「認知症コミュニケーションB」(10名程度)

認知症コミュニケーションB
|開講科目名|
認知症コミュニケーションB
|講義題目|
認知症コミュニケーション B
|単位数|
2 単位
|授業形態|
講義科目
|開講科目名
(英)
|
Communicating with Dementia Persons: Course B
|時間割コード|
360224
|定員|
30 人
|担当教員|
西川 勝、宮本 友介、池田 光穂
|開講言語|
日本語
|対象所属・年次| 全研究科大学院生、3 年次以上の全学部生、社会人(10 名程度)
|開講区分・曜日・時間|第 2 学期=木曜 6・7 限(隔週、開始日 10 月 8 日)
|開講場所|
豊中キャンパス:オレンジショップ(基礎工学部 I 棟 1 階)
|キーワード|
認知症、コミュニケーション、ケア
|授業の目的・概要|認知症と呼ばれる人が、どのようなコミュニケーション上の問題を抱えているのかを知り、どのようにすれ
ば認知症の人との豊かなコミュニケーションが可能になるかについて学んでいくことを授業の目的とする。
たんに問題解決的なアプローチにとどまらない創造的な「認知症ケアの文化」の基礎として、認知症コミュ
ニケーションを構想する。
|学習目標|
認知症と呼ばれる老い人とのコミュニケーションに関して、自分なりの意見を述べて他者と対話することを
通じて、お互いの考えを吟味できる能力を身につける。
|授業計画|
認知症と呼ばれる人とのコミュニケーションについて、以下のようなテーマを設定して講義およびグループ
討論を行う。
授業計画
第 1 回 さあ、これから認知症について語ろう
イントロダクション
第 2 回 認知症とは何か
認知症についてのさまざまな言説・表現・表象について考察します
第 3 回 認知症と呼ばれる人の生きる姿
認知症の〈リアル〉について、映像資料等をみながら考えます
第 4 回 認知症者の世界へのマッピング
精神医学の知見と、ケアの現場での認知症者の知覚や行動との照合を通して、認知症者の世界へのマッピン
グを構想します。
第 5 回 認知症と呼ばれる人との関係性
認知症と呼ばれる人の〈個性〉は、その人に関わるすべての人の関係により多様に決定します。医学の「病
理モデル」から、関係性から浮かび上がる「生活者モデル」への転換について考察します。
第 6 回 ケアの暴力性
ケアと暴力という一見、正反対と思われることを見直し、さまざまなケアの実践の中に表出する暴力性につ
いて考察します。
第 7 回 ユマニチュードの可能性と限界
ユマニチュードというケアの可能性と限界について考えます。
第 8 回 パッチングケア
パッチングとは「つぎを当てる、つぎはぎをして修繕する」ということである。普通のケアは、たくさんの
人からケアのかけらをパッチングされることで成り立つが、その当たり前のことについて再考する。
第 9 回 老いの力
老人力(赤瀬川原平)を手がかりにして、老いとは、老いさらばえる/衰えるというモーメントでは説明出
来ない〈力〉をもつことを考える。
32
第 10 回 老いのパラドックス
老いの力に引き続き、老いの幸福や老いることのポジティブな点について考える。
第 11 回 ダンス
認知症とダンスとは、いっけん関連性がないものに思われるが、果たして本当だろうか?認知症とダンスの
関係について考えよう。
第 12 回 身体コミュニケーション
ダンスの議論と関連して、認知症コミュニケーションを身体を媒介するコミュニケーションとして捉えなお
す。
第 13 回 認知症ケアの文法
パッチングケアの議論と関連づけて、これまでの認知症ケアの具体的なケアの〈方法〉を認知症者への認識
の〈文法〉と見立てて、ケアの仕組みを再構造化する方法について考えてみよう。
第 14 回 認知症コミュニケーションの創造性
まとめの授業。これまでおこなってきた討論の結果を総括する。
|授業外における学習|
|履修条件・受講条件|全研究科、3 年次以上の全学部生、社会人(10 名程度)
|教科書・教材|
|参考文献|
特に指定しませんが、必読文献は受講者に配布します。
『認知症ケアの創造 −その人らしさの看護へ』
、阿保順子、池田光穂、西川勝、西村ユミ著、雲母書房、
2010 年
|成績評価|
グループワークを重視しますので、出席を含む平常点を 70 点、レポート課題を 30 点とします。
|特記事項|
【なぜ、認知症コミュニケーションを学ぶのか】
授業の主担当者である西川の考えを若干述べておきます。認知症コミュニケーションとは、認知症と呼ばれている人との
コミュニケーションを指しています。認知症をどのように捉えるかには、さまざまな立場があります。ある個人に生じた医
学的な問題と考えることもできれば、その人が社会生活の上で抱えざるを得なくなった不自由の問題としても考えられま
す。また、老いに関連する人生の問題として考えることもできます。具体的に認知症と呼ばれる人と関係を持つことに困惑
している人もあれば、そうでない人もいるでしょう。
「認知症」という言葉で一括りにできるほど、
「認知症」がもたらす事態はわかりやすいものではありません。多くの問題
や課題が複雑に絡み合って、どこから考えていくのがよりよい方法なのか、まだ私たちの社会は模索している途上にありま
す。西川は看護師としての経歴のなかで、病院や介護施設での認知症ケアに携わった経験があります。また、現場を離れて
からも認知症ケアの研究を継続して行ってきました。看護師というケアの専門性から離れて認知症について考えてゆく際に
出会ったのは、それまでの認識を覆すような認知症の人たちであり、その人を取り巻くコミュニケーションの多様性でした。
人は、その人が置かれているコミュニケーションの磁場によってあり方を変えていくという事実があったのです。
この授業では、認知症という事態に見え隠れしているコミュニケーションの根源的な諸相を、多様な立場の人たちと共に
考えていくことを狙っています。認知症を特殊な問題領域と考える問題解決的なアプローチのみに終始する内容ではありま
せん。認知症コミュニケーションを通路として、誰にでも共通するコミュニケーションの課題を追求していく授業とします。
なお、前期に開講される「認知症コミュニケーション A」を履修すれば、さらに広範囲なテーマについて議論できます。
33