モタさんの人生80%主義

平成28年3月15日 第74号
ひとから真に求められる『心のケア』を考えます
74
発行 : ベトレヘムの園病院 隔月15日発行 編集 : 広報委員会
住所 : 東京都清瀬市梅園三丁目14番72号 ☎042⊖491⊖2525 URL: http://www.betohp.com
『モタさんの人生80%主義』
No.
院長 青木 信彦
「世の中に 100%なんてない
モタさんのご両親はともに激しい気性の持ち主で、
のです。80%位で満足しなけ
「茂吉・輝子夫妻の不仲」は有名な話です。親の夫婦
りゃね」
こう、モタさんに言われると、
「なるほど!」と、納得します。
斎藤モタさんは本当はシゲタ
(茂太)なのですが、父親があ
のアララギ派の歌人・斎藤茂吉(モキチ)ということ
もあって、モタさんで通っています。
今年は亡くなって 10 年となりますが、今でも注目
されています。
最近の新聞でも、一面全体に「モタさんの楽ラク人
ケンカで苦労されたモタさんの言葉には実感がこもっ
ています。
モタさんの言葉は家族や友人同士、職場の人間関係
にも当てはまるように思います。
私の好きな言葉:
●「君は君 我は我なり されど仲よき」武者小路
実篤、
●「君子の交わりは 淡きこと 水の如し」荘子(古
代中国の思想家)
などと相通じるものがあります。
生」なんていう広告も出ていました。
モタさんは精神科医で、長年、府中市内の精神科病
院の院長をしていました。
そして、ご自身は当時の都立府中病院に何度か入院
して、最後はその病院で亡くなりました。
モタさんの弟は斎藤宗吉という名前ですが、ペン
ネームは北杜夫です。
北杜夫が「どくとるマンボウ航海記」でデビューし
たのは 1960 年です。
わたしはその病院に長く勤務していて、年令はずっ
私もこの小説に刺激を受けて、西アフリカ航路の船
と下なのですがモタさんとは「はとこ」同士でしたの
医になってアフリカの国々を訪れたのを思い出しま
で親しく話もしていました。
す。もうあれから 40 年です。
私たち俗人は家庭でも、職場でも、なにかに悩みな
がら生きています。
そして「どうして自分ばかりうまくいかないのだろ
う」
、
「大切な人生を無駄にしているのではないか」な
北杜夫さんの代表作は「楡家の人々」で、この小説
の舞台は彼の実家、青山脳病院です。かなりの長編で、
読むのは大変ですが、原本を何冊か持っていますので
希望の方にはお貸しします。
どと、焦ったり、落ちこんだりします。
こんな時、モタさんは自信を持って答えています。
モタさんの「表情、しゃべり方、味わい深い言葉」
はだれにも安心感を与えてくれるのです。
●「あのねぇ、5年も6年も先のことを考えちゃだ
めですよ。その日をうまく、頑張って生きれば、
それがその人の人生になるんです。」
●人付き合いの心得は、
「つかず、離れず、干渉せず」、
夫婦円満のコツもこれですよ。
北杜夫さんご夫婦と一緒に(モタさんの一周忌にて)
平成28年3月15日 第74号
日本カトリック医療施設職員研修報告
―
「小さな人々の声を聞き取る」
―
山口 博美(薬剤科)
金沢は、やっぱり雪。寒い外と反するように、聖粒会慈恵
慈恵病院では「こうのとりのゆりかご」のみならず、ドイツ
病院院長、蓮田先生の「こうのとりのゆりかご」についての
と同様の妊娠葛藤相談も行い、危険な自宅出産を防ぎ、授
熱のこもった講演が始まりました。
かった命を大切にする取り組みを行っています。テレビ放
TBSで放送されたドラマやNHKのクローズアップ現代を
映の事もあり、今年の相談件数は5,000件を超える勢いに
以前聞き、
さらに知りたいと思った事で今回の金沢行きとな
なっているそうです。こう言った取り組みを通じて、赤ちゃ
りました。
んをやはり自分で育てる事になった事例が235件、特別養
この事業のきっかけは、先生が2004年にドイツの赤ちゃ
子縁組となった事例が190件、乳児院に一時的に預ける事
んポスト「ベビークラッペ」
を視察された事だったそうです。
になった事例が28件、計453人の赤ちゃんの命を救うこと
ドイツでは70か所に同様の施設が設置され、預けられた赤
ができたそうです。現在特別養子縁組希望登録は1,000
ちゃんについて、8週間公共手段を使い母親を探し連絡が
件をはるかに超えているとの事で、未来の赤ちゃん達の大
無い時は新しい家族に養子に出されるそうです。他にも妊
きな力となっていると感じました。
娠葛藤相談、匿名出産といった母子を守る施策があるそう
です。
「一人でも多くの赤ちゃんを救いたい、お母さんの力にな
りたい」
という熱い思いを胸に、育児放棄を助長する等の批
帰国して間もなく、熊本で新生児が捨てられ亡くなるとい
評を覚悟で行動された慈恵病院の試みは、最近の子供達
う事件が起き、又数多くの児童虐待報道を聞くうちに、やり
の痛ましいニュース聞くにつけ、小さな波紋がゆっくり大き
場のない怒りが沸いた先生は、マザーテレサの「愛の反対
な波のように広がって行くきっかけなのではと感じます。ち
は無関心である!」
という言葉を思い出し、「日本版ベビー
なみに、この赤ちゃんを救うポストは、すでに欧米・アメリ
クラッペを作ろう!」
と思い立ったそうです。多くの不安と賛
カ・インド・フィリピン・韓国・台湾・中国・南アフリカ
否両論の意見の中、まずは始める事こそが大切と行動を起
等多くの国に多数設置され運営されているとの事です。
こされた先生に感動しました。
日本カトリック医療施設協会の研修に参加して
大和 理恵(医療相談室)
研修一日目後半は、「各施設のスピリチュアルケアの実
でグループワークをしました。カトリックの病院であっても
際を学ぶ」
ということで聖霊病院・聖テレジア病院・光が
パストラルケア部がなく、ニーズはあるが現場職員がどのよ
丘スペルマン病院・ガラシア病院・聖母病院5つの病院
うに実践していけばよいか。キリスト教信者に限らず他の
の発表でした。
宗教の方もお別れ会を実践している様子の紹介。スピリ
シスターが中心にパストラルケア部として活躍されてい
チュアルケアをどのように一般職員に浸透させていくか、ま
る病院から、一般職員がスピリチュアルケアを学び、周辺同
た継続していくか。など活発に意見交換することができま
法人施設で組織化し実践している病院まで様々でした。活
した。
動内容は、病院の種別などによって変わりますが、主に入院
最後に、100周年を迎え新しい病棟に建て替えた金沢
患者さんへの訪問、ホスピスを含めターミナル期の方への
聖霊総合病院を見学し、1931年に建築家マックス・ヒン
寄り添い、
お別れの会(死産や流産を含)、
遺族会などでした。
デルによって建てられた金沢聖霊修道院聖堂でミサに授か
どの病院もパストラルケア部等の組織だけが動くのでは
りました。ミサの後、キリシタン大名で名高い「高山右近」
なく、患者・家族の声・現場職員からの発信や気づきが、
の使用していた懐中・短剣・お箸など県立美術館から譲
スピリチュアルケアに繋がることを実感しました。また職員
り受けた貴重な品々を拝見することができました。
向けに月一回ミサを行っている病院もあり職員への啓発活
動も話題に上りました。当院でもパストラルケアのシスター
方に支えられている現状ではあります。これからは、普段か
ら意識的に患者・家族の声を傾聴しパストラル始め、多職
種と共有していくことが大切であると感じました。発表の中
で
「人間は死んだら終わりではなく、
そこから始まることがあ
る。人間(遺族)の体の中に生きづいているのだ」
と話され
ていたSrの言葉が自分の中でしっかり受け止めることがで
きました。
二日目は前日の発表を受けて、感じたことなどを少人数
平成28年3月15日 第74号
腰痛予防講座
今日から貴方も腰痛予防に向けてスタート!
「家で手軽に出来る腰痛予防運動」
山本 章
(ベトレヘムの園病院 理学療法士)
参加者の皆様と共に 3 つのテーマで学ぶ
日常生活の中で腰痛を予防
2016 年 2 月 10 日 ( 水 ) 当院会議室で「腰痛予防
講座 今日から貴方も腰痛予防に向けてスタート ! 家で
手軽に出来る腰痛予防運動」と題した公開健康講座を
致しました。当日は、入院患者様御家族、当院の外来
患者様、当職員と総勢 10 名で約 1 時間半楽しい雰囲
気で繰り広げられました。
参加者の殆どが過去に腰痛経験あり、若しくは現在
も腰痛を抱えている方々で腰痛に対し非常に関心の強
い方ばかりでした。参加者の皆様が共通して思ってい
たことは、“腰痛とさよならをしたい”ということで、そ
れに基づき 3 つのテーマで話させていただきました。
日常生活の中で気をつけていただくだけで腰痛を予
防できます。それは、①同じ姿勢を長時間続けない。
②背筋を真直ぐ伸ばす。③急に腰を動かさない。④前
かがみや中腰は避ける。⑤ストレスを発散させる。⑥
バランスの取れた食事を摂る。⑦散歩や運動を行う。
⑧腰を冷やさない。⑨頑張りすぎない。⑩睡眠や休息
を取る。⑪飲酒や喫煙は程ほどにする。⑫荷物の持ち
方に気をつける。( 同じ側ばかりに荷物は持たない ) ⑬
靴の種類に気をつける。( 踵の高い靴ではなくスニー
カーの使用 )
“腰痛”について知りましょう。
「腰の筋肉を伸ばす」「筋力・基礎体力・抵抗力を
つける」の側面の運動で腰痛を予防しましょう。「腰の
筋肉を伸ばす」際には、ゆっくりした動作で、痛気持ち
いいくらいの範囲で、呼吸を止めることなく、入浴後等
の腰が温まっている時に行ってみてください。また、腹
筋、背筋、お尻の筋肉、太股の筋力をつけることで腰
痛を予防しましょう。そして、散歩やサイクリング、水泳、
水中 Walking、ランニング等は基礎体力や抵抗力をつ
ける運動です。是非、身体を動かして筋力、体力、柔
軟性の身体機能を高めることで腰痛予防を目指してくだ
さい。
普段の生活のなかで腰痛を防ぎましょう。
運動を行って腰痛を防ぎましょう。
参加者の皆様それぞれに“腰痛”を知っていただき、
日常生活に予防や対策を取り入れていただきたいこと
をお願い致しました。
腰痛についての知識
腰痛で悩んでいる日本人は非常に多いです。90% の
方が一生に一度腰痛の経験をしています。2013 年厚
生労働省発表によると、腰痛患者の約 2,800 万人と
報告されました。また、年々増加にあるとも言われてい
ます。現在では、おそらく3,000 万人を超えているの
ではないかと予想します。
このように多くの腰痛で抱えて方々の 85% は原因が
特定できないもの、これには日常生活で腰に負担が来
る動作、不良姿勢、骨盤の傾き、ストレス、不安等と
心理的要因等が含まれています。皆様が良く聞く「椎
間板ヘルニア」「脊柱間狭窄症」等と疾患名がつくもの
は、僅か15% にしか及ばない現状です。
運動で腰痛を予防
今日から開始する腰痛予防対策
現在の自分自身の生活習慣や姿勢、動作を見直して
みましょう。そしてこの時代、ストレスゼロにすることは
難しいことですがストレスを貯めないものを見つけてみ
てください。更に御自身に合った継続できる運動を見つ
けトライすることで腰痛を予防していきましょう。さあ、
貴方も今日から腰痛予防に向けてスタートです!
平成28年3月15日 第74号
ひふの話
アトピー性皮膚炎 その3
ステロイド外用剤への誤解
その
27
市川 雅子(皮膚科医師)
「ステロイド ( 副腎皮質ホルモン剤 ) は恐い」
という噂がいま
だに流れているようですが、聞くと
「なんとなく恐い」
という
ことが多いのです。恐いから少量を一生懸命すりこんでいる
患者さんがなんと多いことか。前にお話ししたように、擦り
込むと逆効果です。巷でよく聞かれるステロイド外用剤への
誤解、その例を挙げましょう。
「ステロイドをつけると皮膚の色が黒くなる」
「ステロイド
を塗って日にあたるとシミになる」
、これはウソです。ステロ
イド外用剤が必要なくらいの皮膚の炎症があると、治った時
に一時的な炎症後の色素沈着がおこりますが、いずれ消えま
すし、ステロイドを塗ったところがシミになることはありま
せん。
「ステロイドを塗った時には日に当たってはいけない」
、
これは勘違いです。ステロイドを塗るような炎症があるとこ
ろは、日光で炎症が悪化しやすいためです。ステロイドその
ものが悪いわけではありません。日光が恐いのは以前に書い
た痛み止めの塗り薬や湿布のほうです。
「ステロイドを塗ると
一生やめられなくなる」
、これもウソです。やめられます。皮
膚科医は、新生児にも必要となればステロイド外用剤を使い
ますが、やめられなくなることはありません。そして、妊娠
中や授乳中でも、ステロイド外用剤は皮膚科医の指導のもと
で使うのならば、心配なく使えます。ステロイド外用剤が日
本で発売されて、50 年以上経っています。その使い方、副作
用について、皮膚科専門医であればよくわかっていますので、
心配なことがある時は、皮膚科専門医にお尋ね下さい。
(ステロイドの飲み薬の副作用は、塗り薬の副作用と違う
ところがありますので今回はふれませんでしたが、混同して
いる人も多数見られます)
ごあいさつ
豊島 治(カトリック秋津教会司祭)
ベトレヘムの園病院を利用される皆様、奉職して
くださる皆様。日ごろカトリックの精神をもっている
病院とのかかわりを続けてくださることに深く感謝
いたします。
昭和のはじめ、フロジャック神父さまが見つけ、心
にかけたこの土地はいまも人と人の絆を大切してい
る証しがあります。その安心感に憩う人が散歩道として歩かれたり、
または催しがあるときは参加者やボランティアとしてかかわりをもっ
ていくださる。時間の流れを早く感じ、また多忙をきわめる現代にお
いてはうらやましい場所です。
また、ただ病院は建物存在だけでなく、奉職されている方々が研修
や訓練など日々研鑽に励まれている姿。病院を利用される方々にど
う接するべきかを教会のベンチで話し合う姿を実際に見ている私
は、ベトレヘムの園病院に大きな期待をもってしまうのです。
「神さまは、建物を祝福するのではなく、その建物の中にいる人を
祝福する。そのことでその中に集う人は希望をもつことができる」
と
私が司祭駆け出しのころ、先輩司祭がおっしゃったとおり、人という
財産をベトレヘムは大事にしていることを接してきて感じています。
私ごとですが、3月末をもってベトレヘムの園病院の向かいにあ
る秋津教会主任司祭を解かれ4月から多摩市のカトリック多摩教会
主任司祭に任じられました。週三回の病棟への奉仕は私にとって大
きな恵みです。そのすばらしい出会いに恩返しできたかどうかはわ
かりません。さらに昔、カトリック司祭になるべく修行の時期、98年
から二年間病院に赴き
(そのころは古い建物でした)
、苦しみ中にい
る方と一緒に祈り、励まそうとして逆に励まされた経験は今も私の中
で貴重な財産となっています。ここに居ることができたことに感謝し、
それから新しい教会でも皆様のために祈らせていただきます。あり
がとうございました。
医療安全管理研修
河野 妃登美(総務課)
BLS(一次救命処置)
と題しまして、清瀬消防署の方に来
院頂き2月4日
(木)の13:10、13:30、13:50と3回に分けて
実演講習を行いました。心肺蘇生、循環、呼吸、AEDについ
ては知ってるようであいまいな知識、技術だったと実感しまし
た。今まであいまいだった手技を実際自分でやったり、疑問
点を消防署の方に聞けたことで再確認する事が出来ました。
<公開健康講座>
H28 年 3 月 24 日
(木)
午後 2 時〜「整えよう !腸内フローラ」講師:窪田 由佳(看護部長)
もうすぐ桜の季節を迎えます。私の住む街にも『播磨坂』
げる桜も楽しめます。病院の中庭でも開院 80 周年の記念に
という桜の名所があり、毎年沢山の花見客で賑わいます。
植樹した二本の枝垂れ桜が大きくつぼみを膨らませていま
その昔、環状道路を通そうと工事を手掛けたものの、途中
す。春を謳歌するかのように咲き誇る桜にチカラをもらい
で計画が頓挫。持て余すほど幅の広い道が残ったおかげで、
つつ、気を引き締め、新しい年度へ踏み出したいと思いま
道の真ん中に見事な桜の遊歩道が作られるという幸運に恵
す。
まれました。坂の名の通り、歩く方向で見下ろす桜も見上
(M.K)