2007年8月号日本のセキュリティ市場を考える

SSA Informatoion
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愛しのアクセスコントロール
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日本のセキュリティ市場を
考える
ビデオテクニカ株式会社 代表取締役社長
SSA 理事
住谷 健
7 月 3 日から 3 日間東京ビッグサイトで開催され
ていたオフィスセキュリティ EXPO(OSEC)に、ぶ
年くらいから、やっと出始めて来たと思います。
らっと寄ってみました。規模も内容もわからず、半
その会社では、時間外の FAX 送受信を規制してい
日しか時間はありませんでしたが、それでも十分と
ましたし、帰宅する場合は、全てのロッカーの施錠
いう規模でした。
と、机の上の書類を片付けて帰るという習慣があり
しかし、こじんまりしていてゆっくりとお話を
ました。セキュリティ部門が定期的に見回って、規
聞くことが出来てインテグレーター、ディーラー
則どおり出来ていない場合は注意を行います。何度
にとっては良いショーかなと思いました。弊社は 3
も同じだと罰則もあったそうです。当然、各種セキュ
月のセキュリティショーから約 3 ヶ月と期間が短
リティの運用規定もしっかりしていました。
いため、今回の出展はご遠慮しましたが、著名なメー
カーさんは、それなりに出展されていました。
日本もこの様な法律が制定されるのを期に、セ
キュリティの部門を新設するのはどうでしょうか?
セキュリティショーのような大きなショーでは誰
欧米では古くから経営の中心に、それこそ経営直
に聞いて良いか分からないということもあります
下にセキュリティ部門があり大きな権限を与えられ
が、規模の小さいショーでは責任者が出てきて、お
ています。
仕着せの説明に終わらないのが GOOD ! です。
今回は松下電器産業さん、日本ビクターさんと内
容の濃いお話をさせて頂きました。
有り難うございました。
オフィスと銘打っているだけあって、家具メー
カーさんが主役の感じです。
日本版 SOX 法に対応する…なんちゃらかんちゃ
ら…で大いに盛り上がっている感じでした。
9.11 以降こそ、経営の効率化で IT 部門とセキュ
リティ部門を統合する傾向もありましたが、それで
もセキュリティは非常に重要な管理部門として、総
務や人事とは一線を隔しています。
特に大企業で、法務部がある企業では、法務・セ
キュリティとして統合されると良いと思います。
その場合には、当然何をするのか?どの様に管理
すれば良いのか?ということになり、欧米を見習う
その内部統制とやらを、とにかく勉強しなくては
習慣がある我が日本としても、まずは真似する、そ
いけませんが、リスクマネジメントやコーポレート
してその思想を理解し独自のセキュリティ管理を作
セキュリティの世界では今更何をと、言う感じかも
り出すというのが順序として正しいと思います。
しれません。
弊社の一番初めのお客様(今でも最大規模のお客
様=セキュリティビジネスを始める事になったきっ
その時に参考になるのがアメリカであれば ASIS
の様な団体の活動です。
製品を売るとか、買うとかと言う視点ではなく、
かけ)は、1980 年代より既に、きっちりとしたセキュ
管理という視点で如何に効率良く管理出来るか ! と
リティ対策 = 管理と運用、をされていました。
いうことの勉強をするために、ショーや各種のセミ
その頃は、まだインターネットも無い頃で、情報
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通信のメインは電話・FAX でした。携帯電話も 87
セキュリティ研究 2007 年・8 月号
ナー・会議が開催されることがこの団体の良い所だ
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と思います。
事も無いと思いますが、手が掛かる仕事であり、か
このようなところでも、日本のマーケットが欧米
つ欧米のセキュリティ管理を学ぶ必要もあり、ユー
と全く違うことが分かります。日本のセキュリティ
ザーに管理まで含めて提供という風には行かないで
市場はまだ未成熟ですが、欧米で市場を引っ張り続
しょう。
けているのは、セキュリティ専業のメーカーや専業
同じように、個人情報保護法や今度の J-SOX 法と
のインテグレーターです。日本では、警備会社や総
いう追い風で、現在セキュリティ業界は上昇気運で
合電機メーカーがセキュリティ製品の主な供給先と
すが、その基本となるセキュリティ管理の基本につ
なっています。欧米では今でこそ GE やハネウェル、
いての勉強や提供を今後考え、実践して行く必要が
ボッシュ、ユナイテッドテクニロジー等有名所の
あります。
メーカーがセキュリティ部門を持っていますが、こ
セキュリティショーへ行けば本当に沢山の監視カ
れは 1990 年代後半からのセキュリティ市場での大
メラシステムと入退室管理システムが展示されてい
規模 M&A から生まれた結果です。
ます。しかし、その本当の使い方や重要なポイント
日本のではどうなのでしょうか?
が語られないケースも多々あるようです。
今後も 10 年 20 年同様な形で推移するのでしょ
物の販売は勿論のこと、セキュリティ思想、運用
うか。または欧米のような、専業メーカーとインテ
をもカバーするベンダーやコンサルタントの存在が
グレーターのようになるのでしょうか。
必須だと考えます。
私は、日本の場合は欧米と違う形になると想像し
ます。
ま だ 日 本 に は 大 企 業 信 奉 が 根 強 く 残 り、 ベ ン
チャーがなかなか育ちません。「寄らば大樹の陰」
という言葉があるように、受験や就職の場合も同様
欧米系のセキュリティ専業メーカーの攻勢も今
一、日本の市場性を理解出来ずに、なかなか成功し
ませんでした。
しかし、近年はやっと現地の社員を常駐させ少し
ずつ信頼を築き、ビジネスを成長させています。
です。これは私の若い時代(30 年前…。恐ろしい !
どうしても、長期間でのビジネス計画は作成でき
自分で若い頃というのは始めてかも。年取った証拠
ず、短期間でのリターンを求めるために、成功して
かもしれませんが)からそうです。
いないという感があります。
上場企業や、売上規模の大きな会社の方が大な信
頼を得やすく、また実際の仕事でも優位に立てるの
です。
また、ベンチャーとて元はどこどこの大会社の幹
部の方で、有名なXXXなどの素晴らしいバックグ
何れにせよ、現在の様な混沌とした中から販売力、
サポート力の秀でた企業が出てくるのでしょうか。
家具メーカーからでしょうか? 電気メーカーで
しょうか? 警備会社でしょうか? この 1、2 年
は更に注視する必要があるでしょう。
ラウンドをお持ちな方が会社を起こされるのが成功
システムも実際大きく変化しており、より IT 方
の秘訣だったりします。誰々を知っているといった
向へのシフトが大きく、通信関連企業の台頭も考え
ノウハウならぬノウフウが重要だったりもします。
られます。
警備会社さんがセキュリティマーケットに於いて
端末側は実は、あまり変わらない扉回り、鍵周り
重要な役割を占めるのは容易に理解できます。欧米
のビジネスです。この鍵関連の企業は小規模企業が
のバーグラーアラームの日本版ですから、ド真中直
ほとんどで、言ってみれば入室管理の業界では、下
球です。
請の末端業者ですが、彼らが団結しシステムも扱う
しかし内容は機械警備(= 人が居ない時の侵入を
ようになれば、新興勢力となる可能性も否定できま
監視する仕事)が中心で、これから日本が直面する
せん。そうなれば、業界に戦国時代がやって来るか
セキュリティ管理(=人が居る時の管理)には、何
もしれません。
が何でも仕事を取ると言う雰囲気ではありません。
機械警備が非常に良いビジネスですから十分という
弊社もこの戦に負けないよう自力を付けて、置い
て行かれない様、先頭を走り続けたいと思います。
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