PDF 論文へのデジタルペンによるコメント編集・共有に関する研究 A

PDF 論文へのデジタルペンによるコメント編集・共有に関する研究
平田
裕二
青山研究室
A development of sharing system of annotation
written by “Digital pen”
Yuji Hirata
1. 背景・目的
図1のように、クライアントアプリケーションと
私達が論文を読み進める際に、疑問に感じたこ
オンラインデータベースの間で、Web サービスに
とや重要だと思われる内容に対して、メモ・コメ
よってコメントデータがやり取りされる。Web サ
ントを残すことがある。それらは研究を進めるに
ービス[1]とは、SOAP と呼ばれる XML ベースの
あたって重要なヒントを含んでおり、情報として
価値のあるものが多いが、大多数の目に触れるこ
メッセージをやり取りすることで、ソフトウェア
の機能をネットワークを通じて利用できるよう
とは殆どない。これらの情報を、研究室や共同研
究者間で共有することができれば大変有益であ
にしたサービスのことである。今回利用する Web
サービスはすでに開発されたものであり、クライ
る。
アントアプリケーションからの要求に応じて、コ
このようなコメントは、印刷された論文の欄外
メントデータの受け渡しや DB への登録などの機
やノートなど、紙媒体に残されることが多いと思
能を提供する。クライアントアプリケーションは
われる。しかし紙媒体に記されたコメントを共有
PDF 論文を公開しているサイトから論文を参照
するためには、貸し出しやコピーなど、手間のか
かる手段をとらねばならない。そこで、本研究で
し、コメントの作成、閲覧、コメントデータの参
照要求、登録要求を行う。また、デジタルペンで
は対象を電子化されたもの(PDF 論文とそれに対
するコメントデータ)に限定した。PDF ファイル
書かれた手書きの文章をテキスト変換し、コメン
トとして扱う機能を持つ。本研究では、主にクラ
であればインターネットを通じて多くの読者が
閲覧でき、大多数での情報共有が可能となる。と
イアントアプリケーションの開発を行った。
はいえ、実際にメモやコメントを残す場合には、
手軽に筆記できる紙媒体に戻ってしまうことが
多い。本研究はその解決策として、入力デバイス
3.
にデジタルペンを用い、手書きに近い形で電子化
る。その筆跡をアプリケーション側でデジタルイ
されたコメントを作成できるコメント編集、共有
システムの構築を目指す。
ンクとして再現し、文字認識エンジンによってテ
キスト変換を行う。変換結果はコメントデータの
生成に利用される。
デジタルインクの描画と文字認識機能の実装
2. 概要
手書き文字入力・認識機能について
クライアントアプリケーションのユーザは、デ
ジタルペンを用いて紙媒体にコメントを筆記す
には、Microsoft の Tablet PC SDK を使用した。
図1 システムの概要
図2 テキスト変換の流れ
コメントの入力デバイスとなるデジタルペン
「MvPen」[2]には、ペンの動きとマウスカーソル
る必要がなくなる。手書きコメントは多少のくず
し字や複数行に渡る文章であってもほぼ正しく
の移動を対応させるモードがある。今回はそのモ
ードを用いて、カーソルの軌跡からデジタルイン
認識されるが、記号を組み合わせた文章や数式な
どの変換は難しい。このようなテキスト変換に向
クを描画している。
かない注釈の共有については、筆跡をインクデー
タや画像などのフォーマットで管理することに
4.結果と考察
より実現できると思われる。
本研究で開発したクライアントアプリケーシ
ョンにより、論文公開サイトから参照した PDF
今回は MvPen のユニットを PC に接続する
「オ
ンラインモード」でのコメント入力を扱った。し
論文に対するコメントの作成、オンラインデータ
かし、MvPen のみで利用し、内蔵されているメ
ベースへの登録が行える。また、参照した PDF
論文に関する既存のコメントデータをデータベ
モリに筆跡データが保存される「モバイルモー
ド」からコメントの収集が可能となれば、さらに
ースから取得し、注釈として PDF 論文に埋め込
むこともできる。
活用範囲が広がるだろう。
手書き入力を使うことで、PDF 論文に対するコ
5.参考サイト
メント生成を、従来のような紙媒体への記述と組
み合わせた形で実現することができた。手軽に筆
[1]XML Web サービスの概要 –Microsoft.com
記できる紙媒体へのコメントをそのまま電子化
973024.aspx
[2] MVPen(エム・ブイ・ペン)-MvPen テク
することで、ユーザの手元には紙媒体としてコメ
ントを保管することができ、共有システムへの受
け渡しもスムーズに行える。
手書きコメントのテキスト変換には、筆跡をユ
http://msdn.microsoft.com/ja-jp/library/cc
ノロジーズ
http://www.mvpen.com/
ーザが範囲選択し変換する方式を採用した。これ
により、コメントの筆記中には認識結果を気にす
①インク入力領域
図3 手書き文字入力フォーム
②手書きのコメントを再現したインク
③手書き文字の変換結結果