TR03:一般大腸癌の中から遺伝性非ポリポーシス 大腸癌を効果的に発見するアルゴリズムの開発 プロジェクト責任者:東京大学医科学研究所 臨床ゲノム腫瘍学分野 古川洋一 プロジェクトマネージャー:東京大学医科学研究所 臨床ゲノム腫瘍学分野 山口貴世志 プロジェクト概要 遺伝性の大腸癌である非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)の診断には、修正Amsterdam 基準により行われることが 多いが、この基準を満たさないが原因遺伝子に病的異常のある患者が多数存在する。そこで遺伝子異常を持つ患 者を効果的に見つけ出すアルゴリズムが必要である。日本大腸癌研究会「HNPCC 登録と遺伝子解析プロジェクト」 で登録・解析を行った計123 例の遺伝子異常の情報(異常の有無)、発端者の臨床病理学的情報、および家系情報 をもとに、統計学的手法により、有用と思われる要素を抽出し, HNPCC 原因遺伝子に病的異常が存在する可能性 を予測するアルゴリズムを作成する このアルゴリズムを他の研究データで検証し、プロスペクティブスタディーを行 い、臨床へ応用する。 シーズの概要 日本の癌の死亡者数中で大腸癌は第3位を占め,年間3万人以上の人が亡くなっている。一般人の大腸癌のラ イフタイムリスクは10 分の1 と推定されている。日本の一般大腸癌患者の中で修正アムステルダム基準を満たす HNPCC 患者は約2%であるが、基準を満たさないHNPCC 患者が多数存在する。そこで臨床情報,家系情報からよ り感度・特異度の高いHNPCC 患者を見つけるアルゴリズムを開発すれば、発症前からサーベイランスプログラムを 提供することにより,より多くのHNPCC 患者の関連腫瘍を早期発見して、これらの腫瘍で亡くなる人々を減少させる ことが可能である。このようなアルゴリズムは既にアメリカ、イギリスで開発されているが,日本人に多い胃癌が HNPCC 患者で頻度が高いことが指摘されており,欧米のアルゴリズムを適用するわけにはいかない。日本人の為 のアルゴリズムの開発が必要である。 実施体制 • 日本大腸癌研究会「HNPCC 登録と遺伝子解析プロジェクト」で登録・解析を行った計123 例を対象として実施した • 同プロジェクトを中心に開発・成果還元方針を策定した。 進捗・今後の展望 • アルゴリズムの開発を終了し、妥当性評価を少数例ではあるが行った • ホームページにて危険性を評価するツールを公開し、この中に本研究成果のアルゴリズムが組み込まれる。 一般の人々がフリーでアクセスし、このツールによりハイリスク群かそうでないか自己判定が可能となる。ハイリ スク群と判定された人は、遺伝カウンセリング可能施設を受診し、遺伝子検査やサーベイランスプログラムへ参 加できるような体制の整備を今後確立する。
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