SR8800 - Fujitsu

高速・高信頼レイヤ 3 スイッチ
SR8800
プロダクトレポート Vol.1
(高信頼編)
富士通株式会社
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−目次−
1. SR8800 の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
2. SR8800 高信頼アーキテクチャ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
(1) 電源部・基本制御部二重化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
(2) マルチリンクイーサ機能 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
(3) ホットスタンバイ機能 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
(4) 稼動状態での保守/構成変更 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
3. 基本制御部二重化について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
基本制御部二重化について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
3.1 切替動作とエンドエンド通信への影響 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
3.2 二重化切替方式 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
(1) 障害検出方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
(2) 予備系切替と通信テーブル作成方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
3.3 SR8800 基本制御部二重化アーキテクチャ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
(1) ハードウェアの障害検出 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
(2) 予備系基本制御部の動作と監視 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
(3) 各種通信テーブルの装置内二重化 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
4. 稼働状態での保守/構成変更・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
稼働状態での保守/構成変更 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
(1) 実現のためのアーキテクチャ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
(2) 動的バージョンアップ機能 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20
5. まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22
付録 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23
① ハードウェアルーティング機能解説 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23
② スペック表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25
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1. SR8800 の概要
SR8800 は、GigabitEthernet を最大 48 本搭載可能な高速・広帯域・高信頼のバックボ
ーンレイヤ 3 スイッチです。IP ハードウェアルーティング、バーチャル LAN、IP マルチ
キャストルーティングなどの機能に加え、高信頼ネットワークを実現するために以下の機
能をサポートしています。
① 電源部・基本制御部二重化
電源部・基本制御部二重化
⇒ 2 章 (1) , 3 章 参照
② マルチリンクイーサ機能
⇒ 2 章 (2)
参照
③ ホットスタンバイ機能
⇒ 2 章 (3)
参照
④ 稼動状態での保守/構成変更
⇒ 2 章 (4) , 4 章 参照
本冊子では、バックボーン LAN を構成するコアスイッチに必須のこれら高信頼機能につ
いて詳細な解説をして行きます。
図 1:スイッチングルータ SR8800
1
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2. SR8800 高信頼アーキテクチャ
SR8800 は、信頼性向上のために「電源部・基本制御部二重化」
「マルチリンクイーサ機
能」
「ホットスタンバイ機能」をサポートする高信頼レイヤ 3 スイッチです。二重化および
冗長構成による障害発生時のリカバリ機能に加え、
「稼働状態での保守/構成変更」も可能
です。以下に各機能の概要について解説して行きます。
(1) 電源部・基本制御部二重化
SR8800 本体内部の機能として電源部二重化および基本制御部二重化が可能です。電源
部を二重化すれば、一方の電源部に障害が発生しても、残りの電源部により電源供給が行
われ、SR8800 の中継動作に影響を与えません。また、基本制御部を二重化すれば、一方
の基本部に障害が発生しても、もう一方の基本部により 3 秒以内に通信が復旧します。
基本制御部・電源部
基本制御部・電源部 2 重化
基本制御部
二重化
基本制御部
障害
電源障害
電源部二重化
基本制御部障害
時も 3 秒以内
に通信復旧
サーバ
クライアント
図 2:電源部・基本制御部二重化構成
2
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(2) マルチリンクイーサ機能
マルチリンクイーサ機能※1 とは、複数の伝送路を束ねることによって、仮想的に一本
の伝送路として取り扱い、帯域幅の増大と冗長性の向上を提供する技術です。
SR8800 では、100BASE-TX または 1000BASE-X の同一速度の伝送路を複数本(2、4、
8 本)多重し、多重した伝送路の合計分の帯域を実現することが可能です。
伝送路障害
マルチリンクイーサ機能
により瞬時に通信復旧
障害
図 3:マルチリンクイーサ機能
※1:
「マルチリンクイーサ機能」は、富士通における名称です。一般的には、Link Aggregation と言われ
る機能に相当します(現在、この機能は各社独自実装となっています。他社機器との接続の可否に
つきましては、富士通技術員までお問い合わせ下さい)
。
3
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(3) ホットスタンバイ機能
2 台の SR8800 を組み合わせることにより、ホットスタンバイ機能の利用が可能です。
現用系/待機系の 2 台を使用し、現用系の装置障害時に、待機系の装置に高速切替を行い
ます。
この切替時間は、RIP 方式を使用した経路切替の場合に比べて大幅に速く、数秒∼十数
秒で待機系の装置に切替わり、通信が復旧します(RIP 方式を使用した場合は、通信が復
旧するまでに数分かかります)
。
また、ホットスタンバイ機能を使用することにより、ゲートウェイをひとつしか設定で
きないパソコンなどの装置でも障害時に設定変更を行うことなく通信を復旧させること
が可能です。パソコン側は、SR8800 の切替を意識することなくご利用いただけます。
通常運用時
サーバ
クライアント
SR8800#1(現用系)
中継経路
SR8800#2(待機系)
障害発生後
サーバ
障害
クライアント
SR8800#1(待機系)
中継経路
SR8800#2(現用系)
図 4:ホットスタンバイ機能
4
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(4) 稼働状態での保守/構成変更
SR8800 では、全ての I/F モジュールおよび基本制御部※1 で活性挿抜が可能です。稼動
状態における設定内容の変更(動的定義変更)はもちろんのこと、稼働状態におけるソフ
トウェアのバージョンアップ(動的バージョンアップ機能)もサポートしています※2。
そのため、I/F モジュール拡張時およびソフトウェア・バージョンアップ時にもシステム
全体を止めることなく変更作業が可能です。
※1:基本制御部は、二重化時にのみ活性挿抜が可能(装置に必ず 1 つは必要なため)です。
※2:ソフトウェアのバージョンアップについては、基本制御部二重化時のみ可能です。
I/F モジュールの
活性挿抜
V02
V01
動的バージョンアップ
動的定義変更
通信に影響なし
サーバ
クライアント
図 5:稼動状態での保守/構成変更
以後の章では、これら高信頼機能の中で、特徴的な『基本制御部二重化』と『動的バージ
ョンアップ機能』について詳細に説明して行きます。
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3. 基本制御部二重化について
3.1 切替動作とエンドエンド通信への影響
基本制御部二重化アーキテクチャの説明に入る前に、スイッチの基本制御部(現用系)
に障害が発生した場合の切替動作とエンドエンド通信に与える影響を解説します。
基本制御部(現用系)に障害が発生するとスイッチは以下の動作(図 6 参照)を行いま
す。この時、エンドエンド通信が復旧するには、①障害検出+②予備系切替+③通信テー
ブル作成の合計時間が必要になる点に注意してください。
①障害検出………………障害が発生したことを検出します。
②予備系切替……………基本制御部を現用系から予備系に切換えます。
③通信テーブル作成……RIP/ARP/STP(スパニングツリー)などのエンドエンド
通信に必要な通信テーブルを作成します※1。
通信状態
切替動作
正常稼動
③通信テーブル完成
正常通信
障害発生
①障害検出
通信断
②予備系切替
基
基
本
本
制
制
御
御
部
部
現用
予備
①障害検出
③通信テーブル完成
正常稼動
障害発生
②予備系切替
(予備→現用)
正常通信
図 6:切替制御とエンドエンド通信の関係
※1:通信テーブルを作成する方式には、予備系切替後、新たに作成する方式と、事前に(現用系と同
様に)予備系でも作成しておく方式の 2 種類があります。前者の場合、新たな通信テーブルが作
成されるまでエンドエンド通信を行うことができません(後者の場合、切替後、瞬時に通信が復
旧します)
。
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エンドシステム側は、通信路障害への対応として、通常、情報の到達確認・再送制御を
行っています。このため、通信断時間(①+②+③)が、エンドシステムの再送制御時間
内に納まれば、スイッチ障害時にもエンドエンド通信が切断されることはありません(エ
ンドシステム利用者からはレスポンス低下に見えるのみ。再送制御時間を超えると、セシ
ョン断となります)
。この再送制御時間は、エンドシステムが使用するプロトコル/アプ
リケーションにより異なります。
現在の情報システムに最も広く使われている TCP/IP アプリケーションの場合、多くは
数分程度の再送制御時間を持っていますが、10∼20 秒の待ち時間が発生するとユーザ側
が障害と判断し、自発的に通信を切断してしまうケースがほとんどになります。そのため、
TCP/IP 通信においても 10 秒以下の二重化切替が要求されます。また、FNA/SNA など
のホスト系プロトコルを使用している場合は、再送制御時間が一般的に 7∼8 秒であるこ
とから、セション断を防ぐためには、数秒での二重化切替が要求されます。
これらの要求を満たすため、SR8800 では、障害検出にハードウェア検出方式を、予備
系切替/通信テーブル作成に現用予備同期方式を採用し、通信断時間を 3 秒以内に押え込
むことに成功しました。なお、ハードウェア検出方式、現用予備同期方式の詳細について
は、
「3.2 章 二重化切替方式」を、SR8800 の二重化アーキテクチャの詳細については、
「3.3 章 SR8800 基本制御部二重化アーキテクチャ」をご参照下さい。
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3.2 二重化切替方式
SR8800 基本制御部二重化アーキテクチャの解説に先立って、一般的な二重化アーキテ
クチャについて①障害検出 ②予備系切替 ③通信テーブル作成 という流れに沿って、解
説して行きます。
(1) 障害検出方法
障害検出は、通信に支障をきたすような問題が発生した時、二重化切替動作のきっかけと
なります。方式としては、通常以下の 2 方式が用いられています。
・ハードウェア検出方式
・ハートビート方式
①ハードウェア検出方式
ハードウェア検出方式は、基本制御部上に配置された各回路からの障害通知や、中継パ
ケットの異常を監視することによって障害を検出します。
②ハートビート方式
ハートビート方式は、二重化した基本制御部間(以下、現用系/予備系)で相互監視を
行うことにより、障害を検出します。現用系/予備系が、互いに自身の状態を通知し合い、
通知が一定回数もしくは一定時間連続して異常あるいは無応答時に相手側の異常を検出
することになります。
本方式にて検出時間を早めるためには、通知のサイクルを短くする必要がありますが、
短くし過ぎると、スイッチの資源(CPU/バスなど)への負荷が高くなってしまいます。
そのため、通常は通知サイクルが数秒程度、異常検出回数が 3∼5 回程度となっており、
障害発生から異常検出までに、数秒∼十数秒の時間が必要となってしまいます。
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(2) 予備系切替と通信テーブル作成方法
予備系切替および通信テーブル作成に関する方式として、通常は以下の 3 方式のいずれか
が用いられています。
・予備系再起動方式
・内部ホットスタンバイ方式
・現用予備同期方式
①予備系再起動方式
現用系障害検出時に、予備系を新規に立ち上げ直す方式です。本方式では、予備系
立ち上げ完了後から通信テーブルの作成を行うため、障害検出からエンドエンド通信
の復旧までにかかる時間は、予備系立ち上げ時間(再起動時間)と通信テーブル作成
時間の合計時間が必要になります。
・予備系立ち上げ時間(再起動時間)……… 通常 1 分程度
・通信テーブル作成時間……………………… 作成テーブル種別に依存しますが、
最大数分の時間が必要となります。
②切替発生
現
予
用
備
系
系
①
③
①障害発生
②現用系→予備系に切替
③現用系から予備系に切替
時に再起動となる
装置の再起動時間+通信テ
ーブル作成時間で数分の通
信断が発生してしまう。
この方式は、現用系・予備系の基本制御部で各種テーブルを一致させる必要がなく、
実装が容易なため、多くのベンダで採用されています(製品カタログに CPU 二重化
の記載があったとしても、本方式の場合はエンドエンド通信の復旧に数分かかるため
注意が必要です)
。
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②内部ホットスタンバイ方式
現用系/予備系が全く独立に動作し、障害検出後は予備系(または現用系)単独の動
作となる切替方式です(一般的に使用されるホットスタンバイ機能をそのまま適用した
方式です)
。
本方式では、筐体は 1 つとなりますが、現用系と予備系でホットスタンバイ構成を取
らねばならないため、現用系/予備系、双方の基本制御部を個別に設定しなければなり
ません(IP アドレスも現用系/予備系のそれぞれに異なるものが必要になります)
。ま
た、障害検出にハートビート方式を取らざるを得ないため、エンドエンド通信の復旧に
は 10 秒程度必要となってしまいます。
③切替発生
現
予
用
備
系
系
①障害発生
②現用系と予備系間のハート
ビート断
③現用系→予備系に切替
ホットスタンバイ機能を利用
した切替のため、設定が複雑で
あり、障害検出までに 10 秒程
度の時間がかかってしまう。
①
②ハートビート断
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③現用予備同期方式
現用系/予備系が各種通信テーブルの同期をとることにより、現用/予備の切替後も
各種通信テーブルの再学習なしで、短時間にエンドエンド通信が復旧する切替方式です。
この方式は、ホスト(GS, M シリーズ), SURE SYSTEM などの高価なシステムにお
いて適用されていますが、実装が容易ではなく、比較的高価なシステムとなるため、LAN
機器に採用しているベンダはほとんどない状態です。
同期
③通信テーブル完成
③通信テーブル完成
現
予
用
備
系
系
①
①障害発生
②現用系→予備系に切替
障害検出から切替動作までの時
間のみで切替を行うことができ
ます。しかし、この方式は、実装
が容易でないため採用ベンダが
ほとんどありません。
②切替発生
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3.3 SR8800 基本制御部二重化アーキテクチャ
SR8800 は、障害検出方式としてハードウェア検出方式、予備系切替と通信テーブル作成
方式として現用予備同期方式を採用し、短時間(3 秒以内)でのエンドエンド通信の復旧を
実現しています。以下にその詳細について解説して行きます。
(1) ハードウェアの障害検出
SR8800 は、制御 CPU と通信 CPU の 2CPU 構成となっており、基本制御部(以下 MCU)
内で障害※1 が発生した場合には、制御 CPU に障害情報が通知されます。この通知によっ
て、制御 CPU は PIU へ MCU 切替指示を送ります。PIU は周辺 I/O 制御部(Peripheral
Interface Unit)の略であり、現用および予備系 MCU の決定などを行っています。
① 各回路から通知される障害検出
MCU
メモリ
制御系回路
アクセス
制御
通信系回路
メモリ
制御
CPU
アクセス
制御
メモリ
アクセス
制御
メモリ
通信
CPU
共有
メモリ
アクセス
制御
メモリ
割込制御
アクセス
制御
アクセス
制御
アクセス制御
メモリ
クロス
ポイント
スイッチ部
PIU へ
各 I/F モジュールへ
MCU 内のすべての回路における障害の検出が
可能であり、MCU 切替が必要な場合、PIU へ
の切替指示が行われます。
なお、制御 CPU 自体が障害となった場合も
PIU への切替指示が行われます。
MCU:基本制御部
:周辺 I/O 制御部
PIU(Peripheral Interface Unit)
I/F モジュール:インターフェースモジュール
図 7:MCU の概念図
※1:メモリについても、ECC チェックまたはパリティチェックによって障害検出を行っています。
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② 中継パケットによる障害検出
装置の物理インターフェースから受信した、中継パケットの異常を監視することにより、
中継パケットが通過した回路および伝送路の障害を瞬時(数 10μ∼100μ秒)に検出しま
す。
MCU
通信
CPU
制御
CPU
クロスポイント
スイッチ部
中継パケットの異常を常に監視し、
障害検出後、制御 CPU へ通知します
I/F モジュール
キュー管理部
(受信側)
キュー管理部
(送信側)
フィルタリング処理などを
行うために CAM を使用します
CAM
ルーティング
エンジン
フレーム書換
フィルタリング処理部
CAM
中継パケットの経路
経路検索のために
CAM を使用します
Interface
Interface
MCU:基本制御部
I/F モジュール:インターフェースモジュール
:高速検索可能なメモリで、経路情報およびフィルタリング情報が格納されます。
CAM(Content Addressable Memory)
図 8:伝送路障害監視
⇒ ハードウェア中継に関する詳細な説明については、付録①ハードウェアルーティング機能解説の項目
に記載しています。
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③ ヘルスパケットによる障害検出
②による障害検出は、中継パケットがある場合の検出方法ですが、SR8800 は、中継パケ
ットがない時にも、伝送路に対してヘルスチェックパケットを定期的(5 秒間隔)に送信す
ることにより、回路および伝送路の障害を検出します。
MCU
通信
CPU
制御
CPU
クロスポイント
スイッチ部
ヘルスパケットを送信する指示を
制御 CPU から行います。
I/F モジュール
受信
キュー管理部
ヘルスパケットが正しく中継された
かどうか定期的に調査します。
送信
キュー管理部
フィルタリング処理などを
行うために CAM を使用します
CAM
ルーティング
エンジン
フレーム書換
フィルタリング処理部
CAM
ヘルスパケットの経路
経路検索のために
CAM を使用します
Interface
Interface
図 9:ヘルスパケットによる監視
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(2) 予備系基本制御部の動作と監視
SR8800 は、予備系においても現用系と同様に活性状態で運用を行うことにより、障害検
出後瞬時の切替を可能としています(予備系の立ち上げ時間が不要です)。また、SR8800
は、予備系異常による切替失敗を防ぐため、現用系から予備系に対して定期的(3 秒間隔)
に監視を行っており、予備系異常検出時には、予備系再起動あるいは予備系異常の外部通
知を行います。
SR8800
現用系 MCU
予備系 MCU
PIU
通信
CPU
通信
CPU
クロスポイント
スイッチ部
制御
CPU
現用系 MCU から予備系 MCU
に対し定期的(3 秒間隔)に監
視を行い、予備系異常による切
替失敗を防止しています。
クロスポイント
スイッチ部
制御
CPU
MCU 間監視経路
図 10:基本制御部間の監視
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(3) 各種通信テーブルの装置内 2 重化
SR8800 は、予備系も活性状態で運用を行っています。伝送路からの情報(RIP, STP な
ど)を予備系でも受信し、エンドエンド通信に必要な通信テーブルを(予備系においても)
作成しています。そのため、現用系から予備系への切替が発生した場合、予備系内の通信
テーブル情報をそのまま利用して、瞬時にエンドエンド通信が可能となります(切替後の
通信テーブル作成時間が不要です)
。
以下にその仕組みを解説します。
①現用系および予備系の基本制御部が正常状態の時
RIP や STP(スパニングツリー)などの制御フレームは、受信した I/F モジュールから常
に 2 つの MCU(基本制御部)に送信される※1 ため、双方の通信 CPU において同等の通信
テーブルが作成されます。
RIP や STP の情報を外部に出力する際は、PIU が各 I/F モジュールにどちらが現用系の
MCU かを通知しているため、I/F モジュール側で現用系 MCU が作成した情報のみを出力
するように制御しています。
※1:ここでは説明を簡単にするため、制御フレームの装置内中継経路を一部省略して記載しております。
正確な経路につきましては、付録①をご参照下さい。
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各 MCU では、STP や RIP の情報は、I/F から常に受信して
いるため、定常状態において 2 つのテーブルは一致します。
RIP
RIP
gateway
Destination
192.168.1.0
192.168.1.1
192.168.2.0
192.168.2.1
: STP
:
状態
port
1
2
:
一致
gateway
Destination
192.168.1.0
192.168.1.1
192.168.2.0
192.168.2.1
: STP
:
状態
port
Forwarding
Blocking
:
1
2
:
Forwarding
Blocking
:
SR8800
MCU(現用系)
MCU(予備系)
PIU
通信
CPU
通信
CPU
クロスポイント
スイッチ部
クロスポイント
スイッチ部
制御
CPU
STP や RIP は、制御
CPU に通知され、通
信用 CPU でテーブ
ルが生成されます
制御
CPU
モジュール
I/F
モジュール
I/F
モジュール
I/F
I/F
モジュール
I/Fモジュール
CAM※1
中継
ファブリック
※2
RIP,STP パケット
図 11:二重化切替(その 1)
※1:CAM(Content Addressable Memory)は、高速検索可能なメモリで、経路情報およびフィルタリン
グ情報が格納されます。
※2:各 I/F モジュールに存在するパケット中継のための回路構造をまとめて表記したもの。
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②基本制御部の切替が発生した場合
現用系 MCU の障害検出により、MCU の切替が発生した場合、以下の手順で高速に切り
替わります。
1. 予備系 MCU が、新たに現用系 MCU として動作します。
2. PIU は、MCU と I/F モジュールに予備系だった MCU が新たに現用系 MCU として
動作する旨を通知します。
3. 新たに現用系 MCU となった制御 CPU が通信 CPU にある STP や RIP などの状態を
各 I/F モジュールにある CAM に通知します。
4. 障害が検出された MCU を再起動することにより、MCU の切替が完了します。
RIP
gateway
Destination
192.168.1.0
192.168.1.1
192.168.2.0
192.168.2.1
: STP
:
状態
port
1
2
:
Forwarding
Blocking
:
SR8800
MCU
(現用系→予備系)
障害が発生し、現用
系をやめると同時に
再起動を行い、予備
系として動作しま
す。
通信
CPU
MCU
(予備系→現用系)
PIU
障害
クロスポイント
通信
CPU
クロスポイント
スイッチ部
スイッチ部
制御
CPU
制御
CPU
モジュール
I/F
モジュール
I/F
モジュール
I/F
I/F
モジュール
I/Fモジュール
CAM
各 I/F モジュールは、高速中継の
ため、CAM 上に各種通信テーブ
ル情報を保持しています。
PIU に よ り 新 し い
MCU が現用系とな
ったことを通知しま
す。
中継
ファブリック
新たに現用系となった MCU は、
CAM に対して自身が保持する各種
通信テーブル情報を通知します。
図 12:二重化切替(その 2)
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4. 稼働状態での保守/構成変更
SR8800 は、I/F モジュール拡張時およびソフトウェア・バージョンアップ時にもシス
テム全体を止めることなく変更作業が可能です(I/F モジュールの活性挿抜/動的定義変
更/動的バージョンアップ機能)
。以下に、保守/構成変更に関する機能の中で特徴的な
動的バージョンアップ機能について解説していきます。
(1) 実現のためのアーキテクチャ
動的バージョンアップ機能は、以下のハードウェア構成条件により実現します。
・基本制御部二重化
・二面のソフトウェアバンク
I/F モジュールの
活性挿抜
V02
V01
動的バージョンアップ
動的定義変更
通信に影響なし
サーバ
クライアント
図 13:稼働状態での保守/構成変更
19
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(2) 動的バージョンアップ機能
動的バージョンアップ機能とは、活性状態においてソフトウェアのバージョンアップを行
う機能のことです。この機能により、システム全体の通信不可状態を最小限に押さえると
共に、新たな機能の追加を行うことができます。以下、①∼⑤に動的バージョンアップの
流れを解説して行きます。
①ソフトウェアの更新前の状態であり、MCU#1(現用系)と MCU#2(予備系)の両方と
も正常な状態です。
SR8800
MCU#1(現用)
MCU#2(予備)
基本ソフト
V1
基本ソフト
V1
構成定義#1
構成定義#2
②MCU#2(予備系)に基本ソフト V2 をインストールし、MCU#2(予備系)のみ再起動さ
せます※1。この時、通信は、MCU#1(現用系)が行うため、SR8800 自体は中継可能な
状態になっています。
SR8800
MCU#1(現用)
バージョンアップ
MCU#2(予備)
基本ソフト
V1
基本ソフト
V2
構成定義#1
構成定義#2
V01
V02
※1:この段階で何らかのトラブルが発生した場合、SR8800 は、動的バージョンアップを中断し、MCU#1
(現用系:基本ソフト V1)での運用を続行します。
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③MCU#2(予備系)が正常に起動した後、中継動作を行うために必要な各種テーブル情報
を 5 分間学習します。この時、通信は、MCU#1(現用系)が行うため、SR8800 自身は
中継可能な状態になっています。
SR8800
各種テーブル作成済
MCU#1(現用)
MCU#2(予備)
基本ソフト
V1
基本ソフト
V2
構成定義#1
構成定義#2
各種テーブル作成中
④5 分後に MCU#1 を再起動することにより、現用系と予備系が切り替わります。この時、
通信は、新たに現用系となった MCU#2 の各種テーブルを用いて行います。
SR8800
再起動により現
用系→予備系に
変化する。
MCU#1(再起動)
MCU#2(現用)
基本ソフト
V1
基本ソフト
V2
構成定義#1
構成定義#2
再起動により予
備系→現用系に
変化する。
⑤MCU#1(予備系)に基本ソフト V2 をインストールし、MCU#1 のみ再起動させること
により、動的バージョンアップは完了します。この時、通信は、MCU#2(現用系)が行
うため、SR8800 自体は中継可能な状態になっています。
バージョンアップ
SR8800
MCU#1(予備)
V01
V02
MCU#2(現用)
基本ソフト
V2
基本ソフト
V2
構成定義#1
構成定義#2
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5. まとめ
SR8800 を導入することにより、本冊子で解説してきた、さまざまな機能(電源部・基本
制御部二重化/マルチリンクイーサ機能/ホットスタンバイ機能など)が利用可能となり、
信頼性の高いバックボーン LAN を構築することができます。また、稼動状態での保守/構
成変更も可能なため、重要な業務を中断することなくネットワークの拡張が行えます。
このように優れた機能を持つ SR8800 は、高速・高信頼ネットワークを実現するコアスイ
ッチとして、バックボーン LAN に対するベスト・ソリューションをご提供します。
スイッチングルータ
ルータ
バックボーン
レイヤ 3 スイッチ
SR8800
スイッチングハブ
サーバ
ファーム
図 14:高信頼ネットワーク・ソリューション
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付録
① ハードウェアルーティング機能解説
SR8800 のハードウェアルーティングは、中継パケット(SR8800 が中継すべきパケット)
と制御パケット(SR8800 自身が受信するパケット)で中継経路が異なります。以下に各パ
ケットの中継経路を解説して行きます。
Interface(受信側)で受信した中継パケットは、ルーティングエンジン→受信キュー管
理部(受信側 QoS 制御)→クロスポイントスイッチ部(現用系 MCU)→送信キュー管理
部→送信側 QoS 制御部→フレーム書換/フィルタリング処理部→Interface(送信側)の順
に送られて出力されることになります。この時、中継パケットは、予備系 MCU には送られ
ません。
MCU(現用系)
PIU
通信
CPU
MCU(予備系)
通信
CPU
クロスポイント
制御
CPU
クロスポイント
スイッチ部
制御
CPU
スイッチ部
I/F モジュール
送信
キュー管理部
QoS 制御
送信側での QoS 処理
が行われる※2
受信
キュー管理部
送信側 QoS 制御部
CAM
CAM
CAM
※1
ルーティング
エンジン
フレーム書換
フィルタリング
処理部
CAM
CAM
CAM
※1
MAC ヘッダ更新,
出力フィルタリングなど
フレーム識別,経路検索,
入力フィルタリング
Interface
(受信側)
Interface
(送信側)
中継パケット経路
図 15:中継パケットの経路
※1:CAM(Content Addressable Memory)は、高速検索可能なメモリで、経路情報およびフィルタリン
グ情報が格納されます。
※2:送信側 QoS 制御部が搭載されていない I/F モジュールも存在します。
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次に、制御パケットの経路について説明します。RIP や STP(スパニングツリー)など
の制御パケットは、中継パケットと同様に一度クロスポイントスイッチ部に送られた後、
特定の I/F モジュール上にある CPU 送信処理部に集約され、そこから 2 つの通信 CPU へ
と送られます。このため、定常状態では、両方の MCU に同じ通信テーブルが作成されるこ
とになります。
MCU(現用系)
PIU
通信
CPU
MCU(予備系)
通信
CPU
クロスポイント
制御
CPU
クロスポイント
スイッチ部
制御
CPU
スイッチ部
I/F モジュール
送信キュー管理
QoS 制御
受信キュー管理
送信側 QoS 制御部
CAM
CAM
CAM
ルーティング
エンジン
CPU 送信処理部
フレーム書換
フィルタリング
処理部
フレーム識別,経路検索,
入力フィルタリング
Interface
(受信側)
Interface
(送信側)
CAM
CAM
CAM
MAC ヘッダ更新,
出力フィルタリングなど
制御パケット経路
図 16:制御パケットの経路
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② スペック表
ハード仕様
項目
概要
CPU
中継用
搭載メモリ量
CPU
制御用
搭載メモリ量
富士通製 Sparc-cpu(MB86834:外部 33MHz、内部 133MHz)
SDRAM:64Mbyte
富士通製 Sparc-cpu(MB86834:外部 33MHz、内部 133MHz)
SDRAM:32Mbyte
中継性能
2400 万 PPS(IP Routing/Bridge)
バッファ量
1Giga port : 256Kbyte/1port
100Mport : 256Kbyte/8port
スロット数
PIU×1
MCU×2
I/F モジュール スロット×8
インターフェース種別
サポートインタフェース
と最大接続数
IEEE802.3u:10/100BASE-TX
IEEE802.3z:1000BASE-SX
IEEE802.3z:1000BASE-LX
最大接続数
×16
×2 or 6
×2 or 6
128
48
48
ソフト仕様
ルーティング
IP
ハードウェアルーティング,マルチキャストルーティング,
RIP1, RIP2, OSPF, スタティックルーティング,
IP フィルタ, RIP フィルタ, OSPF ASE フィルタ
IPX
RIP, SAP, スタティックルーティング,
IPX フィルタ, RIP フィルタ, SAP フィルタ
Apple
Talk
RTMP, ZIP, AEP, NBP, ATP,
DDP, AARP, スタティックルーティング,
AppleTalk フィルタリング
中継機能
管理機能
高信頼性機能
保守機能
スイッチング
アドレス学習機能, スパニングツリー機能, MAC フィルタ
その他
マルチリンクイーサ機能, VLAN 機能, QoS 機能
SNMP エージェント機能 (MIB-II, 拡張 MIB, RMON)
基本制御部二重化, 電源二重化,
ホットスタンバイ機能, マルチリンクイーサ機能による冗長構成
無停電電源装置の作動通知機能, 動的バージョンアップ,
I/F モジュールの活性挿抜, リモートメンテナンス, 動的定義変更,
ポートモニタリング機能, フレームトレース機能
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設置緒元
フロアスタンドタイプ
項目
外形寸法 (幅×奥行×高さ)
重量
入力電源
相数
定格電圧
周波数
コンセント形状
消費電力
排気量
発熱量
騒音
温度条件
動作時
休止時
湿度条件
動作時
休止時
諸元
483 × 675 × 700 (mm)
130 kg(最大)
単相
AC 100V ∼ 120V ±10%
50/60 Hz +2%∼−4%
平行 2P アース付
1080 W(最大)
5.7 m3 /min
3890KJ/h(最大)
50 dB 以下
+5 ∼ +40℃
+0 ∼ +50℃
20 ∼ 80%RH
8 ∼ 80%RH
ラックマウントタイプ
項目
外形寸法 (幅×奥行×高さ)
重量
入力電源
相数
定格電圧
周波数
コンセント形状
消費電力
排気量
発熱量
騒音
温度条件
動作時
休止時
湿度条件
動作時
休止時
諸元
430×675×708(mm)
(ラック取付け用突起部を含む場合は
483×675×708(mm))
120 kg(最大)
単相
AC 100V ∼ 120V ±10%
50/60 Hz +2%∼−4%
平行 2P アース付
1080 W(最大)
5.7 m3 /min
3890KJ/h(最大)
50 dB 以下
+5 ∼ +40℃
+0 ∼ +50℃
20 ∼ 80%RH
8 ∼ 80%RH
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