Vol.11 2015年10月16日 新センター長の就任について 2015年10月、臨床スポーツ医学センター長に酒井清司先生が就任いたしました。 先生は日本体育協会公認スポーツドクターでもあり、スポーツによる障害・外傷のみならず中高年の方々の 関節疾患や運動にも大変詳しい先生です。今後とも臨床スポーツ医学センターをよろしくお願いします。 酒井先生のプロフィール 黒部市民病院整形外科部長 日本体育協会公認スポーツドクター 日本整形外科学会専門医 日本リウマチ学会専門医 日本肩関節学会QOL評価表検討委員 富山県民登山教室サポートドクター 前 職 : 富山赤十字病院 専門分野:肩・肘・膝関節鏡視下手術、人工関節 スポーツ外傷・障害 スポーツ:登山、山岳スキー、マラソン 酒井先生の整形外科診療日 (平成27年10月現在) 月曜 午前、火曜 午前、水曜 午後(予約)、木曜(午前) 学会参加報告 第70回日本体力医学会大会 期 間:平成27年9月18日(金)~20日(日) 開催地:和歌山県和歌山市 和歌山県民文化会館 アバローム紀の国 一般演題「スポーツと疾患」 「富山県黒部市における小中学生野球選手全例を対象とした野球肘検診と野球肘発症予防対策の概要」 当院では黒部市と協力して、小中学生を対象としたスポーツ障害検診を行っています。今回の学会では昨年 までに行われていた野球肘検診について発表。 発表要旨 無症候性の肘障害も発見することと、正確な地域の実情を知る目的で、地域の小中学生野球選手全例を対象 とする検診を行っています。 重症例である上腕骨小頭離断性骨軟骨炎(OCD)を早い段階でみつけることができるため、軽症の段階で 治療が開始できます。 本研究によりOCDの約半数は無症状であることや低学年にも発症していることが分かりました。また、 OCDは予防介入しても発症率は変わらず、発症機序からも遺伝的内因的な要因が推測されていますが、それ を裏付ける結果となりました。 また、肩の内旋柔軟性、股関節内旋柔軟性などと肘障害との間に深い関係があることも分かり、普段のコン ディショニングにおいて重点的に取り組むべき内容も絞られてきました。今後はより医科学的に根拠のある野 球肘予防プログラムを作成し多くの方々に活用していただければと考えています。 注:黒部市広報9月号11頁の「医療最前線」に一部、上記野球肘検診の結果が掲載されていますが編集上のミス で誤った内容が記載されています。正しくは上記の内容です。 その他の講演シンポジウムの聴講から 「内部障害の予防・改善における身体活動の有用性 (腎臓疾患、肝臓疾患、末梢動脈疾患)」 これまで、運動について比較的慎重であった腎臓・肝臓についてもエビデンスが蓄積し、新たな提言がだ されるようになってきました。 腎臓については近年、腎不全の患者さんに対しても積極的に運動を行うことが推奨されるようになりまし た。運動後の尿蛋白陽性にみられる腎過剰負荷の表出については一過性であり、中長期的にはむしろ腎機能 を維持することになるようです。また、同時に心血管など他の疾患群を合併することが多い腎症において、 腎機能の維持もさることながら、心血管状態を改善させることがトータルでの死亡率を下げることにもなり ます。しかし、一過性とはいえ腎過剰負荷がかかることは個別の案件においては避けるべきケースもあると 思われますので、今後は個別での腎負荷の定量化や適切な運動負荷量、強度についての詳細な検討が必要に なると思います。当センターにおいても検討したいと考えています。 肝疾患については脂肪肝における運動療法の効果は知られていますが、肝硬変、ウイルス性肝炎、肝癌に おける運動について報告されました。以前の肝庇護療法に代表される安静を基本とした対処がありましたが、 肝血流などの評価から運動によるデメリットが少ないことが示されました。今後、肝臓運動療法の研究が進 みそうです。 末梢動脈疾患については運動によるメリットは既に知られていますが、歩行以外の運動様式についての検 討も紹介され、より個人に合った内容が提供される時代になってきました。閉塞している部位、運動強度に よる一過性の虚血の程度などを評価するなど個々の運動処方が求められます。 学会全体を通して サルコペニア、フレイル、ロコモティブシンドロームなどの研究や取り組みが多くみられました。 また、スポーツ庁の設置による運動分野の法的制度的改善が期待される中、運動指導の資質向上も急務と なっているように感じました。 参加報告 平成27年度健康運動指導者研究交流会 日 時:平成27年9月26日(土)から27日(日) 開催地:石川県金沢市 金沢駅西健康ホール シンポジウム 「北陸における一歩進んだロコモへの取り組みと健康運動 指導者の役割を考える」 本交流会は全国各地で行われており、今年度は石川県が開催地で した。 2日目のシンポジウムではロコモティブシンドローム対策として北陸三県からそれぞれ異なる職域からの報告 がありました。石川県からは県の健康推進課が行っているロコモ対策事業について、福井県からは市町で行わ れている健康づくり事業の介入効果について、富山県からは、医療現場で行われる運動器対策について当院臨 床スポーツ医学センターが報告しました。 ロコモ対策は、医療、介護、教育、地域など様々な場面でそれぞれの関わりや対策が講じられつつあります。 当センターでは医療現場のみならず、行政や教育機関と連携して地域住民の方々や学校現場の方々における 健康増進やロコモ対策のお手伝いをしています。幅広く縦断的な対策が必要な分野ですので関連の方々と協力 して事業を進めていければと思います。 今後の予定 ・スポーツ医科学チェック(スキーデモ選手) 日 時:平成27年11月3日 会 場:臨床スポーツ医学センター 対 象:富山県デモスキー強化選手 ・第18回新川糖尿病フォーラム 日 時:平成27年11月7日 会 場:新川文化ホール 対 象:市民 医療関係者 ・世界糖尿病デー ブルーライトアップ 日 時:平成27年11月14日 会 場:黒部市民病院新外来棟 ・出張青少年健康教室 日 時:平成27年11月26日 会 場:滑川市立南部小学校 対 象:小学生 ・平成27年度日体協アスレティックトレーナー北信越 ブロック研修会 日 時:平成27年11月28日~29日 会 場:富山大学五福キャンパス 対 象:JASA公認アスレティックトレーナー 発行 黒部市民病院臨床スポーツ医学センター 0765 54-2211 (内線5310) [email protected]
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