商品化をめざしたあんぽ柿の製造について

商品化をめざしたあんぽ柿の製造について
和製ドライフルーツである干し柿は、乾燥程度によって「枯露柿(ころがき)」、「あんぽ柿」に大
別されます。
枯露柿は、柿の水分含有率20~30%まで乾燥させるので固めの食感ですが、水分が抜けた分、甘味
が強く、栄養素が凝縮されています。周りに付着している白い粉は、乾燥の過程で果実内部からしみ
出したブドウ糖が結晶化したものです。あんぽ柿は、水分含有率量50~55%程度で乾燥の工程を止め、
やわらかくとろけるような口当たりとほのかな甘みが特徴です。
今回は、商品化をめざした加工品として、あんぽ柿の製造のポイントについて紹介します。
あんぽ柿の製造工程の留意点
図1 あんぽ柿の製造工程
1 衛生管理
原料調達
あんぽ柿は、食品衛生法上の製造許可は不要ですが、水分含有率が高いのでカビ
が発生しやすいこと、また加熱や洗浄をせずにそのまま食べる食品であることなど
から、衛生管理の徹底が重要です。作業場の環境整備、異物混入対策について表1
剥皮
のとおり徹底しましょう。
2 原料柿の選別
サイズ別・熟度別に分け、傷果は除きます。未熟果は追熟を行うことによって色
硫黄くん蒸
が良くなります。ヘタの周辺が耳たぶ位の硬さで果肉に赤味がさした頃が目安です。
3 剥皮
ピーラー、包丁はさびのないステンレス製のものを使用し、剥き残しがないよう
乾燥・寝か
せ
剥皮します。皮が残っているとその部分は乾燥しても収縮しないため、突起状にな
ってしまいます。(写真左)
品質管理
4 硫黄くん蒸の実施
硫黄くん蒸は、黒変色防止と殺菌のため実施します。くん蒸庫内に柿を吊し、完
全密封にします。紙の上に硫黄をのせて電熱器で加熱し、発火したら電熱器のスイ
ッチを切り、完全に燃やしガス化させます。くん蒸後、柿を搬出するときに硫黄ガ
包装・品質
保持
スを吸入しないように注意しましょう。使用する硫黄量は10~15g/㎥とし、くん蒸
時間は15分です。なお、硫黄は食品添加物にあたるため、「酸化防止剤」等の表示が
検査
必要です。
5 乾燥・寝かせ
自然乾燥や人工乾燥(または併用)で乾燥します。初期の乾燥を速やかに行うことが重要です。
人工乾燥の場合、初期の温度設定は30~35℃とし1昼夜乾燥させた後、4~5時間乾燥機や除湿機
を止め、柿全体の水分の平衡化を図るための「寝かせ」を行います。その後、温度をやや低めに設
定し、間断乾燥を行います。この「寝かせ」を行わないと外側が袋状になり、硬い仕上がりになっ
てしまいます。
皮が残ってしまったもの(中央部)
人工乾燥((エビラ)網状のへぎ)
-1-
自然乾燥(吊り下げ式)
6 乾燥終了の目安
剥皮後の柿重量が35%前後に減った時が、乾燥終了の目安です。サンプル果を決めておき、乾燥
中の柿重量の推移を測定し判断しましょう。
7 品質保持・包装・検査
水分量が高くカビが発生しやすいので、脱酸素剤を封入しガス
バリア性の高い包材を使用しヒートシールを行います。脱酸素剤
は、空気に触れると酸化し効果がなくなるので、あらかじめ小分
けにし、開封後は使い切るようにします。
異物混入の有無、シールミスによるピンホール等を拡大鏡を使っ
て念入りにチェックし出荷します。
包装されたあんぽ柿
表1 あんぽ柿製造の衛生管理のポイント
項
目
内
容
・アンモニアで柿の色が悪くなり、臭いがつくので、便所・畜舎・堆肥等の近くで
作業場の
設置条件
干さない。
・包装作業は作業場とは別の衛生的な場所で行う。
・ペット(猫等)が作業場内に入らないよう、最善の対策をとる。
・専用の清潔な作業着を着用する。毛髪が混入しないよう帽子をかぶり、マスク、手
服装
袋等を着用する。また、ローラー型の粘着テープ等で作業着についている毛髪やほ
こりを取り除く。
・剥皮作業、乾燥作業、包装作業では、別々の専用の作業着を着用する。特に包装作
業では、静電気が起きない素材の作業着を着用する。(毛髪、動物の毛、ほこり等
の付着防止)
・掃除機で作業場を清掃する。(ほこり、ゴミを取り除く)
作業前の
準備
・作業場の殺菌を行う。(70%程度のエタノールを噴射。火気厳禁及び密室では行わ
ない)
・使う機械、器具等の洗浄、アルコール消毒、乾燥を行う。
・作業前に手洗いを行う。
・下痢等体調の悪い場合や手指に傷がある場合は作業に従事しない。
・柿を吊す時に、ホッチキス針は使用しない。
異物混入
・ほころびのない帽子、白衣、前掛を着用する。(頭髪は完全に覆うこと)
対策及び
・包装作業台には帯電防止シートを敷き、静電気を防止する。
検査
・異物混入やシールミス等、拡大鏡で念入りにチェックする。
乾燥野菜・果実は、比較的容易に取り組める加工品ですが、販売に際しては衛生管理に留意し、
食品表示法に沿った表示が必要です。
【経営普及課
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農業革新支援担当
河内
由紀子】