7.交通シミュレーションシステム「ASSTranse」を用いた交通安全対策

株式会社
ケー・シー・エス
交通シミュレーションシステム「ASSTranse」を用いた交通安全対策
∼人的要因を組み込んだ定量的な分析手法による効果的な交通安全対策の立案・評価に向けて∼
1.調査の必要性及び背景
自動車交通事故は、一般に、道路交通環境、車両環境及びドライバー等に起因する3つの要因間の
ミスマッチが原因となって発生すると言われている。
一方、従来、道路管理者・公安委員会が実施する交通安全対策は、これら3つの要因の内、主に道
路交通環境に起因する要因の定性的な分析を通して立案・実施されているが、これら要因の事故に対
する寄与度合が、定量的に把握されていない。そのため、箇所毎にどのような要因又はどのような要
因の組み合わせの排除に重点を置いた対策を実施すれば良いか明確に出来ない状況にある。
また、対策のミスマッチのため、事故削減効果が充分得られない箇所や、逆に事故が増加した箇所
が見られるなど、対策が充分、効果的に検討・実施されていない状況も見受けられる。
更に、対策の立案・実施に当たっては、当然、対策の実効性、言い換えれば、予め対策効果が求め
られるが、対策毎の効果は事前・事後分析等の積み重ねにより、ある程度、定量化されつつあるが、
複合的対策の場合の効果は定量化されておらず、その効果の予測が出来ない状況にある。
このような状況に鑑み、従来の交通安全対策の立案・実施上の弊害を打破し、人的要因も加味した
定量的な事故発生要因の分析や複合的対策の効果予測を可能とする交通シミュレーションシステム
「ASSTranse」を用いた新たな交通安全対策の検討を提案するものである。
2.調査の最終成果(アウトプットイメージ)
①シミュレーションによる人的要因を加味した事故発生要因の定量的な分析
→事故発生要因である道路交通環境要因、車両要因、人的要因の抽出とその寄与率の算出
活用例:定量化された要因を用いた重視すべき対策方針の提案
道路管理者側の対策として、道路交通環境要因の寄与率の高い箇所の重点的対策の実施
定量化された要因に基づく、道路管理者と公安員会との協議(資料)
②シミュレーションによる事故発生要因の低減、削減による交通安全の対策方針の提案
→対策方針の実施で期待される定量的な整備効果に基づく、妥当性の検証
活用例:事故発生要因の例:走行速度が高い。
対応:従来の定性的分析:速度規制を実施したいが、どの程度、速度抑制すれば、どの
程度の事故削減になるか分からない。
「ASSTranse」 :走行速度 60km/h を 50 ㎞/h に抑制出来れば、追突事故が
3 割低減する。
③複数の複合的対策案のシミュレーションによる評価
→複数の複合的対策案の定量的な評価が可能となるため、最適な複合対策の選択が可能となる。
→複合的対策の定量的な整備効果の算出
④対策実施前・実施後のシミュレーション動画の活用
→実施対策の地元説明資料
→PI型交通安全対策におけるシミュレーション動画の活用
無断の複製、頒布、転用を禁ずる
Knowledge Consulting for Solution
ケー・シー・エス
株式会社
【交通シミュレーションシステム 「ASSTranse」 の概要】
●●
▲シミュレーションによる事故分析、対策効果の検討イメージ
(フォルトツリー解析イメージ)
(イベントツリー解析イメージ)
危険状態
の生起
H1
R
知覚・
ハザード
認識エラー
リスク
同定エラー
C1
P2
操作
エラー
D
知覚・認識
エラー
Fault Tree作成の1例
C2
回避行動
決定エラー
操作
エラー
事故
発生
事故
事故
発生
発生しない
発生しない
発生しない
発生
追突事故
の発生
発生
事故
発生
リスク同定
エラー発生
発生しない
発生
認知・回避行動段階で
発生
発生しない
操作エラー
発生せず
発生しない
注意力低下
スリップ
飲酒、疲労
による居眠り、
考え事など
ぼんやり
事故
事故
回避
発生しない
回避
先行車は
止まらないと
思い込んだ
N/A
OR
6.02×10-8
事故
発生
操作エラー
発生
OR
照明
不足
OR
N/A
回避
危険予知エラー
注意力低下
見落とし
事故
発生しない
発生しない
リスク同定エ
ラー発生せず
ドライバーの
知覚エラー
OR
事故
現れる基本事象についてクリティカリ
ティ重要度を算出すると、どの基本事象
が頂上事象の生起に関して一番影響を
与えているかを特定することができる。
ドライバーの
ハザード認識エラー
OR
※生起確率は、条件付確率(危険関
係が発生したもとでの確率)である
回避
FTのミニマルパスセットを求め、そこに
ドライバの
知覚・ハザード認識エラー
事故形態:追突事故
イベント:知覚・ハザード認識エラー
発生
知覚・ハザード認
識エラー発生
知覚・ハザード
認識エラー
発生せず
▲シミュレーション画面イメージ
脇見
飲酒、疲労
による居眠り、
考え事など
ぼんやり
3.16×10-8
3.16×10-8
基本事象(事故要因)
この生起確率を与えると、最上位のドラ
イバのエラーが生起する確率が求まる。
1.02×10-8
1.02×10-8
脇見
エラーが出ると事故発生
▲ドライバーのミスの発生確率の算出理論
エラ-の中で最も影響
のある要因を特定
3.調査方針及び調査フロー
(1)調査方針
以下のステップで「ASSTranse」を用いて、シミュレーションを実施し、調査を行う。
●シミュレーションⅠ:現況再現・発生要因の定量的分析
●シミュレーションⅡ:対策方針の分析・検討
●シミュレーションⅢ:対策案の評価(効果算出)
(2)調査フロー
道路交通環境
道路交通環境
交通挙動実態調査
交通挙動実態調査
人的要因
人的要因
対策効果
対策効果
既往文献
既往文献
事故発生状況
事故発生状況
事故発生状況現況再現
事故発生状況現況再現
人的要因を加味した事故発生要因
人的要因を加味した事故発生要因
発生要因の定量的分析
発生要因の定量的分析
事故発生要因の低減・削減
事故発生要因の低減・削減
による交通安全の対策方針
による交通安全の対策方針
対策方針の分析・検討
対策方針の分析・検討
シミュ
シミュⅠ
Ⅰ
シミュ
シミュⅡ
Ⅱ
対策メニュー
対策メニュー
対策案の検討
対策案の検討
複数の複合的対策案の評価
複数の複合的対策案の評価
対策案評価(効果算出)
対策案評価(効果算出)
AS
SS
ST
Tr
r
a
n
s
e
A
a
n
s
e
<アウトプット>
シミュ
シミュⅢ
Ⅲ
最適対策案の提案
最適対策案の提案
無断の複製、頒布、転用を禁ずる
Knowledge Consulting for Solution