平成26年度 設計課題 温浴施設のある「道の駅」 Ⅰ.設計条件の読取り解説 (平成26年度 温浴施設のある道の駅) Ⅰ.設計条件 ※太字は解説用のもの この課題は、ある地方都市の郊外の渓流沿いに建つ「道の駅」を計画するもので ある。本施設は、休憩、情報発信等のサービス施設に加えて、地域振興や地域住 民の交流の場となるように、地域特産品売場、レストランのほか、地域住民も利用で きる温浴施設を設けるものとする。また、敷地に隣接する駐車場は、本施設の利用 者だけでなく、親水公園や渓流で水遊び・散策等をする者も利用することができるも のとする。 1.敷地及び周辺条件 ※太字は解説用、赤字は記載内容 (1)敷地の形状、接道条件、周辺状況等は、下図のとおりである。 (2)敷地は、平坦で、道路及び隣地との高低差はないものとする。 (3)敷地は、都市計画区域及び準都市計画区域以外の区域内にあるが、景観保全 のため建築物に関して次の制限がある。 ①建ぺい率の限度は70%、容積率の限度は200%である。 建ぺい率 1800×0.7=1260㎡以下 ②主要な屋根は、勾配屋根とする。 (4)電気、ガス及び上下水道は、完備している。 (5)地盤は良好であり、杭打ちの必要はない。 (6)渓流の氾濫、地下水及び積雪についての特別の配慮はしなくてよい。 歩 道 車 道 18m 歩 道 地形略 断面図 縮尺 1/2,000 樹 林 親水公園 利用者アプローチ 屋根勾配 36m 1,800㎡ 道 路 動線 N 36m 管理者アプロー 6m ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 50m ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 渓 流 ・ 眺望良好 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 縮尺1/2,000 樹 林 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 6m ・ ・ 「・・・休憩、情報発信等のサービス施設・・・地域特産品売場、レストラン・・・温浴施設・・・」 本計画で重要な室は、上記4施設であると判断できる。設計課題は、毎年、学科試験の前々日金曜日 に公表されるが、「温浴施設のある道の駅」という課題から温浴施設と24時間休憩(便所含む)、地域特 産品売場は確定できる。施設規模から、他はレストランか、研修室などが推定されるが、ここを読んでレ ストランであると確定できる。この瞬間に、機能図とゾーニング、更には1階(休憩・特産品)と2階(温浴・ レストラン)のプランが頭に浮かぶこととなる。 「・・・親水公園や渓流で水遊び・散策等をする者も利用・・・」 外部動線の計画では、親水公園との動線、渓流との動線があると分かり、この結果、敷地からの親水公 園と渓流との動線も必要であると読み取れる。 1.敷地及び周辺条件の読取り解説 (平成26年度 温浴施設のある道の駅) 「1.敷地及び周辺条件」からは、敷地の周辺状況との関係、つまり接道や隣地との関係が文章と敷地 図により分かる。文章の(1)から(6)までは、例年通りの内容である。ここで重要なのは、(3)の「建ぺい 率70%」と「勾配屋根の指定」である。 ②「主要な屋根は、勾配屋根とする。」 「主要な・・・」とあるので、全ての屋根を勾配屋根にしなくても良いと読み取れる(平成25年度も同様な 言い回し方である)。つまり、2階の屋上の一部は、設備機械置場にできるということである(作図時間短 縮の観点からは設置しない方が良い)。屋根勾配の方向は指示がないので、構造的負担と経済性の観 点から建物短辺となる(南北方向)。 ⇒敷地図に屋根形状を記載する。 【敷地図】 動線 敷 地 「・・・郊外の渓流沿いに建つ「道の駅」・・・」 郊外の渓流という景観に恵まれている場所に建つ道の駅であり、眺望は渓流側が良いと読み取れる。 ①「建ぺい率の限度は70%・・・」 建ぺい率は70%である。「敷地1,800㎡」から、建ぺい率が計算できる。⇒1,800×0.7=1,260㎡ 数秒で終わるので、電卓を叩いて「1,260㎡以下」を把握し、ここに記載する。 18m 駐車場(156台) 「Ⅰ.設計条件」からは、計画全体の意図が分かる。ここを簡単に読む方と、理解して読む方とでは、既 に大きな差が出ていることを理解して頂きたい。この設計条件では、4つの重要な「室」と、「外部動線」 をどうするかの解答が書かれている。 敷地 道路は北と南にあるが、北側車道が18mと広く駐車場もあるので、北側道路が利用者アプローチとなる。 南側車道は6mであり、動線交差を考慮すると、管理者アプローチはこちら側と読み取れる。 Ⅰ設計条件からは、親水公園と渓流との動線があると把握できることから、敷地からの動線も同様に必 要と判断できる。眺望は、渓流側が最も良く、次いで親水公園側である。 以上をまとめると以下の通りであり、それらを敷地図に記載する(赤部分)。 ・ ・ ・ 1)北側が利用者アプローチ(理由:北側の車道が広い、駐車場がある) 2)南側が管理者アプローチ(理由:車道が2つで南側の車道が狭い、動線交差を避けやすい) 3)親水公園との外部動線(理由:Ⅰ設計条件の駐車場での動線考慮から敷地での動線も考慮) 4)渓流との外部動線(理由:Ⅰ設計条件の駐車場での動線考慮から敷地での動線も考慮) 5)渓流側の眺望良好(理由:Ⅰ設計条件の文から判断、なお親水公園もそれなりに眺望は良い) 6)短辺方向の屋根勾配の記載(理由:構造上、経済上有利、視覚的に把握するため記載する) 2.建築物 2.建築物の読取り解説 (平成26年度 温浴施設のある道の駅) ※太字は解説用、赤字は記載内容 (1)構造、階段等 構造種別は自由とし、地上2階建ての1棟の建築物とする。 (2)床面積の合計 床面積の合計は、1,800㎡以上、2,200㎡以下とする。 この課題の床面積の算定においては、ピロティ、搭屋、バルコニー、屋外 階段等は、床面積に算入しないものとする。 (3)要求室 下表の室は、すべて計画する。 階想定 1階 2階 部門 休 憩 ・ 情 報 部 門 ○ ○ 室 名 休憩・情報スペース 男性用便所 女性用便所 ○ 多機能トイレ ○ 地域特産品売場 ○ △ ○ 店 舗 ・ 料 飲 部 門 ○ ○ 特記事項 床面積 温 浴 部 門 △ 12 約200㎡ 200 仕分け室 ・地域特産品売場用とし、冷蔵庫、食品加工室、倉庫を設ける。 約50㎡ 50 レストラン ・屋内で5 0 人程度が利用できるようにする。 ・屋外テラス と一体的に利用できるようにする。 屋外テラス=50㎡以上 ・テーブル、椅子等を設ける。 適 宜 ・厨房を設ける。 レストラン ( 厨房含む)50人×2.5~5=125~250㎡ ・眺望に配慮する。 △ ロビー ・受付カウンターを設ける。 ・下足箱を設ける。 ・自動販売機を設ける。 浴 室 ・男性用、女性用として、それぞれ1 5 人程度が同時に利用 できるようにする。 浴室( 脱衣室含む)15人×5~10=75~150㎡ ×2 ・脱衣室に洗面コーナーを設ける。 ・自然採光及び自然通風に配慮する。 リネン庫 ● エントランスホール ○ △ ○ △ ○ 80 以上 計約12㎡ ○ ○ 80 以上 ・陳列棚及びレジカウンターを設ける。 休憩室 共 用 ・ 管 理 部 門 2階 ・2室(約6㎡/1室)設ける。 ○ ○ 1階 多目的室 事務室 適 宜 10~ 20 設備スペース 従業員控室 防災備蓄倉庫 ( 2 階ホ ール70~150㎡) ・地域住民のイベント、会議、セミナー、ワークショップ等に利用する。 ・2 0 人程度が利用できるようにする。 多目的室20人×2~3=40~60㎡ 事務室4 人×5~10=20~40㎡ 適 宜 ・採用した設備計画に応じて、設備機械室(空調、給排水、 電気、消火等)、屋外機器置場等を計画する。 中央給湯方式機械室100㎡ ・非常用の自家発電設備を設ける。 非常自家発+キュービクル 屋外0 ㎡、室内50㎡ ・男性用、女性用として、それぞれ各1室設ける。 従業員控室10~20㎡ ×2 ・ロッカーを設ける。 ・外部からの利用に配慮する。 ・休憩・情報部門以外の便所及び倉庫については、適切に計画する。 ・その他必要と思われる室等は、適宜計画するものとする。 175~ 300 以上 60~ 120 リ ネン 庫=10~20㎡ ・4 人分の事務スペースを確保する。 【階想定】 150~ 300 ・和室とする。 和室3 0 人×2~4=30~120㎡ ・3 0 人程度が利用できるようにする。 ・眺望に配慮する。 ・風除室を設ける。 要求室からは、各室の床面積と設置階が判断できる。最後の記述まで一通り読んでから、再度ここに戻 り、左記赤字の「階想定」と「床面積想定」の検討に入る。この段階で検討に入る理由は以下の通り。 ①階想定と床面積想定は、ここの条件に係数を乗ずることで簡単に床面積が算定できる。 ②ここに書くことで見落としがなくなり、早い段階で1階と2階のイメージが分かる。 ③この表の右と左に書くことは、エスキス用紙に書くことに比較すると、大幅に時間短縮できる。 50~ 100 ロ ビー=50~100㎡ 約50㎡ 各階合計 容積率1 ,8 0 0 ~2 ,2 0 0 ㎡ ⇒(1,521~2,267)×1.15(ホール除く廊下・便所・倉庫等)=1 ,7 4 9 ~2 ,6 0 7 ㎡( 納まる) (2)「・・・1,800㎡以上、2,200㎡以下・・・」 「1,800㎡以上、2,200㎡以下」からは、その中間値2,000㎡が本計画の目標床面積と判断できる。理想 的には、この若干上となるが、2,100㎡を超えると屋内消火栓が必要となるので、2,000~2,099㎡が狙 い目となる。 【要求室】 休憩3 0 人×1.5~2=45~60㎡ ・3 0 人程度が利用できるようにする。 ・テーブル、椅子等を設ける。 授乳室1 0㎡、キッズ30~50㎡ ・授乳室及びキッズコーナーを設ける。 135~ 自販機2 0~30㎡ ・自動販売機コーナーを設ける。 適 宜 200 公衆電話10~15㎡ ・公衆電話コーナーを設ける。 ・交通情報、観光情報等を提供する情報パネルを設ける。 情報パ ネル=10~20㎡ ・観光案内のためのカウンターを設ける。 案内カ ウ ンター=10~15㎡ 30~ ( 5 器+10/2器)3~5=30~50㎡ ・大便器を5器、小便器を10器設ける。 50 39~ 1 3 器×3~5=39~65㎡ ・大便器を13器設ける。 65 エン トラン スホール150~200㎡ ○ (1)「構造種別は自由・・・」 「構造種別は自由・・・」からは、何を選択しても良い。道の駅が不特定多数の利用と公共的な位置付け があり、更に温浴施設が伴うことから、構造種別は、耐火性、耐久性、防水性、経済性などに優れる鉄 筋コンクリート造で確定する。 床面積想定 ・休憩・ 情報部門については 、 2 4 時間利用できるように計画する。 ・吹抜けを適切な場所にまとまったスペースで8 0 ㎡以上設け、その吹抜け部分は梁を設けない構造計画とする。 ○ 「2.建築物」からは、構造、床面積、要求室の具体的条件が分かる。ここは、エスキスすべき事項が書 かれていると理解すると分かり易い。この要求室一覧表は、1度読んで、更に最後の記述まで読み終え てから、再度ここに戻り、赤字の部分を検討する(時間短縮等になる)。 150~ 200 70~ 150 △ 40~ 60 20~ 40 100~ 150 △ 20~ 40 △ 50 886~ 635~ 1,137 1,130 表の左を利用して1階、2階を○で確定する。両方考えらえる場合は、有力な階を○、他を△とする。 休憩・情報部門 ⇒休憩、情報、便所は、24時間利用から1階確定 店舗・料飲部門 ⇒地域特産品売場は利用と搬入(仕分け室)から1階確定 レストランは、眺望の観点から2階が有力(1階も可) 温浴部門 ⇒浴室は、プライバシーと休憩室の眺望との一体化から2階確定 共用・管理部門 ⇒エントランスホールは1階確定、事務室は管理などの観点から1階確定、 防災備蓄倉庫は外部からの利用配慮にて1階確定、設備スペースは 機器の搬入と管理の観点から1階が有力(循環ろ過機室など2階も可) 従業員控室は事務室に近い1階が有力2階も可(面積の調整割振り室) 多目的室は、セミナーなどから静寂性が必要であり2階有力(1階も可) 【床面積指定】 表の右を利用して1階、2階に計算面積を入れる。計算は、特記事項内に記載する。 床面積が指定されている場合は、その数値をそのまま記載する(ここでは4室+吹抜け)。 適宜の室は、概算想定面積及び人数などに係数を乗じて求めた数値を記載する。 ⇒ここの計算係数の説明は割愛する(係数一覧は「会員講座」にて詳しく解説あり)。 床面積合計の妥当性は、下記で確認できる。 各室の合計と廊下・階段等の比率は、「7:3」がベストである。 全体の床面積が2,000㎡だとすると、各室合計は1,400㎡、廊下・階段等合計は600㎡となる。 ここで、「1階エントランスホール+2階ホール=300㎡」なので、残りの廊下等は600-300=300㎡ 従って、300㎡は、2,000㎡の15%であり、(1階+2階)×1.15=2,000㎡程度なら納まると判断できる。 左記の右側(床面積の想定)での合計は、1,496~2,017㎡である。 (1,496~2,017)×1.15=1,720~2,320㎡ ⇒2,000㎡内であることから納まると判断 なお、各階も1.15を乗じて1,000㎡程度であれば納まると判断できる。 1階:886×1.15=1,019㎡ ・・・最少で1,000㎡程度=納まると判断 2階:880×1.15=1,012㎡ ・・・最大で1,000㎡程度=納まると判断 3.その他の施設等 ※太字は解説用のもの (1)屋外テラスを、次のとおり計画する。 ①地上又は1階の屋上に、まとまったスペースで50㎡以上設ける。 ②レストランと一体的に利用できるようにする。 ③テーブル、椅子等を設ける。 (2)敷地内の駐車場は、地上に平面駐車とし、車椅子使用者用として2台分、 サービス用として2台分を設ける。 (3)地上に、屋外休憩スペースを50㎡以上設ける。 (4)(1)~(3)の「その他の施設等」は、床面積に算入しないものとする。 4.計画に当たっての留意事項 ※太字は解説用のもの (1)建築計画については、次の点に留意して計画する。 ①敷地の周辺環境に配慮する。 ②建築物はバリアフリー、セキュリティ等に配慮する。 ③休憩・情報部門、店舗・料飲部門、温浴部門及び共通・管理部門に適切に ゾーニングし、明快な動線計画とするとともに、避難等に配慮する。 ④24時間利用可能なエリアとそれ以外のエリアを明確にゾーニングし、夜間 利用に配慮する。 ⑤勾配屋根の形状を活かした室内空間となるように計画する。 ⑥自然採光及び自然通風を積極的に取り入れる計画とするとともに、日射の 遮蔽にも配慮する。 (2)構造計画については、次の点に留意して計画する。 ①建築物全体が、構造耐力上、安全であるように計画するとともに、経済性に も配慮する。 ②構造種別、架構形式及びスパン割りを適切に計画する。 ③耐震性に配慮し、必要に応じて、耐力壁等を設ける。 ④部材の断面寸法を適切に計画する。 (3)設備計画については、次の点に留意して計画する。 ①空調設備、給排水衛生設備、電気設備、消火設備等を適切に設け、環境 負荷低減に配慮する。 ②浴室の給湯設備は、熱源機器と貯湯槽からなる中央給湯方式とする。 ③エレベーターを適切に設ける。 3.その他の施設等の読取り解説 (平成26年度 温浴施設のある道の駅) 「3.その他の施設等」からは、建築物以外の要求事項が分かる。ここでは、屋外テラス、駐車場、屋外 休憩スペースの条件である。 (1)屋外テラス 「①地上又は1階の屋上・・・50㎡以上・・・」、「②レストランと一体的に利用・・・」 「地上又は1階屋上」と「レストランと一体」からは、この屋外テラスがレストランの屋外テラスとなることと、 レストランが1階でも良いし、2階でも良いと読み取れる。ただし、「2.建築物」の特記事項から、レストラ ンは眺望に配慮することとあるので、2階がベストと判断できる。 なお、①から屋外テラスは、「50㎡以上」で計画しなければならない。また、③の「テーブル、椅子等」の 書き忘れをしないようにしたい。 (2)車椅子使用者用として2台分、サービス用として2台分 敷地図で決定した通り、車椅子使用者用は北側駐車場側のアプローチとなり、サービス用は6m道路側 からのアプローチで、それぞれに2台を駐車する計画となる。 (3)「地上に、屋外休憩スペースを50㎡以上・・・」 屋外休憩スペースは、設置場所の指定はないが、「多くの人が通行して休憩できる屋外の場所」と考え ると、北側の駐車場に面した場所がベストと判断できる。こちらも50㎡以上に注意する。 4.計画に当たっての留意事項の読取り解説 (平成26年度 温浴施設のある道の駅) 「4.計画に当たっての留意事項」からは、建築計画、構造計画、設備計画の留意すべき事項が分かる。 大部分が例年通りの内容であったが、その中でも、次の2点が従来と異なる出題であった。 (1)の④「24時間利用可能なエリアとそれ以外のエリアを明確にゾーニングし、夜間利用に配慮する。」 「24時間利用可能なエリアとそれ以外のエリアを明確にゾーニングし」からは、この休憩・情報部門が一 体で他と明確に分けることと読み取れる。また、「夜間利用に配慮する」から、夜間の利用もある駐車場 からの利用がし易い位置に配置すると読み取れる(敷地の北側に計画となる)。 (3)の②「浴室の給湯設備は、熱源機器と貯湯槽からなる中央給湯方式とする。」 「浴室の給湯設備は、熱源機器と貯湯槽からなる中央給湯方式とする」と中央給湯方式を指定した出題 は初となる。浴室の給湯設備であることから、設備機械室は、2階浴槽からあまり遠くない位置で、可能 であれば機器搬出入の観点から1階が望ましいと判断できる。 Ⅱ.要求図書 Ⅱ.要求図書の読取り解説 (平成26年度 温浴施設のある道の駅) 答案用紙Ⅰ及び答案用紙Ⅱの定められた枠内(寸法線については枠外でもよ い。)に、黒鉛筆を用いて記入する。 1.要求図書(答案用紙Ⅰに記入) ※太字は解説用のもの 下表により、所定の図面を作成し(フリーハンドでもよい。)、必要な事項を記入 する。 図面及び縮尺 特記事項 (1)1階平面図兼配置図 ①1階平面図兼配置図及び2階平面図には、次のものを図示又は記入する。 1/200 イ.建築物の主要寸法(柱割り及び床面積の計算に必要な程度) ロ.室名等 (2)2階平面図 1/200 ハ.要求室の床面積 ニ.2 4 時間利用可能なエリア とそれ以外のエリア との区分( 破線で図示する。) ホ.採用した構造種別、架構形式及びスパン割りに応じて必要となる構造要素(必要に より、凡例の空欄に名称・記号を記入し、図示する。) ヘ.設備シャフト[パイプシャフト(PS)、ダクトスペース(DS)、電気シャフト(EPS)]の位置 ト.設備計画に応じた設備スペース チ.断面図の切断位置 リ.屋外テラス ヌ.要求室の特記事項に記載されている什器等 ②1階平面図兼配置図には、次のものを図示又は記入する。 イ.建築物の出入口 ロ.敷地内の駐車場 ハ.屋外休憩スペース ニ.通路、植栽等 ③2階平面図には、次のものを図示又は記入する。 イ.居室の最も遠い位置から直通階段の一に至る歩行距離及び経路 ロ.1階の屋根、ひさし等となる部分 ハ.2 階の屋根の形状( 軒先、棟等を一点鎖線で図示する。) (3)断面図 1/200 1/200 1.要求図書(答案用紙Ⅰに記入)の読取り解説 (平成26年度 温浴施設のある道の駅) 「1.要求図書(答案用紙Ⅰに記入)」からは、答案用紙に記入する特記事項が分かる。 「・・・フリーハンドでもよい。・・・」 「・・・フリーハンドでもよい。」からは、定規やテンプレートを使用しないでフリーハンドも可となる。特に、 便器、机、いす、外構などは、テンプレートを利用するよりもフリーハンドで書く方が断然早い(訓練次第 だが、時間的には約半分となる)。従って、時間がない場合、便器や机などは、フリーハンドで書くことも 念頭にする。 【特記事項】 特記事項に書いている内容は、全て図面に書かないとランクⅠ(合格)にたどり着けないと思った方が 良い。従って、図面を書き終えた段階で、最後の「ミス10個探し」をするときは、第一にこの特記事項を 一つ一つチェックしながら書き忘れがないかを確認する。 (1)1階平面図兼配置図、(2)2階平面図での注意事項 特記事項は、毎年ほぼ同じであるが、平成26年度では、下記2点が新たに追加された(過去に出題が なかったこともあり、書き忘れた方が多かった)。 ①のニ「24時間利用可能なエリアとそれ以外のエリアとの区分(破線で図示する。)」 休憩・除法部門は、一体で計画し、その全てを破線で図示する。この場合、24時間管理となっているの で、必要な場所には、一点鎖線でシャッター等が必要である。 ③のハ「2階の屋根の形状(軒先、棟等を一点鎖線で図示する。) 2階平面には、1階の軒先と棟等を一点鎖線で図示する。これも初の出題であり、軒先だけではなく、棟 部分にも一点鎖線が必要である。 上記以外については、従来通りの出題内容であった。その中でも注意すべき点は以下の通り。 1)①のヌ「・・・什器等」 平成25年度にも出題されているが、要求室の特記事項に記載されている什器等は書き忘れないよう する。 2)③のイ「・・・歩行距離・・・」 例年通り「歩行距離」の記載が必要であるが、2階の浴室又はレストランの重複距離は20m以下であり、 この確保のための廊下、階段、出入口の位置等の計画では、注意が必要である。 3)③のロ「1階の屋根、ひさし等・・・」 出入口の上部(機械室の出入口含む)には、書き忘れと判断されないように必ず「ひさし」を記載する。 ①切断位置は、建築物の全体の立体構成及び勾配屋根の形状を活かした空間構成が 分かる断面とする。なお、水平方向、鉛直方向の省略は行わないものとする。 (3)断面図の注意事項 ②搭屋を除く建築物の高さ、階高、天井高、1階床高、主要な室名及び屋根の勾配を記入する。 ①「切断位置は、・・・勾配屋根の形状を・・・」 切断位置は、勾配屋根の形状の分かる断面であることから、短辺方向に切断する。 ③基礎、梁及びスラブの断面を図示する。 (4)2階梁伏図 ①「・・・枠内・・・」 この「・・・枠内・・・」からは、図面である答案用紙Ⅰはもちろんのこと、記述である答案用紙Ⅱも、枠内に 収まるように記入すると読み取れる。 ①2階からの見下げ図とし、主要な柱、大梁、小梁及びスラブは構造部材表の符号を明示する。 (4)2階梁伏図の注意事項 ②構造部材表に主要な柱、大梁、小梁及びスラブの断面寸法を記入し、主要な部材が複数と ①「2階からの見下げ図・・・」 例年通り2階からの見下げ図による梁伏図の出題である。通常、見下げ図の梁は点線で、見上げ図の 梁は実線で書くことが一般的であるが、平成21年度から平成24年度の試験元による標準解答例では、 見下げ図に対して1例を実線、もう1例が点線となっている。平成25年度と平成26年度は、2例共に実線 である。このことから、見下げ図の梁も「実線」で良いと解釈できる(実線の方が早い)。 なる場合は空欄に符号・部材・断面寸法を追加記入する。 2.面積表(答案用紙Ⅰに記入) ※太字は解説用のもの 地上1、2階の床面積及びその合計を記入する。なお、各階の床面積について は、その算定式も記入する。 3.計画の要点等(答案用紙Ⅱに記入) ※太字は解説用のもの (1)建築計画について、次の①~③の要点等を具体的に記述する。なお、要求 図面では表せない部分についても記述する。 ①ゾーニング計画について工夫したこと ②休憩・情報スペース、レストラン及び浴室の計画について、その位置とした 理由及び動線計画において工夫したこと ③勾配屋根の形状を活かした室内空間とするために工夫したこと (2)構造計画について、次の①及び②の要点等を具体的に記述する。なお、 要求図面では表せない部分についても記述する。 ①構造上の特徴及び構造計画上特に配慮したこと ②勾配屋根の架構計画について、その特徴及び特に配慮したこと(図等により 補足してもよい。) (3)設備計画について、次の①及び②の要点等を具体的に記述する。なお、 要求図面では表せない部分についても記述する。 ①浴室の給湯設備において、採用した熱源方式と採用した理由及び熱源機器 の設置場所について配慮したこと ②「浴室ろ過機」、「非常用発電機」及び「地域特産品売場の空調機」について、 その設置場所を記入し、維持管理及び機器の更新について配慮したこと (4)建築物の特徴(勾配屋根、吹抜け等)に対応した環境負荷低減について、 配慮したことを具体的に記述する。なお、断面図等において補足してもよい。 2.面積表(答案用紙Ⅰに記入)の読取り解説 (平成26年度 温浴施設のある道の駅) 1、2階の床面積の計算は、エスキスの一番最後にエスキス図面を見ながら計算する。記述終了後、作 図の一番初めに面積表を完成させる。 3.計画の要点等(答案用紙Ⅱに記入)の読取り解説 (平成26年度 温浴施設のある道の駅) 「3.計画の要点等」からは、建築計画、構造計画、設備計画、環境負荷低減について、工夫したことな ど記述での解答が求められる。平成25年度、平成26年度と記述内容について、図面での補足してもよ いという記載もあるので、注意を要する。 ※記述は、5章「記述の出題パターン」を参照して下さい。 平成26年度の記述の問題は、過去の出題と類似した内容であり、(1)建築計画が3問、(2)構造計画が 2問、(3)設備計画が2問(例年3問)、環境負荷低減が1問であった。環境負荷低減は、平成21年度に 出題されてから2回目の出題である。 特徴としては、建築、構造、環境負荷のそれぞれで勾配屋根の問題が出たことである。勾配屋根の問 題は、平成25年度も出ていて、建築計画の③「勾配屋根の形状を活かした室内空間とするために工夫 したこと」は、全く同じ問題であった。更に、平成25年度の標準解答例では、勾配屋根部分に「ハイサイ ドライト」が書かれていて、これを学習していれば、記述と作図の両方でかなり解答し易かった。 勾配屋根以外の留意点は、以下の通り。 【建築計画】 ①ゾーニング計画について工夫したこと 「ゾーニング」は初出題内容であるが、計画の基本となるゾーニングの問題であり、特に難しくない。1階 と2階に分けて記載するとまとめ易い。 ②休憩・情報スペース、レストラン及び浴室の計画について、その位置とした理由及び動線計画におい て工夫したこと 「各室の位置とした理由と動線計画」の問題は、平成22年度から平成26年度まで毎年出題されている。 各3室の位置とした理由と動線計画について記載すれば良い。 【構造計画】 ①構造上の特徴及び構造計画上特に配慮したこと 毎年、「構造種別、架構形式及びスパン割り」として出題されているものの応用問題である。この「構造 種別、架構形式、スパン割り」を構造上の特徴として箇条書きし、更に「特に配慮したこと」を書き加える。 【設備計画】 ①浴室の給湯設備において、採用した熱源方式と採用した理由及び熱源機器の設置場所について配 慮したこと 本計画では、浴室の規模からボイラーが必要である。ガスが完備されていることから、ガスボイラーを採 用し、重油ボイラーとの違いを書くとまとめ易い。設置場所は、浴槽との距離や機器搬出入などでまとめ ると良い。 ②「浴室ろ過機」、「非常用発電機」及び「地域特産品売場の空調機」について、その設置場所を記入 し、維持管理及び機器の更新について配慮したこと 維持管理や機器更新は、メンテナンスのし易いさ、メンテナンススペース、機器搬出入のし易さなどで考 慮した内容を書く。なお、維持管理の問題は、平成23年度に受水槽、給水ポンプ、受変電設備で出題 されている。
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