1 製品戦略を検討する前に

1 製品戦略を検討する前に
1)製品戦略の重要性
企業が存続していくためには、製品やサービス(以下「製品」)を販売し、収益を獲
得し続けることは不可欠です。言い換えると、獲得すべき収益を生み出す源泉となる製
品が存在しなければ企業経営は成り立ちません。
こうした意味では、自社の扱う製品についてさまざまな角度から検討・計画立案を行
い、それらを実行していくことは、企業において根幹をなす重要な取り組みといえるで
しょう。
本リポートでは、経営において不可欠な「製品戦略」について中小企業が検討すべき
ポイントおよびその概要を紹介します。
2)「製品」とは
製品戦略として検討すべき内容を紹介する前に、検討対象となる「製品とは何か」と
いう点について確認します。マーケティング論の第一人者P.コトラーは、G.アームスト
ロングとの共著において、製品を「製品の核」「製品の形態」「製品の付随的機能」の
3つの階層に分けています。以下では、自動車を例にこれら3つの階層について説明しま
す。
1.製品の核(中核的製品)
製品を購入する際に消費者が求めるベネフィット(便益)などをいいます。自動車の
場合、消費者が求めるベネフィットは、「快適な移動手段」といったものが挙げられま
す。
2.製品の形態(実際的製品)
「製品の核」を具体化した実際の製品のことをいいます。つまり「自動車」という製
品がこれに該当します。
3.製品の付随的機能(拡大的製品)
「製品の形態」に付随して提供されるものをいいます。例えば「購入から半年後の無
料点検」といったアフターサービスなどがこれに該当します。
【「製品」の階層と各構成要素の例】
「製品」の階層
構成要素の例
製品の核(中核的製品)
中核となるベネフィット、サービスなど
製品の形態(実際的製品)
品質、スタイル、パッケージング、ブランド名など
製品の付随的機能(拡大的製品) アフターサービス、保証、配送など
この製品の3つの階層という考え方は、やや概念的な説明のため、一般的に想像される
「製品」というイメージとは異なる印象を受ける人も少なくないでしょう。しかし、本
リポートの後半でも紹介するように、この考え方は、製品戦略を考える際に非常に有効
な視点を与えてくれます。
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