Title 隠岐の植物 (一) Author(s) 岡, 国夫 Citation 北陸の植物 = The Hokuriku journal of botany, 16(2): 52-55 Issue Date 1968-05-15 Type Journal Article Text version publisher URL http://hdl.handle.net/2297/44716 Right *KURAに登録されているコンテンツの著作権は,執筆者,出版社(学協会)などが有します。 *KURAに登録されているコンテンツの利用については,著作権法に規定されている私的使用や引用などの範囲内で行ってください。 *著作権法に規定されている私的使用や引用などの範囲を超える利用を行う場合には,著作権者の許諾を得てください。ただし,著作権者 から著作権等管理事業者(学術著作権協会,日本著作出版権管理システムなど)に権利委託されているコンテンツの利用手続については ,各著作権等管理事業者に確認してください。 http://dspace.lib.kanazawa-u.ac.jp/dspace/ 北陸の植物 第16巻第2号 昭和4奔5月 ことが強調されて来たが,オオイワカガミ型モミ林では,群落的にもこのことが端的に表 現されている。隠岐の植物相の現状は,スダジイ群団∼ブナ群団の高度分布のひろがりが 圧縮された形であるという見方もでき,これを理解するには,現在の気象条件,海流のこ とだけでなく,この群島成立についての地史(海進か,沈降か,またその時期)について の情報を手に入れることが必要なように思われる。 モミの大きい個体としては,布施村鶯ケ峯の天然林で胸高直径120cmのものを観察した が,このような老木にはナゴラン,フウラン,セキコクなどのラン科植物がしばしば着生 する。このラン類が濫獲されて港の店頭にならべられている。このため山中のものは絶滅 のおそれがあるので,モミの天然林を充分保護する必要がある。 隠岐のモミ林調査の機会をあたえられた東大農学部倉田悟教授に謝意を表する。 (2)サクラ属PrUmlls 隠岐群島に野生するサクラ属のうち明瞭なものは次の6種’品種がある。 B,z"""s力g"""var."""""(MAK.)OHwIエドヒガン Rjmwasαだz"'"SIEB.exKoIDz.ヤマザクラ Rs"'gg趣〃RFwnERエゾヤマザクラ Rs"ge""f."bes""s(TATEw.)OHwIケエゾヤマザクラ 及び"""""(KoIDz.)KoEHNEカスミザクラ Rssioj'jFR.ScHMIDTシウリザクラ R6""ge"α"αMIQuELイヌザクラ 以上のうち,ヤマザクラ,エゾヤマザクラ,カスミザクラは従来知られ,また実際各島 に広く産する。 −54− May The Journal of Geobotany 1968 Vol. XVI. No. 2 エドヒガンとイヌザクラは大溝寺山の有木(アラキ〉側の渓測で採った。ケエゾヤマザク ラは西島の焼火山 (タクヒサン)下部で採ったが, これは中国地方で は三瓶山(丸山巌 前出)にもある。 シウリザクラは布施村鷲ケ峯の頂上に近い海抜約 5 00m の林中に少数混生している。大 きいもので直径 10cm 程度である。本種は元来,本州中部,日光山索以北,北海道,千島 ,満州,ウスリ ー (大井:日本植物誌)に分布することになっていたもので,著しい北方 系の績物を更に加えたととになる。 総状花序をなすウワミズザクラ亜属のうち,常緑の2種を除き,中園地方としては,ウ 、 ワミズザクラ, シウリザ クラ, イヌザクラの3種となる。 乙のうち,ウワミズザクラは日 本列島に広く,かつ多量に産しながら隠岐には従来全く記録がなく,筆者も一本も見出し 得なかった。これに対し,中国地方の本土には見られない北方系または大陸系のシウリザ クラの方を隠岐に産することは注目すべきで, これはやはり, 乙の群島成立の歴史とウワ ミズザクラ亜属の系統との関連において考究すべき今後の課題であろう。 - 55 -
© Copyright 2024 ExpyDoc