胃 。 食道癌に対する術中超音波検査法の意義 菊池 俊 之 有我 隆 光

日消外会誌 18(1)t139,1985年
研 究速報
胃 。食道癌 に対す る術中超音波検査法 の意義
崇正
在完
目的及 び方法 胃 ・食道癌 に対 し, 日側浸潤 を知 る
目的 として術中超音波を応用 し, これが術中迅速組織
向井 稔
神津 照 雄
長 島
佐 藤
通 博
有我 隆 光
向
主弓 一
菊池 俊 之
図 BorHnann 3型 胃癌症例.左 矢印部 は癌浸潤部で
低 エヨーレベルの壁肥厚を認める
診 に代わ り得 るかを検討 した。
使用器種 は東芝 SAL50Aで 術 中探触 子 は7.5MHz
の ものを使用,更 に消化管壁へ の密着性 の優れた レス
トン (coupling material)を
介在物質 として使用 した。
・
手順 は 胃 食道をかな り遊離 した時点で,内 腔 に脱気
水を充満 して壁を伸展 させ, レス トンを壁 に密着 させ
た上か ら探触子をあてて精査 した。 なお レス トンの厚
さは1.5cmで 一定 とし,又 探触子 は壁に直角にあた る
様 に留意 した。
対象 対 象は教室 における1984年3月 よ り9月 まで
に手術施行せ る胃癌22例,食 道腫瘍 9例 で,内 訳 は 胃
癌 は m癌 6例 ,sm癌 3例 ,進行 胃癌 13例,食道腫瘍 は
進行食道癌 8例 ,食 道肉腫 1例 で あ る。
結果 ① 術中超音波 により,正 常 胃 ・食道壁 は 5層
構造を呈 し,更 に水深超音波像 と組織 の対比 によ り,
第 1,2層 は粘膜,第 3層 は粘膜下層,第 4層 は筋層,
第 5層 は装 (外)膜 と考 えられた。②早期癌 では第 1,
2層 の欠損や第 3層 の肥厚,進 行癌 では層構造 の消失
や乱れ,壁 肥厚 の所見 を塁 した。③術中超音波 によ り
癌腫 の 日側 の正 常 5層 構造 を呈す る部 にて切除線 と
し,31例 全例 に owOを 得た。
考察 胃 ・食道壁 の超音波像 の研 究 は諸家 に よ り切
除標本 の水深 超音波 に よ りな されて きたが, わ れわ れ
は ①近距離分解能 の優れた7.5MHzの 術中用小型探
触子の使用。② レス トンを介在物質 として使用するこ
とによる焦点距離の合った一定距離 での壁観察.③
胃 ・食道内の脱気水充満による壁の仲展.④ 探触子壁
に直角にあてるなどにより,術 中にも安定した画像を
得ることができた。癌部では 5層構造の乱れや消失,
壁の肥厚等の所見を呈 し,超 音波上限局型の癌では正
常部 との境界は明らかである。又肉眼所見からは浸潤
指摘す
範囲の診断困難な浸潤型 の癌でも,上 方 ら1)の
る様 に, 浸 潤部 では低 エ コー レベ ルの層 の肥厚 を認 め
( F i g ) , 正常部 とは明 らか に異 な り浸潤 範 囲を決 定 す
る ことが可能 で あ った。 そ して この様 な所見 の部 よ り
口側 で 明 らかな正常 5 層 構造 を呈す る部 で切離 し, 3 1
例全例にow Oを得ることができ,術 中超音波は術中
迅速組織に代わ りうると考えられた。
結語 ① 7.5MHzの 術中用探触子 ・レス トンを用い
て胃 ・食道癌に術中超音波を応用し,術 中にも安定 し
た胃 ・食道壁の起音波像を得 ることがで きた.② 胃 ・
食道壁 の正常超音波像 は 5層 構造を呈 し,癌 部 では層
構造 の乱れ,消 失な どの所見を皇 したが,浸 潤型癌 の
浸潤部 では低 エ コー レベルの層 の肥厚を呈 し,健 常部
との区別は可能で,術 中超音波 にて切除線を決定 し,
31例全例にow Oという結果を得,術 中超音波は術中
迅速組織診 に代わ りうる と考 え られた。
索引用語 :胃 ・食道癌 の術中超音波検査
文 献 !1)工 方 淳 ,松 江寛人,吉 田孝宣ほか ;浸潤
性胃癌 の超音波診断。 日超音波医会42回研発表会講論
集,425,1983.
Assessment of intraoperative uitrasonography for the gastric and esophageal cancers.
Munemasa RYU,Minoru MUKAI,Tohru NAGASHIMA,Takamitsu ARIGA,Zaikan
,Chiba UniverSty,School of Medicine
Hiroshi SATOH. Second Department of Surge呼
<1984年 11月21日受理>別 刷請求先 :菊 池俊之 〒 280 千 葉市亥鼻 1-8-1 千
Toshiyuki KIKUCHI,
KOH,Teruo KOUZU,
葉大学医学部第 2外 科