経営改善計画書策定研修テキスト 経営改善計画書策定支援 の進め方 経営改善計画書策定研修テキスト Ⅰ 経営改善計画概論 説明1 Ⅰ経営改善計画概論 1.経営改善の定義 諸説あるが、実際に経営改善計画書を策定する場合、 以下の定義を念頭におけば、間違いが少ない。 資金の不足に陥っている企業が取り組むべきもので、 顧客の創造など資金の増加につながる活動や 原価、経費の削減など、資金の減少を回避する内容である。 資金のバランスを適正に保つために、 経営者、従業員がそれぞれ目標や役割を共通認識し、 短期的でなく、継続的、安定的に、 資金が循環する状態に近づけるための取組みのこと。 ①業務の再構築 ②財務の再構築 ③事業の再構築 売上向上、仕入圧縮、経費圧縮、人員削減 時価評価、資産の処分、負債、資本の整理 事業の廃止、事業の売却 この取組みをまとめたものを、経営改善計画書という。 説明2 Ⅰ経営改善計画書概論 2.実現可能性と抜本的 単に、形だけの計画書は、もう不要とされている。 本当にできそうで、期待感の持てる計画書が求められている。 ●「実現可能性の高い」の要件として、 (1) 「一 計画の実現に必要な関係者との同意が得られていること。」 (2) 「二 計画における債権放棄などの支援の額が確定しており、 当該計画を超える追加的支援が必要と見込まれる状況でないこと。」 (3) 「三 計画における売上高、費用及び利益の予測等の想定が十分 に 厳しいものとなっていること。」 ●「抜本的な」の要件として、 (1) 「概ね3年(債務者企業の事業の特質を考慮した合理的な期間の 延長を 排除しない。)後の当該債務者の債務者区分が正常先となるこ とをいう」 (2) 「なお、債務者が中小企業である場合の取扱いは、金融検査マニュ アル別冊を参照のこと。(簡単にいうとかなり緩和されるということ) 説明3 Ⅰ経営改善計画書概論 3.支援者の役割 支援者の役割 事業性 この事業が永続できる前提条件 期待の持てる計画書が示せることで、金融支援の是 非が判断しやすくなる。結果的に破たんが回避できる。 金融支援の判断基準 ●金融支援の必要性 ●金融支援の合理性 ●金融支援手法の選択 ●債権者間の衡平性 経済合理性 清算、担保処分すべきでない理由 実現可能性 計画した目標が達成できる根拠 経営責任の明確化 誰の、どこに、何があるのか 再生計画策定と実施 モニタリングの実施 再生の出口 ●数値基準 ●債務者区分の上方遷移 説明4 Ⅰ経営改善計画書概論 4.支援者の役割 手順さえ踏まえれば、決して難しいものではない。 高度、かつ難解のものを求めているのではない。 ④実現可能性の高い抜本的な 経営改善計画書をつくること ③改善の方向性、及び取組み 項目を定めること ②窮境の原因、及び本質的な経 営課題を認識すること ①現状を正しく把握し、客観、か つ公正に評価すること 経営改善計画書 DD報告書 財務・事業 DD デューディリジェンス とは、投資家が投資対象の適格性を把握するために行う調査活動全般を指します。 経営改善計画書策定研修テキスト Ⅱ 計画策定の手順 説明5 Ⅱ計画策定の手順 1.策定の手順 色々なマニュアルが示されているが、どれも難解である。 ここに示したものが理解できれば、期待に添えられる。 事業DD ヒアリング 視察 経営改善計画書 資料分析 ○企業概要 ○窮境原因 ○事業性 ○改善策の基本 ○経営環境 ○事業モデル ○特徴的な企業体質 ○今後の方向性 経営者・幹部ヒアリング 社員アンケート 体系化・体系表の設定 経営改善項目の設定 取組み内容の設定 目標・担当・時期の設定 売上・損益計画の策定 財務DD ○窮境原因 ○損益の状況 ○税務の状況 ○資金繰りの状況 ○実質的な純資産額 ○債務償還年数 ○過剰債務 過去のみ、未来はない ビジネスモデルの策定 今回対象外 企業に引き継ぎ 金融機関とともに、調整を加えながら経営改善計画書 として完成される 説明6 Ⅱ計画策定の手順 2.事業DD レポート構成 ○企業概要 対象となる企業の全体がわかる説明 ○窮境原因 非常に苦しい境遇、立場に至った原因 ○事業性 将来的に事業が成立する理由や根拠 ○改善策の基本 今後、取り組むべき経営改善の骨子 ○経営環境 取り巻く外部環境や活かすべき強み ○事業モデル 利益を生み出す、商品やお金の流れ ○特異な企業体質 表面から見えにくい強み、優位なこと ○改善の方向性 経営改善に取組み後のイメージ、目標 色々試してみたが、この8項目が最適。 経営課題と経営責任を明確化させ、それを 踏まえた今後について提案する。 【留意事項】 読み手は 経営者でなく、第三者 主に金融機関、債権者 知りたいことは 先があるのか、ないのか それはなぜなのか 伝えるべきことは 当該事業が継続できる 理由、根拠、その方法 そのために 中立的立場で 客観的に、事実のままに より簡潔、かつ詳細に 説明7 Ⅱ計画策定の手順 3.事業DD 作成手順 経営環境 ヒ ア リ ン グ ● 過去 窮境原因 事業モデル 視 察 目的と手順さえ踏まえれば難しくない 業種や規模が違っても、基本は同じ。 特異な企業体質 改善の方向性 経営者の資質 窮境原因 経営課題 の特定・解消 取扱い商品 取引先 販売先・仕入先 ● 資 料 分 析 事業領域の 設定 現在・未来 事業性 人材 ノウハウ 生産・販売他 改善後の 目標・イメージ 主要な 改善項目 報 告 書 作 成 ● プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 説明8 Ⅱ計画策定の手順 4.経営改善計画書 レポート構成 ○基本体系 経営改善の取組みの全体像がわかる ○経営改善計画 詳細 具体的に、何をしようとしているかわかる ○販売計画 何を、どれだけ販売するかを示す ○見積もり損益計算書 取組みの結果が、どう数値に反映されるか ○計画書補足 本体に記載すべき事項 ・現況、課題、問題点 ・経営改善計画策定方針 ・計画期間・改善目標等 ・ビジネスモデル ・経営改善計画に関する具体的施策内容 ※ケースによって異なる 最も重要なのは、基本体系である。 大局的にみることもでき、かつ詳細も わかるものが、理解、賛同されやすい 【留意事項】 求められるのは 理解、賛同しやすいもの 理由、根拠が明瞭なもの 計画書は 全体像がわかること 詳細もわかること 実現可能性は 道筋と根拠で示す 抜本的かは 返済可能なCFになればよい そのために 観るひとの立場に立って 取組みの背景と結論に 整合性を持たせること 説明9 Ⅱ計画策定の手順 5.経営改善計画書 作成手順 コンセンサス 経営者 財 務 ・ 事 業 D D を 踏 ま え て 幹部社員 一般社員 体系表 品揃え 商品体系 適正品揃え 仕入先改廃 仕入先開発 改善実行計画 数値計画 必要性 要旨・成果 販売計画 売り方 営業・販促体系 営業スキーム 企画・ツール 顧客管理 差別化 優位性確立 人材育成 影響力ある 取引先 人間の体と同じで、不調のとき、悪い 症状があれば、原因と特定できる 社内ルール 指揮・疎通 能力アップ 項目・内容 完了イメージ アウトプット 担当者 責任者 着手・完了 期限 損益計画 企 業 に 引 き 継 ぎ ・ 金 融 機 関 と 共 に 完 成 経営改善計画書策定研修テキスト Ⅲ 窮境原因・事業性分析 説明10 Ⅲ窮境原因・事業性分析 1.仮説の想定 窮境原因 多くが、直接的原因と表面的理由を混同しがちである。 本質的原因の究明が、経営責任の明確化につながる。 表面的理由(発生事象) ●需要の減退 不景気、時代遅れ、ニーズとミスマッチ ●競合関係 強力なライバルの登場、対応の遅れ ●取引関係 取引先からの要請、要望、強要による ●アクシデント 倒産、人材の喪失、地震などの天災 今後の改善に役立つ情報は、目論見が狂った 原因の中にある。 経営者自身が変わらなければ、同じ過ちを犯 すことになり、自らの反省を求める 経営者自らの過ちを指摘、記載することは、第 三者の理解がえられやすい。 経営不振は、経営者による人災である! 直接的原因 ●判断ミス 対応の目論見違い、タイミングのずれ ・もともと、どう考えていたのか ・どう目論見が狂ったのか ・狂った原因は何か ・ひとの理由をとりあえず聞く ・自分自身に、どんな過ちがあったのか 本質的原因 ●経営者の資質 見通しの甘さ、優柔不断、公私混同 説明11 Ⅲ窮境原因・事業性分析 2.仮説の想定 事業性 経営環境 現在・未来 事業性 ●商品需要 ●有力顧客 ●開発力 ●事業モデル ●販売優位性 ●人材 ●競合 この事業が永続できる前提条件を揃えようとした場合 「売れる」「利益があがる」「継続できる」 ことの理由を探せばよい その根拠となることを示すことで、事業性が説明できる。 特異な企業体質 経営者の資質 取扱い商品 取引先 販売先・仕入先 人材 ノウハウ 生産・販売他 実現可能性 ■ 売れる ・商品ニーズがある ・特権があり優位な販売ができる ・同一顧客に複数提案できる ■ 利益があがる ・高いものが売れる ・仕入や製造が他より有利 ・経費が下がる、あがらない ■ 継続できる ・社員の理解、モチベーション ・取引先の便宜、協力が得られる ・天災以外、リスクがない 説明12 Ⅲ窮境原因・事業性分析 ここを間違えると、すべての計画がくるう。 分析は、そもそも信頼に値する事実を抽出す るために、行われるものである。 3.分析の意味 特異な企業体質 ●経営者の資質 ●取扱い商品 ●取引先 ●人材 ●ノウハウ よくある例 表面的な現象 現象と事実を 混同 例 当社の強み 繊維の加工業者が少ない。 ミシン、裁断もできる。 サンプルができる。 厚物(テント、パラシュート、船の帆)を量産でき る技術がある。 思いこみ 経営改善計画書策定研修テキスト Ⅳ 事業領域設定 説明13 Ⅳ事業領域設定 1.分類と重点化 分類することで、具体的な事例に基づき、より具 体的な対策が検討できることにつながる。 最も売れる可能性のあるもの ●重要と考えている商品を3つあげる ●それを選んだ理由を述べてもらう 最も買って頂ける可能性のあるひと ●重要と考えている取引先を3つあげる ●それを選んだ理由を述べてもらう 売れる根拠を導き出す ・商品力がある ・他で扱っていない ・必要とされている ・いまの販路が活かせる 誰に、何を、どうやって、販売するのかを想定する ・誰が、なぜ、購入するのか(必然性) ・どうやって販売するのか(具体性) 実現可能性の高まる取組み事項を想定する 具体性の醸成 顧客対応 取引先対応 必然性の立証 課題を解決する 強みを活かす 説明14 Ⅳ事業領域設定 2.具体化 対顧客 雑多な顧客 考えがまとまらないのは、異なるタイプのことを同時に考えて しまうからである。思考は、細分化することで深まる。 新規でなく、まずは既存、現有の取引先、販路から考える。 分類整理 顧客群別対応 顧客群1 何を、どうやって、販売する 顧客群2 何を、どうやって、販売する 顧客群3 何を、どうやって、販売する 顧客群4 何を、どうやって、販売する ●分類方法 一般に、顧客を分類するという考えがなく、 群(グループ)としてとらえられていない。 理想的には、業態(タイプ)や頻度がよい。 対応方法が、似通っているからである。 ●対応方法 顧客群の属性に基づいて、最も取引が実 現できる可能性の高いものを問う。 その理由や方法を深く考えていくことで、 納得しやすい根拠や方法が見えてくる。 説明15 Ⅳ事業領域設定 3.具体化 売り方 選んだ顧客群 共通すること すべての思考の起点は、ものが売れるイメージからはじまる。 誰が、何を、どのような理由で、どのように買うのか、または売るの か、これをイメージできれば、やるべきことが見えてくる。 求めるニーズ その背景、理由 ●誰でもから、あなたに それぞれにひとによって、考え や事情がことなるのに、お客様 をわけて考えることをしない。 それぞれの事情や都合にあわ せない限り、興味を持って頂い たり、ご利用頂くことはできない。 単に、当たり前のことを行うのみ。 提案すべき商品 効果的販売方法 ◆対消費者 ・使うイメージ 時期、場面 ◆対業者 ・扱うイメージ 時期、事情 ・認知 ・関心・興味 ・動機づけ ・リピート 根 拠 ・売れる ・利益があがる ・継続できる 具体性・実現可能性 につながる やるべきこと=新たな経営課題=経営改善項目 ●品揃え 商品体系、適正品揃え、仕入先改廃、仕入先開発 ●売り方 営業・販促体系、営業スキーム、企画・ツール、顧客管理 ●差別化 優位性確立 ●人材育成 社内ルール、指揮・疎通、能力アップ ●モチベーション 売れるイメージは、経営改善に取り組む意欲を高めるこ とに直結する。理想が、理想通りにいかないジレンマが 生じた際に、はじめてやるべきことがみえてくる。 経営改善計画書策定研修テキスト Ⅴ 改善実行計画 説明16 Ⅴ改善実行計画 1.体系化 取組み項目を、規則性を持って一覧にすれば、全体像がわかり、整 合性がとれているような印象が持たれる。このことが理解や賛同の 促進につながり、計画に対する信頼感を高めることになる。 ●設定項目 ◇分類1 ◇分類2 ◇テーマ ◇内容・目標 ◇担当(者) ◇責任(者) ◇年度(3か年) が適当なのか? 信頼性を高める ポイント ●配列方法 ◇優先順位(急ぐものが前) ◇分類毎テーマ 5が理想 ◇文字数を揃える ◇目標 完了が確認できる ◇着手と見直しを分ける ●信頼性の向上に寄与 消費増税をにらんで 計画策定において、この様式は求められていない。しかし、示せば必ず好印象につながる。 説明17 Ⅴ改善実行計画 2.実施項目の設定 経営改善は、結果だけでなく、決めた ことをやり抜く姿勢が問われている。 取り組む道筋や、やり終えたかどうか が、判定できる計画書を理想とする。 ●設定項目 ◇担当者、責任者 ◇着手、完了 ◇経営改善項目 ◆取組み内容 ◇完了イメージ ◇初期に想定された課題 ◇改善の必要性 ◇取組みの要旨 ◇期待される成果 ◇想定されるアウトプット ◆実施事項 ◇実施項目 ◇内容、及び実施上の課題 ◇モニタリング 説明18 Ⅴ改善実行計画 3.実施項目の設定 ●設定項目 ◇担当者、責任者 実際にやるひとと、それを確認するひと ◇着手(いつはじめ)、完了(いつ終わる) この取り決めで2回のチェックができる。 ◇経営改善項目 何をしようとしているのか、ひとことで表現 ◆取組み内容 ◇完了イメージ 何を持って完了なのか 抽象的表現でも可 ◇初期に想定された課題 完了までに、終える必要があることの背景 ◇改善の必要性 課題があるがゆえに生じていることの不利 ◇取組みの要旨 取り組もうとしていることのあらましを説明 記載すべき設定項目は、金融庁が求め る「実現可能性が高く」「抜本的な」計画 の要件と、債権者が、およそ知りたいこと を満たすものである。 ◇規定される成果 取り組むことのねらいや実施上のメリット ◇想定されるアウトプット 完了した際に、完成する予定の成果物 ◆実施事項 ◇実施項目 取組みを細分化する。5段階で区分けする 具体性が増し、実現可能性が感じられる 中間的なモニタリングに寄与する 実際に実行に移す際に、考え方が共有できる ◇内容、及び実施上の課題 目標でなく、動作、作業の具体的内容を示す ここが書けないということは、イメージ不足 ◇モニタリング 何が完成すれば完了なのか、成果物を示す 成果物が完成したことを持って完了とする
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