モニタパラメータ SpO2編(全3回)

モニタパラメータ
SpO2編
第1回
SpO2の測定原理
今回から、SpO2について解説します。
SpO2とは?
生体の状態を観察する上で、酸素がどのくらい血液
に供給されているかの情報を得ることは大変重要なこ
とです。これを知るための指標を「SpO2:動脈血酸
素飽和度」といいます。
「S」は
「Saturation
(飽
和状態)」、
「p」は「pulse
(脈拍)」、
「O2」は「O
xygen
(酸素)」の略で、
「脈拍から観た酸素飽和度」
のことを意味します。
SpO2を連続的に、かつ非侵襲的に測定できる機
器がパルスオキシメータです。センサーで指先を挟ん
で、指に波長の異なる2種類の光を当て、透過した光
の量を測定することにより、SpO2
(動脈血酸素飽和
度)を算出します。
パルスオキシメータの測定原理
LED
赤色光
660nm
赤外光
940nm
類似した用語
受光部
SpO2に類似する用語として以下のものがあります。
SpO2:パルスオキシメータを用いて測定した
動脈血酸素飽和度
SaO2:採血した血液サンプルを分析して得た
動脈血酸素飽和度
2
PaO :動脈血酸素分圧
PaCO2:動脈血二酸化炭素分圧
パルスオキシメータとは?
パルスオキシメータは採血を必要とせず、指先にセ
ンサ
(プローブ)を装着するだけで、無侵襲、連続的
かつリアルタイムに動脈血の酸素飽和度を測定する装
置です。現在では、生体情報モニタをはじめ、除細
動器、脳波計などでパルスオキシメータの機能を搭載
している製品が数多くあり、医療への貢献度は高く評
価されています。
パルスオキシメータの歴史は、1974年、弊社の青
柳卓雄によるパルスオキシメトリ−の原理の発明が原
点です。
30年以上経過した現在、パルスオキシメータが血
中酸素モニタの代名詞的役割へと成長しました。
受光部
SpO2測定は660nmと
940nmの波長を持つ
2つのLED光を用いて
測定しています。
受光素子は測定部位
を通過した、吸収され
なかった光の信号レベ
ルを出力します。
赤色光 Signal
赤外光 Signal
酸素はヘモグロビンと結合した形で血液中に存在しま
す。酸素と結合したヘモグロビンを酸化ヘモグロビン
(HbO2)
、酸素と結合していないヘモグロビンを還元ヘモ
グロビン
(Hb)
と呼びます。酸素飽和度は、血液中のヘ
モグロビンに酸素がどれくらい結合しているかを表します。
酸素をたくさん含んだ動脈血は鮮やかな赤色、酸素を
体内に放出した後の静脈血は黒っぽく見えます。この色
の違いは、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの、光
を吸収する特性によることから、赤色光と赤外光の二つ
の光を指先に照射し、その透過光による脈波の大きさの
比率から、動脈血のみの吸光特性を計算します。
全ヘモグロビンが酸化ヘモグロビンである場合の酸素
飽和度は100%です。
照射する光、660nmと940nm2つの波長の光によっ
て得られる脈波の振幅比は、
動脈血の酸素飽和度によっ
て決まります。言い換えると、2つの波長の光による脈
波の振幅比から動脈血酸素飽和度
(SpO2値)
を表示し
ています。
モニタパラメータ
SpO2編
第2回
SpO2の必要性と測定のポイント
今回は、SpO2を正確に測定するポイントを解説します。
SpO2の必要性
前回は、SpO2とは何か、SpO2の測定原理について
ご説明しました。
酸素が血液にどのくらい供給されているのかを知る
ことができるSpO2は、生体の状態を知る上でとても重
要な指標です。では、実際にSpO2は院内のどんな場
面で測定されるのでしょう?
●手術や集中治療室などでの呼吸、麻酔管理に
●新生児、未熟児への酸素投与時に
●救命センタでの心停止時や血圧測定時の
血流チェックなどに
●病棟巡回時の患者さんの状態チェックに
●睡眠時無呼吸症候群
(SAS)
のスクリーニングに
●在宅酸素の濃度や流量の管理に
●病院間搬送時や院内搬送時の事故防止として
手術室から在宅医療まで、また生まれたばかりの赤
ちゃんから成人にいたるまで、さまざまな場面でSpO2
は測定されています。
装着部位が
薄い場合
光量が大きすぎる場合は測定ができ
ません。
装着部位が
厚い場合
低脈動の信号によって測定が不安定
となります。
Point 2
発光部
Point 1
適切な厚みの装着部位を選択する
プローブは通常6〜18mmくらいの厚さがある部位に装着し
ます。
6~18mm
6~18mm
足趾
指の腹側に
【 受光部がある
】
良い
装着位置
受光部
Point 3
指の腹側は柔らかい
ため、受光部が密着
し指を通り抜けた光
だけが検出されます。
装着テープは軽く貼り付けます
巻き付けを意識した装着は、
強い締め付けが懸念されます。
隙間を作らず、軽く貼り付ける感覚が大切です。
スポンジや伸縮性のある
テープの注意点
信頼性のあるSpO2測定をするポイント
SpO2は、指先にプローブを装着するだけで、簡単
に測定できますが、正確に測定するためにはいくつか
のポイントがあります。
発光部と受光部は互いに対面させ、
爪の生え際に発光部を位置させる
伸縮性のあるテープは、後から収縮
することがあり、巻きつけ圧が強く
なります。
その他
プローブ装着時の確認
血圧測定用カフが巻かれていたり
カテが挿入されている側での測定
血流が一時無くなる、または
不十分となります。
プローブは血流に影響の無い
側に装着してください。
マニキュアや汚れがある
装着部位(指)
指
6~18mm
足の甲
マニキュアや汚れは測定光に
影響を与えます。
装着前には装着部位を清拭し
ます。
モニタパラメータ
SpO2編
最終回
純正プローブ使用の必要性
最終回の今回は、純正プローブ使用の必要性についてご説明します。
プローブの精度
図 2: 成人ボランティア観血対比データ
純正プローブと互換プローブの精度検討結果
SpO2-SaO2(全データ)
90.0
平均
0.5%
標準偏差
80.0
70.0
70.0
80.0
90.0 100.0
1.1%
Arms
1.2%
症例数
10人
人
データ数
60.0
60.0
201ポイント
協力:同仁記念会明和病院
SaO2(%)
ベッドサイドモニタ BSM-2301、プローブ TL-271T 使用
SaO2 は OSM3(ラジオメータ社)を用いて測定
図3: 臨床観血対比データ
100
SpO2-SaO2(全データ)
90
SpO2
SpO2をもとめる理論式は確立しておらず、各社独自の計算式
に基づいています。
SpO2の精度は、
1.計算式の妥当性と 2.計算式からのずれ、
の2つの要因を含んでいます。
パルスオキシメータの国際規格ISO9919によれば、計算式の
妥当性を含め評価を行うためには、人を用いた低酸素試験を行
うことは避けられず、その場合の基準は、採血によるCO−オキ
シメータの測定値となります。当社では右図のようにボランティ
ア精度維持試験を実施しております。
SpO2(%)
100.0
純正プローブを使用せず、互換プローブ
(※)
を使用した場合、
SpO2値の精度確保はできません。換言すると、モニタメーカー
の精度保証がない他社プローブは、臨床現場で精度保証ができ
ないことになります。
(※ 互換プローブとは純正品コンパチのゾロ品のことです。)
平均
1.1%
80
標準偏差
Arms
1.9%
70
症例数
20人
人
データ数
60
50
50
60
70 80
SaO2
90 100
1.5%
42ポイント
データ提供:
榊原記念病院
心臓カテーテル検査室
パルスオキシメータ OLV-3100、プローブ TL-274T 使用
SaO2 は OSM3(ラジオメータ社)を用いて測定
(医科器械学 2007年2月号から抜粋)
パルスオキシメータ値
純正プローブと互換プローブを同時に、臨床現場で使用した場合、どのような結果となるでしょうか。
右のグラフは、時間経過によ
るSpO2値のトレンドを示してい
互換プローブは
互換プローブは純正プ
ます。
トレンドグラフの比較-1 高めの値を表示
ローブよりSpO2 の低
純正プローブのSpO2値に対
下を10分遅れて表示
して、互換プローブはSpO2 値
(%)100
が高く表示される傾向がありま
す。その 結 果、この 症 例では
SpO2の低下が10分遅れて低下
互換プローブ
95
する結果となりました。互換プ
ローブの使用は、患者さんの状
10min
純正プローブ
態の変化に気づくのが遅れる、
90
あるいは変化に気づかない危険
互換プローブは患者状態の変
化に気づくのが遅れる、ある
を伴う場合があると報告されて
いは発見できない場合がある
います。
85
純正プローブを使用する必要
性をおわかりいただけましたで
しょうか。
時間
20min
(2008年第35回日本集中治療学会 北里大学MEセンタ部演題発表より抜粋)
当社では、SpO2を測定するモニタ製品と純正プローブは、
製品開発段階で精度維持のため互いに較正を行っています
3カ月にわたって連載してきましたSpO2編、
いかがでしたか?お読みいただきありがとう
ございました。