1 University of Hawaii, Simulation Center 岡山大学シミュレーション

University of Hawaii, Simulation Center
岡山大学シミュレーション教育指導者コース
岡山県医師会 副理事長
清水 信義
ホノルルの市内少し西にあるハワイ大学医学部の Sim Tiki Simulation Center で開催され
た岡山大学のコースに、若いドクターやナースに混じって参加してきました。参加者には
既にシミュレーション教育を何回か経験した人もいて、開催地の雰囲気とともにリラック
スした雰囲気でした。
第 1 日 9 月 3 日 8:30-16:00
8:30-12:00 session 1
1.Welcome and program introduction
まず、今回の指導者である Benjamin W. Berg
教授から、今回のプログラムの紹介があった。ここでのコースはすでに 4 年間続けられて
おり、日本からも岡山大学を始め多くの大学がトレーニングを受けている。また、Berg 教
授は、北海道から九州、沖縄まで何度となく日本を訪れて講演や指導を行っているので、
我々にもわかりやすい話し方でゆっくりと説明してくれた。
彼の話では、シミュレーション教育とは、シンプルなモデルを使って高度なテクノロジー
を教えるものであり、モデルは出来るだけ単純なものがよい。この施設では、数々のシミ
ュレーターを使っての教育やトレーニングをおこなっている。例えば、救急患者、外科手
術、ECMO のトレーニング、内科疾患のトレーニング、戦傷者のトレーニングなどもあり、
医学生はもちろんであるが、レジデント、ナース、看護学生、ナースプラクテイショナー、
技術者などのためのシミュレーショントレーニングのコースもある。ここでは、技術のト
レーニングと decision making トレーニングを行い、ここの人への技術的トレーニングで
はなく基本的にはチームとしてのトレーニングである。我々の受けたのは、educator
training のコースであった。また、米国だけではなく、主には東南アジアの国から受講す
る人達のための international post-graduate program もある。
日本からも岡山大学を始め多くの大学が参加している。米国の各大学では医学教育用シミ
ュレーターを備え、医学教育の中に取り入れている。まだ、日本では教科の中には取り入
れられてないが、OSCE などに取り入れ始めている。
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2.Essential of simulation-based education
この項目では、カリキュラムの説明があり、それに応じたシミュレーターのモデルの説明
があり、モデルを使う技術、instructor の役割など、シミュレーションを行う上での必要な
事項の説明がなされた。Adult learning が前提ということで、初心者に教えるのではなく
ある程度知識のある者(adult)に教えるということになっている。シミュレーターを中心に
して、カリキュラムを作り instructor が指導するという課程が説明された。そして、最後
に debriefor と呼ばれる統括的な指導者がまとめるということが説明された。
3.Orientation to the simulator
シミュレーターはシミュレンション教育の目的を達成するための道具であるが、それを使
う課程や方法は重要である。既に知識を持っている adult が、それに深く関わる。そしてそ
れを進める役割はトレーニングを受けるチームの中の facilitator が進行を円滑にする役割
を務める。指導する instructor は、coach の役割を努め、トレーニングを正しく進めてゆく。
4.Tuning technology into a teaching tool, simulation exercise
13:00-16:00 session 2
5.Group activity
2グループに分かれて、まず実際に
行うシミュレーションのシナリオを
作成した。我々のグループは、入院
患者がベット上で意識が低下し血圧
を測ったところ、収縮期血圧が
40mmHg と低下している患者に、1
年目の初期研修医が対応するという
シナリオで、シミュレーションを行
った。病室で倒れた患者に対する最
初の 5 分間の対応について、チーム
各員の役割の確認を行い、ナース役、ME 役、facilitator 役、モニター役などを定め、実際
のシミュレーションにはいった。バイタルサインの把握、心電計の装着、ラインの確保の
指示、酸素投与など最初の5分間にしなければならないこと、できることなどを列挙して
いった。記録係は、タイムキーパーを努めながら実施された事項を記録していった。
Instructor は、センターの Dr.Ouchi が務め、シナリオの変更や不備を修正しながらシミュ
レーションを終わった。
最後に Berg 教授の講評があり1日目は無事予定どおりに終わった。
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9 月 4 日 8:30--16:00
Why simulation 8:30—12:00
シミュレーションがなぜ必要か。シミュレーションは、概念的な技術の実践であり、decision
making のトレーニングである。Skill と decision making を繰り返すことでここの能力と
チームの能力を同じように高めることが出来る。また、teaching と practise(訓練)を行
いながら、その内容を把握することで両方を向上させる。シミュレーションは既に知識を
持っている者には、適切な方法であり、多くの蓄積した知識を活用できる。Education の目
標は、現状を変えることでもあり、また患者の安全にも継る。このセンターには多くのモ
デルや教材がある。航空機のシミュレーショントレーニングの応用の成功例は、2009 年の
事故でハドソン川への着水では乗客全員が無事であった。
このセンターでは、多くの研究実績があり、多数のジャーナルに論文が掲載されている。
多施設の研究でも、simulation-based medicie は従来の教育方法より優れているとの論文
が出ている。
シミュレーションでは、代用患者を使うことができる、標準化された患者を作ることが出
来る、身体の一部のモデルを使うことができる、単純なモデルからハイテクのモデルまで
作成できる。スクリーンで、バーチュアルリアリティで、現実的なシミュレーションが可
能である。状況やレベルによって訓練の目標を変化させることができる。
Lecture debriefing
13:00-16:00
13:00 Debriefing
研修の締めくくりは debriefing であった。Debriefing は、facilitator の誘導により参加
者がシミュレーションで実施したこと、その根拠、またその反省点などをディスカッショ
ンするなかで、そのためには事柄の十分な evaluation(評価、点数付け)を行い、access(理
解、把握)を行い、実施したシミュレーションの全体を総括することと、Berg 教授は解説し
た。また学んだことのコアとなる事柄を次につなげるための理解のためにも重要である。
まず、オープンディスカッションをおこない、コアとなる事柄について焦点を当てて議論
する GAS (gather, analyse, summarize)がとられる。
Debrief の概念については、Berg 教授から繰り返し繰り返しその説明があったが、短時間
の研修の中での解説でもあり、私自身その概念を十分に把握できたとは思えない。
最近出版された「実践シミュレーション教育―医学教育における原理と応用」
メディ
カル・サイエンス・インターナショナル社(出版 2014 年 7 月)に詳しく解説されているの
で参照して頂きたい。その解説の debriefing に関するまとめの部分を紹介する。医療にお
けるシミュレーション教育は、対象者はすでに固定化した知識や経験がある人たちであり
(adult learning)
、まずそのことを理解する必要がある。そして、質の高い debrifing には、
積極的な傾聴、厳密な調査、恣意的な振り返りが必要であり、debriefor は自分は中心にな
らず柔軟(flexible)で有る必要がある。その手法としては GAS 法などの標準的な手法を用い
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る。
2 日間の駆け足の研修であったが、若い人には実際のシミュレーションを繰り返し受けるこ
とで、多くの事例の経験ができレベルの高い医療を実施することができるであろう。また、
私のように、昔の実際の患者で経験して覚える医療、あるいは先輩を見て覚える医療の技
術を経験したものには、新しい医療教育を経験したことに感銘を覚え、現在の医療教育で
は多くの標準的なシミュレーターであらかじめ訓練できる時代になったことを実感した。
結論は、
「シミュレーショントレーニングを受けないパイロットはいない」ということで
した。
研修最終日
夕暮れのワイキキとダイヤモンドヘッド
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