基準認証政策の現状と課題 新たな適合性評価制度 ∼新JISマーク制度を中心として∼ 2004年2月 経済産業省 産業技術環境局 基準認証ユニット 認証課 1 目 次(1) 0.はじめに 1.改革の概要 1ー1.工業標準化法上の適合性評価制度の改革 1−2.第三者認証制度への転換 1−3.現行制度及び新制度の骨格案 1−4.指定商品制の廃止による自由度の高い制度へ 2.登録認証機関について 2−1.新制度下の登録認証機関について 2−2.登録認証機関の登録基準−登録基準の考え方 2−3.登録認証機関の登録基準−ガイド65のポイント 2 0.はじめに o JI Sマーク制度は、昭和24年の工業標準化法の制定から約 50年間、その基本的仕組みを維持。 o 認証主体は、国(主務大臣)又は国が指定(承認)した機関。 o 対象となる品目(JI S)は国が指定(指定商品制) 平成14年度末現在、643品目(約1300規格)が対象。 o 申請は、「品目」毎に、「製造業者」の「工場又は事業場」毎。 o JI S工場は、現在、国内で約13000工場。 o JI S工場は、海外で約400工場。 o 工業標準化法の改正により、平成17年度までに新JI Sマー ク制度に転換。 3 1−1.工業標準化法上の適合性評価制度の改革 o 「自己確認、自主保安」を基本 n 「JI S適合表明」 の方法を選択(自己適合宣言、試験証明書利用、第 三者製品認証の取得) n 「公益法人改革に関する閣議決定」に基づき、現行JISマーク制度、 JNLA制度とも、平成17年度までに新制度に移行 o 「登録機関」による製品認証制度へ転換 n 「指定商品制」を撤廃→対象JI Sの自由化 o 多様なニーズに対応できる認証制度への転換 n 生産技術の進歩、製造業者・販売業者・使用者・ 消費者・調達主体・ 強制法規当局等利用者のニーズの多様化に対応 n 国際ガイドとの整合性のとれた「 第三者製品認証制度」へ n 「製品のJI S適合性試験」と「工場の品質管理の審査」による認証 4 1−2.第三者認証制度への転換 −政府の役割は「認証主体」から「登録主体」に− 現行制度 新制度 登録機関による検査等 政府責任による検査等 →検査結果に対して政府が責任を負う →検査結果に対して第三者機関が責任を負う 政府の代行 検査等 公益法人 等 政府 公益法人 等 事業者 政府 指定制 行政 行政 第三者 チェック 事業者 行政の裁量の ない登録制 民間 民間 (注)公益法人改革のポイント(行政改革事務局)資料を基に作成 5 1−3.現行制度及び新制度の骨格案 第三者 現行制度 J I Sに該当しな い旨の「申し出」 個別審査事 項等で審査 指定 立入検査、適合命令、 JASC 報告徴収、指定取消し 国 JASC 指定 報告 指定認定機関 or 指定検査機関 認証 公示検査 製 造 業 者 製品購入 検査品目の公示、試買検査、立入検査、報告徴収、販売停止、認証の取消し 新制度骨格案 第三者 試買検査 JI Sに該当しな い旨の「申し出」 Accreditation (認定)制度 国 ユーザー 認証手順等に関する情報 登録 認証 立入検査、適合命令、 報告徴収、登録の取消し 試買検査結果を踏まえ、又は申し 出があった場合検査実施要請 検査結果報告 認証方法に関する指針 (ガイドライン)を法令で規定 登 録 機 関 契約 定期検査 臨時検査 認証取消し 登録機関が品目ごとに作成 する「認証手順」により審査 製 造 業 者 新JI Sマーク 特定の「側面」 and/or 等級・グレード ユーザー 登録機関名 製品購入 試 買 6 1−4.指定商品制の廃止による自由度の高い制度へ 規格適合性の表示方法は、 JI Sマークによる表示が主 規格適合性の表示方法は、多様 な手段から最適なものを選択 指定商品については、JI Sマーク以外の 適合性表示を厳しく禁止 【指定商品】 J I S工場のJ I S マークによる規 格適合性宣言 製品 国が対象品目を指定 約1300規格 【非指定商品】 規格適合性 の自己宣言 製品 JNLA試験証明 書を活用した規 格適合性宣言 製品 JI Sマーク表示は不可 JI Sマーク以外の規格 適合性表示が可能 その他の品目 約2900規格 企業 JNLA制度 選 択 J I Sマークによ る規格適合性 宣言 製品 規格適合性 の自己宣言 製品 JNLA試験証明 書を活用した規 格適合性宣言 製品 JI S(製品規格) = JI Sマーク以外表示不可 JI S工場以外は JI Sマーク表示不可 JNLA制度 新JISマー ク制 度 JISマー ク制 度 企業 指定品目制度がなくなり、マーク対象品目(製品規格)について も、JI Sマーク以外の方法による規格適合性表示が可能 JI Sマーク対象品目 7 2−1.新制度下の登録認証機関について <現行JI Sマーク制度> 「個別審 査事項」 指定 事後措置 <新JI Sマーク制度> 主務大臣 料金 認可 指定認定機関 主務大臣 料金 認可 指定 事後措置 指定検査機関 登録 ガイド65 に調査を依頼 ガイド65 適合性 登録認証機関 or 認定 「個別審査事項」 「認証 指針」 Accreditation 制度 事後 措置 必要に応じNITE 事後措置 (立入検査、 取消し等) 事業者(製品) 他の認証機関 サーベイランス 事後措置 認証 (サーベイランス、 「認証手順」 取消し等) 料金自由化 料金自由化 事業者・製品 自ら貼布 自ら貼布 新J I Sマーク 側面 登録機関名又はロゴ 8 2−2.登録認証機関の登録基準 <登録基準の考え方> ★基本的には、ISO/IECガイド65 (製品認証機関に対する一般 要求事項)に適合すること。 ★追加要件として、「認証機関」自身が当該認証対象分野の 「製造業者等」からの支配を受けるような組織でないこと。 〔主な要求事項の一例〕 ◆公平性/・認証の方針、手順、運用が差別的であってはならない。 ・協会、グループ等の会員であることを条件にしてはならない。 ◆公正性/・認証対象の「製造業者等」に対するコンサルタント・サービスを 行ってはならない。 ・認証対象の「 製品」と同じ品目の製品の供給・ 設計をしていない。 ◆独立性/・ 認証対象の「 製造業者等」が親会社であってはならない。 ・「 認証機関」 の役員のうち、認証対象の「 製造業者等」は1/2以下 でなければならない。 ・「認証機関」の代表権をもつ役員が認証対象の「 製造業者等」の 役職員であってはならない。 9 2−3.登録認証機関の登録基準 ISO/IECガイド65の項目のポイント =JI SQ 0065(製品認証機関に対する一般要求事項) 〔ガイド65の要件の一例〕 (1) (2) (3) (4) (5) 組織的に公平性が保たれていること。 認証の授与及び取消しに関する決定に責任を負うこと。 認証業務運営から生じる賠償責任等の債務に対して備えがあること。 認証システムに必要な財政的安定性と経営資源(人、もの、財)があること。 認証業務の遂行に際して、試験能力があること。 また、試験を行う試験所はISO/IEC 17025の要件に適合していること。 → ISO/IEC 17025=JI SQ17025(試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項) (6) 認証機能に必要な教育訓練を受け、技術的な知識経験を有する十分な数 の要員を雇用していること。 (7) 認証活動の過程において得られる情報の機密を保護するために機密保持、 守秘義務の取決めがあること。 10 目 次(2) 3.認証の方法について 3−1.国際基準と整合のとれた認証方法の導入 3ー2.認証の方法について−第三者製品認証制度の構成 3−3.認証の方法について−国は、認証指針を作成 3−4.認証の方法について−認証の申請者 3−5.認証の方法について−申請者と認証の方法 3−6.認証の方法について−製品の製造工場の審査 3−7.認証の方法について−製品の適合性試験 3−8.認証の方法について−認証の手順の流れ 4.現行JI Sマークと新JI Sマーク案 11 3−1.国際基準と整合のとれた認証方法の導入 日本特有の 審査基準 現行JI Sマーク制度 新JI Sマーク制度 (初回工場審査の内容) or •信頼性の 一層の向 上 •生産方法 をふまえ た審査 •一層の国 際整合化 •型式試験* •ロット試験 •サンプリング試験 and 整 合 一般認証指針 + 分野別認証指針 (登録機関ごとの) 認証手順 品質管理 品質管理 資材管理、製造工程管 理、設備管理方法につ いて品目ごとに個別具 体的・仕様的に規定した 個別審査事項への適合 性を審査 登録機関として適正実施を確保 規格該当性試験 験 験 and 試 試 個別審査事項 品目(規格)ごとに必 要な生産設備、管理 方法を仕様的に規定 該当規格で規定して いる製品の品質(形 状・寸法、秤量、強度、 運転性能 or 安全性 能)を同規格で規定し ている検査方法に基 づき製造業者が確認 していることを審査 (初回検査の内容) 国際基準 ISO9001との両立 性が確保された 品質システムの 審査・ サーベイラ ンス ISO9001をベースとした 審査 *製品認証と組合されることがある 申請者の希望する 製品、製品群、材料 等ごとに認証 12 3−2.認証の方法について −第三者製品認証制度の構成− 【国際整合のとれた信頼性の高い製品認証制度へ】 o 新JI Sマーク制度は、製品認証制度に関する国際ガ イド(I SO/I ECガイド28)に準拠した認証制度へ。 o 新JI Sマーク制度の「 認証手順」 は、 ①製品のJI S適合性試験(製品試験)、 ②製品の製造工場の品質管理の審査 により製品の( 初回の)認証を実施。その後、 ③定期的サーベイランス( ①及び②の結果の維持) を実施する①+②+③が基本構成。 13 3−3.認証の方法について −国は、認証指針を作成− o JI S製品規格(約4100規格)が認証の対象。 o 登録認証機関による「認証手順」の統一性及び国際 整合された適合性評価手続きの確保のため、国は、 認証指針(一般認証指針&分野別認証指針) をI SO/I ECガイド28に基づいて作成。 o 登録機関は、「 認証指針」 に基づいて、それぞれの機 関の特徴を付加して、「 認証手順」 を作成。 o 「認証手順」は、国に届出。 o 国は、「 認証手順」 を公表。 14 3−4.認証の方法について −認証の申請者− o 認証の申請者は次のいずれか 【製造業者】 製品を製造する者 【販売業者、輸入業者】 製品を販売する者 o 申請に当り、まず、次を明確化。 ●認証する製品を特定(認証の区分に基づく)。 ●製品の製造工場の範囲を特定。 (備考) ○△工業㈱のA工場(東京)で製品の部品を製造、B工場(埼 玉県)で製品をアセンブリ、C工場(神奈川県)で製品検査、出荷の場 合、A工場、B工場、C工場が対象範囲 ●製品が適合を表明する日本工業規格を特定。 15 3−5.認証の方法について −申請者と認証の方法− 《製造業者が申請者の場合》 【製品の継続的製造(前)の場合(マスプロ製品)】 「製品試験」+「製造工場の品質管理の審査」+「認証後のサーベイ ランス」の実施。 【製品のロット毎/バッチ毎の製造(前)の場合】 「製品試験」+「製造工場の品質管理の審査」の実施。 「認証後のサーベイランス」は実施しない。 《販売業者、輸入業者が申請者の場合》 【製品のロット毎/バッチ毎の製造(後)の場合】 「製品試験」+「製品を製造した工場の品質管理の実施状況につい て証拠書類の審査」の実施。 (備考)「製品試験」が全数検査によって実施される場合、「製造工場の品質 管理の審査」を省略できる。 16 3−6.認証の方法について −製品の製造工場の審査− o 申請書には、「品質管理実施状況説明書」を添 付。(備考)「社内標準化」と「全社的品質管理」体制の 構築 o 「品質管理実施状況説明書」では、JI SQ900 1に基づく品質管理体制の選択が可能。 o この場合、製造工場の品質管理の審査に際し、 I SO9001審査登録結果の活用が可能。 o 無論、JI SQ9001に基づかない品質管理体制 による申請も可能。 17 3−7.認証の方法について −製品の適合性試験− o 製品の規格適合性の試験(製品試験)は、登録認証機 関の責任で実施。すなわち、登録認証機関が製品の規 格適合性を保証。 o 製品試験は次のいずれかによる。 (1)登録認証機関の「試験設備」で実施。 (2)登録認証機関の「下請負試験機関」で実施。 (3)申請者の「試験設備(下請負試験機関を含む)」で、登 録認証機関の試験員が自ら実施又は立会して実施。 ( 備考)上記(3)では、登録認証機関が、申請者の「試験設備又は下請 負機関」について、試験装置、試験員、試験手順等について、「I SO /I EC17025」への該当性を確認する。 18 3−8.認証の方法について −認証の手順の流れ− 1.認証の依頼 2.認証対象製品等条件の決定 3.【工場審査】製品の製造工場の品質管理の審査 4.【製品試験】製品の規格適合性試験 5.評価 6.認証の決定 7.認証書の発行 8.認証マークの使用に係る契約書の締結 9.定期的サーベイランスによる認証の維持 19 4.現行JISマークと新JISマーク案 現行制度 新制度案 新JI Sマーク 特定の「側面」 目的付記(*) (*):例えば、難燃、更生タイヤの表示 (注1) and/or 等級・グレード 登録機関名又はロゴ (注1)特定の「側 面」に 着目して制定された規 格の場合 (注2) (注2)規格に等級・グ レードが規定されてい る場合 20 目 次(3) 5.JNLA制度について 5−1.JNLA制度について−現行制度の概要 5−2.JNLA制度について−現行制度の認定業務の流れ 5−3.JNLA制度について−新制度の概要 5−4.JNLA制度について−新制度の認定業務の流れ 6.期待される効果 6−1.期待される効果−強制法規等での活用 6−2.期待される効果−製品認証のグローバルネットワーク への統合 7.今後のスケジュール(予定) 21 5−1.JNLA制度について −現行制度の概要− o 工業標準化法に基づく試験事業者認定制度 試験所に対する国際的な要求事項であるISO/IEC17025への適合性について、そ の管理体制、要員、試験施設・機器などが適切であるかどうかを書類審査と現地 審査の結果に基づき判断し、申請範囲の試験を実施する能力をもっていると認め られた事業者に認定書が発行される。 è ISO/IEC17025(試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項)を基準として 認定 (備考)JNLAとは、Japan National Laboratory Accreditation の略。 o o o 認定試験事業者は省令で定める標章を試験証明書に付すことができる 認定範囲 標章( 認定シンボル) n 「指定商品以外の鉱工業品に関する試験方法のJI S」 n 金属材料、繊維製品、給水関連器具、化学品、電気製品、建築材料、生活用 品(抗菌性)及び放射線関連用品の8分野 本制度の目的 n 指定商品以外の鉱工業品が日本工業規格(JI S)に該当することを明らかに すること(自己適合宣言)の支援策 22 5−2.JNLA制度について −現行制度の認定業務の流れ− 申請 (← 質問 ) ( 回答 →) 顧 客 標章付き 試験 証明書の 交付 申 請 者 (←審査報告書) NITE 認定センター 申請書受理 (是正報告書→) 通知 認定証 報告徴収 立入検査 認定の取消し 権限 書類審査 現地審査 委任 経 済 産 業 大 臣 評定委員会 認定/認定拒否 23 5−3.JNLA制度について −新制度の概要− o 「認定」から「登録」へ転換 n 登録の基準は「国際標準化機構及び国際電気標準会議が定めた試 験を行う機関に関する基準 è ISO/IEC17025の基準を満足(JI S法上は変更されるが、基準は現行と同じ) し、行政裁量の余地のない形で国により登録される。 o 「登録対象範囲」 の拡大 n 「指定商品以外の鉱工業品に関する試験方法のJI S」から「 すべての 鉱工業品に係る試験方法のJI S」 è 現JNLAの対象は約2,600規格から、約7,000規格へ(製品規格(約4,100)+方 法規格(約2,900)) o 新制度の目的 n 自己適合宣言の支援策に加え、新JI Sマーク制度の「製品の適合性 試験」におけるISO/IEC17025への該当性を証明する方法にも活用 o 「更新制」 の導入 n 政令で定める期間ごとに登録の更新を受けることを新たに義務付け 24 5−4.JNLA制度について −新制度の登録業務の流れ− 申請 (← 質問 ) ( 回答 →) 顧 客 標章付き 試験 証明書の 交付 申 請 者 (←審査報告書) NITE 認定センター 申請書受理 (是正報告書→) 通知 登録証 権限 書類審査 現地審査 報告徴収 更新 立入検査 登録の取消し 委任 経 済 産 業 大 臣 評定委員会 登録/登録拒否 25 6−1.期待される効果 −強制法規等での活用− 整合化 国際基準 新JI Sマーク制度 登録機関 ガイド61 適合 ガイド65 適合 技術基準 調達基準 ガイド28、 53等適合 認証スキーム 企業/工場 = 基準として 活用 引用されたJ I S規 格に適合しており、 同時に強制法規に 適合と見なされる 技術基準に整合 国際基準に整合した規格適合性の宣言 製品 安全 安全 製品 国際整合化した JI Sの活用 適合義務 適合するJ I Sは 国際整合化 企業/工場 製品 引用 JIS Accreditation 製品 政府機関 強制法規等 Accreditation制度 登録 強制法規等 製品 製品 <安全> 製品 <安全> <安全> 消費者・使用者が受入れ (第三者監査の代替) そのまま受入れられる 調達主体・使用者が 26 受入れ (国際基準に適合した調達へ) 6−2. 期待される効果 − 製品認証のグローバルネットワークへの統合− 新JISマーク制度 海外の認証制度 国(登録主体) Accreditation(認定) 制度 登 録 申 請 規制当局等 業務の適性 実施確保 製品認証 製品認証機関 の認定機関 MLA 登 報 録 告 指定 業務の適性実施確保 同等性 基準該当性評価 登録認証機関 新JISマークを用いた製品認証 製造業者等 認定 確認 製品認証機関 製品認証 製造業者 27 7.今後のスケジュール(予定) o 平成15年度: 関係者と調整を進めながら、 JIS法改正案の具体化。 o 平成16年度: JIS法の改正。 o 平成17年度: 登録認証機関の登録申請受 付開始。 新JIS法の本格的施行。 28
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