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自公税調 消費税軽減税率制度を除く平成 28 年度税制改正大綱案を了承
外形標準課税の拡大により 28 年度の法人実効税率は 29.97%へ引下げ
消費税の軽減税率制度は与党合意後の自公税調を経て正式決定へ
自公両党の税制調査会は 12 月 10 日,消費税軽減税率制度を除いた平成 28 年度税制改正大
綱案をそれぞれ了承した。成長志向の法人税改革として,法人実効税率(現行 32.11%)につい
ては 28 年度に 29.97%,30 年度に 29.74%に 2 段階で引き下げる一方,外形標準課税の拡大
や,建物附属設備や構築物の償却方法を「定額法」に統一する減価償却の見直し,生産性向上
設備投資促進税制の期限どおりの廃止等による課税ベースの拡大を盛り込んだ。
また,自公両党間で対象品目等を巡って協議がもつれた消費税の軽減税率制度については,平
成 29 年 4 月の 10%引上げ時に複数税率による軽減税率制度を導入。適格請求書等保存方式
(インボイス制度)導入までの間は,簡素な経理方法である区分記載請求書等保存方式を取り
入れるとしており,対象範囲は生鮮食品と加工食品とする方向で,12 月 10 日時点で大詰めの
協議が続いている。平成 28 年度与党税制改正大綱の策定に当たり,消費税の軽減税率制度
については,与党合意を経てから大綱に盛り込まれる見通しだ。
法人課税関係 建物附属設備や構築物は定額法に統一
●法人税の税率(現行 23.9%)について,平成 28 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度に
23.4%,平成 30 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度に 23.2%と段階的に引き下げる。
●生産性向上設備投資促進税制は,適用期限をもって廃止することとし,関係規定を削除する。
即時償却及び税額控除率の上乗せ措置は,平成 28 年 3 月 31 日とされている適用期限を延長
せず,上記の関係規定の削除は平成 29 年 4 月 1 日から施行する。
●平成 28 年 4 月 1 日以後に取得をする建物附属設備及び構築物並びに鉱業用の建物の償却
方法について,定率法を廃止。建物附属設備及び構築物は,定額法のみとする。鉱業用減価償
却資産(建物,建物附属設備及び構築物に限る。)については,定額法又は生産高比例法の選
択制とする。なお,リース期間定額法,取替法等は存置する。
●平成 27 年度税制改正において講じた青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除
制度等における控除限度額の段階的な引下げ措置について,次表のとおりとする。また,平成
27 年度税制改正において講じた青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越期間等を 10
年(現行 9 年)に延長する措置(平成 29 年 4 月 1 日施行)について,平成 30 年 4 月 1 日から施
行し,同日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金額について適用する。
平成 27 年度税制改正
改正案
後
事業年度
開始日
控除限
度
事業年度
開始日
割合
平成 27 年4
月~
平成 27 年4
月~
平成 29 年3
月
平成 28 年3
100 分
月
65
平成 28 年4
月~
月
平成 29 年4
月~
月~
度
割合
100 分
の
65
の
平成 29 年3
平成 29 年4
控除限
100 分
平成 30 年3
の
月
50
平成 30 年4
月~
100 分
の
60
100 分
の
55
100 分
の
50
●交際費等の損金不算入制度について,その適用期限を 2 年延長するとともに,接待飲食費に
係る損金算入の特例及び中小法人に係る損金算入の特例の適用期限を 2 年延長する。
●中小企業者等以外の法人の欠損金の繰戻しによる還付制度の不適用措置の適用期限を 2
年延長する。
●環境関連投資促進税制について,①風力発電設備について即時償却を廃止,②対象資産に
ついて太陽光発電設備を再生可能エネルギー特別措置法の認定発電設備以外のものとする
等,③税額控除の対象資産から車両運搬具を除外した上,その適用期限を 2 年延長。
●国家戦略特別区域において機械等を取得した場合の特別償却等又は法人税額の特別控除
制度について,繰越税額控除制度を廃止する等の見直しを行った上で,その適用期限を 2 年延
長する。
●雇用促進税制について,地方活力向上地域特定業務施設整備計画に係る措置以外の措置
について,適用の基礎となる増加雇用者数を地域雇用開発促進法の同意雇用開発促進地域内
にある事業所における無期雇用かつフルタイムの雇用者数の増加数(新規雇用に限るものと
し,その事業所の増加雇用者数及び法人全体の増加雇用者数を上限とする)とした上,その適
用期限を 2 年延長する。
一定の調整措置を講じた上で,所得拡大促進税制との併用を可能とする。
●地域再生法の改正を前提に,青色申告書を提出する法人が,地域再生法の改正法の施行の
日から平成 32 年 3 月 31 日までの間に,地域再生法の認定地域再生計画に記載された同法の
地方創生推進寄附活用事業(仮称)に関連する寄附金を支出した場合には,その支出した寄附
金の額の合計額の 20%を法人住民税額(一部法人税額)から,その支出した寄附金の額の合
計額の 10%を法人事業税額から控除を可能とする地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)を
創設する。
●中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例について,対象となる法人
から常時使用する従業員の数が 1,000 人を超える法人を除外した上,その適用期限を 2 年延長
する。
●法人の支給する役員給与について,役員から受ける将来の役務の提供の対価として交付す
る一定の譲渡制限付株式による給与についての事前確定の届出を不要とするとともに,利益連
動給与の算定指標の範囲に ROE(自己資本利益率)その他の利益に関連する一定の指標が含
まれることを明確化する。
地方税関係 外形標準課税を拡大
●法人事業税所得割の税率を引き下げ,外形標準課税(平成 27 年度改正で 4/8)を 5/8 に拡
大する。付加価値割の税率(平成 27 年度改正で 0.96%)は 1.2%,資本割の税率(同 0.4%)は
0.5%,年 800 万円超の所得割の税率(同 4.8%)は 3.6%に見直す。平成 28 年 4 月 1 日以後に
開始する事業年度から適用する。
●資本金 1 億円超の普通法人の地方法人特別税の税率を 93.5%(平成 27 年度)から 414.2%
(平成 28 年度)とし,平成 28 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度から適用する。
●外形標準課税の拡大により負担増となる法人(欠損法人,事業規模に比して所得が小さい法
人)のうち,事業規模が一定以下の法人について,3 年間,負担増を軽減する措置を講ずる。付
加価値額 30 億円以下の法人については,負担増となる額のうち平成 28 年度は 3/4,平成 29
年度は 2/4,平成 30 年度は 1/4 を軽減する。付加価値額 30 億円超 40 億円未満の法人につ
いては,負担増となる額に各年度の軽減率を乗じた額に,付加価値額に応じて 1 から 0 までの
間の割合を乗じた額を軽減する。
●法人住民税法人税割の税率を次表のとおりとし,平成 29 年 4 月 1 日以後に開始する事業年
度から適用する。
現行
道府県民税
法人税割
市町村民税
法人税割
改正案
標準
制限
標準
制限
税率
税率
税率
税率
3.2%
4.2%
1.0%
2.0%
9.7%
12.1%
6.0%
8.4%
●地方法人税の税率を 10.3%(現行 4.4%)に引き上げ,平成 29 年 4 月 1 日以後に開始する事
業年度から適用する。
●平成 29 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度から地方法人特別税は廃止し,法人事業税に
復元する。地方法人特別譲与税は,平成 30 年 8 月譲与分をもって廃止する。
所得課税関係 三世代同居の家屋の改修工事に特例
●空き家に係る譲渡所得の特別控除として,相続時から 3 年を経過する日の属する年の 12 月
31 日までに,被相続人の居住の用に供していた家屋を相続した相続人が,一定の家屋又は除
却後の土地を譲渡した場合には,その家屋又は除却後の土地の譲渡益から 3,000 万円を控除
することができる特例を創設する。適用期限は平成 28 年 4 月 1 日から平成 31 年 12 月 31 日
までの間の譲渡。
●個人が,その者の所有する居住用の家屋について一定の三世代同居改修工事等をして,そ
の居住用家屋を平成 28 年 4 月 1 日から平成 31 年 6 月 30 日までの間にその者の居住の用に
供した場合を特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除
額に係る特例の対象に追加する等の住宅の三世代同居改修工事等に係る特例を創設。
●特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用期限を 2
年延長する。
●居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等の適用期限を 2 年延長する。
●健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行う個人が,平成 29 年 1 月 1
日から平成 33 年 12 月 31 日までの間に,自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族
に係る一定のスイッチ OTC 医薬品の購入の対価を支払った場合において,年間 1.2 万円を超
えて支払った場合,その購入費用(年間 10 万円を限度)のうち 1.2 万円を超える部分の額につ
いて,その年分の総所得金額等から控除する医療費控除の特例を創設する。
●通勤手当の非課税限度額を月額 15 万円(現行 10 万円)に引き上げることとする。平成 28 年
1 月 1 日以後に受けるべき通勤手当について適用する。
資産課税関係等 農地等に係る納税猶予制度を拡充
●農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度について,特例適用農地等に区分地上権が設
定された場合においても,農業相続人等がその特例適用農地等の耕作を継続しているときは,
納税猶予の期限は確定しないこととする等の見直しを行う。平成 28 年 4 月 1 日以後の区分地
上権の設定について適用する。
●贈与税の配偶者控除について,適用を受けるための申告書に添付すべき登記事項証明書
を,居住用不動産を取得したことを証する書類に変更する。平成 28 年 1 月 1 日以後に贈与によ
り取得する財産に係る贈与税について適用する。
消費課税関係 外国人旅行者向け免税制度を拡充
●外国人旅行者向け消費税免税制度について,免税販売の対象となる一般物品の下限額(現
行 1 万円超)を 5,000 円以上に引き下げ,手続委託型輸出物品販売場の対象範囲を見直す。平
成 28 年 5 月 1 日以後に行われる課税資産の譲渡等について適用する。
●自動車取得税は,平成 29 年 3 月 31 日をもって廃止する。
●自動車税及び軽自動車税にそれぞれ環境性能割(仮称)を設ける。
国際課税関係 マスターファイルは e-Tax で提供
●BEPS プロジェクトの行動計画に対応して示された勧告を踏まえ,多国籍企業グループの構成
事業体である内国法人等は,国別報告事項やマスターファイルを,最終親事業体の会計年度終
了の日の翌日から 1 年を経過する日までに,e-Tax により,税務署長に提供しなければならない
こととする。平成 28 年 4 月 1 日以後に開始する最終親事業体の会計年度に係る国別報告事項
やマスターファイルについて適用する。
●日台民間租税取決めに規定された内容の実施に係る国内法を整備する。
●国際課税原則の帰属主義への変更(平成 28 年 4 月 1 日施行)を円滑に実施するための規定
を整備する。
納税環境整備等 国税関係書類スキャナ保存を見直し
●国税関係書類に係るスキャナ保存制度について,国税関係書類の受領等後,その受領等を
する者が国税関係書類に署名を行った上で,特に速やか(3 日以内)にタイムスタンプを付すこと
とする等の見直しを行う。
●国税の納付手続について,国税を納付しようとする者がクレジットカードに係る事項につきイン
ターネットを利用して行う入力により納付しようとする場合には,国税庁長官が指定する納付受
託者に納付を委託することができることとする。平成 29 年 1 月 4 日以後に国税の納付を委託す
る場合について適用する。