海釣り公園を事例とした温泉地域の 観光資源の考察 - JAFIT

日本国際観光学会論文集(第22号)March,2015
《研究ノート》
海釣り公園を事例とした温泉地域の
観光資源の考察
す ず
き
か ず ひ ろ
鈴木 一寛
友成 真一
と も な り
し ん い ち
登山家
早稲田大学大学院環境・エネルギー研究科
The most number of visitors of sea fishing parks in hot spring tourism area is a traveler who lodges in hot spring house. I
researched out potential for expansion of sea fishing parks as tourism resources depends on the improvements of the local area
collaboration.
キーワード:海釣り公園、温泉地域、観光資源
1.はじめに
して認識していることは付加価値の増減
2014a)
。
1-1 研究の背景と目的
に関係がない。しかしながら、温泉以外
熱海において宿泊施設の外で観光客が
観光形態におけるマス・ツーリズムか
の地域資源を活用することは、付加価値
容易く楽しむことができる観光コンテン
らオルタネティブ・ツーリズム又はニ
及び集客数の増加に効果を与えている可
ツの1つに熱海港海釣り施設で釣りをす
ューツーリズムへのパラダイムシフトに
能性がある。どの温泉宿泊施設にとって
ることがある。熱海港海釣り施設では釣
従い、温泉地域では「生き残り」や「再
も温泉は自明の地域資源であり、
むしろ、
り経験のない手ぶらの観光客を対象とし
生」に向けた取り組みが始まっている。
それ以外の食材や自然といった地域資源
た、講師による釣りの手ほどきと釣り具
先進的な取り組みにより着実に来客を確
を温泉と組み合わせて有効活用すること
のレンタルをセットにしたプランが好評
保している地域がある一方で試行錯誤の
が、付加価値や集客に影響すると考えら
である。更に、釣った魚を料理できる飲
状態を脱することができない地域が多
れる」と分析している。
食店と連携や温泉施設の紹介など顧客の
い。
温泉地域の再生への取り組みは、来訪
楽しみを向上させる取り組みが実を結び
一般社団法人日本旅行業協会は、「提
客に対し宿泊施設の外に出て温泉以外の
年々利用客が増加している。熱海港海釣
言:更なる国内旅行にむけて ― 新時代の
楽しみを提供できるかということが重要
り施設などの一般の宿泊客を対象とした
旅行業の役割 ― 」
(2004)のなかで「1980
視されている。
観光コンテンツの提供が「囲い込み」の
年代から90年代にかけて、各宿泊施設は
静岡県熱海は、高度成長期において団
脱却要因になっている。
館内設備を充実させることにより宿泊客
体旅行客に対する画一的なサービス提供
本研究では、有名温泉地域に設置され
を館内に囲い込み、館内消費額の最大化
と宿泊施設の「囲い込み」が顕著であっ
ている熱海港海釣り施設をはじめ、青森
を図った。企業丸抱えの招待旅行など高
た。ピーク期と言える1960年代後半から
市浅虫海づり公園、のとじま臨海公園海
額の館内消費が期待できる顧客層が急激
1970年前半には宿泊旅行者数が500万人
づりセンターを事例とした温泉地域に属
に減少し、かわって個人・グループ客が
以上であった。
2011年度は250万人まで減
する海釣り公園の観光資源としての可能
増加すると、館内に囲い込まれることの
少した。2012年度は269万人、
2013年度は
性における探求と課題の整理を目的とし
抵抗感が表出した」
「
、由布院や黒川温泉、
273万人と回復傾向にある。
回復傾向の裏
た。
小野川温泉など『街歩きのできる観光地』
には、「熱海温泉玉手箱(オンたま)
」を
や『湯めぐり』のできる温泉が脚光を浴
代表とした地域連携を密にした着地型旅
1-2 研究の手法と先行研究
び、時代は『囲い込み』とは逆の方向に
行商品の開発や地域イベントの開催、宿
本研究は、筆者(2014b)による学会
転換してきている」と旅行者の志向の変
泊事業者と観光施設の連携などの事例が
発表「有名観光地に隣接した海釣り公園
化を指摘している。
具現化し、来訪客に対して温泉以外の付
の比較考察」の際に頂戴したご指摘、ご
一方、中小企業白書(中小企業庁、2007)
加価値を提供するようにした観光関係者
意見を踏まえ課題や可能性について追記
では、温泉宿泊施設を対象としたアン
の努力が伺える。観光地域の再生に向け
的に考察を加えた。研究手法は先行論文
ケート調査から「温泉自体を地域資源と
た取り組みが着実に進んでいる(鈴木、
や調査報告書などの関連文献の引用に加
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日本国際観光学会論文集(第22号)March,2015
え、関係者からのヒアリングをもとに論
による休業中のものを含め、日本全国に
開設に至るまで、安全上の観点から関係
を展開した。
約40か所に設置されている。海釣り公園
者との協議に莫大な時間を費やしたと各
先行論文や調査報告書では、
「釣人によ
は立地環境と設置目的から「1.都市近
施設の担当者は口を揃える。本研究で対
る経済効果の算出と釣りに関する意識調
郊型」、「2.教育施設型」
、
「3.有名観
象とした熱海港海釣り施設は防波堤の開
査報告書」(社団法人日本釣用品工業会、
光地隣接型」
、
「4.地域活性期待型」の
放によるものである。
2001)において本牧海釣り施設の消費動
4つに分類できる(鈴木、2013b)
。
他に少数であるが、地磯を活用した施
向の報告があり、関係者へのヒアリング
第1に横浜や神戸など都市部に設置さ
設や浮遊式(メガフロート)
、筏などを複
の参考とした。釣りを地域資源として活
れている「都市近郊型」があげられる。
合的に設置し、多様な魚種を釣ることが
用する観点では、宮澤(1995)は、男性
入場者の大部分は都市部に住む日帰りの
できる施設がある。
中心の遊漁船市場において新規需要拡大
家族連れである。横浜市本牧海づり施設
の必要性を説いている。脳神経科学者の
や神戸市立平磯海づり公園などが該当す
2-2 海釣り公園の今後の動き
篠原(2014)は、釣りが脳のトレーニン
る。第2には「教育施設型」である。漁
主に海洋リゾート地域において高度成
グに役立つことを説明し、子供の教育と
業が地場産業である地域に職業教育や海
長期からバブル経済期にかけて設置され
して釣りの活用を論じている。地域にお
洋教育を目的として海釣り公園が設置さ
たトランス型の鉄製沖桟橋でできた海釣
ける観光コンテンツの現状については、
れている。教育旅行を目的とした学校の
り公園が閉鎖する一方で熱海港海釣り施
観光庁が「着地型旅行市場現状調査報告」
利用など団体客が多い。宗像大島海洋体
設や新潟東港第2東防波堤のように防波
(2012)のなかで流通視点から着地型旅行
験施設うみんぐ大島などが該当する。第
堤の開放により海釣り公園を開設する動
商品の現状と課題を示唆している。
「観光
3には「有名観光地隣接型」である。入
きがある。
地域における評価に係る検討実施業務報
場者には宿泊施設を利用する観光客が多
国土交通省港湾局(2012)では、国民
告書」
(2014)では旅行者の潜在的な志向
い。本研究において研究対象とした青森
の海洋性レクリエーションに対するニー
を分析し、適正な自然体験など地域の滞
市浅虫海づり公園、熱海港海釣り施設、
ズの高まりに対応するとともに、地域振
在プログラムの可能性について報告をし
のとじま臨海公園海づりセンターなどが
興に資することを期待し、防波堤等の釣
ている。
該当する。最後に上記のどれにも該当し
り利用を進める際に参考となる手順と方
釣りと観光地域を関係付けたもので
ない「地域活性期待型」である。都市部
法をとりまとめた「防波堤等の多目的使
は、筆者による「釣りガールの考察~熱
や有名観光地域或いは漁業が盛んな地域
用に関するガイドライン」を発行した。
海女子釣り教室参加者アンケートの分析
に設置されているわけではない。一方、
公益財団法人日本釣振興会では、防波
~」
(2013a)及び「熱海港釣り施設の入
釣り場としては有名ではある場所に設置
堤釣りの健全な釣り場を確保するために
場者の消費動向と地域活性化~宿泊を伴
されていることが多いことから、海釣り
「防波堤有効活用研究会」を組織し、神奈
う入場者と日帰り入場者の特徴の分析
公園を観光コンテンツとして遠方からの
川県川崎市や福井県、青森県などの地方
~」
(2014c)のなかにおいて熱海の宿泊
誘客による地域の活性化を企図している
公共団体に防波堤の開放に係る要望書を
施設と熱海港海釣り施設の関係について
が、現状は地域住民の入場者の大半を占
提出している。一方、新たに防波堤の釣
論じた。青森市浅虫海づり公園と浅虫温
めている施設が多い。新潟東港第2東防
り場開放を予定している地方公共団体関
泉との関係については「有名温泉地域に
波堤や南あわじ市浮体式多目的公園など
係者による熱海港海釣り施設や新潟東港
おける海釣り公園の活用方策の考察~浅
があげられる。
釣り施設など先行施設への視察が増して
虫海づり公園を事例として~」(2014b)
海釣り公園の釣り場の構造様式は、ト
おり、加えて開設に向けた協議体が各所
において論じた。また、
「海釣り公園の属
ランス型の鉄製沖桟橋が最も多い。トラ
で組織化されている。今後、防波堤の開
性から見る考察」
(2013b)では全国で展
ンス型の鉄製沖桟橋の特徴としては、環
放による海釣り公園が増加することが予
開する海釣り公園を体系的に整理をし
境に配慮した設置が可能であるが、修繕
見できる。
た。海釣り公園を教育的な自然体験の場
費などの負担が高く、耐用年数を過ぎた
として活用する意義については「釣りを
施設はそのまま閉鎖となるケースがあ
3.温泉地域の海釣り公園
活用した教育旅行の考察」(2013c)にお
る。本研究で対象とした青森市浅虫海づ
3-1 温泉地域の海釣り公園の概要
いて説明をした。
り公園及びのとじま臨海公園海づりセン
本節では研究対象とした青森市浅虫海
ターがトランス型の鉄製沖桟橋である。
づり公園、熱海港海釣り施設、のとじま
2.海釣り公園の現状
次いで津波などの防災目的として設置
臨海公園海づりセンターの3つの施設の
2-1 海釣り公園の形態
されている防波堤や護岸を釣り人に一般
概要を説明し、次節において比較考察を
有償の海釣り公園は、震災の影響など
開放している施設がある。釣り場として
行う。
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日本国際観光学会論文集(第22号)March,2015
①青森市浅虫海づり公園の概要
青森市浅虫海づり公園はバブル経済期
③のとじま臨海公園海づりセンターの概
要
(図3参照)
。開設当時の入場者の記録は
ないが、関係者によると80年代から90年
に遊園地などと共に1986年に設置された
のとじま臨海公園海づりセンターは、
代の温泉観光が全盛の時代は20,000人以
有償の釣り施設である。青森市が公募に
和倉温泉から車で約20分走った能登島の
上の入場者はあったという。他の2つの
よる指定管理者に運営を委託しており、
北部に位置し、のとじま臨海公園水族館
施設同様に宿泊客を対応とした手ぶらの
現在は浅虫温泉観光協会が指定管理者と
に隣接している。1982年に水族館ととも
プランが人気である。生け簀が常設され
なっている。天然の魚を釣るために設置
に開設された。開設時は石川県の直営で
ており、釣れなかった場合でもお土産が
されているが、釣果のない入場者や簡単
あったが現在は一般財団法人石川県県民
確保できる。
に釣りたい入場者のために生け簀が設置
ふれあい公社が運営している。入場者数
されている。生け簀から釣った魚は市場
は和倉温泉の宿泊者数に比例してしお
3-2 入場者からみる比較考察
価格に見合った買い取り制により誰でも
り、近年は年間15,000人を前後している
3つの施設に共通することは、地元の
お土産が確保できる。釣り経験のない手
ぶらの観光客が、釣れなかったときのお
図1.青森市浅虫海づり公園入場者数(人/年)
土産を含め一人3,000円程度で一日を楽
しむことができる。
青森市浅虫海づり釣り公園の入場者に
ついては、浅虫温泉の宿泊者に比例して
おり、2003年は16,090人であったが、そ
の後減少し、2010年は8,407人と半減し
た。2011年は東日本大震災があったにも
関わらず9,718人と増加に転じた。2012年
は10,749人であり、2013年は12,155人と回
※2009年は休園(出所:青森県資料による)
復傾向である(図1参照)。熱海同様に旅
行者の屋外での体験志向に加え、関連イ
図2.熱海港海釣り施設入場者数(人/年)
ベントやメディアにおける情報発信や未
経験者に対する常駐スタッフの対応など
青森市浅虫海づり公園の管理に携わる関
係者の集客努力の成果である。
②熱海港海釣り施設の概要
前述したとおり熱海港海釣り施設で
は、手ぶらの観光客を対象としたプラン
が好調であり、堅実に入場者を増加させ
ている。入場者の推移であるが、2006年
(出所:NPO 法人 SEA WEB 提供資料による)
4月に開設し、翌年2007年9月に台風の
被害を受け、2008年1月まで営業を休止
図3.のとじま臨海公園海づりセンター入場者数(人/年)
した。その後は着実に入場者が増加し、
2011年は震災の影響もあったにもかかわ
らず過去最高の1年間で27,842人を記録
した。2013年も堅調に入場者数を伸ばし
ており、32,674人であった(図2参照)。
運営は公募の指定管理者に選ばれた
NPO 法人 SEA WEB がおこなっている。
法人の代表が民間企業の出身者であるこ
とから民間手法による合理的な運営が集
客に寄与している。
(出所:一般財団法人石川県県民ふれあい公社提供資料による)
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日本国際観光学会論文集(第22号)March,2015
固定的な常連客はいるものの、近年は宿
を調理し、釣った本人が新鮮な魚を食べ
施設との業務提携など入場者の便宜を図
泊施設を利用した手ぶらの一般観光客が
て満足できることが女性客に喜ばれてい
る企画を度々実施している。また、釣り
多く、入場者の増減要因に影響をしてい
る。浅虫温泉では高級な宿泊施設が多い
具メーカーとの連携により定期的に釣り
る。有名観光地であることから景観に優
ため、修学旅行などの教育旅行の受け入
教室を開催する一方で、学校の教育旅行
れている。スタッフが常備をし、安全対
れが少ない。熱海港海釣り施設を始め多
の受け入れを頻繁に実施している。各メ
策に万全の策を講じていることもあり、
くの海釣り公園では海洋教育、職業教育
ディアで紹介されることもあり、釣り業
初心者が安心して楽しむことができる。
或いは環境教育を目的としたプログラム
界 か ら 高 い 評 価 を 受 け て い る(鈴 木、
バリアフリーに整備されており、老若男
が実施されているが、青森市浅虫海づり
2014c)
。
女が気軽に楽しむことができる。
公園での実績は少ない(鈴木、2014a)
。
のとじま臨海公園海づりセンターの入
関係者のヒアリングによると青森市浅
熱海港海釣り施設では、入場者のうち
場者については、週末やゴールデンウ
虫海づり公園の入場者の大半が宿泊利用
宿泊利用者は半数程度である。残りは東
ィーク、夏季休暇期間は宿泊施設の利用
者である。入場者の4割以上が女性客と
京を中心とした日帰り客と地元の常連客
者が多いが、冬季は地元の男性の常連客
いう点は他の海釣り公園と比べ特筆でき
である。他の2つの施設と異なり年間券
が多くなる。通年では県内の日帰りの入
る。宿泊施設の利用者には女性のみの団
を発行している。平日は年間券を利用す
場者が多いという。年間を通じて家族連
体が多いことから裏付けできる。加えて、
る常連客が多い。女性客は2割程度と他
れが多く、女性は4割程度と青森市浅虫
海釣り公園の施設内を清潔に保っている
の2つの施設より少ない。前述したとお
海づり公園同様に多い。併設する水族館
ことや職員の接遇技術が女性客に安心感
り、
(指定管理者の)代表が民間で培った
を目的とした顧客が副次的に来場する
を与えていることが女性客の多い要因で
営業能力を駆使し、旅行会社との連携し
ケースが多いため、のとじま臨海公園海
ある。大半の宿泊施設が施設で釣った魚
た企画商品の造成や飲食店、日帰り温泉
づりセンター単独にて集客を目的とした
表1.青森市浅虫海づり公園、熱海港海釣り施設、のとじま臨海公園海づりセンターの比較概要
名称
所在地
運営主体・指定管理者
基礎データ
最大収容者数
大人料金
開園年月日
構造様式
休業
青森市浅虫海づり公園
駐車場料金
駐車場収容台数
釣堀(養殖魚)の併設
施設内売店
手ぶら客への対応(料金:入場
貸竿400円
料/貸道具/餌)
釣り講師常勤
熱海港海釣り施設
のとじま臨海公園海づりセンター
静岡県熱海市和田浜南町1694-32
青森市浅虫字蛍谷532
石川県七尾市能登島曲町15部40
熱海港外防波堤
社団法人青森観光コンベンショ
一般財団法人石川県県民ふれあ
NPO 法人 SeaWeb
ン協会 浅虫支部
い公社
200人
80人
約300人
550円
300円
510円
1986年5月
2006年4月
1982年
トランス型沖桟橋
防波堤の開放
トランス型沖桟橋
8月1日閉鎖期間(11月1日~4
第3水曜日
年末のみ
月28日)
無料
500円
無料
100台
400台
1,100台(水族館利用者共用)
有り(釣った魚を実費負担)
無し
有り(真鯛800円)
エサ、自動販売機
餌及び軽食販売
餌及び軽食販売
2,200円
貸竿510円、エサ300円~
事務局職員兼務、定期的に外部か
事務局職員兼務
ら派遣
事務局職員兼務
環境保全策
経済統計
教育プログラム(自然体験)の実
なし
施、学校等教育機関の受入
放流事業の実施
実施
海中清掃の実施
なし
人工漁礁・産卵場、保護区の設置 有り(3か所)
2013年入場者数
12,155人
2012年入場者数
10,749人
2011年入場者数
9,718人
2010年入場者数
8,407人
入場者における男女比(推計値) 6対4
入場者における地元利用者の割 2割未満(主に青森市内、ただし
合(推計値)
県内利用者は多い)
施設利用に係る大人ひとりあた
約700円
りの消費額(平均)
実施
なし
実施
実施
なし
32,674人
32,535人
27,842人
26,598人
8対2
なし
実施(過去)
山石、漁礁で囲まれている
15,447人
13,472人
14,248人
12,275人
6対4
25%
県内利用者7割
7,673円
約3,000円
(出所:浅虫温泉観光協会、NPO 法人 SEA WEB、一般財団法人石川県県民ふれあい公社提供資料による)
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日本国際観光学会論文集(第22号)March,2015
キャンペーンやイベントを頻繁に実施は
されている女性のための釣り教室などが
と人の関係 ― 』1995(成山堂書店)
していないが、年に数回程度釣り大会や
恒常的な着地型の旅行商品として定着を
・篠原菊紀、
「自然の中での親子共有体験
釣り教室を実施している。また、周辺に
し、一定の顧客を確保できるようになれ
は最高の脳トレーニングです」
『子ども
は安全は釣り場が多く存在するため教育
ば、結果として海釣り公園を活用した観
も伸ばすファミリーフィッシングのす
旅行の申し出はないという。
光地域の発展の可能性に結びつくことに
すめ。
』2014(日経 BP 社)
・観 光庁、
「着地型旅行市場現状調査報
なる。
4.結論
最後に宿泊施設の外で魅力的な観光資
源としての海釣り公園について利用者側
告」2012
・観光庁、
「観光地域における評価に係る
謝辞
検討実施業務報告書」2014
から可能性を考察する。文部科学省の諮
本研究のためにヒアリング及び貴重な
・鈴木一寛、
「釣りガールの考察~熱海女
問機関である中央教育審議会(2013)の
資料の提供にご協力を頂いた浅虫温泉観
子釣り教室参加者アンケートの分析
「今後の青少年の体験活動の推進につい
光協会事務局長の及川功様、浅虫温泉旅
~」
『日本国際観光学会論文集第20号』
て」と題した答申では若年層の自然体験
館組合事務局長の蛯名一浩様、椿館代表
2013a
が減少していことを問題視している。若
取締役の蛯名幸一様、そふえ釣具代表取
・鈴木一寛、
「熱海港釣り施設の入場者の
年層に対し安全に自然体験の場を提供で
締役の祖父江弘子様、熱海港海釣り施設
消費動向と地域活性化~宿泊を伴う入
きる海釣り公園の意義は大きい。また、
指定管理団体 NPO 法人 SEA WEB 理事
場者と日帰り入場者の特徴の分析~」
バリアフリーの整備など広い世代で安心
長の安田和彦様、のとじま海づりセン
『地域活性研究 vol.5』2014c
して楽しむことができる海釣り公園は少
ター所長の山本厳太郎様、管理主任の平
・鈴木一寛、
「海釣り公園の属性から見る
子高齢化を向かえる中で若年層と高齢者
山尚郎様、公益社団法人日本釣振興会の
考察」
『日本国際観光学会第17回全国大
世代との交流の場或いは家族三世代の交
専務理事清宮栄一様、事務局長の高橋裕
会発表論文集』2013b
流の場など新しい顧客ニーズの可能性を
夫様、グローブライド株式会社の大川雅
見出すことができる。
治様、日本国際観光学会第18回全国大会
2015年3月に北陸新幹線が長野駅から
において筆者の発表に際し貴重なご指摘
・中央教育審議会、
「今後の青少年の体験
金沢駅まで開通する。石川県を始めとし
をしてくださった北海道大学大学院客員
活動の推進について(答申)
」2013
た北陸地方の観光地が来訪客の増加に期
教授の小林秀俊様には厚く御礼を申し上
待を寄せている。石川県の調査(2007)
げます。
る。北陸新幹線開通はのとじま海づりセ
ンターの入場者数拡大が期待できる。
考察」
『総合観光学会第25回学術大会発
引用・参照文献
表要旨』2013c
・一般社団法人日本旅行業協会、
「提言:
更なる国内旅行にむけて ― 新時代の
ては、釣り具関係業界や漁業、水産関係
旅行業の役割 ― 」2004
を行っているケースが多く、普段釣りを
・中 小企業庁、「中小企業白書2007年度
版」2007
しない一般的な観光客向けへの情報発信
・鈴木一寛、
「有名温泉地域における海釣
は少ない。海釣り公園のような一般的な
り公園の活用方策の考察~浅虫海づり
観光客への集客可能性が高い観光コンテ
公園を事例として~」
『地域活性学会第
ンツに関しては事業主体単独での情報発
6回研究大会発表論文集』2014a
信よりも幅広い業種間での地域連携によ
・鈴木一寛、
「有名観光地に隣接した海釣
る情報発信が高い相乗効果を誘発できる
り公園の比較考察」
『日本国際観光学会
と考えられる。地域の観光協会に代表さ
第18回全国大会梗概集』2014b
れる地域観光プラットフォームを効果的
・社団法人日本釣用品工業会、
「釣人によ
に組織化し、海釣り公園の紹介を含めた
る経済効果の算出と釣りに関する意識
数多く準備されている着地型の観光コン
調査報告書」2001
テンツの網羅的な情報発信が望ましい。
熱海港海釣り施設において不定期に開催
・石 川県、
「新幹線開業影響予測調査」
・鈴木一寛、
「釣りを活用した教育旅行の
一方で「釣り」というレジャーに関し
者が中心となって経験者層への情報発信
使用に関するガイドライン」2012
2007
では、首都圏からの入込客数増加により
121億円の経済効果があると試算してい
・国土交通省港湾局、
「防波堤等の多目的
・宮澤晴彦、
「遊漁船業の課題 ― 釣り人
を迎える立場」
『釣りから学ぶ ― 自然
-149-
【本稿は所定の査読制度による審査を経たものである。
】
-150-