、 〆同
的に保健指導をうけた乳児のうち、 年間7回以上来訪し
ていた乳児2000例(男女児とも1000例づつ)を選んだ。
様の操作を行った。
2)測定那頂1①頭囲、身畏・・体箆を各月令別に測定
このグラフを用いて検討を行なった。
〔皿〕
水頭症の症例と、頭囲の大きい正常児篤つき、
研 究 成・績
〔1〕乳児の頭囲の月令的推移と標準偏差値は、第1
表腫示した潭りである。
1)各月令とも男児の方が女児よ
りも頭囲においてま
1)水頭症=症例A 平○金○、6、2才5か月(第
4表参照)
a)生下時の頭囲は
35.・5伽.であったが、3か月 のこ
さり、その偏差値は、男児では1.1∼工.3cm女児では11.1
う、
∼1,2㎝であった。
れないで、4か月まで通院したが、未処置であった。
2)・頭囲の平均値(M)にM±σ
(標準偏差値X M±
2σ…M±3σの線を引いたものが第2図(男児)、,第3図
(女児)である。
〔E〕
出生時体重別頭囲の月令的推移成績
頭が急に大きくなったと近医に訴えたが、処置はさ
8か月の時愛育病院外来を訪ねた。
b)現症=r』頭囲は拡大(57.OcmM十104)し、 下三角形
の顔面で、眼球は下方に圧迫され、.静脈の怒張㊦、食欲
}一
2、3
不振㊥体蟹10.5kg・身長7317cm・頭囲57.0㎝・胸囲a51 8c皿1
表に示した通りであり、出生時体重の少ないもの程頭囲
ひとり坐り7M、おもちゃに手を出す6Mなど知能は
は小さいが・
正常、’大泉F『3・横指、
その増大の程度は・出生時体重の大きいも・
のよりも大きく、次第に標準頭囲に近づいてきている。
〔皿〕 症例の検討(第4図参照)
突出し緊張あ・り噛 Fu奪skb江“s
㊥P・S・R充進、バビソスキ[反射陽性、』Tre血6r ㊤脊
髄液圧は520∼400mm』(28cc採液)で上昇が著しく、
一106一
■
内藤他:水頭症のスクリー晶ンクを行うための基準どし・で、乳児の頭囲の異常増加率の分折検討
第1表 乳児の頭囲 第3図 乳児の頭囲の推移ノ 、
501女児
蚤1÷3σ
M十2σ
生下時
1,㈱國
cm
1,3
1,㈱ 33.7
1∼2m
976 38.2
1,2
943
2∼3
864 39.9
1,2
868
789
3∼4
770 4L.5
1.2
−4∼5
766 42.5
正.2
777
5∼6
777 43,5
互.2
802
6∼7
7∼8
752 44,3
1.2
779
641 44.7
聖.2
663
8∼9
601 45.6
1.2
629
.9∼OE
533 46.1
1.真
lO∼U
534 肇6?4
L,2
11∼12
姿2147・0
1,3
12∼13
420 47.1
丘,2
M十σ
.2
M
45
37.2
ズM一σ
39.6
M−2σ
M−3σ
40.4
41,5
41.8
40
43.2
44,0
44,4
.579 44,9
57L
403
362
35
45.1
45.7
45.7
E
1・2i
30
㎝
2.53.54.55.56.57.58,59.510.51L512・5
出.1.5
歪弘ケ ρ凋胃7 醒ρ戸嗣 醐 7 F
時 月
第2図乳児の頭囲の推移
降3σ
50
男児
M÷2σ
M+σ
M
45
M一σ
M−2σ
第4図 症r例図
示
籟
導
㎝
定蜘
『響σ幅,
7
58
M−3σ
篤縞,
57
蛸㈹
”5厚σ8.』》
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50
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時 月
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内藤他:水頭症のスクリーニンブを行うための基準として1乳児の頭囲の異常増加率の分折検討
頚 囲 cm
生下 時1
35,5cm
3 か 月
44,L
4 か 月
9 か
月
21才5カ』月一
駅囲cm
1¢〈Mく2色
生 下 時
』M学3σ
’47,0
8 か 月
2一才マ’ヵ月
定
判
(来院o口すすめる)『
M≠9.5ぴ
手術施行 M≠10σ
58.0、
37,甲叩,
気脳法により側脳室の拡大をみた。
45.0
戦3σ
49.0
50.0
M十4σ
M十4σ
150.2
M十4σ
よ2 か 月
50.5
M十3σ
1才6か月’
53.2
2才0か月
53.5
21
c)日赤中央病院にて9か月のとき手術をうけた。
、、M十2σ
M+4σ(手術).
8か月殆
9か月%
58.5r
判 ’定
44,0
2 か 月
3 か 月
7 か 月
3σく翼く卯.
57.0
菅○磁○・6(昭38.10.7生)
第5表 水頭症:症例C
水頭症=症例A 1平○金○、δ 2才5か月
第4表、
7か月
54.2
d)頭囲の推移:第4表と第4図に示した通り(Aの
例)手術以後2才 5か月に至るも頭囲は58cmと手術の時
b)満1才の時に Pudeny式の手術を、うけ・それま
と同じ値で増大はない。
で73.5cmあった頭囲壱よ70ン5直m セこ縮4、、し、週2∼3回行っ
e)2才8か月の現症1知能は正常であるが、運動機
ていた側脳室穿刺の必要がなくなった。 ㌧一
能は遅れていて、 1かけ足不能、・よぐころぶ、歩き方は
c)しかし、知能は Idiotであり、・7才に至る現在
spasticである。膝蓋腱反射とアキレス腱反射は九進し
まで植物性生命を維持するのみで、目下当院に入院中で
ていて、足描溺をみどめ、下肢は固い。1
ある。 (現在の頭囲74.0⑩〉
友逮とはよぐ遊んでいる。
d )批判=
rf)批判卜本症は軽度の脳性小児麻痺を残している
は、Rehabi取aUon4)可能性は最初がらないと考えら・れ
が、知能は正常範囲内にあり、比較的早期に進行を防止
る。即ち生下時頭囲50㎝とは、我々の図ではM+1βσに
しえた例である。しかし、今後の心身発育と∼手術後に
当り、;5畏常な頭囲とル、わね揖ごならなレ、。
予測される合併症(ポリ出ヂレソ管の閉塞、敗血症や血
本症の如き高度の先天性水頭痺について
更に手術施行(12か月 )時の頭躍は73.5cmであるが、
栓症の発生など).の予知のための定期的健康診甕が絶対
これはM十23σ.に相当している点∼手術の適応症とはレ.・
に必要である占
い難い例であ〕る。.(第4・図7B)
症例B
症例C
白○菜○子 7才、 ♀
a)出生時すでに頭囲50cmあり、(姉も同様の水頭寵
菅○嘉○ ⑮〈昭38.10.7生)6才
a)生下時頭囲 37c皿てM+2‘3σ)、体重2500g(在胎期
間39週〉
で死亡している)水頭症の症状が著明であづた6・
第6表 症例D 「2.頭囲は大きいが水頭症ではない痙例」
平○智○
1才9ヵ月
δ(昭42.7』16生)
\i、期.cm匝]≦1 幽
頭
生
下 、時
9 日 目
33.9
”
36.0
正月L2日
40.O
2月!2日
42.0
3月16日
43等5
4凋
4ξ.8
2皇日・
5月25日
6月二』29
1臼
45,7
46.7
a月.5日
M・
M
M十σくHくM十2σ
〃
〃
47‘5=
9月5日
48.6
lo月L4日
49.0
1才O月・29日
1才3月15日
L才6月t日
.M十2σ
M 十σくHてM十24
r
し才9月2日
〃■
一1Q9一
日本総合愛育研究所紀要
・満2か月で頭囲44㎝(M十4σ)どなり水頭症の診断の
第5築
知能は正常で、早期発見、早期治療されたよい例とみち
下に手術を受け、以後しぱらくは順調の発育を示し、知
れる。
能の発達も良好であった。
2)水頭症ではないが、頭睡の大きい健康児の観察=
以後頭囲は第5表及び第4図◎のようにM+4σの線上
症例b 寧(〉智○ ∂
を辿り、知能発達は、ほぽ正常で、1才6か月時の1.Q
(第6表)
89で正常であった。
(昭42。7.16生) 1才9ヵ月
生下特鱒騨33・Oc皿で騨に近し・が・4か月ごろに
しかし運動機能は低下していて、左手のspestic
母親は頭囲が大きいことを訴えたので(44.8㎝)、検討し
Paresisカ1桑られ、2才になっても、こうびやすい。
た結果、我々の標準値より伽大きく、身体的には何ら
P、S退やや充進しBabinski反射㊥である。左脚の
の水頭症の症状を示していなかったので、経過を1才9
運動制限軽度にみられる。
か月現在まで観察しているが、頭囲は、駈十2σとM十3σ
b)批判:手術後も左の半身不全まひをみとめるが、
の中間にあった。(第4図一(D)一)o
考
按
我々は水頭症を早期発見、早期治療するためのものさ
・しと
して・頭囲の標準値を作成し・M十3σ以上の頭闘・
とくにM・卜4σ以上あるときは精密検査を行う方がよい
ことを推奨する成絞を得た。
1
更に望むべくは、脳性小児麻痺を残、さぬ こ とであり㌔
そのためには、M十3σ線でスクリーニソグを行うこ』とが
望ましいと考える。
.1)Aの症例 (M十10g)以上に高度な 水頭症例どし
しかし、 =緒言でものべた通り、水頭症は先天性のもの
て、1)B (白○菜○子 ♀)の場合では、生下時廼す
が多く、発見されたときには㌔相当に進行していて、脳
でに頭囲がM十13σ であり、手術をうけた12が月では
実質の陣魯、と くに知能や運動機能その他の陣害が高度
M十23σという驚くべき巨大な頭囲になっていて、、しか
なものに対して手術を施行して.も、Rehab貢1itationが極
も手術したあと、Reh母bl取atlonの可能性の全くない
めて困難であったり・または生ける屍の例もあるので、
「櫃物性生活」を送っているのである5㌧
手術の適応に対して、極めて厳選されるべきである。
・このことから推論する と、頭囲がM十13¢では、
我々め例でみると、1)Aの症例1
二(平○金○』δ)の
.NQrmaUife・ができないが、M+10σ.では、 でき・うると
場合は、1頭脇がM十10σで側脳室』右心房辿絡の手術を
もいえようd≧しカ・.し、一Nelson もし・う通り、 ・水’夏頁症は頭
うけ、しかも以後の経過は、比較的良好(軽度の脳性麻
囲のみにとらわれないで、神経学的検査成績も重要な葱
痺を残している)であるがで更に早期の発見、手術が行
味をもつものといえるから・今後の分析を必要とするで
われていたら、』Rehabilitationが更に良好の結果を得.
あろう。
たであろうと推測される。
症例1)Aの例でも分る通り・家族は・3∼4か月の
その限度は・1)Cの症例 (菅○孫0 3)の場合が
ころに異常な頭囲の拡大に気付いているが、医師の方は
参考となろう。艮0ち、頭囲力くM十4σに達したとき{外
注意をおこたっていたようでめる。その』3∼4か月時の
科医から疾患を発見され・ 各種検査ののち・手術を行い
頭囲は∼M十3σ∼M十4σの間であり、以後8か月まで
以俵り原囲けM十4σの線上にある。しかも知能は正常
の聞騒M+9・5σに増大していたrこの間家族はたえず頭
範囲にあることは、1)Aと同じであるが、悩性小児麻
囲の増大に気がついていて、医師に相談していたのであ
痺の程度は軽度(左側の’Paresis)で、社会への適応が
るから・早期発見・早期対策の時期はこの期間中にある
よ.く行孝るもの といえる。
といえよう。
結.
論
水頭症の早期発見の目的に合う「ものさし」を作成す
で、乳児の頭囲の正常分布曲線にこの考えをあ《ほめる
る目的で・以下の研究を行ない・その「ものさし」を使
と、M+3σの線が0。5%に該当し、0.3%はM卑3σと
って水頭症の症例の分析検討を行なった。
M十4σの間にあることになる。
1)水頭症のスクリーニングのための「ものさし」作
2)乳児期の頭囲の標準値の作成=① 愛育病院で出
成の根拠=水頭症の発生頻度は約0,3%といわれるの
生し、以後同病院保健指導部に定期的に来訪した乳児の
一110一
内藤他=水頭症のスクリー二 ソグを行うための基準として{』乳児の頭囲の異常増加率の分折検討
うち、12か月までに7回以上来訪した男女児央々1000例
治療を行うには、患児の心身両面から、Rehabihtatbn
=ま塵夫々,二、
の可能性ρある1ものを選ぶことが窒要な条件であるとい
づつにつき、各月毎の顕暉⑫平均偉脅算単レ、
にσ(標準偏差値)を算出した。
いたい。
② 出生体重別の乳児期各月の頭囲の平均値±σも同
時に算出した。
〔文 献〕
3) このDataの赫+3σ線を作り▽我々の経験した
1) Nelson=Textbook of Pediatrics.8Edit,
水頭症3例と、正常児で頭囲の大きいもの1例につき、
P.1187μ964
図上で検討を行った結果。
2) Fo里tzE.1L』and Dl B,Shurt里6ff;Fiv¢ゾeaf
①頭囲が大きいことを主豚どした例で神経学的に変
化のないものは、M十2σ∼M→ト3σの間にあった。これに
Comparative Study of hydrocephalus
対して明らかに頭囲の異常なもので、頭囲が血十4σの
dren寅ith and丈vithbut operat正on:」.of Neu−
手術例では正常児の知能と運動機能に近く、M+10σ例
r6surg.20: 1064,1963:Handb亘ごh der KHK,
では∫手術したのちも、軽度の脳性小児麻痺症状をのこ
VIII11.Neufo旦ogie』一P$ychologie,Psマdhiatr亘e,
しているが知能は正常範囲内にあったことがら、M+3σ
P.166. 1969 より弓i用
線はスクリーニソグに適していると思う。しか
3)吉永:児科雑誌r36ケ毎、 325頁i 1昭5
し生』下時
がら、頭囲がM十13σという署しく異常の先天性水頭症
例では12か月時(頭囲 M+23σ)に手術を行らたが、
全
ぐの白痴の状態であることから{早期発見して甑早期
N
5奏
1 ニヒ激、 醸
4) 船)ll{高石、’藤村r ;小児保健研究 21;206 昭38
リ
5) 宮崎、』内藤、『松島;小児保健蘇究2翫4,∴
166,昭40
乙
一
in℃hi1・
111一
お5−
Rate of Abnormal IncreaSe of Infant*S H d Size
Jushichird N ito
Dept,. 3 Ton inosuke Ma s=Y hima
For the purpose of making !: = measure" conducive to discover hydrocephaius case at an early
stag . we made the following,
l)= The
. = , irh
t Idy. . n lyzed and discu$sed the hydroeephalus case_s trying "tlpe
asis, of makipg '! :1?ieasure*1 for screening hydrocephalus cases : :
/reqYency of oceurren, ce pf hydroc:ephalus is, saic to* b
rate is. applied to the nprmal distri ution,curve of the infant*s hea
sponds to the rate of O. 5%, thereby..
t follow
aboLt
* 3 ; therefor . When this
size, the level_ of M+30 ceue-
that the rate of O. 3 comes between M+ (r nd M+4a.
2) pstablishment of standard value=0f head size in infancy : .
) We cQmp ted the mean y,alue of each month's head si: e of the infants who lv re born ;tt
A iku pspi al an lp cu ht re ul rly. ;o, Health Cuidanfej Department of the same hqspital,;more
than 7 times in 12 months after thejr= birth (male 1,000 and female 1.000), and We also ppmputed
the standard deviatien of the infant*s head size in each month.
R At the same time we computed the mean value : :a of the head size of the subjeets in each
month in infancy by birth weight
3) We made the level of M+3a of these data and discussed on the figures of 3 cases of hydrocephalus and I case of normal ehild having a large size head The results were :
) The case brought to the hospital for having a large si e head, but showed no neurolegical
problem fell bctween M+2c and M+3e. the case of evidently abnormal head size of M+4(r who had
undergane an operation was found close upon a normal child, and the case of M+10(T showed the
symptom of cerebral palsy even after undergoing an operation, but his intelligence wa.s within the
normal range. These results assure us to believe that the level of M+3e is applicable f i'screening
hydrccephalus cases. However, as there was sueh a case as a congenital hydrccephalus case whose
head size had been remarkably abnarmal showing M+130 since the time of his birth and who
iemained an idiot even after he had undergone an operation at the age of 12 months (head size
then M+23e), we wlsh to state that even if we find a hydrocephalus case at an early stage, it is
important for an early treatment to choose the case who has the possibility of being rehabilitated
both in mind and body.
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