表題: 適合性評価 - 日本計量機器工業連合会

委員会草案 OIML 2CD
日付:2014 年 2 月 19 日
参照番号:
OIML / TC 3 / SC 5 / p 2/N002/2CD
廃止文書:
OIML OIML/TC 3/SC 5/N1
OIML TC 3 / SC 5
P 会員及び O 会員並びに国際機関及び外部組織に
下記目的で送付:
表題: 適合性評価
幹事国:
米国
(会議の期日及び場所)において論議
プロジェクト
OIML TC 3 / SC 5/p2
新規文書: 法定計量における適合性評
価の際の測定の不確かさの
役割 幹事国:
予備投票のための変換及び出版のた
め:BIML による
X
CD 表題(英語)
新規文書
法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
原版:英語版
投票(P メンバーのみ)及びコメント期
限:2014 年 6 月 30 日
文書
TC 3 / SC 5 / p 2
草案
(米国)
_____________________________
_
新規文書(マーク付き版)
法定計量での適合性評価における測定の不確か
さの役割
_____________________________
2015 年 7 月 13 日の CIML オンライン投票のた
めに提出された草案
投票は 2015 年 10 月 13 日に締め切る
国際法定計量機関
文書草案-法定計量での適合性評価
における測定の不確かさの役割
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
法定計量における適合性評価における
測定の不確かさの役割
目次
1
範囲及び目的 .................................................................................................................................. 34
2
用語及び定義 .................................................................................................................................. 56
3
はじめに ..................................................................................................................................... 1015
3.1
計量器及び計量システムの特性 ............................................................................................. 15
3.2
測定の不確かさを用いる適合判断 ......................................................................................... 15
3.3
誤差対不確かさ ...................................................................................................................... 16
3.4
測定の不確かさを含む検定 .................................................................................................... 16
3.5
MPE 及び測定の不確かさ ...................................................................................................... 17
4
適合試験の判定及び測定の不確かさに関する基本的な検討事項 ............................................... 1218
5
測定の不確かさを明示的に組込んでいる適合試験の判定 .......................................................... 1421
5.1
5.2
確率密度関数(PDF) ......................................................................................................... 1623
適合確率............................................................................................................................... 1824
5.3
適合判定に関連する“リスク”及び“判定規定” .............................................................. 2026
5.3.1
5.3.2
5.3.3
5.3.4
5.3.5
5.3.6
誤った合格についてのリスク及び判定規定 .................................................................. 2026
誤った不合格についてのリスク及び判定規定............................................................... 2127
共有リスク .................................................................................................................... 2127
(指示誤差の)最大許容不確かさ................................................................................. 2329
(測定標準の)最大許容不確かさ................................................................................. 2431
判定規定についての考察の要約 .................................................................................... 2431
6
測定の不確かさを明示的に組み込んでいない適合試験の判定 ................................................... 2534
7
最大許容誤差(MPE)及び精度等級を設定する際に測定の不確かさを考慮すること .............. 2837
8
OIML 勧告及びその他の OIML 出版物への記載を考慮することが望ましい“測定の不確かさ”
に関係する選択肢及び提案された文言 ....................................................................................... 2938
8.1
試験所試験への測定の不確かさの組込み............................................................................... 38
8.2
測定の不確かさの計算 ........................................................................................................... 40
8.3
MPE 及び MPU の指定 ........................................................................................................... 41
8.4
許容可能なリスクレベルの指定 ............................................................................................. 41
8.5
共有リスクを用いないときの指示誤差の不確かさの指定 ..................................................... 41
8.6
指示誤差の不確かさの評価の複雑さ ...................................................................................... 42
8.7
型式評価の OIML 試験報告書における測定の不確かさの記録 .............................................. 42
8.8
測定の不確かさを検定に用いることについての手引きの提供 .............................................. 44
9
参考文献 ..................................................................................................................................... 3345
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
附属書 A 法定計量における“測定誤差”及び“測定の不確かさ”の共存(校正と検定との関係)
........................................................................................................................................................... 3547
附属書 B
標準正規分布表(Z 表)の使用 ...................................................................................... 4355
附属書 C
指示誤差の測定の不確かさの審査例 .............................................................................. 4759
附属書 D
測定の不確かさを組込んだリスクアセスメントの例 ..................................................... 5365
附属書 E
測定能力指数(Cm) ..................................................................................................... 5971
附属書 F
適合性を試験した計量器/システムと共に用いる測定の不確かさの確定 ..................... 6072
附属書 G
GUM に従った非自動はかりの単一測定に対する不確かさ分析の例 ............................. 6173
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
1
範囲及び目的
この OIML 文書の範囲は,OIML 幹事国及びコンビナー,並びに OIML 技術委員会,小委員会及び
プロジェクトグループの委員に対し,法定計量目的に使用する OIML 勧告及びその他の OIML 出版
物に“測定の不確かさ”の概念を組み込むための手引きを提供することである。読み手は,測定に
おける不確かさの表現の指針(以下,GUM と称す)[1] に示される概念,及び場合によってはその
補遺 [2-5] の中の概念にも最低限の一般的な習熟度をもつものと見なす。
この文書の主たる目的は,法定計量において合否判定を行うための基盤として,計量器又はシステ
ムの試験又は検定中に得られた測定値を用いる際にいつどのようにして測定の不確かさを考慮に
入れるべきかを述べる文言を OIML 出版物に組み込むことについての手引きを提供することであ
る。この OIML 文書を他の OIML 出版物に組み込む実際の手順は,第 8 節の中で提案されている。
これには,誤った適合判定(すなわち,誤合格及び誤不合格の可能性)の予想される“リスク”の
評価するための方法についての情報を提供すること及び参照することが含まれる。かかるリスクは,
計量器又はシステムの試験又は検定中に得られた測定値に付随する測定の不確かさによって必然
的に生じる。
これには,
“誤差”と“不確かさ”との違いについて,法定計量においては両方の概念(及び用語)
がいかに重要であるかを実証するような方法で補足説明することも含まれる。また,この文書は,
法定計量用途において,測定の不確かさの決定及び表現について,GUM 及びその補遺に整合する
指針及び例も提供する。
この文書の中で提供される手引きは,法定計量で用いられる計量器の型式評価及び検定の両方に適
用できることを意図している。しかし,多くの場合,測定の不確かさの決定は難しく,時間が掛か
り,したがって高額な作業となることを認識し,検定のような特定の測定状況においては,測定の
不確かさの明確な測定のある程度の簡素化又さらには回避を可能にする方法についての手引きも
示されている。実際,検定プロセスは,測定の不確かさの明確に報告する必要性を最小限にするた
め,又は避けるために用いられることが多い。
この文書のもう一つの重要な目的は,検定済みの計量器及びシステムについて,少なくとも黙示的
に,測定不確かさを考慮する方法を実証することである。次にこの文書のもう一つの重要な目的は,
通常,検定済みの計量器又はシステムが,少なくとも黙示的に,測定の不確かさを考慮する方法を
実証することである。このことは,検定済みの計器/システムを後日使用する際に得られた測定結
果(値及び不確かさ)が,計量トレーサビリティをもつためには不確かさの審査が不可欠であるこ
とから,重要である。
法定計量において試験の評価及び計量的判断によってどの国家責任機関からも同等の結果が生み
出されるためには,測定の不確かさを評価するための整合化された方法並びにその方法を計量器
及びシステムの計量的評価に用いられる判定基準に組込むことが必要である。このような両立性
は,各機関が互いの型式承認を承認する際に機関間に信頼性を築き上げるために必要な要素の
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
1 つであり,OIML 証明書制度[6]及び OIML 相互受入れ取決め(MAA)
[7]の意図した運用及び
機能につながる。一般的にこのような信頼は,検定プロセス及び証明書に信用性を与えるためにも
必要である。
この文書に示される手引きは,測定の不確かさの使用を含む要件に関して,ISO/IEC 17025 [8](試
験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項)との整合性をもつことを意図している。しかし,
この手引きの適用範囲は,国はいつ自国の校正機関及び試験所の ISO/IEC 17025 に対する認定を
求めなければならないか,又は,さらに,いつどのようにしてその国内法の中で測定の不確かさの
強制使用を規定しなければならないかについては対象として含むことを意図していないことに留
意すること。国が OIML MAA の発行参加機関である場合,OIML D 30 [9](ISO/IEC 17025 を法定
計量に関わる試験機関の評価に適用するための指針)は,その国の関係試験所によって順守されな
ければならない。
この文書の適用範囲に含まれないリスク評価に関連するその他のテーマは次のとおりである。



属性によるサンプリング試験(例えば,封印の破損,ラベリング,その他)
‘統計的分析’の意味合いにおける計器の母集団,及び
包装商品の正味量及びラベリング(OIML R 87 及び R 79 を参照)
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
2
用語及び定義
この節の記入項目は,次の参考文献から取った:VIM3 [10],VIML [11] 及び JCGM 106 [5]。一般
的に,例及び備考はここに含まれておらず,必要であれば元の参考文献を調べることが望ましい。
いくつかの例においては,定義の理解に重要であると考えられる場合,ここに備考を含めた。
2.1
量(VIM3 1.1)
現象,物体又は物質の特性であり,この特性は,数及び基準として表すことができる大きさをもつ
2.2
量の値(VIM3 1.19)
量の大きさを合わせて表す数及び基準
2.3
真の量の値(VIM3 2.11)
ある量の定義と合致する量の値
2.4
測定量(VIM3 2.3)
測定を意図される量
2.5
測定モデル(VIM3 2.48)
1 つの測定に関わることが知られているすべての量の間の数学的関係
2.6
測定関数(VIM3 2.49)
測定モデルの中の入力量の既知の量の値を用いて計算された場合に,その値が測定モデルにおける
出力量の測定された量の値である量の関数
2.7
測定された量の値(VIM3 2.10)
測定結果を表す量の値
2.8
測定の不確かさ(VIM3 2.26)
用いられた情報に基づき,測定量に起因する量の値のばらつきを特徴付ける負でないパラメータ
備考
(VIM3 にはない)
:GUM 補遺 JCGM 104 [4]では,測定の不確かさは,測定量の実質的に一意
である真の値が,どの程度十分に知られていると信じられるかの指標として記述されている。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
2.9
測定結果(VIM3 2.9)
その他の入手可能な関連情報と共に,測定量に起因する一組の量の値
2.10
測定の誤差(VIM3 2.16)
測定された量の値から量の基準量の値を引いたもの
備考 1: “測定誤差”の概念は,次の場合のいずれにも用いることができる。
a) 参照すべき単一の量の基準値が存在するとき。これは,無視できる測定の不確かさをも
つ測定された量の値を伴う測定標準で校正が行われた場合,又は,量の合意値が用いら
れた場合で測定誤差が既知であるときに生じる
b) 測定量が,一意の真の量の値又は無視できる範囲の 1 組の真の量の値で表されると想定
される場合で,測定誤差が既知ではないとき
備考 2: 測定誤差は,製造誤差又はまちがいと混同しないことが望ましい。
備考 3
(VIM3 にはない)
:
‘誤差’の考察については,計量の手引きについての合同委員会の作業部
会 1(JCGM WG1)では,上記の定義のように“誤差”が 1 つ値をもつの“値”として定義することが
望ましい,又は 1 つの値をもつ“量”として定義することが望ましいかどうかについて,2 つの立場が
存在する。かなりの論議が行われてきた。
“誤差”という用語の両方の 使い方を計量文献に見ること
ができる。この文書では,上記の定義が用いられる。参考文献[5]では,その限りではない。
2.11
測定バイアス(VIM3 2.18)
系統誤差の推定値
2.12
指示(VIM3 4.1)
計量器又は計量システムによって与えられた,量の値
備考 1: 指示は,視覚的に若しくは音響的に示されてもよいし,別の装置に転送されてもよい。指示は,
アナログ出力の場合は表示装置上のポインタの位置で,デジタル出力の場合は表示又は印刷
した数字,符号出力の場合は符号パターンで,実量器の場合は量の協定値で与えられることが
多い。
備考 2: 指示及び対応する測定されている量の値は,必ずしも同種の量の値ではない。
備考 3
(VIM3 にはない)
:
‘指示’の考察については,計量の手引きについての合同委員会の作業部
会 1(JCGM WG1)では,上記の定義のように“指示”を 1 つの“値”として,又は 1 つの値をもつ
“量”として定義することが望ましいかどうかについて,2 つの立場が存在する。かなりの論議が行わ
れてきた。
“指示”という用語の両方の使い方を計量文献に見ることができる。この文書では,上記の定
義が用いられる。参考文献[5]では,その限りではない。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
2.13
指示の誤差(VIML 0.04)
指示から基準量の値を引いたもの
備考: この基準値は,
(取決めによる)真の量の値と呼ばれることがある。しかし,OIML V2-200: 2012,
2.12,備考 1 も参照のこと。
2.14
最大許容測定誤差(MPE)
(VIM3 4.26)
既知の量の基準値を基準として,所与の測定,計量器又は計量システムに対して,仕様や法規など
で許容される測定誤差の極値
備考 1: 通常,2 つの極値が存在する場合は,
“最大許容誤差”又は“誤差限界”という用語が使用され
る。
備考 2: “公差”という用語を使って“最大許容誤差”を指すことは望ましくない。
備考 3
(VIM3 にはない)
:
‘最大許容誤差’の考察については,計量の手引きについての合同委員会
の 作業部会 1(JCGM WG1)では,上記の定義のように“最大許容誤差”を 1 つの“値”として,又
は 1 つの値をもつ“量”として定義することが望ましいかどうかについて,かなりの論議が行われてき
た。2 つの立場が存在する。この文書では,上記の定義が用いられる。参考文献[5]では,その限りで
はない。
2.15
最大許容不確かさ(MPU)
指示の誤差の不確かさがもつことができる最大値で,これに対し共有リスク手法を用いることがで
きる
2.16
計量トレーサビリティ(VIM3 2.41)
それぞれが測定の不確かさをもたらす切れ目のない文書化した校正の連鎖を通じて,結果をある標
準に関連付けることができる測定結果の性質
2.17
測定能力指数(JCGM 106 3.3.17)
ある品目の特性の測定した値に関連する標準測定不確かさの倍数で除した許容差
2.18
誤った合格のリスク(JCGM 106 3.3.15,包括的消費者リスクと呼ばれる)
将来の測定結果に基づいて不適合品が合格とされる確率
2.19
誤った不合格のリスク(JCGM 106 3.3.16,包括的生産者リスクと呼ばれる)
将来の測定結果に基づいて適合品が不合格とされる確率
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
2.20
共有リスク
測定の不確かさについていずれの当事者も利益を与えられる又は不利益を被らない試験の結果に
関連する当事者間の合意に基づくリスク
2.21
ガードバンド(JCGM 106 3.3.11)
許容差限界と対応する合格限界との間の間隔
2.22
計量システム(VIM3 4.5)
試薬及び供給品を含め,1 個以上の計量器及び多くの場合その他の装置の一式で,規定の種類の量
について規定された間隔内の測定した量の値を生成するために使用される情報を与えるために組
み付け,及び適応させたもの
備考:
計量システムは,1 個の計量器で構成されることもある。
2.23
基準動作条件(VIM3 4.11)
計量器又は計量システムの性能を評価するために,又は測定結果の比較のために,規定された動作
条件
2.24
定格動作条件(VIM3 4.9)
計量器又は計量システムが設計されたとおりに動作するために,測定中に実現しなければならない
動作条件
2.25
適合審査(VIML A.1)
製品,プロセス,システム,人又は機構に関連する規定要件が満たされていることの実証
2.26
型式(型式)評価(VIML 2.04)
計量器の特定した型式(型式)の 1 個以上の試料に対する適合審査手順で,結果的に評価報告書及
び/又は評価証明書につながる
2.27
検定(VIM3 2.44)
所与の品目が規定要件を満たすことの客観的証拠の提供
2.28
計量器の検定(VIML 2.09)
結果的に検定標識の貼付及び/又は検定証明書の発行につながる適合審査手順(型式評価以外)
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
2.29
校正(VIM3 2.39)
最初の手順で,測定標準で与えられた測定の不確かさをもつ量の値と関連測定不確かさをもつ対応
する指示との間の関係を定め,第 2 の手順でこの値を用いて指示から測定結果を得るための関係
を定める既定条件下での作業
2.30
検査(VIML A.11)
製品設計,製品,プロセス又は設置の審査,及び特定要件若しくは専門家の判断に基づく一般要件
との適合性の決定
備考:
プロセスの検査は,人,設備,技術及び方法の検査を含むことがある。
2.31
計量(VIM3.2.2)
測定及びその適用の科学
計量には,どのような測定不確かさ及び適用分野であろうと,測定の論理的及び実用的な側面すべ
てが含まれる。
2.32
法定計量(VIML 0.01)
計量に法律上及び規制上の構成及び強制を適用する慣行及びプロセス
備考-1: 法定計量の適用範囲は,国ごとに異なる可能性がある。
備考-2: 法定計量には,次が含まれる。




法定要件を設けること
規制対象の製品及び規制対象の活動の管理/適合性評価
規制対象の製品及び規制対象の活動の監督
SI 又は国際標準への規制対象の測定及び計量器のトレーサビリティのために必要な
基盤を提供すること
備考-3: 測定方法の精度及び正しさに関係する法定計量分野の範囲外の規則も存在する。
2.33
測定標準(VIM3 5.1)
エタロン(etalon)
基準として用いられる,規定された量の値及び関連する測定不確かさを伴う所与の量の定義の実現
例1
3 μg の関連標準測定不確かさを伴う 1 kg の質量の測定標準
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
例2
1 μΩの関連標準測定不確かさを伴う 100 Ωの測定標準抵抗器
例3
2 x 10-15 の相対標準測定不確かさを伴うセシウム周波数標準
例4
0.006 の関連標準測定不確かさを伴う pH 7.072 の標準緩衝液
例5
ヒト血清の中のコーチゾンの 1 組の標準液で,それぞれの溶液について測定不確かさを
伴う認証された量の値をもつもの
例6
10 種類のタンパク質それぞれの質量濃度について,測定不確かさを伴う量の値を提供す
る標準物質
備考 1: “所与の量の定義を実現”は,計量システム,実量器又は標準物質によって提供すること
ができる。
備考 2: 測定標準は,同種の他の量の測定した量の値及び関連測定不確かさを確立する際に参照
に用いら
れることが多く,したがって他の測定標準,計量器又は計量システムの校正
を通じて,計量 トレーサビリティを確立する。
備考 3: 用語“実現”は,最も一般的な意味で用いられている。これは,“実現”の 3 つの手順を
指す:

第 1 の手順は,その定義からの測定単位の物理的実現で構成され,かつ厳密な意味で
のその定義の実現にある

第 2 の手順は,
“再現”と呼ばれ,測定単位をその定義から実現するのではなく,例
えば,メートルの測定標準を確立するための周波数の安定したレーザー,ボルトのジ
ョセフソン効果又はオームの量子ホール効果の使用など,発生する物理的現象に基づ
いて高度に再現性のある測定標準を設けることにある

第 3 の手順は,測定標準として物量器を採用することにある。これは,1 kg の測定
標準の場合に生じる。
備考 4
測定標準に関連する標準測定不確かさは,常に,測定標準を用いて得た測定結果の中の複
合測定不確かさ(GUM: 1995,2.3.4 を参照)の 1 構成要素である。往々にして,この構
成要素は,複合測定不確かさの他の構成要素と比較して小さい。
備考 5
量の値及び測定不確かさは,測定標準を用いる際に決定しなければならない。
備考 6
同種又は異種のいくつかの量は,一般的に測定標準とも呼ばれる 1 つの装置で実現して
よい。
備考 7
英語では,
“具体化したもの”という単語が“実現”の代わりに用いられることもある。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
備考 8
科学技術においては,英語の単語“標準”は,2 つ以上の意味で用いられる:仕様,技術
提言,又は類似の規準文書として(フランス語の“norme”
)
,及び測定標準(フランス語
の“etalon”
)
。この用語集文書は,2 番目の意味だけに関連している。
備考 9
用語“測定標準”は,例えば‘ソフトウエア測定標準’
(ISO 5436-2 を参照)など他の計
量ツールを指すために用いられることもある。
2.34
測定精度
測定の精度
精度
測定した量の値と測定量の真の量の値との合致の近さ
備考 1: ‘測定精度’の概念は,量ではなく,また数値的な量の値は与えられない。測定は,より
小さな測定誤差を提供するときにさらに正確であるといわれる。
備考 2: 用語“測定精度”を測定の正確さの代わりに用いることは望ましくなく,また用語“測定
の精密さ”を‘測定精度’の代わりに用いることは望ましくない。
備考 3: 用語“測定精度”は,測定量による測定した量の値間の合致の近さを意味すると理解され
ることもある。
2.a 略記及び記号
BIPM
国際度量衡局
EI
指示の誤差
fEI
= 1/TUR
fS
= 1/TAR
GUM
測定不確かさの表現の指針
IEC
国際電気標準会議
IECC
国際臨床化学連合
ILAC
国際試験所認定協力機構
ISO
国際標準化機構
IUPAC
国際純正応用化学連合
IUPAP
国際純粋化学物理連合
IUT
被試験計器
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
JCGM
計量関係のガイドに関する合同委員会
MAA
OIML 相互受入れ取決め
MPE
最大許容誤差
MPU
最大許容不確かさ
OIML
国際法定計量機関
pn
不適合の確率
pfa
誤合格の確率(リスク)
pfr
誤不合格の確率(リスク)
PDF
確率密度関数
SC
OIML 小委員会
TAR
試験精度比
TC
OIML 技術委員会
TUR
試験不確かさ比
μEI
指示誤差の標準測定不確かさ
μS
測定標準(又はシステム)の標準測定不確かさ
μI
指示の標準測定不確かさ
μrep
繰返し性に関連する標準測定不確かさ
μroc
定格動作条件に関連する標準測定不確かさ
VIM
国際計量基本用語集
VIML
国際計量用語集
Z表
標準正規分布表
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
3
はじめに
GUM [1]に示された“測定の不確かさ”の概念は,現代の計量を一変させた。測定の不確かさの考
慮は,計量及び試験所認定の両方のコミュニティで測定結果の計量トレーサビリティを得るために
不可欠なものとして広く認識されている。
法定計量試験及び検定における意思決定を含め,多様な用途について,測定の不確かさの計算・使
用方法を提供する文献がますます増えてきている。これらの方法の中には,他の方法よりも複雑で
時間を要するものがある。校正機関又は試験所の環境については,明確で詳細な測定や測定の不確
かさの使用は一般的に適切であるものの,法定計量活動の中で実施される多くの測定は,試験所の
中で実施されてはいない。もっと正確に言えば,多くの法定計量活動は,比較的‘迅速かつ簡便’
な合否判定を行うことを可能にすることを意図した試験所市場環境の外中で行われており,したが
って,活動の効率性及び実用性にとっては,測定の不確かさの決定・使用方法(場合によって黙示
的にだけ)が重要になってくる(6 を参照)
。
3.1
計量器及び計量システムの特性
法定計量は,計量に対する,法律及び規制の構造と施行の適用の実践及びプロセスである [11]。法
定計量における重要な活動の一つは,公益のために,商品取引,公共の健康や安全及び環境保護な
どの分野で使用される計量器及び計量システムの特性を決定することである。これには,製造直後
並びに試験所環境の外での“市場での”設置及び使用後の計器及びシステム(又は型式)の分類及
び評価,並びに個々の計器及びシステムの性能の校正若しくは検定が含まれる。
そうであれば,適合性とは,法定計量との関連で,法定計量文書の中で示されている技術・計量要
件及び仕様に従った計量器及び計量システムの設計と性能の審査を意味する。個別の国々及び国内
の管轄区域は,それ自体の要件を備えることができるものの,OIML の重要な目的の一つは,完全
な形で又は少なくとも整合化された法定計量要件の基盤として全世界で採用し利用することがで
きる OIML 出版物,特に OIML 勧告の中で信頼すべき要件を提供することである。
3.1
測定の不確かさを用いる適合判断
法定計量において適合判定を行うことは,確率及びリスクの概念が考慮の対象となることから,測
定の不確かさを含める場合に,さらに複雑化する。特に,たとえ測定値が最大許容誤差(MPE)の
限界内にあっても,指示誤差の実質的に一意の真の値(以下“真の”値と称す)が実際に指定され
た MPE の限界外にあること,又はその逆の場合も同じく,確信度(又は確率と表現される信頼レ
ベル)の観点から考えることが必要になる(附属書 A を参照)
。ある試験が,示された確率に基づ
いて“合格”と見なされるか否かを判断するため
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
にさまざまな“判断規定”が定められることになり,また誤った判定を下す付随“リスク”が計算
されることになる(5.2,附属書 D を参照)
。しかし,この文書(6 を参照)に記載される技法を用
いることで,測定の不確かさを引き続き考慮に入れながらも,多くの測定に基づく判断状況で確率
及びリスクを明確に計算する必要性を最小限に抑え,排除することさえも可能である。
3.3
誤差対不確かさ
測定の不確かさは適合審査の意志決定を複雑化するだけでなく,場合によっては,かかる判定を下
すために使用する言語が混乱を招き,正反対に思われることさえある。もっとも特筆すべきは,そ
のいずれもが測定品質に関わっているという点で“誤差”及び“不確かさ”の概念はある種の類似
性を共有していながら,実際にはこれらは著しく異なる概念なのである。皮肉に思われるかもしれ
ないが,
“指示誤差”は,それ自体測定可能なものであり,したがって付随する測定の不確かさを
備えた 1 つの値をもつ。
“誤差”と“不確かさ”との間のこの違い,及びこれらが法定計量におい
て(及びその他の計量分野において)どのように共存するのかは,[12] 及び附属書 A に詳しく述
べられている。
3.4
測定の不確かさを含む検定
GUM の中で詳しく述べられている測定の不確かさの概念は,比較的新しい(ここ 20 年ほど)もの
の,法定計量における検定は,想定される測定の不確かさを説明するために,MPE が一般的に設
けられてきたという意味においては,何らかの測定の不確かさという概念を常に,少なくとも黙示
的に取り入れてきた。その一例は,指示の測定された誤差が許容限界内にあるかどうかについて,
“安全な”結論を出すために,控えめな(稼働中)MPE の設定の実施である。MPE に対する標準
(基準)計量器の誤差の最大許容比率(実際は,不確かさ)について,1/3 又は 1/5 などの分数を
規定することは,少なくとも黙示的に測定の不確かさを説明するもう一つの例である。この文書で
考察されている重要なテーマの一つは,計量器又は計量システムを後に使用するときに測定トレー
サビリティの確立及び維持を可能にするために(6 を参照)
,明示的にというより黙示的に,いつ,
どのようにして測定の不確かさを試験・検定状況の適合判断に取り入れるかということである。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
3.5
MPE 及び測定の不確かさ
測定の不確かさの考慮は,所与の試験状況に対して適切な MPE を設けることにもつながる。不必
要に大きい又は小さい MPE の使用に伴う消費者,販売業者又は製造事業者のコストは,最初に
MPE を定める際に可能性の高い測定の不確かさを考慮に入れることによって削減することができ
る。非常に小さな MPE を設定することは,所与の用途に対するより厳しい要件を満たすためにさ
らにコストのかかる計器を設計・製造しなければならないくなる計器の製造事業者にとって費用が
かさむおそれがあり,る(製造事業者は,その追加コストを消費者に回す可能性が高い)
。また消
費者にその追加コストを回す可能性がとても高い。計量器のさまざまな用途及び使用に対して可能
性の高い測定の不確かさのレベルを検討することによって,MPE は,よりコスト効率よく,許容
可能なリスクレベルを得られるように設定することができる。第 7 節は,OIML 勧告及びその他の
OIML 文書の中で MPE を規定する際に測定の不確かさを考慮に入れるための選択肢について詳し
。
く述べる(OIML R 34 計量器の精度等級も参照)
便宜上,OIML 勧告又はその他の OIML 出版物文書への記載を検討することが望ましい測定の不確
かさを明示的及び黙示的に組み込むことに関する特定の言語を含む選択肢は,第 8 節に示されて
いる。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
4
適合試験判定及び測定の不確かさに関する基本的な検討事項
法定計量の重要な役割の一つは,計量器及び計量システムの設計(又は型式)の性能及び適切性適
合性を評価すること(型式評価)
,並びに各種の規制対象の用途について,個々の計量器及び計量
システムの性能を評価することである(初期検定及び後続検定)
。そのような評価を行うために用
いられる基本的な試験の種類には,測定された‘指示誤差”を特定の用途に対して指定された‘最
大許容誤差’
(MPE)と比較することが必要である。指示誤差の値(EI と表される)は,一般的に,
測定量を測定する際に得た計量器又は計量システムの指示値とその測定量の‘真の’値との差とし
て定義される。
‘完全無欠’な測定を行うことは不可能であるため,その測定量の‘真の’値を知
ることはできないので,運用上,指示誤差は,測定量を測定する際に得た計量器又は計量システム
の指示誤差(YI)と標準器を使用したときに測定される同じ測定量の値(Ys)との差となると通常
考えられている。数学的には次のように表される:
EI = YI - Ys
(4.1)
(歴史的に,法定計量においては,
“真の値”という用語は,通常この文書に示すような意味で使
用されるのではなく,計量器を試験するプロセスの中で使用される測定標準に付随する値を指すた
めに用いられていることに留意すること。この後者の意味は,この文書の中での‘真の’値という
用語の意味ではない。詳細については,附属書 A 及び JCGM 106 [5] を参照。
)
通常,Ys は,測定標準の指示から,又はその測定標準の校正証明書から直接得た指示値である。
‘測定モデルに入力した量’
[4]の値
さらに複雑な測定標準(又はシステム)については,Ys は,
[1,4]を使うことによって求めることができる(す
(xi)に測定量の値を関連付ける‘測定モデル’
:
なわち,Ys は,値 xi に依存するか,又は値 xi の関数(f)である)
Ys = f(xi, x2, ...xn)
(4.2)
実施される試験のカテゴリ(型式評価,初期検定又は後続検定)に依って,試験のやり方は多様で
ある。ある試験の仕様には,
(繰返し測定によって)得ることが望ましい個々の指示誤差数,及び
いつ,どのようにして計器の動作条件を調整(仮に行う場合)するのが望ましいかなどが含まれる
ことがある。しかし,試験のすべてのカテゴリに共通しているのは,最終的に適合判定が,測定し
た指示誤差を MPE と比較する 1 回又は複数回の試験の結果に基づいて行われることである。
適合判定を行うことを目的として,測定した指示誤差を 1 組の MPE(上限及び下限)と比較する
という概念を図 1 に簡略化して図示する。横軸は指示誤差の予想値 EI を表す。上限及び下限の
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
MPE は,それぞれ MPE 及び MPE と表され,0 対称で示されるが,これは必ずしも必要ではない
可能性がある(例えば,レーダーガンを試験するとき)
。単一の測定された指示誤差だけを用いて
適合判定を行う場合,その単一の測定された指示誤差が MPE によって定められる区間(図中“適
合領域”と表されている)の中にあれば,その計器はその試験(図に示したもの)に合格であると
見なされる。そうでなければ,その計器はその試験に不合格であると見なされる。公式な測定の不
確かさは,この考察又はこの図の中では明示的に検討されてはいないが,MPE は特定の測定の種
類に対する測定の不確かさの可能性の高いレベルに基づいて定められたと見なされている。
適合判定を行うための指示誤差(E1)及び
最大許容誤差(MPE)の使い方
(測定の不確かさを明示的に組込んでいない)
不適合領域
(計器は試験に不合格)
適合領域
(計器は試験に合格)
不適合領域
(計器は試験に不合格)
指示誤差
図1
いくつかの OIML 勧告においては,測定値の不規則変動を説明することを目的として,個々の適合
判定が単一の測定された指示誤差に基づくのではなく,2 個以上の指示誤差を求めてその平均値を
適合判定の基盤として用いることに基づくことに留意すること。これは,図 1 の中で記号 ĒI を用
いて示されており,この場合 ĒI が適合領域にあるため試験は合格であると見なされる。さら
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
にもう一つの種類は,2 個以上の測定した指示誤差を求めることを認め,次にそれらの指示誤差の
一部(例えば,3 個のうち 2 個)が適合領域にあることを求めるというものである。次第 5 節で実
証されているように,測定の不確かさが考慮に入れられているときは,測定の不規則変動が測定の
不確かさの中に組み込まれることから,これらの適合判定方法間の違いは問題ではなくなる。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
5
測定の不確かさを明示的に組み込んでいる適合試験判定
はじめに,に示したように,測定の不確かさの概念を法定計量における適合試験判定に組み込むた
めには,そのような判定について,第 4 節に述べたものとは別の考え方及び論じ方(附属書 A 及
び JCGM 106 [5] を参照)が必要である。計量器が指定された MPE 要件を満たし,したがって特
定の適合試験に合格することを断定的に示すことが可能なのではなく,計量器が各 MPE 要件に適
合することの確信度(又は確率)だけを示すことが可能なのである。そのような確率的手法に内在
するのが,最終的に合否判定を出す際にはある程度のリスクを考慮しなければならないことである
(例えば,判定が誤っていることのリスク)
。測定の不確かさは,そのような確率及びリスクの定
量的値を定めるプロセスで用いられる。
この文書の読み手は,測定の不確かさの概念及びそれを計算するための GUM[1]のプロセス[1]に
ある程度精通していることが想定される。しかし,精通していない者のために,附属書 C 及び附属
書 G に一例が示されている。モンテカルロ法に基づく測定の不確かさを計算する別の手法につい
て論じている GUM の補遺 [2] も利用することができる。
ISO/IEC 17025[8]は,国際試験所認定の世界で,校正試験所及び試験所の能力を審査するために
用いられる広く受け入れられた規格となった。この規格は,[5.4.6.2]“試験所は,測定に付随する
不確かさを推定するための手順を備え,適用しなければならない,
”及び,さらに[5.4.6.3]“測定の
不確かさを推定する場合,適切な分析方法を使って,所定の状況下におけるすべての重要な不確か
さの成分を考慮に入れなければならない”と明記している。
本この第(5)節は,測定が試験所環境で実施される場合など,適合判断を行う目的での測定の不
確かさの明確な利用に焦点を当てている。この文書の第 6 節は,測定が試験所市場環境での外で行
われる場合,又は明示的に結果の不確かさを審査することが難しい旧来の計量システムを用いる場
合などに適合判定を行う目的での測定の不確かさの利用に焦点を当てている。しかし,試験済みの
計量器を後日使用する際に得られた測定結果が計量トレーサビリティサブルであるをもつことが
できるように,測定の不確かさは,いずれの測定環境においても説明されていることを認識するこ
とが重要である。
型式評価を行うために試験プロセスで用いられる適用される測定に左右されることなく,が OIML
勧告(又はその他の OIML 文書出版物)の中で規定されている場合は必ず,手引きを,その勧告の
中で扱われている計器の型式に適切な測定モデルに対する測定の不確かさを計算するために用い
ることができる方法についての実用的で効率的な手引きが提供されることが望ましい。
特に,試験装置(測定標準及びあらゆる追加測定器具を含む)についてどのように記述するか,並
びにどのようにして測定モデルを設定し(式 4.2 にあるように)
,入力量を明らかにするのかにつ
いての
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
手引きが提供されることが望ましい。ある計量器又は計量システムの合格若しくは不合格を定める
ために,試験装置から生じる不確かさ及び被試験計量器又は計量システムから生じる不確かさを別
個に記録することが必要になる場合がある。これが行われない場合,行われていれば良品であった
計量器が,不確かさの考慮に基づいて誤って不合格とされるおそれがある。
さらに試験装置(測定標準及びあらゆる追加測定器具を含む)に付随する測定の標準不確かさ(uS)
を確認又は計算するために用いることができる方法についての手引きが提供されることが望まし
い。観念上,試験装置由来の不確かさは,最大許容誤差(MPE)に対して,小さく維持できる。
(指示器の分解能,ジッタなどによる
同様に,測定量の指示値に付随する測定の標準不確かさ(uI)
不確かさ成分を含む)
,並びに被試験計器及び計量システムの両方,並びに/又は手順の繰返し性
又は再現性に付随する測定の標準不確かさ(urep)を計算するために用いることができる方法につ
いての手引きが提供されることが望ましい。
(計器への 1 つの固定入力に対する)計量器の指示がその計器の定格動作条件の全範囲にわたっ
て変動することが分かった場合,これを対象として含めるために測定の不確かさ(uroc)の成分を
含めることが望ましい。
最終的に,指示誤差に付随する複合標準不確かさ(uEI)を計算(式 4.1 の使用に基づく)するため
に,これらの測定の不確かさの成分をどのようにして組み合わせるかについての手引きが提供され
ることが望ましい。
この手引きは,すべて GUM 及びその補遺の方法に基づき,これに整合することが望ましい。測定
モデルを定め,測定の不確かさの個別の成分を確認して推定し,最終的に指示誤差に付随する複合
標準不確かさ及び拡張不確かさを計算するための GUM に整合する手順の例は,附属書 C 及び附
属書 G に示されている。
測定プロセスの繰返し性又は再現性を審査することを目的として特定の指示誤差の複数回の測定
が行われる場合,指示誤差の個別測定値のそれぞれに付随する測定の不確かさを審査する必要はな
いことに留意することが重要である。むしろ,一連の個別の測定値から指示誤差の平均値(ĒI)を
計算して,
‘測定した’指示誤差として使用することが可能であり,この一連の個別の値の平均値
の標準偏差(すなわち S/n1/2)を,平均値に関連付けることが望ましい測定の不確かさの 1 成分と
して使用することが可能である。しかし,OIML 勧告(及びその他の OIML 文書出版物)は,測定
の不確かさの偶然的影響だけに基づく測定の不確かさが,測定の不確かさのすべてではないこと,
及び測定の不確かさの系統的影響などその他の成分も含めなければならないことを強調すること
が望ましい。
この節の他の部分次の項は,被試験計器/システムの適合判定を行うために,指示誤差に付随する
計算された測定の複合標準不確かさ(uEI)を使用することが可能となり,かつ使用することを
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
望ましいとするような方法について論じている。さらなる選択肢及び詳細については,JCGM 106
[5] を参照。
5.1
確率密度関数(PDF)
測定の不確かさの概念に内在する問題は,測定を実施したときにまちがいが起きたのかどうかを知
ることができないために,測定することを意図したものの量の‘真の”値を知ることができないと
いうことである。また,たとえ測定を実施する中でまちがいは一切起きていないことが分かったと
しても,実際にはすべての測定には,完全に管理又は理解されていない何らかの付随する未知の系
統的側面及び偶然変動が伴う。したがって,いくつかの値がその他の値よりも測定量の‘真の’値
に一致する可能性が高いという確率的基盤に基づいて測定量の‘真の’値を知るという観点から,
論じられなければならない。これを捉える方法の一つが,測定量の真の値を知ることに関する一個
人の信用度を示す確率密度関数として知られる関数を構成できることである。
確率密度関数(PDF)
指示誤差の測定値は
指示誤差の‘真の’
値に一致するという
確率密度関数
確率密度関数
(PDF)
測定の標準不確かさ
(uEI)
指示誤差
EI
図2
確率密度関数(PDF)の概念は,図 2 に簡略化して図示されている。図-1 のように,横軸は予想
される指示誤差の値 EI を表す。図-2 では,指示誤差の‘真の’値が,特定の指示誤差の値を
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
中心とする微小領域の中に入ることの予想される確率密度を表す縦軸が加えられている。指示誤差
の真の値が指示誤差の 2 つの指定値の間の横軸上にある確率(又は,まちがいは一切起きていない
という前提に基づく,確信度)は,その 2 つの指定値に囲まれた確率密度関数曲線の下の領域を数
学的に積分することによって求めることができる。
PDF 曲線は,ガウスの形状で示されており,これが一般に使用される(必ずということではない:
例えば,
[2]を参照)
。曲線の平均値(ĒI)及び測定の標準不確かさ(uEI で表される)が示されて
いる。この曲線は,曲線の下の全領域が 1 になるように正規化されており,横軸上のどこかに指示
誤差の‘真の’値を見つける 100 %の確率があることを意味する。このようになるはずではあるが,
指示誤差の‘真の’値’は,実際には,測定実施中にまちがいがあった場合など,PDF 曲線の平均
値からはるかに遠くなるかなり外側にある可能性があることに言及することは価値がある。ガウス
PDF について,指示誤差の真の値が間隔 ĒI ± uEI の範囲内にある確率(信用度)は 66 %であり,
ĒI ± 2·uEI の範囲内にある確率(信用度)は 95 %であることに留意すること。一般的に,UEI(=
k・uEI)が拡張測定不確かさと呼ばれ,k が包合係数と呼ばれる場合,この間隔は,EI ±UEI と書き
あらわすことができる。
PDF が,系統的影響及び偶然的影響の両方など,測定量についての既知の情報のすべてを含んで
いることを,再度強調することにも価値がある。偶然変動だけのヒストグラムに適合する曲線は,
一般的にガウス形状をもち,PDF はヒストグラムに対するそのような適合性はないが測定の系統
的影響に由来するその他の情報を含んでいる。
5.2
適合性の確率
図 2 を用いて,第 4 節に述べた古典的な手法を用いて適合判定を下すことと,GUM の不確かさ手
法を用いて適合判定を下すこととの重要な違いを実証することができる。古典的な手法を使うと,
指示誤差の平均値(ĒI)は,図 1 で定めた適合領域の中にあることから,計量器は図 2 に示す特定
の試験に合格すると見なされるであろう。
不確かさの手法を用いて,測定の不確かさを特定の試験について考慮に入れると,適合領域の外側
にある PDF 曲線の下に大きな領域がある(すなわち,MPE+の右側)ことを図 2 に見ることがで
き,これは,たとえ指示誤差の平均値(ĒI)が適合領域の中に入っているとしても,指示誤差の‘真
の’値’が適合領域の外側にある高い確率(確信度)があることを意味する。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
確率密度関数(PDF)
Probability
Density Function (PDF)
指示誤差の測定値
probability
density
that
the measured
は指示誤差の‘真
value of the error
の’値に一致する
of indication
という確率密度関
corresponds
to the
‘true’ value
数 of the
error of indication
probability
確率密度関数
density function
(PDF)
(PDF)
MPE -
0
曲線の非斜線部分の下側の
Area
under unshaded portion
of領域(A
curve (A
n)
n)
_
EI MPE +
error
of indication
指示誤差
E
EI I
Figure
図33
適合領域の外側にある PDF 曲線の下の領域(図 3 のガウス曲線の下の非斜線部分によって示され
,指示誤差の‘真の’値’が適合
ている)は,An で表され(ここで“n”は‘不適合’を意味する)
領域の外側にあるために計量器が MPE 要件に適合しない確率 pn は,pn = An(= 100・An,pn が百
分率(%)で表される場合)で与えられる。したがって,計量器が特定の試験に合格であると見な
されるか否かについての判定は,確率(リスク)の許容レベルが,その試験の種類に合致したもの
であったかどうかに依る。例えば,計量器は,それが不適合であったという 10 %未満の確率があ
った,すなわち pn = An < 0.1 = 10 %であった場合には,その個別の試験に合格したと見なすこと
ができる。
)が,適合領域のわずかに外側にあっても,指示誤差の‘真の’値’が適
指示誤差の平均値(
(ĒI)
合領域の中にある高い確率がまだあることに留意すること。測定不確かさを考慮に入れない場合,
計量器は,ある特定の試験に不合格となるかもしれないが,その試験は,許容可能なリスクのレベ
ル及びリスク負担者を考慮に入れる場合,依然として,結果的にこの事例で“合格”となる可能性
がある。この場合,測定の不確かさが考慮に入っていなかった場合にはその計量器が特定の試験に
不合格と見なされるかもしれないが,改めて特定の試験に対して,そのような種類の試験に対する
許容される確率(リスク)のレベル及び誰がそのリスクを負うのかに依り,不確かさの手法を用い
て,その計量器が特定の試験に合格するという判定を出すことがまだ可能かもしれない。ĒI が MPE
に完全に一致する場合,指示誤差が適合領域の範囲内にある 50 %の確率があ
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
り,適合領域の外側にある 50 %の確率があることになる。リスクアセスメントの問題は,特定の
試験が結果的に合格又は不合格と見なされるかなるかどうかを判定するための規定と共に,次の節
で取り扱われている。
PDF を構成すること,及び PDF 曲線の下の領域を計算することは,一般的に,重要な事柄であり,
したがって OIML 幹事国,コンビナー及び TC/SC/PG の委員は,この点で,担当する彼らが作成す
る勧告の中でどのような助言及び支援を提供するかを慎重に検討することが望ましい。PDF をガ
ウスとして扱える場合,指定された ĒI,MPE+及び uEI の曲線の下の領域を計算するために‘標準
正規分布表’
(又は Z 表)として知られるものを組み合わせる便利な方法がある[15]
。附属書 B
は,標準正規分布表についての情報を,その使い方の一例と共に提供している。
5.3
適合判定に関連する“リスク”及び“判定規定”
既に論じたように,GUM の不確かさの手法の確率的な性質により,指示誤差の測定した値が MPE
によって囲まれた領域の中にあるか否かに基づいて合否判定を下すことには,誤った判定が下され
た可能性(又はリスク)が伴う(すなわち,実際は,指示誤差の‘真の’値が,測定値が入ってい
る領域とは異なる MPE によって囲まれた領域の中に入っている)
。この節は,測定の不確かさを
意志決定プロセスに組み込むことに付随するリスクの種類,及び法定計量における試験の適合判定
を下すときに適用できる規定について検討する。これらの規定は,OIML 勧告及びその他の OIML
文書出版物に中に組込む可能性について,OIML 幹事国による検討が行われることが望ましい。
MPE などの許容区間要件を満たすことに基づいて試験の適合判定を下すことに伴うさまざまな種
類のリスクには,種々の処置が講じられ,名称が与えられてきた[5,15]
。概略としては,次の 3
つの基本的種類のリスクがある。1)試験を誤って合格とするリスク,2)試験結果を誤って不合格
とするリスク,3)共有リスク
5.3.1
誤った合格についてのリスク及び判定規定
誤った合格のリスクとは,試験は合格した合格だと見なされたが,実際は MPE 要件が満たされて
いなかった可能性があることを意味する。この場合,図 3 に示すように,測定された指示誤差の値
は MPE によって囲まれた領域の中にあるが,PDF は MPE によって囲まれた領域の外側の領域ま
で延びており,指示誤差の‘真の’値は,MPE によって囲まれた領域の外側にある可能性がある
と考えられる。誤った合格のリスクは,計量器又はシステムの評価者又は使用者が負うことに留意
すること。このリスクは,計器又はシステムが,たとえ試験結果が肯定しているとしても,
‘仕様
内’で機能していないというものである。誤った合格のリスクの値は,MPE によって
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
囲まれた領域の外側にある PDF 曲線の下の領域 An として計算され,これは,図 3 の曲線の下の非
斜線領域である。
法定計量試験に関連付けられると思われる判定規定の一つは,誤った合格の確率又はリスク(pfa)
は,なんらかの明示値(例えば 5 %)未満でなければならないというものである。判定規定を満た
さなければならない場合(附属書 B の中の例を参照)
,指示誤差の値 ĒI は,MPE によって囲まれ
た領域の中にあり,さらには,通常,該当する MPE の境界線のすぐ近くにある可能性さえないこ
とから,このリスクは計器/システムの評価者又は使用者に有利であり,計器/システムの製造事
業者又は販売事業者にとっては不利であろう。
5.3.2
誤った不合格についてのリスク及び判定規定
逆に,誤った不合格のリスクとは,試験は不合格だだったと見なされたが,実際は MPE 要件が満
たされていた可能性があることを意味する。この場合,指示誤差の測定値は,MPE によって囲ま
れた領域の外側にあるが,PDF は MPE によって囲まれた領域の内側の領域まで延びている。誤っ
た不合格のリスクは,計量器又はシステムの製造事業者又は販売事業者が負うことに留意すること。
このリスクは,計器又はシステムが,たとえ試験結果が否定しているとしても,
‘規格内’で機能
しているというものである。指示誤差の測定値が MPE によって囲まれた領域の外側にあるとき,
誤った不合格のリスクの値は,MPE によって囲まれた領域の内側にある PDF 曲線の下の領域とし
て計算される。
法定計量試験に関連付けられると思われる判定規定の一つは,誤った不合格のリスク(pfr)は,な
んらかの明示値(例えば 2 %)未満であるというものである。判定規定を満たさなければならない
場合,指示誤差の値 ĒI は,MPE によって囲まれた領域の外側にあり,さらには,通常,該当する
MPE の境界線のすぐ近くにある可能性さえないことから,このリスクは,計器/システムの製造
事業者又は販売事業者に有利であり,計器/システムの評価者又は使用者にとっては不利であろう。
誤った合格のリスク及び誤った不合格のリスクの両方が混在する所与の試験については,判定規定
を備えることはできないことに留意することが重要である。すなわち,
‘利益’は,評価者/使用
者又は製造事業者/販売事業者のいずれかにもたらされ,同時にその両方にもたらされることはな
い!誤った合格又は誤った不合格のリスクを計算するためには,測定の不確かさ(及びできれば
PDF)の知識を知っていることも重要である。
5.3.3
共有リスク
一方,共有リスクは,利益も不利益ももたらさない試験の結果に関与する複数の当事者間での,誤
った合格又は不合格のリスクが著しいものになると思われるほど MPE の境界線に近い測定された
指示誤差 ĒI の値の測定不確かさの考察に関する取決めである。そのような取決めに内在する問題
(すなわち,比率(uUEI/MPE)が‘小
は,拡張測定不確かさ uUEI は,MPE に対しては‘小さい’
さい’
)ので,
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
MPE の境界線に非常に近い ĒI の値についてだけ,誤った判定の著しいリスクが存在するというこ
とである。このことは,図 4 の中で,所与の 1 つの測定に対する 2 つの可能性のある,異なる PDF
について示されている。左端(赤色)のガウス曲線に付随する不確かさ uUEI は,共有リスクの取
決めには大きすぎる可能性が高く,一方,右端(緑色)のガウス曲線に付随する不確かさ uUEI は,
ほとんどの用途について合格になる可能性が高い。
確率密度関数(PDF)
指示誤差の測定
値は指示誤差の
‘真の’値に一
致するという確
率密度
指示誤差
図4
共有リスク手法の利点は,リスクが同等に共有され,したがってリスクの計算が一切必要ないため,
指示誤差に対する PDF を知る必要がないことである。この利点は少なくとも部分的に判定決定プ
ロセスを簡便化することから,共有リスク手法の利用は OIML 勧告又はその他の OIML 文書出版物
の中でどのような判定規定を提案するべきかを検討する際,この利点によって極めて望ましいもの
となる。
事実,明示的に述べられてはいなくとも,多くの OIML 勧告が現在,少なくとも暗黙のうちに共有
リスク手法を用いている。ISO/IEC 17025[8]の測定の不確かさを,少なくともある程度の厳しさ
レベルで考慮するという要件を満たすためには,OIML 幹事国は,該当する場合に共有リスク原則
が用いられていることを説明する文言を担当する勧告の中に記載するよう,強く推奨する。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
次の節 5.3.4 で論じるように,共有リスク手法を用いても,比率(uUEI/MPE)が‘十分に小さい’
ことを確認するために測定の不確かさ uUEI を計算することが引き続き必要であることに留意する
こと。また,最大許容誤差を何らかの理由で,ガードバンド法(下記 5.3.6 を参照)を用いて調整
しなければならない場合(例えば,稼働中条件に対する許容差)でも,共有リスク手法は新たな MPE
又はガードバンド MPE を用いてそのまま使用することができる。
5.3.4
(指示誤差の)最大許容不確かさ
比率(uUEI/MPE)がもつことが許容されている最大値を,指示誤差の“最大許容不確かさ”に換算
して参照すること(MPUEI と記号で表される)が一般的になりつつある(例えば[16]
)
。これは次
によって定義される:
MPUEI ≡ fEI・MPE
(5.1)
ここで,fEI は,1 未満の指定された数であり,大抵の場合はおよそ 1/3 又は 1/5(0.33 又は 0.2)で
ある[13]
。
注釈:附属書 G の結論で言及したように,いくつかの OIML 勧告(例えば,非自動はかり,及び場
合によってはロードセル及び自動はかりについての R76)では,指示の誤差の測定値がすべて最大
許容誤差に非常に近い場合は特に,fEI < 1 は,必ずしも真ではない。
最大許容不確かさ(MPUEI)は,一般的に,共有リスク手法を用いることが可能な所与の指示誤差
EI の測定値に対して UEI がもつことができる最大値と考えられている。MPUEI に関連して適用すべ
き判定規定は,uUEI が MPUEI より大きい場合には試験は不合格と見なされ,uUEI を小さくするた
めの(又は大きな MPE を組込むための)手段を開発する必要があるというものである。ここで,
uEI は,評価対象の計量器に付随する不確かさというだけでなく試験装置全体に付随する不確かさ
まで含むことを,改めて強調することは価値がある。
MPUEI を指定する必要性についてのもう一つの考え方は,UEI が MPE と同等であった場合は,例
えば 0 と MPE の間の中間近辺の EI の値については,図 4 の左端の曲線によって示されるように,
指示誤差の‘真の’値が MPE から遠く離れた右の方に位置する確率(つまり,EI が,MPE に非常
に近いところに位置する場合)が比較的高い可能性があり,これは多くの場合,許容できないリス
クである。MPUEI をもつことによって,そのような確率が排除される。
場合によっては,1/fEI を試験の不確かさ比率(TUR)と呼ぶことに留意すること。また,測定標準
に付随する不確かさ(uUs)が uUEI に寄与するその他の成分に付随する不確かさよりはるかに大き
い場合,MPUEI は‘
(測定標準の)最大許容不確かさ’にほぼ等しい(記号では,MPUS で表され
る)
(次節 5.3.5 を参照)ことにも留意すること。
ここで,UEI は,評価対象の計量器に付随する拡張不確かさというだけでなく,試験装置全体に
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
付随する不確かさ及び環境条件によるあらゆる影響まで含むことを,改めて強調することは価値が
ある。すなわち,評価対象の計量器は,測定した指示の誤差を得る際,その規定の定格動作条件の
範囲内で動作していることを想定している。実際の動作条件が,定格動作条件の範囲外で変動する
場合は,追加測定不確かさを考慮に入れる必要が生じる可能性がある。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
5.3.5
(測定標準の)最大許容不確かさ
‘
(指示誤差の)最大許容不確かさ’を指定する必要性とは別に,上記の理由から,頻繁に用いら
れるもう一つの判定規定は,
‘
(測定標準)の最大許容不確かさ’
(MPUS と記号で表される)を指定
することである。これは次によって定義される:
MPUS ≡ fS・MPE
(5.2)
ここで,fS は 1 未満の指定された数であり,やはり大抵の場合はおよそ 1/3 又は 1/5(0.33 又は
0.2)である。さらに,最大許容不確かさ(MPUS)は,所与の指示誤差 ĒI の測定値に対して uUS が
もつことができる最大値である。
この要件の根拠は,MPU が大きすぎる場合,上記の MPUEI に基づく合否判定は,試験対象の計器
/システムの品質ではなく,測定標準及び/又は試験所の品質によって左右されることになる可能
性がある(uUEI は,uUS 及びその他の不確かさの成分を含むことに留意すること)ことである。計
器製造事業者の計器を,大半の uUEI で構成される不確かさをもつ測定標準を使って試験すること
は,不公正と見なされる。なぜなら,その場合,特定の試験について指示誤差の不確かさが許容可
能な小ささ(すなわち MPUEI 未満)を維持するためには,指示値の不確かさ(uUI)及びその計器
/システムに付随するその他の不確かさの予想される成分は相対的に小さいものとなる必要が生
じるからである。fS が相対的に小さく(例えば,1/5 未満)なることを要求することによって,試
験所間の著しい差違又は食い違いを避けることができる。したがって,個々の OIML 勧告は,各個
別の種類の試験に適切な許容可能な fS(又は MPUS)を指定することが望ましい。
場合によっては 1/fS を試験精度比率(TAR)と呼ぶことに留意すること。ただし,その場合,TAR
は通例,誤差の比率と見なされるため,MPUs は(標準の)最大許容誤差として扱われる。また,
測定標準の不確かさが総合不確かさの主な構成要素である最も大きい場合,MPUEI は MPUS とほ
ぼ等しく,総合不確かさが MPE よりはるかに小さいのでない限り,これは望ましくない状況であ
ることにも留意すること。
5.3.6
判定規定についての考察の要約
担当する OIML 勧告及びその他の OIML 文書出版物にどのような判定規定を組込むことが望まし
いかについて検討する際,OIML 幹事国及びコンビナーは,リスクの許容可能なレベルを提案する
ときには間違った判定の影響を考慮に入れることが望ましい。誤った合格の影響が過度に深刻なも
のにはならないと考えられる場合,共有リスク手法は測定の不確かさを引き続き考慮に入れながら
も,適合を判定する比較的効率的な方法であることから,この方法の採用を推進することが望まし
い。法定計量においては,共有リスク手法は,ある種類の試験に対応する MPE を過度
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
に‘小さく’する必要がない(第 7 節を参照)限りはその試験にうまく使用することができ,かつ
MPU を許容可能な程度に‘大きく’保つことができる。
多くの法定計量状況については,起こり得るレベルの測定不確かさを予測する MPE が用いられ,
したがってリスクは既に考慮済みとなっている。この場合,測定不確かさの二重計算が起こらない
ように,この条件を文書化することが望ましい。
共有リスク手法が適切かどうかを判断する目的で fEI 又は fS(TUR 又は TAR)を使用すべきかどう
かは,利用できる情報及び資源のレベル,並びに誤った判定を下すことによる結果に依存する。fS
(TAR)だけは,一般的に製造事業者の精度仕様だけを用いることによって最も簡単に明らかにで
きるものの,fEI(TUR)は,不確かさのすべての有意成分を考慮に入れることから,最も安全に使
用できる。
共有リスク手法を用いることができず,その代わりに適合判定を行うために誤った合格のリスクを
用いることが必要である場合,これを行う便利な手段がある。これは,法定計量を目的として Cm
= MPE/(2・uEI)と定義されている“測定能力指数”[5]の概念を利用したもので,試験評価者に
求められる時間及び手間を最小限に抑えることができる。Cm は,MPEUI に比例し,fEI に逆比例す
ることに留意すること。附属書
附属書 E は,MPE,誤った合格のリスク(pfa)
,測定された EI 及び計算された uEI がすべて既知で
ある場合に,どのように測定能力指数を用いて,比較的‘迅速’な判定を下すかについての考察及
び例を提供している。
指示誤差に付随する標準不確かさ(uEI)が一定であると見なされる(すなわち,それが,各指示の
誤差について同一)場合に誤った合格(又は誤った不合格)のリスクを使用するという特別な事例
については,
“ガードバンディング”として知られる特に便利な方法を用いて,適合判定を行うこ
とができる。そのような条件下では,MPE の境界線は,それぞれのリスクに対応する量だけ内側
(誤った合格の場合)又は外側(誤った不合格の場合)に‘移動’するに過ぎず,したがって,測
定された指示誤差(EI)が移動した適合性の境界線の内側又は外側にあるかどうかに基づいて適合
判定を下すことができる。参考文献[5]は,ガードバンドの原理について非常に有益な考察を提
供している。法定計量における型式承認の場合,内側に移動するガードバンドだけが用いられる。
判定規定及び関連するリスクは,それらの影響と共に OIML 勧告の中で考察及び論議が成されるこ
とが望ましいが,OIML 幹事国及び TC/SC メンバーは,さまざまな種類の試験に対して指定され
た許容可能な確率のレベルを要求することが望ましいのか,又は提言することが望ましいのかにつ
いて,慎重に検討することが望ましい。一般的に,このことは国家規制又は地域規則に任せること
が望ましいが,勧告の中で提言を提供することができる。製造事業者にとってのさまざまなリスク
は,さまざな当事者に対して深刻な経済的影響をもつ恐れがあり,そのようなリスクの規定は,一
般的に勧告の範囲外となっている。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
6
測定の不確かさを明示的に組み込んでいない適合試験の判定
はじめにで述べたように,測定の不確かさの考慮は,計量及び試験所認定の両方のコミュニティで
測定結果の計量トレーサビリティを得るために不可欠なものとして広く認識されている。さらに述
べたように,法定計量における多くの試験は,
‘迅速かつ簡便’な合否判定を行うことを可能にす
ることを意図した試験所市場環境の中での外で行われており,その結果,測定不確かさは,時には
黙示的に示されるだけのこともある。したがって,測定の不確かさが明示的に示されない場合,試
験所市場環境の外における測定結果の計量トレーサビリティをどのように維持するかを検討する
ことが重要である。
測定を実施する際に,測定の不確かさを考慮に入れる必要性の一例として,[3.1.2 の]GUM によれ
ば,
“一般的に,測定の結果は,測定量の概算又は推定値にすぎず,したがって,その推定値の不
確かさの説明標記を伴ったときだけ完全である。
”VIM3 [10] は,
“計量トレーサビリティ”を[2.4.1
の中で]“測定結果の特性であり,測定結果は,それによって,それぞれが測定の不確かさに寄与す
る文書化された切れ目のない校正チェーンによって基準に関連付けられる測定結果の特性”と定義
しており,測定結果がトレーサビリティをもつためには,測定の不確かさは,明示的に示さないと
しても,少なくとも考慮しなければならない。
試験場環境の外市場で測定が実施される場合にでは,測定の不確かさが,重要でないと考えられる
場合がある。GUM は,[3.4.5 の中で]“特に法定計量分野では,装置は,測定標準との比較によっ
て検査され,測定標準に付随する不確かさ及び比較手順は試験の要求精度を基準として相対的に無
視されると述べている。その一例は,商用はかりの精度を試験するための十分に校正された 1 組の
質量標準の使用である。そのような場合においては,不確かさの成分は無視できるほど小さいこと
から,測定は,被試験装置の誤差を求めることと見なしてよい。
”
。この場合,
“誤差”とは“指示
の誤差”を意味する。ここで GUM は,
“不確かさの成分が無視できるほど小さい”状況が存在す
ることを認めているものの,このことは,何らかの方法で実証され,いずれかの場所において文書
化されなければならず,単に想定するだけではいけないことを認識することが重要である。
試験所環境においても時として測定の不確かさの審査に伴う困難さは,ISO/IEC 17025 [8]の中で
認識されており,その [5.4.6.2]の中では
“試験所は,測定の不確かさを推定するための手順をもち,これを適用しなければならない”
と述べられている。場合によっては,試験方法の性質により,測定の不確かさの厳密で,計量
的・統計的に有効な計算が妨げられることがある。そういった場合には,試験所は,少なくも,
不確かさのすべての成分を確認し,合理的な推定を行うよう試みなければならず,結
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
果の報告様式によって不確かさの誤った印象が与えられることがないことを確実なものとし
なければならない。合理的な推定は,その方法実施の知識及び測定範囲に基づかなければなら
ず,例えば,以前の経験及び妥当性検証データを用いなければならない。備考 1 不確かさの
推定に必要な厳密度は,試験方法の要件,顧客の要件,仕様への適合についての判定の基盤と
なる厳密な限界の存在などの要因に依存する。備考 2 十分に認識された試験方法が測定の不
確かさの主要原因の値に対する限界を指定しており,計算結果の提示様式を指定している場合,
試験所は,試験方法及び報告指示書に従うことによって,この節を満たしたものと見なされる。
”
試験所市場環境の外で実施された測定についても,同じことが当てはまると見なされる。
最終的に,GUM は[7.1.3 の中で],
“工業及び商業においては,明示的な不確かさの報告を一切行わ
ずに毎日多数の測定が実施されている。しかし,多くの測定は,定期的校正又は法定検査を受けた
計器で実施されている。計器がその仕様又は適用される既存の規準文書に適合していることが分か
れば,計器の指示の不確かさは,これらの仕様又はこれらの規準文書から推定することができる”
と述べている。このことは,法定計量では重要である。なぜなら,このことによって,不確かさを
報告することが非現実的であることが多い試験所市場環境の外で実施されるすべての測定につい
て,測定の不確かさを明示的に報告する必要をなくすことを可能にするからである。
この節の上記の内容はすべて,測定結果の計量トレーサビリティを引き続き主張することを可能に
するために,必ずしも測定の不確かさを明示的に計算し,かつ報告する必要がないという概念を強
調することを意図している。しかし,認識すべき重要な点は,常に,測定結果の不確かさの度合い
が保証されており,保証方法が十分に文書化されているという根本的な理解が存在することである。
この保証は,通常,規制を定める責任を担う組織の高いレベルで実施され,実際に検証測定を行う
者が実施するのではない。さらに,異議が申し立てられた場合,試験所環境の外で市場において実
施されたそのような測定(個別の計量器の検定目的のものなど)に対して信頼し得る測定の不確か
さを提示することができることも認識されている。
例えば,規定の試験精度比率(TAR)又は試験の不確かさ比率(TUR)が,試験所又は市場の試験
所の外の環境での測定又は試験システムでの校正チェーン全体を通して維持された場合,結果とし
て生じた測定の標準不確かさの上限は,かなり簡単に得られる場合が多い。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
これは,校正チェーン 1 の各リンクで次のことを仮定して,各手順で測定の不確かさを明示的に提
示することなく行うことができる。



使用中の TAR 又は TUR は,一般的に少なくとも 4:1 という十分に高いレベルで維持され
る。
使用中の TAR 又は TUR では説明されていない不確かさの潜在的原因の影響を軽減する
システムが配置されている。
使用中の試験精度比率(TAR 又は TUR)は,その分子及び分母が,被試験装置を用いて
行う今後の測定の付随する標準不確かさの倍数 2(すなわち,包合係数)
,並びに被試験装
置のトレーサビリティを確定するために使用された校正補正測定標準の倍数に関連付け
られるように,定義されている
上記の条件が満たされた場合,被試験装置を用いて出された測定の標準不確かさは,GUM [1] に記
載された方法を用いてかなり簡便に評価することができる。この標準不確かさの値は,被試験装置
の性能仕様,校正チェーン全体を通して維持された TAR 又は TUR のレベル,及び被試験装置の標
準不確かさの関連倍数と上述した使用中の TAR 又は TUR の定義に固有の校正補正の関連倍数の
比率に基づく。
これをさらに図示するために,TURTAR の分子がその装置仕様の半分の範囲となるような試験の
不確かさ比率 TAR の定義を考慮すること。これは,装置の測定誤差はガウス分布に従うと推定し,
約 63 個の標準不確かさの範囲に呼応する。分母は,95 %の信頼水準での校正の不確かさ潜在的測
定標準値の半分の範囲でありると想定し,一般的に,約 42 個の標準不確かさの範囲に呼応する。
したがって,この TURTAR の標準不確かさの関連倍数の比率は,6/4 となる。校正チェーンの各手
順で維持された TURTAR の値(例えば,TURTAR の値≥4)と組み合わせた場合は,この比率がは,
校正チェーンの最後に装置を使って行われる測定のトレーサビリティを確立する際に使用される
不確かさの上限を求めるために使用することができする [21]。
__________________
1
このチェーンは 1 つ又は 2 つのリンクだけの場合があることに留意する。
2
これらの倍数は,一般的に整数(例えば,k = 2 または k = 3)であるが,このことは必要ではない。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
7
最大許容誤差(MPE)及び精度等級を設定する際に測定の不確かさを考慮すること
多くの多くの OIML 勧告及びその他のいくつかの OIML 文書出版物は,特定の試験に用いるべき
MPE を指定している。MPE がどのような値をもつことが望ましいかを定めるには,通常,費用及
び場合によっては安全上の理由から,計量器/システムの消費者又は使用者を十分に保護しながら
も,やはり費用を理由として製造事業者又は販売事業者も保護することなどを含めた検討事項のバ
ランスが必要である。見逃されることがあるのは,特定の試験のために物理的に達成することがで
きる最低レベルの測定の不確かさの検討であり,これによって使用可能な MPE の下限が設定され
る。OIML 幹事国,及びコンビナー及び TC/SC/PG のメンバーは,特定の試験のための MPE を指
定する際,又は特に MPU が指定されている場合に計器の型式に対する正確さの等級を定める際,
このことを考慮に入れることが望ましい。
例えば,一般的に拡張不確かさ uUEI がある 1 つの量で(かつ簡単に低減できない)場合,この試
験に対応する MPE は,5.3.4 で論じた比率(fEI = uUEI/MPE)が許容可能な低さに維持できるよう
に,適切に指定されることが望ましい。この場合,uEI を減らすことができないことから,図 4 の
右端の曲線によって示された条件が得られるように,MPE を増大させることが必要になる可能性
がある。
測定標準についても同様に,一般的に fS(= uUS/MPE)が所与の種類の試験には大きすぎる場合は,
MPE が適切でない恐れがあり,したがって可能であれば,勧告の中でより大きい MPE を指定する
ことが必要になるかもしれない。その他の理由から MPE を低減増大することができない場合は,
より低い測定の不確か(uUS)をもつ測定標準/システムの型式を指定することが必要になるかも
しれない。
適切な MPE 及び正確さの等級の指定に関する勧告に記載する助言を検討する際に,参照すること
ができる関連する文献このガイドの範囲外ではあるが,OIML 幹事国及びコンビナーは,既存の文
献(例えば[17,18]
)が存在する。を参照することが推奨されている。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
8
OIML 勧告及びその他の OIML 文書への記載を考慮することが望ましい“測定の不確
かさ”に関連する選択肢及び提案された文言
担当する勧告及びその他の OIML 文書出版物の中に測定の不確かさをどのように組み込むかを決
定する際,幹事国,コンビナー及び TC/SC メンバーは,次の可能性を考慮し,どの不確かさが適
切であるかを決定することが望ましい。提案された文言(斜体で表記)示されており,OIML 勧告
又はその他の OIML 出版物の中に記載することができる。
8.1
試験所試験への測定の不確かさの組込み
OIML 勧告又は出版物が,試験所での計量器又は計量システムの形式評価又は他の試験を含める場
合,この勧告に関連する適合判定の中に,どのように測定の不確かさを組み込むことができるか,
及び組み込むことが望ましいかを強調する 1 つの節を示さなければならない。1 つの節を示すこと
(5 を参照)
。提案された文言(斜体で表記)
:
“XX
測定の不確かさ
測定の不確かさを評価すること及び使用することは,法定計量を含め計量のあらゆる側面において
重要かつ必須の要素の一つとなった。測定の不確かさに関連する用語及び概念の一般的理解を得る
ために,並びに測定の不確かさの審査方法及び使用方法についての手引きを得るために,“法定計
量における適合性評価における測定の不確かさの役割”についての OIML 文書 D YY を参照するこ
とが望ましい。
測定の不確かさは,この OIML 勧告の型式評価又はその他の試験所試験に関連する測定及び適合審
査判定のあらゆる側面において検討しなければならない。これを行う方法については,xxx に手引
きが提供されている(第節を参照)。各試験は,要件への準拠を検証するための整合化した試験設
定を提供する測定から成る。測定不確かさは,各測定の属性の一つである。試験方法の適用可能性
についての判断においては,試験方法に付随する不確かさを考慮しなければならない。
この勧告を使用している場合,計量器/システムの試験中に報告されるあらゆる測定結果は,測定
値をその付随する測定の不確かさと共に含まなければならない。例外には,測定された各値が計量
器/システム及び/又は試験手順の繰返し性若しくは再現性に付随する測定の不確かさの 1 成分
を審査する目的で得られている場合,この場合は測定の不確かさは,むしろ個別の測定値の平均値
に付随し,又は測定の不確かさの 1 成分が特定の測定用途においては重要ではないことを決定す
る場合(ここはそのように表すことが望ましい)などが含まれる。”。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
8.2
測定の不確かさの計算
個々の OIML 勧告は,その勧告が対象として含む計器の型式,試験システム及びプロセスに対して,
適切な測定モデルの測定の不確かさを計算することについての手引きを提供することが望ましい
(附属書 C 及び附属書 G の中の例を参照)
。そのような手引きの例は,下記の 7 つの手順に示され
ている。一般的に手引きは,次の方法について提供されることが望ましい。
‒
(手順 1)被試験計器(IUT)について,試験を実施するために用いられる計量システムと共
に,記載する。この説明には,計量器に影響を与える可能性のあるすべての量,計量器/シス
テムに影響を与える可能性のあるすべての影響量を含め,試験中に(影響)量を保っておく状
態(ある場合)
,又は試験中に(影響)量が収まっていなければならない範囲(例えば,計量
器/システム及び IUT の両方の定格動作条件及び/又は基準動作条件)を指定する
‒
(手順 2)試験所での型式評価及び/又は検定のために実施する必要があるさまざまな試験の
すべてを識別する。手順 1 の説明に基づき,各種の試験を実施するために用いられる測定の数
学モデル(式 4.2 にあるような)を作る。各モデルは,最終的に“指示誤差”の式を提供しな
ければならず,かつ測定した各指示誤差に付随する測定の標準不確かさの式も含まなければな
らない(指示誤差の繰返し測定値が得られない場合。その場合,指示誤差の平均値を,繰返し
測定値から得た 1 つの成分を組込んだ測定の標準不確かさと共に,示さなければならない。下
記の手順 5 及び附属書 G の中の例を参照)
‒
(手順 3)測定標準又はシステムの付随する測定の標準不確かさ(uS)を計算する
‒
(手順 4)測定量の指示値(指示器の分解能及び/又は偶然変動による成分を含む)に付随す
る測定の標準不確かさ(uI)を計算する
‒
(手順 5)計量器/システム及び/又は試験手順の繰返し性又は再現性に付随する測定の標準
不確かさ(urep)を計算する
‒
(手順 6)計量器が定格動作条件の範囲全体にわたって動作するとき,計器に対する固定入力
に対して計量器の指示が変動することが分かった場合は,測定の標準不確かさ(uroc)を計算
する
‒
(手順 7)指示誤差に付随する測定の複合標準不確かさ(uEI)を計算するために,これらすべ
ての測定の不確かさの成分を組み合わせる。
(附属書 G の中の例を参照)
OIML 勧告(及びその他の OIML 文書出版物)は,個別の測定値の標準偏差に由来する測定不確か
さの成分(タイプ A 成分)が測定不確かさ全体ではないこと,及び複合標準測定不確かさには,
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
上記の手順 3-6 に由来するタイプ B 成分も含めなければならないことを測定の不確かさの偶然
(タイプ A)成分が,測定の不確かさ‘全体’ではないこと,及び系統(タイプ B)成分も含めな
ければならないことを強調することが望ましい。
これらが存在する場合は,測定の不確かさの成分を審査する特別な又は特異な側面の考察を記載す
ること(8.8 も参照)
。
8.3
MPE 及び MPU の指定
上記 8.2)
,手順 2 で識別された各種の試験について,OIML 勧告は,その種類の試験に対してどの
ような MPE が適切であるかについて論じ,かつ指定することが望ましい。例えば,型式評価試験
の場合に,指定されている MPE は,被試験計器に対するいくつかの予想される正確さの等級の一
つと一致する可能性がある。検定試験の場合,規定した MPE は,第 7 節で論じたさまざまな検討
事項に基づく可能性がある。
MPUEI 及び MPUS の値を指定することが望ましいかどうか,並びに指定することが望ましい場合
は,それらの値とはどのようなものとするのが望ましいか(又は,むしろ,どのような fEI 及び fS
にすることが望ましいか。5.3.4,5.3.5 及び第 76 節を参照)について判定することを目的として,
uEI 及び uS の可能性の高い値がどのようなものになるのかについての論議が行われることも望まし
い。
8.4
許容可能なリスクレベルの指定
OIML 幹事国,コンビナー及び TC/SC メンバーは,さまざまな種類の試験に対するリスクの‘許容
可能な’レベルを,担当する OIML 勧告の中で提言することが望ましいかどうかについて検討する
ことが望ましい。判定規定及び関連するリスクは,それらの影響と共に,OIML 勧告の中で考察及
び論議が行われることが望ましい。しかし,これは規制上の問題との関連でだけ,行われることが
望ましい。製造事業者にとってのリスクは,一般的に勧告の範囲外である深刻な経済的影響をもつ
恐れがある(第 7 節を参照)
。
‘共有リスク’の原則を
前の手順(該当する場合)で指定された MPUEI 及び MPUS の値に応じて,
使用すべきかどうか(5.3.3 を参照)
,又は使用すべき指定されたリスク(確率)は存在するかどう
かについて,及びそうである場合は,それが誤った合格のリスク(5.3.1 を参照)であるのか若し
くは誤った不合格のリスク(5.3.2 を参照)であるのかについて,論議が行われることが望ましい。
OIML 勧告(又はその他の OIML 文書出版物)の中で‘共有リスク’手法が用いられる場合,暗黙
のうちに使用することは望ましくなく,むしろ,その使用についての明示的な文言を勧告の中で提
供することが望ましい。
8.5
共有リスクを用いないときの指示誤差の不確かさの指定
誤った合格のリスク又は誤った不合格のリスクが用いられる場合,各測定に固定されたものとして
uEI を考慮すべきかどうか-この場合はガードバンドを使用して適合を判定することが可能である
(5.3.6 を参照)
,又は uEI を指示誤差の各測定について個別に計算すべきかどうか-この場合は標
準正規分布表若しくは測定能力指数を各回に使用することが可能である-を指定することがなお
一層必要である。特定の勧告に対して標準正規分布表及び/又は測定能力指数の使い方についての
予想される追加的な論議と共に,この“法定計量における適合性評価における測定の不確かさの役
割”についての OIML 文書 D YY の附属書 B 及び附属書 E への参照を提供することが望ましい。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
概して,PDF を構成すること及び PDF 曲線の下の領域を計算することは,簡単なことではなく,
したがって OIML 幹事国,コンビナー及び TC/SC メンバーは,担当する勧告の中でどのような助
言及び支援を提供すべきかを検討することが望ましい(例えば,標準正規分布の利用又は数値的技
法の利用)
。
8.6
指示誤差の不確かさの評価の複雑さ
指定された型式の計量器について個々の測定の指示誤差の測定の不確かさを審査することは,多少
複雑なものとなる可能性がある。しかし,いったん導出がすべて実施されて一般的な測定状態の値
及び付随する測定の不確かさが得られてしまえば,試験所での所与の型式評価又は検定中に行われ
る事後の個々の測定のそれぞれに対する uEI の値を得るプロセスは,比較的直観的なものとなるは
ずであるということに言及することが重要である。測定の不確かさのほとんどの成分は個々の測定
毎に変わることはない。
測定の不確かさの取扱いのこの側面は,
測定の不確かさが関連する各 OIML
:
勧告の説明の中に含まれることが望ましい。提案文言(斜体で表記)
“指定された型式の計量器について個々の測定の指示誤差の測定の不確かさを審査することは,多
少複雑なものとなる可能性がある。しかし,いったん導出がすべて実施されて一般的な測定状態の
値及び付随する測定の不確かさが得られてしまえば,試験所での所与の型式評価中に行われる事後
の個々の測定のそれぞれに対する uEI の値を得るプロセスは,比較的直観的なものとなるはずであ
るということに言及することが重要である。測定の不確かさのほとんどの成分は個々の測定毎に変
わることはない。これによって,ガードバンド又は直観的な測定能力指数表(例えば,“法定計量
における適合性評価における測定の不確かさの役割”についての OIML 文書 D YY の附属書 E を
参照)”が使用できるため,‘市場’ 試験所環境の外の状況で測定の不確かさを組み込むプロセス
が容易化される。
もう一つの選択肢として,この OIML 文書に示された手引き(D YY“法定計量での適合評価判断
における測定の不確かさの役割”
)への参照を,附属書 E を参照との備考を付けて示すことが望ま
しい。
8.7
型式評価の OIML 試験報告書における測定の不確かさの記録
型式評価については(第 5 節を参照)
,OIML 勧告は,測定の不確かさを記録するための試験報告
書の様式への明確なエントリを提供し,記録されたあらゆる値(測定の不確かさ並びに/又は繰返
し性及び/若しくは再現性を求めている最中は除く)を添えることが望ましい。測定の不確かさが
無視できると推定できる場合,空白項目のままにするのではなく,これを適切な表記で文書化する
ことが望ましい。また,
‘測定能力指数’
(CM)法又は‘ガードバンド’法が用いられる場合は,こ
れも,適切なパラメータ(例えば,ガードバンドの大きさ)を試験結果と共に記録する
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
ための余白と共に,試験報告書の様式に記録することが望ましい。使用された CM グラフがどこに
示されているかの参照のための余白も提供することが望ましい。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
8.8
測定の不確かさを検定に用いることについての手引きの提供
OIML 勧告は,試験所での検定試験の段階での測定の不確かさの取扱い方について,型式評価試験
のために提供された手引きとのあらゆる違い,事前注意及び/又は特別の配慮を強調する手引きを
提供することが望ましい。例えば,所与の型式の計量器について,型式評価中に測定の不確かさの
いくつかの原因を含めることを推奨することもできるが,これらの不確かさの原因は,検定のさら
に大きな MPE に対して有意であるとは見なされない。また,ガードバンドの使用を型式評価に推
奨することもできるが,共有リスクは初期検定試験の場合は許容されることがある。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
9
参考文献
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ける不確かさの表現の手引き,JCGM 100:2008(GUM 1995,軽微な修正を伴う)
G 1-100:2008 として OIML が出版し,https://www.org/en/publications/guides/ にてオン
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[2]
BIPM,IEC,IFCC,ILAC,ISO,IUPAC,IUPAP,OIML,測定データの評価 “測定に
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https://www.org/en/publications/guides/ にてオンラインで,無料入手可能である)
[3]
BIPM,IEC,IFCC,ILAC,ISO,IUPAC,IUPAP,OIML,測定データの評価 “測定に
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BIPM,IEC,IFCC,ILAC,ISO,IUPAC,IUPAP,OIML,測定データの評価 “測定に
おける不確かさの表現の手引き”への案内及び関連文書,JCGM 104:2009(OIML G1104:2011 として OIML が出版し,https://www.org/en/publications/guides/ にてオンラ イ
ンで,無料入手可能である)
[5]
BIPM,IEC,IFCC,ILAC,ISO,IUPAC,IUPAP,OIML,測定データの評価 適合性評
価における測定不確かさの役割,JCGM 106:2012(OIML G1-106:2012 として OIML が出
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[6]
OIML B 3:2013 , 計 量 器 の OIML 型 式 承 認 の た め の OIML 基 本 証 明 書 制 度
(https://www.oiml.org/en/publications/basic にて,オンラインで無料入手可能である)
[7]
OIML B 10:2011 , OIML 型 式 評 価 国 際 相 互 受 入 れ 取 決 め の 枠 組 み ( MAA )
(https://www.oiml.org/en/publications/basic にて,オンラインで無料入手可能である)
[8]
ISO/IEC 17025:2005,試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項
[9]
OIML D 30:2008,ISO/IEC 17025 を法定計量に関わる試験期間の評価に適用するための
指針(https://www.oiml.org/en/publications/documents にて,オンラインで無料入手可能で
ある)
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
[10] BIPM,IEC,IFCC,ILAC,ISO,IUPAC,IUPAP,OIML,国際計量基本用語集(VIM),
JCGM 200:2012(JCGM 200:2008,軽微な修正を伴う)
(OIML V 2-200:2012 として OIML
が出版し,https://www.org/en/publications/guides/ にてオンラインで,無料入手可能であ
る)この文書文書内では“VIM3”とも称される)
[11] OIML V 1:2003 国 際 法 定 計 量 用 語 集 ( VIML )( フ ラ ン ス 語 - 英 語 二 か 国 語 版 )
( https://www.oiml.org/en/publications/vocabularies/ にて,オンラインで無料入手可能で
ある)
[12] C.アーリック,R.ディブカー,W.ウォーガー,基本的方針の進化と測定の説明(VIM3
の予備的根拠),OIML 公報,2007 年 4 月,23-35 ページ
[13] K.ソマー及び M.コチーク,法定計量における適合判定の際の測定の不確かさの役割,
OIML 公報,XLIII 巻,No. 2,2002 年 4 月,19-24 ページ
[14] C.アーリック及び S.ラズベリー,トレーサビリティにおける計量タイムライン,メト
ロロジア(Metrologia)
,1997 年,34,503-514 ページ
[15] https://www.itl.nist.gov/div898/handbook/eda/section3/eda3671.htm
[16] H.カルグレン及び L.ペンドリル,法定計量における適合審査の際の不確かさ(MID 関
連),OIML 公報,XLIII 巻,No. 3,2006 年 7 月,15-21 ページ
規制対象の測定において適切な信頼レベルを決定するための要素,
[17] WELMEC ガイド 4.2,
第 1 版,2006 年 6 月
,第 1 版,2002 年 8 月
[18] EMC 試験における不確かさの表現,英国認定機関(LAB34)
[19] D. ディーバー,測定の不確かさへの手引きの適用,2000 年,測定科学協議会(米国)
の議事録
[20] スティーブン・フィリップス,K.R.エーベルハルト,W.T.エストラー,測定の不確かさ及
び未訂正バイアス,NCSL ワークショップ&シンポジウムの議事録,1999 年,831-849 ペ
ージ
[21] ウィリアム・ガスリー,TAR 又は TUR の不確かさへの簡単な変換。NCSLI 2013 - セッ
ション 6B:
http://www.nist.gov/itl/sed/pubarchives/loader.cfm?csModule=security/getfile&pageid
=3204506
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
附属書 A
法定計量における“測定誤差”及び“測定の不確かさ”の共存
(校正と検定との関係)
(GUM とも称す)の導入は,測定及び測定結果の予期
1993 年の測定の不確かさの表現の指針[1]
される品質の表し方についての考え方に新たな道を開いた。測定中の量の真の値の最良推定値を既
知の系統誤差及び偶然誤差についての情報と共に示すことによって測定結果を表すのではなく,
GUM は,測定結果を,測定されることを意図した量(
‘測定量’
)の実質的に一意の真の値(以下
‘真の’値と表す)の最良推定値をそれに付随する‘測定の不確かさ’と共に示すという代替的手
法を提供した。
(法定計量においては歴史的に‘真の値’という用語は,計量器の検定プロセスの
中で用いられる測定標準に付随する値を意味するために使われることがあることに留意すること。
これは,この OIML 文書の中でのこの用語の意味ではない。
)
。
測定の不確かさの概念は,測定量の‘真の’値が,どの程度十分に知られていると信じられている
かの指標と記述することができる。
(GUM の手法によれば,測定量の‘真の’値がどの程度十分に
知られているかを知ることは不可能であり,どの程度十分に知られていると信じられているかを知
ることしかできない。
)
‘信じること’という観念は重要なものであり,その理由は,この観念が,
測定結果を確率又は確信度を用いて考えかつ表さなければならない(場合によっては黙示的にだけ)
という領域に計量(及び法定計量)を突入させるからである。法定計量において,計量システムが
指定された要件に従って動作しているかどうかについての判定を下す際,GUM の手法に従うなら
確率的に判定を下すことが必要になる。この OIML 文書は,そのような適合審査判定を行う際に,
どのように GUM の手法を組込み,どのように測定の不確かさ及び確率の概念を考慮に入れるかに
ついての手引きを提供する。
法定計量は,規制を目的とする構造及び施行を計量に適用するプロセス並びに慣行であり,これは
科学であり測定の応用である。法定計量の大部分は,規制対象の状況で計器/システムを使ったと
きに信頼できる測定を行うことができ,かつ行われていることを確実なものとするために,計量器
/システムの設計及び使用を試験所及び試験所の外の環境市場環境の両方で試験及び検定を行う
ことを必要とする。この状況における試験又は検定は,目下の規制的目的のために,被試験計量器
が,測定中の量は測定標準を使って明らかにされた‘真の’値と‘大差ない’と確信される指示値
を与えているかどうかについて判定が行われる。大差ない状態は,通常‘最大許容誤差’(MPE)
又は‘正確さの等級’の観点から法規の中で指定される。GUM の手法を用いると,検定の目的は,
(測定された‘指示誤差’の!)測定の不確かさを考慮に入れたときに‘指示誤差’の‘真の’値
が最大許容誤差の範囲内にあることの確信度を求めることになる。
このように‘測定誤差’及び‘測定の不確かさ’の概念を同時に用いることは,一見したところ矛
盾があるように又は分かりにくいよう思えるかもしれない。GUM は,測定の不確かさを優先して
おり,測定誤差の概念の使用を阻んでいるように思われる。しかし,GUM の焦点は,校正済みの
計量器を使って測定を行うことに当てられており,計量器自体の試験又は検定には当てられていな
いこ
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
れていないことに留意しておかなければならない。GUM の観点では,計量器の使用時に生じる既
知の測定誤差は,既知の(系統)測定誤差が残らないように‘補正し’なければならない。
(しか
し,これに関連して,既知の系統誤差又はバイアスを扱う方法が存在する。例えば,参考文献[19]
及び[20]を参照。)。一方,法定計量における検定(その他のいくつかの計量分野でも)の場合は,
実際のところ,誤差は,計量器の性能を審査する(補正はしない)ために使用され,誤差(又は,
実際には,指示誤差)を,その付随する不確かさと共に審査すべき完全に合理的な値の一つだと見
なすことができる。
‘誤差’という用語の使用に対するこの手法が,この OIML 文書の中で取り上
げている手法である。
既に示したように,法定計量における適合試験は,一般的に計量器又はシステムの測定された指示
誤差を,法規の中で指定されている MPE と比較することを必要とする。一般的に,法定計量にお
いて指示誤差は,指示値と測定標準によって与えられた値との差として計算される。測定標準によ
って与えられた値は,十中八九,測定中の量の‘真の’値ではないが,一般的に所与の特定の状況
については真の値に非常に近いと考えられている。しかし,通常‘指示誤差’は,実際に,指示値
と測定標準の‘真の’値との差になるはずであるから測定標準によって与えられた値に付随する(そ
の校正証明書に示されている)不確かさは,適合審査判定を下すときに考慮に入れなければならな
い。このことは,下記に詳しく述べられる。
質量標準及び検定対象のはかりを必要とする単純な一つの例を組み合わせる第一原理手法を用い
ることによって,試験との関連で測定を検討する際に測定誤差及び測定の不確かさがどのように共
存できるかについて,この附属書が詳細に説明する。
GUM の第 3 節にあるように,この附属書の最初の目的は,測定目的について記述するという観点
から,測定誤差及び測定の不確かさを検討することになる。これを行うために用いられる用語は,
VIM3[10]の用語であり,これは GUM の用語とは多少異なる場合もあるが,その理由については
必要なところで説明する。VIM3 のいくつかの該当する定義は,この OIML 文書の第 2 節に示され
ている。
測定の目的は,なんらかの種類の‘実験’によって‘測定量’についての定量的表現を作り出すこ
とと考えることができる。通常,この表現は,1 つの‘量’の大きさを共に表す数字及び基準であ
る‘値’
(VIM3 の‘量の値’
)という概念及び用語を必要とする。基準は,一般的に,同種のその
他の量をその 1 つの量に比較できるように取決めによって採用された測定‘単位’である。
測定の不確かさの概念以前,測定の目的は,一般的に測定量の‘真の’値の最良推定値として表
されており,系統誤差(これは,最良推定値を計算する際に‘補正’しなければならなかった)
を含む‘誤差分析’及び測定中に生じた偶然誤差(2 回以上の測定が行われた場合)の‘広が
り’の説明を伴うことがあった。測定単位の実現までさかのぼる比較又は校正の連鎖を確立する
ことによって適切な測定単位で測定結果を表すために,計量トレーサビリティの概念が用いられ
ていた。トレーサビリティチェーンに付随する予想される系統誤差を示すことのほかは,概し
て,
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
系統誤差のその他の要因についてそれ以上は何も示されていなかった。
先に論じたように,測定の不確かさの概念は,計量学者の測定目的についての考え方を根本的に変
えた。なかでも,GUM の手法の基本的な前提の一つが,偶然‘効果’及び系統‘効果’の両方を
対等な関係で説明することによって測定の品質を特徴付けることが可能だということであり,した
がって以前は誤差分析の中で提供されていた情報を改善して,確率的基盤の上に置いた。測定結果
を測定量の‘真の’値の最良推定値として,誤差分析と共に表すのではなく,測定結果を測定量の
‘真の’値の最良推定値として,示された最良推定値がどの程度十分に知られていると信じられて
いるかの指標である測定の不確かさ(一般的に系統誤差に関連する測定データ及びその他の知識,
及び実験的データ及び測定を行ったときにまちがいは一切なかったという前提に基づく)と共に示
すことになる。
GUM の手法の確率的基盤は,主に,測定量の真の値を知ることはできないという GUM(3.3.1)
のもう一つの基本的前提に由来する:
“認識された系統効果補正後の測定結果は,偶然効果及び測
定結果の系統効果の不完全な補正から生じる不確かさのために,いまだ測定量の値の推定値に過ぎ
ない。
”これは,留意すべき非常に根本的かつ重要なポイントである。GUM の D.3.4 の中で論じら
れているもう一つの関連する検討事項は,常になにがしかの程度ではあるが,測定量の必然的に不
完全な定義(VIM3 は,これを“定義の不確かさ”と呼ぶ)による‘固有の’不確かさがあること
から,測定量の一意の真の値などというものは存在しないということである。したがって,GUM
の 1.2 は,一つの測定値の一意の真の値を得ることはできず,
“実質的に一意の”真の値をもつこ
としかできないということについて詳しく述べており,これは前述したように簡略化のため,この
文書の中では‘真の’値と参照してきた。
GUM の 3.1.1 の備考は,GUM がなぜ“測定量の値”及び“測定量の真の値”を“同等”と捉え,
したがって意味するところは‘真の’値の概念(GUM の B.2.3 の中で定義されているように)
,す
なわち,測定量の定義に一致する値であるときに“値”という用語だけを使っているのかを説明し
ている。VIM3[10]及びこの文書は,この GUM の取決めを採用しておらず,
“値”という用語は
上記のもっと一般的な意味で既に用いられていることから,その概念を意図している場合は“真の
値”という用語を利用している。そうしなければ,
“値”という単一の用語を二つの異なる概念に
用いることは紛らわしい[12]
。
“誤差”の概念のほかに,GUM の中では,少なくとも量的意味では阻まれているもう一つの概念
が“正確さ”である。これは,
“正確さ”が一般的に“誤差”の反対の意味に考えられているため
に,その意味では誤差が大きくなるほど,正確さは下がっていくことが理由である。
“誤差”は,
GUM の観念では知ることができないことから,“正確さ”も知ることができない。したがって,
OIML 勧告の中で,
“正確さの等級”に関連しても一般的な意味においても,どのように“正確さ”
という用語が使用されているかについて敏感になるよう注意することが望ましい。精度等級は,規
定の精度等級を満たす計量器が達成することができる MPE がどのレベルかについての情報を伝え
ることを意図している。
計量トレーサビリティは,測定のための不確かさ(GUM)の手法においても引き続き非常に重要
な概念の一つであり,実際,これを測定の不確かさの概念にきわめて密接に結びつける新たな側
面を呈している。測定単位で“測定値”を表すことができるよう測定単位までさかのぼる比較
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
又は校正の連鎖を確立するための基盤となることに加え,計量トレーサビリティの概念を用いてト
レーサビリティチェーンに沿って測定の不確かさの推移を追跡することもできる。この点において,
VIM3(及び VIM2)の計量トレーサビリティの定義で明確に裏付けられているように,計量トレー
サビリティ及び測定の不確かさは,密接不可分である[14]
。
A.1
校正
図の右上に概略的に示した基準分銅の測定(校正)との関連で‘測定単位’
‘真の’値,
‘測定誤差’
及び‘測定の標準不確かさ’を図 A1 に図示する。分銅は,別途言及又は提示されていない高品質
の計量システムを用いて校正されていると仮定する。基準分銅の校正証明書は,基準分銅の測定さ
れた質量値(Mcalibrated)を,付随する測定の標準不確かさ(ucalibrated)と共に記載する。測定の標準
不確かさ(又は拡張不確かさ,Ucalibrated)は,基準分銅の校正中に,図の横軸に示される測定単位
までさかのぼるトレーサビリティの原則を用いて得られている。基準分銅の質量の‘真の’値も,
図中の右上と横軸上の両方に示されており,ここでは真の値が存在することが示されているが,こ
れは原則的に不可知である。横軸上の基準分銅の質量の‘真の’値の回りの小さな縦の線は,
‘真
の’値に付随する定義の不確かさを表す意味があることを意図している。
やはり図 A1 に示したのは,5.1 に記載したように,基準分銅の質量の‘真’の値が,基準分銅の
質量の特定の予想される‘真’の値の回りの微小領域の中にあることの確率密度を提供する確率密
度関数(PDF)である。示されているように,通常,測定の標準不確かさ(ucalibrated)は,標準偏差
として,PDF から求められる。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
測定誤差:基準分銅の例
基準分銅の質量の
測定値が基準分銅
の質量の‘真の’
値に一致する確率
密度
基準分銅
(存在するが,原則的に不可知,ゼロに等しいと考えられる)
測定された(校正された)基準分銅の測定誤差の‘真の’値 =
確率密度関数
(PDF)
測定の標準不確かさ
質量の予想される
量の値(M)
1 単位
基準分銅
の質量の
‘真の’
(存在する
が,原則的
に不可知)
基準分銅の質
量の測定され
た(校正され
た)値
図 A1
図 A1 も,基準分銅の質量の測定された(校正された)値と基準分銅の質量の‘真の’値との差と
定義された,基準分銅の質量の‘測定誤差’の‘真の’値を図示している。図 A1 で留意すべき重
要なポイントの一つは,基準分銅の質量の‘真の’値が不可知であることから,誤差は不可知と見
なされていることである。GUM は,誤差はこの測定との関連においては‘不可知’であるために,
誤差の概念の使用を阻んでおり,その代わりに,測定の不確かさは計算でき,どの程度十分に基準
分銅の質量の‘真の’値を知っていると信じているかの指標を与えるために,測定の不確かさを使
用することを支持している。測定との関連においては,図 A1 に示した予想される事実にかかわら
ず,すべての既知の系統誤差には補正が加えられることになっていることから,基準分銅の測定さ
れた(校正された)質量の誤差の‘真の’値は,測定(校正)からのすべての利用可能な情報に基
づき,ゼロであると信じられていることに留意することが非常に重要である。
A.2
検定
ここで,図 A2 に示すように,はかりを校正する目的ではなく試験する目的で校正された基準分銅
が使用される状況について考察する。試験のシナリオでは,被試験計量器を使用する際の測定中の
一つの量の複数の指示値は,測定標準を使用するときに得られた(同じ量の)測定された複数の値
と比較される。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
指示誤差:
(被試験)はかりの例
基準分銅
(存在するが,原則的に不可知)
指示誤差‘真の’値 =
測定値が‘真
の’値に一致す
る
確率密度
測定された指示誤差の
値 =
指示誤差の‘真の’値の
最良推定値 =
(被試験)はかり
質量の予想され
る量の値
(M)
1 単位
基準分銅
の質量の
‘真の’
値
(存在する
が,原則的
に不可知)
基準分銅の質
量の測定され
た(校正され
た)値
はかりによっ
て与えられた
基準分銅の質
量の指示値
図 A2
図 A2 は,図 A1 と同じ情報の多くを含んでいるが,さらに被試験はかりから得た基準分銅の質量
の指示値(MI)を示している。2 つの‘指示誤差’も示されており,一つは基準分銅の質量の‘真
の’値(やはり不可知である)に関連し,もう一つは基準分銅の質量の測定された(校正された)
値(これは,可知であり,事実知られている)に関連する。図 A2 に記載したように,標準器(基
準分銅)の測定された(校正された)質量の誤差の‘真の’値はゼロであると信じられていること
から,上記の測定された指示誤差の値は,指示誤差の‘真の’値の‘最良推定値’と見なされる。
検定試験は,校正よりも簡単で時間のかからないプロセスであり,したがって,
‘試験所’及び‘市
場’試験所の外の環境環境の両方で頻繁に実施される。検定試験状況では,目的は質量標準器の指
示値を測定された(校正された)値を‘補正’又は‘調整’することではなく,質量標準器の指示
値と校正された値との差が,一つの規則で(例えば,OIML 勧告で)示された最大許容誤差(MPE,
第 4 節を参照)の許容可能な限界の中にあるかどうかを審査することである。指示誤差が小さい
(それどころかゼロ)であることが極めて望ましいが,これは検定試験においては一般的に当ては
まらない。
管理された試験所環境での型式評価試験では,その他は一定に維持しながら(測定中の量など,
この例においては基準分銅)
,計量器の指示値に影響を与える量(周囲温度及び質など,いわゆる
影響量)を管理された方法で変化させる試験を含むことが一般的である。かかる条件下での指示
誤差の許容変動は,OIML 勧告に述べられているか,又は国家規則に任されている。かかる
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
影響量試験が合格かどうかを審査する場合,影響量の測定に付随する測定の不確かさを考慮に入れ
ることが重要である。
さらに図 A2 に示されているのは,2 つの PDF であり,一方は基準分銅の質量の測定された(校正
された)値の PDF であり(これは図 A1 に示されているのと同じ PDF である)
,もう一方は基準
分銅の質量の指示値の PDF である(この不確かさの要因は,指示値の不安定さ(ジッタ)
,限度の
ある指示器の分解能,及び指示誤差の多くの値を得る際に一般的に繰返し性の欠如の一因となるそ
の他の偶然的影響に由来する)
。望ましいのは,これらの 2 つの PDF の中の情報を利用して指示誤
差の‘真の’値がどの程度十分に知られていると信じられるかについての説明を行うことができる
ようになることである。このことは,図 A3 に図示されている。
図 3A の横軸は,ここで図 A1 及び A2 の横軸から変更され,
‘指示誤差の量の予想される値’と名
付けられていることに留意すること。指示誤差の測定された量の大きさは,図 A2 に示されたもの
と同じであり,前述したように,指示誤差の‘真の’値の最良推定値である。あらゆる測定量につ
いて,指示誤差の‘真の’値が,指示誤差の特定の予想される‘真の’値の回りの微小領域の中に
あることの確率密度を示す一つの PDF を構成することができる。そのような PDF は,図 3A の中
で,付随する測定の標準不確かさ(uEI)と共に図示されている。この PDF は,図 A2 の 2 つの PDF
を組み合わせることによって(回旋と呼ばれることがある)得られる[2]
。興味深いことに,uEI は,
試験計画の中では‘不確かさ’及び‘誤差’という用語及び概念の共存を明確に実証する‘
(指示)
誤差の標準不確かさ’である。
指示誤差:
(被試験)はかりの例
測定された指示
誤差の値が指示
誤差の‘真の’
値に一致する確
率密度
測定された指示誤差の値 =
指示誤差の‘真の’値の最
良推定値 =
基準分銅
(被試験)はかり
測定の標準不確かさ
(uEI)
指示誤差の量の予
想される値(EI)
図 A3
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
A.3
概要
要約すると,
‘測定の不確かさ’の概念は,測定を行うこととの関連での‘測定誤差’及び‘誤差
分析’の概念の必要性に取って代わるために作られたものの,
‘誤差’という用語及び概念は計量
器及びシステムを検定することとの関連では依然として役立っている。事実,測定した指示誤差の
不確かさについて語ることは道理にかなっている!検定試験を行う際に使用される測定標準に付
(確
随する測定の不確かさは,それらが指示誤差の測定の標準不確かさ(uEI)に寄与することから,
率的)適合審査判定を行う際に考慮に入れなければならない。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
附属書 B
標準正規分布表の使用
[出典元:NIST のウェブサイト]
http://www.itl.nist.gov/div898/handbook/eda/section3/eda3671.htm
正規分布の確率密度関数を求める一般的な式
ここで,μ
は位置パラメータであり,σ は尺度パラメータである。μ
= 0 及び σ = 1 の場
合が,標準正規分布と呼ばれる。標準正規分を求める式
下図は,標準正規分布(正規化ガウス分布とも呼ばれることがある)を図示している。曲線の下の
斜線領域は,パラメータ x が 0 とα(図ではα = 0.5)の間にある確率を示している。
確率密度
正規 PDF
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
αの個別の値の曲線の下の領域の値は,次の標準正規分布表から求めることができる。
標準正規分布表
下表は,x = 0 から指定された値 x = αまでの標準正規曲線の下の領域を記載している。
x = 0 から x = αまでの正規曲線の下の領域
この文書では,αは次のように定義されている:
が 0 より大きい >の場合。
が<
0 未満の場合は,後述される。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
図 B1 は,規制対象のパラメータを図示している。
指示誤差の測定の複合標準不確かさに
基づいた適合判定の実施
測定された指示誤差の値が指示誤差の
(実質的に一意の)真の値に一致する
確率密度
確率密度関数
指示誤差
EI
予想される適合基準:指示誤差(EI)の真の値が適合領域の中にある確率は
どのようなものか?
標準正規分布表を用いて,PDF の下の領域を
確定すること。
図 B1
例
目盛尺のような長さ計量器の個々の試験で,高精度の目盛尺(LR)のその校正証明書から得た基準
長の値が 1.0003 m であるときに,長さの指示値(LI)が 1.0006 m である場合を考える。そこで測
定した指示誤差の値は次のようになる:
指示誤差の標準不確かさの計算が次を与えるとする:
この特定の試験の MPE は,500 m と示される場合,αは次のように計算される:
上記の標準正規分布表から,αの下の左列を“1.1”まで下へと読み,1.11 に対するエントリを見
つけ,次に横の一番上の行の見出し“.01”へ行き,表の中で列と行が交わるエントリを読む。この
エントリは,.3665 である。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
これは,図 B1 の ĒI と MPE+との間の曲線の下の領域が 0.3665 であることを意味する。したがっ
て,ĒI の左側に延びる曲線の下の領域が 0.5000 であることから,指示誤差の真の値が適合領域の
中にある確率(測定中に一切まちがいを犯さなかったと仮定して)は,0.3665+0.5000,すなわ
ち 0.8665(86.7 %)である。したがって,誤った合格のリスクは,pfa = 1-0.8665 = 0.133 =
13.3 %である。fEI = uEI/MPE = 0.36 となり,最大許容不確かさ試験に対する fEI の最大値が 1/3 と
指定されている場合,この試験は不合格となることに留意すること。
指示誤差の測定の複合標準不確かさに
基づいた適合判定の実施
測定された指示誤差の値が指示誤差の
(実質的に一意の)真の値に一致する
確率密度
確率密度関数
(PDF)
指示誤差
EI
予想される適合基準:指示誤差(EI)の真の値が適合領域の中にある確率は
どのようなものか?
標準正規分布表を用いた,PDF の下の領域は,
86.7 %である。
図 B2
ĒI が 0 未満の場合もまた,標準正規分布表を用いてガウス曲線の対称性を活かすことができるが,
その場合,α を次によって定義することが必要となる:
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
附属書 C
指示誤差の測定の不確かさの審査例
圧力変換器を利用している圧力計器の型式評価試験について,判定プロセス(合否)に測定の不確
かさを組込む場合を検討する。
8.2(手順は斜体で示されている)に示した手順を踏む。
(手順 1)被試験計器(IUT)について,試験を実施するために用いられる計量システムと共に,
記載する。この説明には,計量器に影響を与える可能性のあるすべての影響量,計量システムに影
響を与える可能性のあるすべての影響量を含め,試験中に影響量を保っておく状態(ある場合),
又は試験中に影響量が収まっていなければならない範囲(例えば,計量システム及び IUT の両方の
定格動作条件及び/又は基準動作条件)を指定する。
圧力変換器を利用している圧力計器の型式評価試験
試験システムの説明
入力
出力
被試験圧力計
(IUT)
圧力発生器
圧力測定システム
図 C1
被試験計器(IUT)は,圧力変換器を利用する圧力計器であり,図版の便宜上,変換器の片側が周
囲(大気)圧力(図 C1 では Pa で示される)に開放されていることを意味するいわゆる‘ゲージモ
ード’で校正されていると見なすこととする。
IUT は,大気に開放されている実験台(図 C1 にあるように)に載るように置かれるか,又は温度
及び相対湿度を管理できるチャンバの中に置かれる。IUT の温度は,TI と示され,相対湿度は RHI
と示されている。IUT に対する入力は,図中に示されており,これが指示されたゲージモード圧力
PI に対する IUT の基準レベルを定める。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
圧力測定システムは,点線で表した矩形によって示されており,圧力発生器及び圧力発生器の出力
を IUT の入力に接続する硬質管で構成されている。作動液(指定することが必要である)は,pf で
表される質量密度をもつことが知られており,圧力発生器の高さの上の IUT の基準レベルの高さ
は h で表されている(たとえ圧力発生器が同じ実験台の上に載っていたとしても,2 つの基準レベ
ルは異なる可能性が高い)
。圧力発生器の基準レベルで,その圧力発生器によって発生するゲージ
モード圧力は PG で表され,圧力発生器の温度は TG で表されており,これらは Ta で表される周囲
空気の温度とは異なる。試験場所の局所重力加速度は g で表されている。
次に,試験結果に影響を及ぼす可能性のある影響量は,Pa,Ta,TG,RHI 及び TI である。最初の 3
つは,いずれの試験中も管理されず,測定されるだけである(TG は,圧力発生器が常にその定格動
作条件の範囲内で動作していることを確実なものとするために監視される)
。一方,いくつかの試
験は,IUT の温度(TI)及び IUT の回りの空気の相対湿度(RHI)を変える(及び測定する)必要
がある。
その他の試験パラメータ h,g 及び pf は IUT(又は圧力発生器)に影響を与えないため,影響量と
は見なされない。
(手順 2)型式評価のために実施する必要があるさまざまな試験のすべてを識別する。手順 1 の説
明に基づき,各種の試験を実施するために用いられる測定の数学モデルを作る。各モデルは,最終
的に“指示誤差”の式を提供しなければならず,かつ測定した各指示誤差に付随する測定の標準不
確かさの式も含まなければならない(指示誤差の繰返し測定値が得られない場合。その場合,指示
誤差の平均値を,繰返し測定値から得た一つの成分を組込んだ測定の標準不確かさと共に,示さな
ければならない)。IUT がその定格動作条件の範囲内のどこで動作しているときも得られる指示誤
差の値の範囲の不確かさ分析も考慮に入れることが望ましい。
実施する必要のあるさまざまな種類の試験は,OIML 勧告 R 101 及び R 109 に示されている。その
中には,温度試験,湿度試験,及びヒステリシス試験などがある。
これらの種類の試験のための(指示誤差の)基本数学モデルは,圧力測定システムによって IUT の
入力に送出される静水ゲージ圧(この圧力は,図 C1 の中で PS で表されている)の‘真の’値の
最良推定値の数式を最初に生成することに基づいている。
ここで,pa は周囲空気の密度である。次に圧力計器の指示誤差(EI)の数学モデルを,計量器の指
示値(PI)と圧力測定システムによって IUT の入力に送出される静水ゲージ圧(PS)の‘真’の値
の最良推定値との差とする。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
次に,個別に測定された指示誤差の値の複合標準不確かさは,GUM[1]の式 10 を用いて求めら
れる。
ここで,uPI は,IUT の指示の分解能限度及び‘ジッタ’だけを組込んでおり,かつ
(式 C.3 及び C.4 は,量の間には相
指数 i 全体にわたる加算は,PS が依存するすべての量を含む。
関がないという前提に基づく。そのような相関が存在する場合は,GUM の式 13 を使用しなけれ
ばならない。
)式 C.1 及び C.4 から:
ここで,測定の不確かさの個々の成分は,表又は校正証明書などさまざまな要因から得なければな
。次に,式 C.5 を
らない(uPa 自体は,空気の温度及び相対湿度に依存することに留意すること)
C.3 と組み合わせて,個別に測定された指示誤差の値に付随する複合標準不確かさの式を得ること
ができる。
しかし,型式評価のための各種の試験については,試験の繰返し性(urep と表される)の測定の不
確かさの成分も組込む必要がある。これは,一連の繰り返される‘同一の’測定を行うことによっ
て,かつ,測定値の標準偏差を計算することによって,又は以前に行われた測定(用いられた方法
は,指定されることが望ましい)からそのような情報を得ることによって,得ることができる。
また,IUT を評価して,市場試験所の外の環境での使用中に,計器がその動作条件に起こり得る複
数の条件の同時変化(1 つの固定した入力の場合)を受けた場合に,どの程度指示が変化するかを
明らかにすることが望ましい。IUT の動作条件は定格動作条件の全範囲にわたって不規則に変動す
るため一連の値の標準偏差として得られる可能性のある不確かさの成分(uroc と表わされる)も,
uEI の最終的な式に含めることを検討することが望ましい。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
ここで,u2PS は,式 C.5 から得られる。
IUT をその公称最大定格動作圧力 1.01 MPa(10 気圧)で動作させる特定の型式評価試験を検討す
る。圧力発生器を,その校正証明書から与えられた不確かさ(uPG)0.0001 MPa(又は 100 Pa)
で,1.0000 MPa の圧力(PG)を発生するように設定する。
作動液は,
(製造事業者から与えられた)質量密度 900 kg/m3 及び 1 つの対応する規定の測定の不
[不
確かさ(upf)10 %または 90 kg/m3 をもつ液体である。周囲空気密度(pa)は,空気温度(Ta)
[不確かさ 0.00010 MPa で,0.10147 MPa と
確かさ 0.01 ℃で,23 ℃と測定される]
,気圧(Pa)
[不確かさ 5 %で,60 %と測定される]に依存する。空気密度
測定される]
,及び相対湿度(RHI)
を計算するための既知の式を用いて,pa は,不確かさ 0.005 kg/m3 で,1.194 kg/m3 と計算される。
地球表面全体の局所重力加速度(g)の総変動は,0.5 %にもなる可能性があるため,局所重力の値
はこの用途に適した不確かさで確定する必要がある。緯度及び標高を明らかにする表が利用できる。
この特定の試験については,g はそのような表から求め,不確かさ(ug)0.00005 m/s2 で 9.79560
m/s2 となる。
圧力発生器の基準レベルの上の IUT の基準レベルの高さ(h)は,測定の不確かさ(uh)0.0001 m
で,0.0213 m と測定される。
(手順 3)測定標準又はシステムの付随する測定の標準不確かさ(upS)を計算する。
計量システムによって IUT の入力に送出される圧力の測定の標準不確かさ(upS)は,次のように
式 C.5 を用いて計算することができる。
2
u PS
 (100) 2   9.79560  0.0213 (90) 2   9.79560  0.0213 (0.005) 2 
2
2
 900  1.194   0.0213 (.00005)2   900  1.194   9.79560  .00012
2
2
,
C.7
= [104 + 352.62 + 1.09x10-6 + 9.16x10-7 + 0.775] Pa2
≈ 10,353 Pa2,
or
uPS ≈ 102 Pa
この分析から,発生した圧力の値の不確かさが IUT の入力に送出される圧力の総不確かさを左右
し,次に作動液の密度の不確かさが続くことが,即座に見て取れる。そのような分析は,IUT の
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
入力に送出される圧力の不確かさを低減する場合,必要であれば,どこに努力を費やすのが最善か
を割り出しやすくする。
(手順 4)測定量の指示値(指示器の分解能及び/又は偶然変動による成分を含む)に付随する測
定の標準不確かさ(uPI)を計算する。
固定した入力圧力 1.01 MPa 及び指定された基準条件に保たれた IUT の動作条件に対する IUT の
指示圧力(PI)の観察された偶然変動(ジッタ)は,±15 Pa であることが分かり,これは結果的
に uPI の不確かさの成分 15/√3 = 8.7 Pa となる。
指示の分解能は,±5 Pa となることが分かり,これは uPI の不確かさの成分 5/√3 = 2.9 Pa を与え
る。
IUT の指示に関連した複合標準不確かさは,次のとおりである。
(手順 5)計量器/システム及び/又は試験手順の繰返し性又は再現性に付随する測定の標準不確
かさ(urep)を計算する。
IUT に対し一連の繰返し性試験を行う。この場合,繰返し性条件は,他のすべての条件を一定に保
った上で圧力発生器からの圧力を交互に 50 回加えたり除いたりすることである。加圧と加圧の間
には,熱平衡が確立できるように十分な時間が残される。予想されるヒステリシスによる影響も分
析される。50 個の値(uSD)の計算された標準偏差は,この特定の種類の試験の繰返し性/再現性
に寄与する測定の不確かさの成分と見なされる。例においては,uSD = urep = 20 Pa が計算されると
仮定する。
(手順 6)計量器が定格動作条件の範囲全体にわたって動作するとき,計器に対する固定入力に対
して計量器の指示が変動することが分かった場合は,測定の標準不確かさ(uroc)を計算する。
手順 4 の試験条件に戻り,ここで,IUT の動作条件をその定格動作条件の範囲全体にわたって系
統的に変動させて(可能であれば)
,対応する指示圧力 PI の変動を観察する。可能であれば再
度,動作条件を個別に,及び一度にすべてを変動させ,IUT が試験所の外の環境市場環境で経験
すると予想される条件(温度試験,湿度試験,ヒステリシス試験など)をシミュレートする。そ
のような試験について,指示圧力が±30 Pa 変動することが分かっているとする。定格動作条件
の範囲全体にわたる動作条件の(予想される)変動による測定の不確かさに対応する成分(uroc)
は,したがって次のようになる。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
(手順 7)指示誤差に付随する測定の複合標準不確かさ(uEI)を計算するために,これらの測定の
不確かさの成分を組み合わせる。
上記のように,ここで IUT をその公称最大定格圧力 1.01 MPa(10 気圧)で動作させる特定の型式
評価試験の指示誤差の複合標準不確かさ(uEI )を計算することが可能である。式 C.6 を用いる。
この例は,この型式の計量器の個々の測定の指示誤差の測定の不確かさを審査するために検討する
必要がある事実上あらゆるものを示している(したがって多少複雑に見える可能性がある)が,い
ったんこの導出がすべて実施されて一般的な測定状態の値及び付随する測定の不確かさが得られ
てしまえば,測定の不確かさのほとんどの成分は個々の測定毎に変わることはないことから,所与
の型式評価又は検定中に行われる事後の個々の測定のそれぞれに対する uEI の値を得るプロセス
は,比較的直観的なものとなるはずである。
式 C.8 で与えられた指示誤差の不確かさは,個々の指示誤差の明確な値ではなく,試験に指定され
た公称(最大)圧力値だけを求めて得られたということを指摘することは,実際に,興味深い。測
定の不確かさの成分の中には,圧力が低くなると少なくなる可能性のあるものがあるが,特定の種
類の試験を通じて最大不確かさと信じられるものを(内輪に)用いることが便利な場合もある。
この場合,指示誤差の不確かさのほとんど全部が,測定標準に由来すること(すなわち圧力発生器)
を指摘することも興味深い。ただしいつもそうであるとは限らない。
この例で,どのようにして試験装置の指示誤差の測定の不確かさを審査するかが提示されたからに
は,この例を拡大して,どのようにして MPE,最大許容不確かさ及び適合判定を行うために検討
すべきリスクの選択肢に対する要件を確定するかを検討することが可能である。これは,附属書 D
の中で行われる。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
附属書 D
測定の不確かさを組込んだリスクアセスメントの例
識別された各種の試験について,OIML 勧告は,その種類の試験に対して,どのような MPE が適
切であるかについて論じ,かつ指定することが望ましい。例えば,型式評価試験の場合に,指定さ
れている MPE は,被試験計器に対するいくつかの予想される正確さの等級の一つと一致する可能
性がある。検定試験の場合,規定した MPE は,第 6 節で論じたさまざまな検討事項に基づくこと
が望ましい。
MPUEI 及び MPUS の値を指定することが望ましいかどうか,並びに指定することが望ましい場合
は,それらの値とはどのようなものとするのが望ましいか(又は,どのような fEI 及び fS にするこ
とが望ましいか)について判定することを目的として,uEI 及び uS の可能性の高い値がどのよう
なものになるのかについての論議が行われることも望ましい。5.3.4,5.3.5 及び第 6 節を参照。
附属書 C1 の例を継続し,IUT を,その型式の計器が指定された正確さの等級(例えば,OIML R
109 で指定された等級 0.06)-これは,MPE.06 = 0.06 %(1 MPa)=0.0006 MPa = 600 Pa と呼ば
れる MPE を備える-に属すると分類できるかを見極めるために試験される場合を検討する。
附属書 C に対象として含まれるこの型式の計器の試験の種類について,消費者のリスク,生産者
のリスク又は共有リスクを使うのが最も適切であるかの分析を行わなければならない。この分析で
検討すべき事柄は,計器の使用者及び計器の製造事業者に対する間違った合否判定(その型式の計
器の指定された,又は最も可能性の高い用途について)の影響はどのようなものになるか(安全性,
経済及びその他)
,及び試験中の uEI の予想される値はどのようなものかということである。
例えば,その IUT の型式が一般的に天気予報のための気圧監視のために用いられる場合,fEI の指
定された値(1/3 など)に準拠している限りは,共有リスク手法が適切であると決定される可能性
がある。一方,原子力発電所で容器の臨界圧を監視するために使用されている圧力計器の型式につ
いては,多分,比較的内輪(より小さい)fEI で,消費者リスク手法が用いられるはずである。
どのリスク手法を用いるかを決定する前に,まずいくつかの予備測定を実施して uEI の代表値(こ
れは附属書 C の式 C.8 で約 105 Pa であることがすでに確定されている)を求めることが必要(又
は少なくとも有用)である可能性がある。これらの測定を用いて,間違った合否判定の確率が非常
に小さくなるように,fEI の適切な指定値を定めやすくすることも可能である。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
確率密度関数(PDF)
指示誤差の測定
値が指示誤差の
‘真の’値に一
致するという確
率密度関数
指示誤差
図 D1
図 D1 は,論じられている例の状況を図示している。中央(青色)の曲線は,不確かさ(曲線の標
準偏差)が MPE の約 1/6 となる(uEI /MPE.06 = 105/600)ガウス PDF を示している。左端(赤色)
の曲線は,不確かさが MPE の約 1/3 となるガウス PDF を示している。これら 2 本のガウス曲線
を調べることによって,視覚的にではあるが,
(5.3.4 で論じたように,fEI に対応する)比率又は別
の比率のどちらを勧告の中で要件として指定することが望ましいかについての安心度を決定する
ことが可能になる。論じられている特定の例の場合,その IUT の型式が重要でない用途で用いられ
ると仮定すると,fEI 1/3 は,許容できると見なされる。重要な用途の場合,図 D1 の右端(緑色)
の曲線で概略的に示されている fEI 1/20 が,より適切である可能性がある。この後者の場合,この
より小さな fEI の値を達成するためには,uEI を小さくするか,又はこの型式の計器が属すべきさら
に大きな MPE(正確さの等級)を選択することが必要になる。
次に測定標準に対する要件を考えると,測定標準及び計量システムをある特定の種類の試験に使用
することが妥当であるかどうかを判定しやすくすることを目的として,uPS の値は,測定標準の校
正証明書に記載された情報も取り入れた上で,その計量システムの分析から求めることができる。
試験のこの側面は,勧告の中で論じ,かつ指定することが望ましい(例えば,5.3.5 の中で論じた
。論じられている圧力例の場合,
‘標
ように,fS の適切な値は,指定することができるはずである)
準器’によって送出され,かつ測定される圧力に付随する不確かさは,式 C.7 で uPS = 102 Pa と
与えられる。これは,uEI よりわずかに小さいだけであり,したがって再び図 D1 の中央の曲線を
用いて(視覚的に)標準器の不確かさが許容可能かどうかを判定することができる。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
この場合,下される判定は,標準器による不確かさが,製造事業者の視点から見て不当に合否試験
の判定に影響を与えているかどうかであり,その場合,不確かさの大部分は測定標準によるもので,
IUT によるものではない。論じられている特定の例の場合,要求される値 fS = 1/3 は,許容可能で
あろう(測定値が 1/6 であることから)
。
OIML 幹事国,コンビナー及び TC/SC メンバーは,さまざまな種類の試験に対するリスクの‘許容
可能な’レベルを,担当する OIML 勧告の中で提言することが望ましいかどうかについて検討する
ことが望ましい。判定規定及び関連するリスクは,それらの影響と共に,OIML 勧告の中で考察及
び論議がなされることが望ましい。しかし,これは規制上の問題との関連でだけ,行われることが
望ましい。製造事業者にとってのリスクは,一般的に勧告の範囲外である深刻な経済的影響をもつ
恐れがある。
前の手順(該当する場合)で指定された MPUEI 及び MPUS(又は fEI 及び fPS)に応じて,‘共有リス
ク’の原則を使用すべきかどうか,又は使用すべき指定されたリスク(確率)が存在するかどうかに
ついて,かつ,そうである場合は,それが誤った合格のリスクであるのか若しくは誤った不合格のリ
スクであるのかについて,論議が行われることが望ましい。OIML 勧告(又はその他の OIML 文書出
版物)の中で‘共有リスク’手法が用いられる場合,暗黙のうちに使用することは望ましくなく,む
しろ,その使用についての明示的な文言を勧告の中で提供することが望ましい。
さらに附属書 C1 の例を継続し,次に初期検定要件について試験が行われる IUT の場合を検討す
る。この場合,初期検定の MPE(MPEiv)は勧告の中で指定されるべきで,したがって勧告は,規
制者及び消費者のニーズ,並びに試験所の外の環境‘市場’環境において計器が達成できる動作レ
ベルなど,適切な MPEiv を選択する際に検討すべきさまざまな考慮事項について論じることが望
ましい。
型式評価試験の場合のように,どのような種類のリスク及び判定規定を初期検定に使用すべきかと
いう問題を分析しなければならないが,この場合は(一般的に)より大きい MPE(これは MPEiv
が MPE の 2 倍になるように選択されることが多い事例であるが,必ずしもそうする必要はない)
を用いるため,この問題の答は型式評価試験の場合とは異なる可能性がある。例えば,型式評価試
験では,指定された fEI の値と共に,指定消費者リスクを用いることが妥当だと判断される可能性
がある。一方,初期(又は後続)検定試験では,MPE が大きければ,PDF は図 D1 の中央の曲線
よりも,むしろ右端の曲線に近い可能性があることから,共有リスク(試験所の外の環境市場では,
これの方が使いやすい)が適切である。そのような場合,
‘間違った’判定は,右端の曲線の相対
幅(これは非常に小さい)についてだけ起こり得ることから,計算の複雑さを避けてリスクを共有
することは理にかなっている。
誤った合格のリスク又は誤った不合格のリスクが用いられる場合,各測定に固定されたものとして
uEI を考慮すべきかどうか-この場合はガードバンドを使用して適合を判定することが可能である
-,又は uEI を指示誤差の各測定について個別に計算すべきかどうか-この場合は z 統計若しくは
測定能力指数を使用することが可能である-を指定することがなお一層必要である。特定の勧告に
対する z 統計及び/又は測定能力指数の使い方についての論議と共に,この“法定計量における適
合性評価における測定の不確かさの役割”についての OIML 文書 D YY への参照を提供することが
望ましい。
概して,PDF を構成すること及び PDF 曲線の下の領域を計算することは,簡単なことではなく,
したがって OIML 幹事国,コンビナー及び TC/SC メンバーは,担当する勧告の中でどのような助
言及び支援を提供すべきかを検討することが望ましい(例えば,z 統計の利用又は数値的技法の利
用)。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
誤った合格のリスクの手法を使用すべきであると判断された状況では,誤った合格のリスクの許容
レベル(pca,5.3.1 を参照)はどのようなものか,及び指示誤差の不確かさは各測定に対して一定
と見なすことができるかどうか,又は毎回計算し直すことが必要かどうかについて,詳細な分析が
行われなければならない。
“法定計量における適合性評
uEI を毎回計算する必要がある場合は,毎回 z 表を用いるか(例えば,
価における測定の不確かさの役割”についての OIML 文書 D YY の附属書 B を参照)
,又は毎回測
“法定計量における適合性評価における測定の不確かさの役割”に
定能力指数(CM)を(例えば,
ついての OIML 文書 D YY の附属書 E を参照)を計算し,かつ毎回対応する CM 表を用いる必要が
ある。
所与の種類の測定の uEI が一定だと見なすことができ,したがってを毎回計算する必要がない場合
は,MPE の境界線を内側に固定量分移動させることによって(誤った合格の確率を指定値未満に
維持するために;
[5]を参照)ガードバンドを構成することができる。したがって合否判定は,測
定された EI が新たな(減少させた)MPE の境界線の中にあるかどうかに基づいて行われる。
附属書 C1 の例の型式評価試験に戻って,
IUT の用途に対して誤った合格のリスク
(消費者リスク)
レベル 5 %が適用される(すなわち,pca = .05,したがって適合確率は pc = 0.95 = 95 %)ことが
判定されたと仮定する。この例では,MPE.06 = 600 Pa 及び uEI 最大圧力 1 MPa で)= 105 Pa で
あることが既に明らかにされているので,附属書 B の標準正規分布表を使って指示誤差の最大値
を求めることができる。この表の 0.9500 のエントリ(又は実際には 0.4500。附属書 B の表ではこ
の場合 0.5000 を 0.9500 から引く必要があるので)を見つけることから始める。これは 0.4495(α
= 1.64)及び.4505(α = 1.65)の間にある。補間を用いると,使用されるαの値は 1.645 となる。
そこで式 B.1 を多少並べ変えた形で用いて:
試験が合格であると見なされているとしても,不合格と見なされたはずのリスク 5 %を超えない場
合に,ĒI がもつことができる最大値である ĒI = 425 Pa を求めることができる。この状況は,図
D2 でグラフによって実証されている。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
確率密度関数(PDF)
指示誤差の測定
値が指示誤差の
‘真の’値に一
致するという確
率密度関数
指示誤差
図 D2
z 表を使うのではなく,測定能力指数を用いてこの同じ結論に達する方がいっそう便利である可能
性がある(附属書 A を参照)
。この場合,測定能力指数は,式 E.1 を用いて,CM = MPE/[2・uEI] =
600/[2・105] = 2.86 と計算される。附属書 E の 95 %グラフを用いて,Ê の対応する値は,約 0.85
である。式 E.2 を並べ替えると,EI = MPE(2・Ê-1)= 600(1.7-1)= 420 Pa となり,これは
さらに精度の高い z 表を用いたときに得られる 425 Pa に近い。
指定された型式の計量器について個々の測定の指示誤差の測定の不確かさを審査することは,多少
複雑なものとなる可能性があるが,いったん導出(微分)がすべて実施されて一般的な測定状態の
値及び付随する測定の不確かさが得られてしまえば,測定の不確かさのほとんどの成分は個々の測
定毎に変わることはないことから,所与の型式評価又は検定中に行われる事後の個々の測定のそれ
ぞれに対する uEI の値を得るプロセスは,比較的直観的なものとなるはずである。測定の不確かさ
の取扱いのこの側面は,測定の不確かさが法規制の対象となる各 OIML 勧告の中に記載されること
が望ましい。
測定毎に uEI の大きな変動がある場合は,各測定に z 表又は測定能力指数を用いる必要が出てく
る。しかし,前述したように,uEI が各測定でかなり大きく変動することは起こる可能性は低
く,その上,慎重な手法を採って,附属書 C の中で明らかにした uEI をすべての uEI の可能性の
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
高い上限と見なし,したがってそれを定数として取り扱うことの方が便利な場合がある。この場合,
ガードバンドを作ることができ
(新たな MPE を 600 Pa から 425 Pa へと内側に移動させる場合)
,
意思決定がはるかに簡便化して,425 Pa 未満の EI の測定値を含む試験は合格となり,この値を超
えた場合は不合格となる。このガードバンド手法は,図 D3 に図示されている。
確率密度関数(PDF)
指示誤差の測定
値が指示誤差の
‘真の’値に一
致するという確
率密度関数
指示誤差
図 D3
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
附属書 E
測定能力指数(Cm )
[5]の中で定義され論じられている“測定能力指数”は,付随する複合標準不確かさ(uEI)を伴
う測定された指示誤差(EI)が,指定された適合確率(pc)の範囲内で最大許容誤差(MPE)要件
に適合すると見なされるかどうかを迅速に審査するための有用なツールの一つである。
測定能力指数は,無次元であり,法定計量では次のように定義される:
測定能力指数を用いるためには,まず,次のように定義されるもう一つの無次元パラメータ Ê を
計算する必要がある。
)
。次に,所与の pc(ここでは pc
(–MPE<EI<MPE の場合は,0<Ê<1 であることに留意すること。
= 95 %の場合が示されている)について,下記のようなグラフを構成することができる。このグラ
フでは,Ê と CM との交点を見つけて,それが斜線領域(試験は不合格)又は非斜線領域(試験は
合格)にあるかを見ることができる。
(図:W.タイラー・エストラー提供)
曲線上のポイントの PC = 95 %
この領域の PC > 95 %
斜線領域の PC < 95 %
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
附属書 F
適合性を試験した計量器/システムと共に用いる測定の不確かさの確定
計量器がいったん初期検定試験又は事後検定試験に合格してしまえば,その計量器は,測定値がそ
の付随する測定の不確かさを伴うことが要求されている場合に,測定を行うためにときどき用いら
れる。そのような状況では,計器が試験だけでなく校正も受けた場合を除き,その計器を用いて得
られたあらゆる測定値について言えることは,測定量の‘真の’値は,
(計量器の指示によって与
えられた)測定値によって表される最良の値であると信じられていること,ただしその‘真の’値
は(等しい確率で)測定値に MPE を加えて又は減じて与えられた範囲のどこにでもあり得るとい
うことだけである。これは,いわゆる‘矩形確率分布’であり,GUM[1]の 4.4.5 で扱われてい
る。
その分析により,測定(指示)値に付随することが望ましい測定の不確かさは次のようになる。
ここで,MPE は,計量器を試験したときに用いられた最大許容誤差である。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
附属書 G
GUM に従った非自動はかりの単一測定に対する不確かさ分析の例
(オリバー・マック(PTB) 及びホルスト・ルーテッケン(Sartorius) により提供)
要旨
試験所で実現されると推定される最適化した周囲・試験条件下では,図 G1 中の青色 PDF は,特
に,繰返し性に関して,IUT が OIML R 76 の最大許容誤差を利用しており,計量システム(基準分
銅及びデジタル読み)が OIML R 76 の要件に適合していると仮定した不確かさ分析結果である。
評価した指示誤差が,上限又は下限にある場合,使用時の許容限界外に‘真’の値がある高い可能
性が存在する。
図 G1 中の赤ピンク色 PDF は,繰返し性が OIML R 76 が許容しているものより 10 倍優れたもの
であり,デジタル可読性は 2 倍高く,基準分銅は OIML R 111 による精度等級の 1 つ上の精度等級
に属すると仮定した不確かさ分析結果を表す。この場合,試験当局と同様にだけでなく製造事業者
によっても推奨されているように,使用中の許容限界外に真の値がある確率は非常に小さい。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
4
3.5
3
2.5
2
1.5
1
0.5
0
-2
-1
0
1
2
3
4
Error of indication
指示誤差
次は,不確かさ分析について述べている。
8.2 に示した手順を踏む:
手順 1 被試験計器(IUT),計量システム及びすべての影響要因の説明
IUT は,デジタル指示を備えた非自動はかりである。
計量システムは,国家標準にトレーサブルな OIML R 111 に適合する基準分銅及び計量結果を読む
ための,はかりの検定値より高分解能い可読性をもつと見なされるデジタル指示ユニットである。
IUT に影響を与える可能性のある量は,次のとおりである。
-
周囲温度
湿度
静電界及び電磁界
スパン調整(通常,校正した分銅で実施される)
繰返し性
温度勾配
その他
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
計量システムに影響を与える可能性のある量は,次のとおりである。
-
浮力
傾斜(傾き)
重力効果
偏心
デジタル丸め
その他
手順 2:試験及び数学モデルの説明
OIML R 76 に従った型式承認における一つの基本的な試験は計量性能試験である。
(OIML R 76 A.4.4)この試験では,はかりに乗せるためにいくつかの基準分銅を用い乗せ,既知
の基準値を IUT の指示と比較することによって指示誤差を評価する。
試験分銅 mcp を付加したはかりの指示 I M について,試験分銅なしのはかりの指示 I 0 及び指示誤差
FW を考慮に入れ,次が有効である。
n
I M  mCP   f i  I 0  FW
i 1
(G.1)
n 個の係数 f i は,試験荷重 mcp の結果に影響を与える要因の結果を記述しており,考慮に入れなけ
ればならない。
次では,最適化された周囲条件及び試験条件を分析する。これらの条件は,例えば,承認試験の実
施に向けて規定されたものだからである。例えば,電磁界が無い状態での測定は,定められた温度
及び湿度条件下で実施される。適正に訓練を受けた職員が試験を実施する場合,傾き及び偏心によ
る影響は,無視することができる。試験直前の調整は,浮力の影響による誤差を最小限に抑える。
したがって,次の調整係数だけを考慮しなければならない。
fJ 
mJN
mJ
(G.2)
mJN は調整分銅の公称値であり, mJ は実の取決めによる質量である。
式(1)及び(2)から,結果として次の式が得られる。
FW  I M  I 0  mCP  f J  I M  I 0  mCP 
mJN
mJ
(G.3)
次は,測定偏差 FW の絶対標準測定不確かさ uFW について有効である。
2
uFW  uI2M  uI20  f i 2  um2CP  mCP
 u 2f i
(G.4)
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
この式の標準測定不確かさは次のとおりである。
-
試験分銅を付加したはかりの指示の uI M
-
試験分銅無しのはかりの指示の uI 0
-
試験分銅の umCP
-
調整係数の u f J
mJN は,不確かさ成分を一切そなえていないことから, u f J に対しては,調整分銅の標準測定不確か
さ umJ を考慮に入れて,次が得られる。
u fi 
mJN
 umJ
mJ2
(G.5)
( mJ = mJN )
,
さらに,
取決めによる質量の期待値 mJ が公称計量値 mJN に相当すると見なされる場合
調整係数の期待値について,式(2)に従い,次が有効である。
fJ  1
(G.6)
式(5)及び(6)を考慮に入れ,式(4)は次のように単純化することができる。
uFW  uI2M  uI20  um2 CP 
2
mCP
 um2 J
2
mJN
(G.7)
手順 3 (us)
次の不確かモデルの場合,次にを用い,試験標準の公称値 mCP は,調整分銅の公称値 mJ と等しいと
仮定して,さらに単純化している。
mCP  mJ
(G.8)
OIML R 111 に従い,2 つの分銅に同一の精度等級が割り当てられる場合,それらは,同一の不確
かさ成分を備える。
umCP  umJ
(G.9)
OIML R 76,3.7.1 に従い,試験分銅の測定偏差は,この荷重に有効なはかりの最大許容誤差( mpeR76 )
の 1/3 より大きくてはならない。
矩形分布に基づいて,試験分銅の測定不確かさ umCL については,次が有効である。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
2
mCL
u
2
mpeR76

27
(G.10)
手順 4 ( uI )
デジタルディスプレイユニットの分解能 d を用い,デジタル分解能の不確かさ成分については,と
記述する値の間隔での矩形分布として,次が有効である。
d
R
S
TI  2 ; I
M
M

d
2
U
V
W
(G.11)
2
uRes

d2
12
(G.12)
OIML R 76,A.4.4.3 に従い,はかりの分解能 d は,試験中,検定目量 e の最大 1/5 になることが
ある。
d
e
5
(G.13)
再現性の不確かさ成分 u Rep は,少なくとも 10 回の計量動作から成る繰返し性(OIML R 76,3.6.1
及び A.4.10)の試験で求める。同じ荷重を用いて,計量結果の偏差は,はかりのこの荷重に対して
有効な最大許容誤差 mpeR76 の絶対値以下となることがある。
このことは,標準偏差,したがって再現性に付随する測定不確かさ u Rep は,次の間隔で定義される
ことを意味する。
0u
2
Rep
2
5 mpeR76
 
9
2
(G.14)
これは,R 76 の A.4.10 の中で規定されているように,5 回の計量でゼロ偏差の値が得られ,5 回
の計量では完全な mpeR76 を得られる 10 回の個別の計量を考慮することに基づいている。
次においては,標準不確かさ uI M 及び試験分銅の有無を問わずはかりの指示の uI 0 の寄与率は同一
であると見なされ,指示の分解能による不確かさ成分 uRes と測定の再現性による不確かさ成分 u Rep
で構成される。
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
2
2
uI2M  uI20  uRes
 uRep
(G.15)
手順 5
試験分銅は,試験中安定していると仮定する。
手順 6 は適用されない。
手順 7 組み合わせ
式(8)から(10)を考慮に入れ,指示誤差 FW の絶対標準測定不確かさ uFW は,式(7)から得られる。
c
h
2
2
uFW  2  uRes
 uRep
 2  um2 CP
(G.16)
規定の最適周囲・試験条件下で式(12)から(14)に基づき,測定偏差 FW の標準測定不確かさ uFW のモ
デルについて,次が得られる。
uFW
c
d2
2

 2  uRep
 um2 CP
6
h
(G.17)
拡張標準測定不確かさについては,包合係数 k = 2 を考慮に入れて,次が有効である。
U FW  2  uFW
(G.18)
検定目量の最大許容数及び荷重に依って,はかりの mpeR76 は,e/2,e 又は 3/2 e になる。したがっ
て,式(12)から(17)を考慮に入れ,式(18)に従って,拡張標準測定不確かさ U FW については,次の
結果となる。
U Fw 1,6mpeR76
(G.19)
これが結果的に図 1 中の青色 pdfPDF となる。
試験当局が,(12)の代わりに使用する
d=
e
10
(20)
及び(10)の代わりに使用する
u 2m
CL
mpe 2R76
=
243
(21)
の条件下,すなわち OIML R 111 の精度等級より 1 等級上の試験分銅を用いる条件下では,はかり
の繰返し性の結果は,
(14,右側)に示すものよりも 10 倍優れたものとなる。
U FW  0,26  mpe R76
(22)
OIML 文書草案:法定計量での適合性評価における測定の不確かさの役割
これが結果的に図 G.1 中の赤色 pdfPDF となる。
要旨:
非自動はかりが OIML R 76 の全要件を満たしたとしても,測定誤差の不確かさは,OIML R 76 の
中で定義した最大許容誤差の倍数にまでなる可能性がある(最初の例を参照)
。その場合,指示の
誤差だけを考慮することが望ましく,それを MPE と比較することが望ましい。不確かさを決定す
るためにすべての影響要因が考慮に入れられてはいないことに留意することが望ましい。
結論
この附属書は,1/3 mpe の測定の不確かさ又はたとえ 1/5 mpe の測定不確かさの要件であっても,
特別な条件下でしか維持されず,OIML 勧告の要件が満たされているとしても,原則的にこれを保
証することはできないことを指摘している。このことは,いくつかの他の計量器専用の OIML 勧告
についても当てはまると考えられる。
この文書“法定計量における適合性評価における測定の不確かさの役割”の中では,そのような場
合には,最大許容誤差自体を反映させることが推奨されている。これを行う前に,規則の確立され
た枠組み(国によっては法律の中で規定されていることがある)について,広範な論議が必要であ
る。測定の不確かさに関し,計量器専用の OIML 勧告の作成又は改訂時には,その論議の結果を反
映し,考慮に入れなければならない。