平成27年2月 - 佐世保市立総合病院

佐世保市立総合病院
地域連携室だより
2015 年
2 月号
Vol.93
転移性脳腫瘍に対する定位放射線治療のご紹介
脳神経外科
医師
林 之茂
【はじめに】
転移性脳腫瘍とは、身体の別の部分に出来た癌が脳に転移した状態です。癌患者さんの 10%前後で転
移性脳腫瘍が発症するとも言われています。その内の約 40%の方が、かつては転移性脳腫瘍が原因で亡
くなっていました。しかし 1990 年頃から下記の定位放射線治療が普及すると、その割合は 10%前後ま
で減少したと報告されています。当院には LINAC システムを用いた定位放射線治療が導入されており、
全脳照射などの従来の放射線治療と共に転移性脳腫瘍に対する治療に用いています。今回は当院で行わ
れている転移性脳腫瘍に対する定位放射線治療についてご紹介します。
【定位放射線治療とは】
全脳照射や拡大局所照射などの従来の放射線治療は照射範囲が広く、病変以外の正常脳組織にも多量
の放射線が照射されます。脳内に多数の小さな病変が広がった際には有効です。一方で、転移性脳腫瘍
に対する局所制御率が 80%前後であることや、数ヶ月〜数年後に遅発性放射線障害による脳萎縮などで
認知力が低下する可能性があること等が短所と考えられます。
定位放射線治療では照射範囲を病変に絞り、周囲の正常脳組織への照射を僅かな量に抑えることで、
治療後の遅発性放射線障害を減らすことができます。また病変への照射線量を上げて局所制御率を向上
させることも可能であることが長所として挙げられます。特に局所制御率に関しては、一回の定位放射
線治療で行った場合には、95%以上で病変の縮小や消失を期待できます。
【定位放射線治療の方法】
病変以外の正常脳への照射を極力抑えるため、定位放射線治療では 4〜7 方向から放射線の一種である
ガンマ線を一点に集中させて照射範囲を病変に絞ります(写真 1)
。照射前に治療計画を作成しますが、
照射位置を厳密に固定する必要があるため、リング或いはマスクでの頭部固定を要します。定位放射線
治療に適した病変の大きさは径 1〜3cm で、患者さんの原発巣や全身の状態、転移性脳腫瘍の部位や大
きさ等を考慮して治療を計画します。照射後に治療効果が出現するまでには最低 2 週間以上、効果が最
大に達するまでに照射 3〜6 ヶ月後と時間がかかりますので、通常は転移性脳腫瘍以外の原発巣や頭蓋外
転移の状態が落ち着いている患者さんが定位放射線治療の対象となります。
【定位放射線治療の流れ】
定位放射線治療には、リングで固定して一回で治療する定位放射線手術と、マスクで固定して数日〜
数週間で照射する定位放射線治療の二つがあります。一回で治療する定位放射線手術ではリング固定〜
照射終了まで安静が必要なため、1 泊入院で行います。マスク固定の定位放射線治療では安静が不要なた
め、患者さんの状態次第で通院での治療が可能ですが、治療までに 1 週間ほどの準備が必要です。
治療後は外来で 1〜4 ヶ月毎に頭部造影 MRI での経過観察を行い、再発があれば定位放射線治療の再
治療を行うか、全脳照射などの従来の放射線治療を行うかなどを検討します。
【まとめ】
化学療法の発達により全原発巣や転移病変のコントロールは日々向上しつつありますが、
脳には抗がん剤を
殆ど通さない血液脳関門があり、通常転移性脳腫瘍に対しては化学療法が無効とされています。大きい病変で
は手術で摘出する必要がある場合がありますが、病変の部位によっては全てを摘出することが困難な場合も少
なくありません。転移性脳腫瘍に対しては、手術による病変の摘出や全脳照射などの従来の放射線治療、及び
定位放射線治療を組み合わせた治療戦略が重要となります。その中でも定位放射線治療は、転移を来した癌患
者さんの日常生活を維持する上で、身体への負担の少ない治療法です。転移性脳腫瘍が見つかった際には、ぜ
ひ当院脳神経外科までご連絡ください。
「医師事務作業補助者」をご紹介します
医師事務作業補助者って何?
「医師事務作業補助者」って長くて舌を噛みそうな名称ですが、一般的に“医師事務作業補助者とは、医師が
行う業務のうち事務的業務をサポートする”職種です。その呼称は医療機関によって様々で、医療秘書、医療
クラーク、メディカルアシスタント、ドクターズクラークなどと呼ばれています。当院では「医師事務作業補
助者(略して“医師事務”)
」と呼ばれ、現在 36 名が従事しています。
どうして医師事務作業補助者が誕生したの?
医師は診察、検査指示、診断、投薬、手術等の治療、病状説明、療養指導などの医療業務に加え、事務業務(カ
ルテ入力、退院サマリー、診断書等書類の作成)も行わなければならず、その仕事量は膨大です。そこで、医
師事務作業補助者が医師の事務的業務をできる限り代行し、医師の負担を軽減することで医師がより充実した
医療を提供できる体制作りのために医師事務作業補助者が配置されました。
医師事務作業補助者は何をするの?
現在、医師の指示の下に、(1)診断書などの文書作成補助(生命保険診断書、特定疾患、小児慢性疾患、傷
病手当、医療要否意見書、医療等の状況、介護保険主治医意見書、自賠責診断書、連絡状、入院診療計画書、
退院計画書、普通診断書など)、
(2)診療記録への代行入力(初診カルテ作成:他院からの紹介状内容や問診
内容を初診カルテへ転記します。)
、オーダー入力(医療安全上、医師事務が代行しても良いと判断されている
各種検査、指導料、入院申込み、院内紹介など)、
(3)医療の質の向上に資する事務作業(データ登録:NCD、
EVT、周産期、腫瘍、形成外科症例、麻酔科データ、脳ドック等)、以上のような業務を行っています。主な実
績として昨年だけで文書作成補助:11875 件、NCD 登録:1323 件を医師事務が代行しました。
医師事務作業補助者にはできないことがある?
その呼び名にあるように、医師事務作業補助者は医師以外の職種の指示による業務は行えません。例えば、診
療報酬の請求業務、窓口・受付業務、医療機関の経営・運営のためのデータ収集業務、看護業務の補助、物品
運搬業務等です。また院内ルールとして医療安全上医師事務が行わないと判断された業務(主に患者様にこれ
から投与となる処方、点滴など)は医師事務が代行することはできません。
最後に・・・お知らせとお願い・・・
今回ご紹介しました医師事務作業補助者が、医師の事務負担を軽減し、より充実した医療を患者様に提供でき
るよう一部診察室内に同席させていただいております。医師と同様に守秘義務を課しておりますので、皆様の
ご理解とご協力の程、よろしくお願い申し上げます。
☆外来同席風景☆
私たち医師事務作業補助者です。
どうぞよろしくお願いします!
病
院
情
☆研修風景☆
報
平成 26 年 12 月の救急外来
患者数
救急車搬入
ドクターヘリ
紹介患者数
入院患者数
による搬入
849 人
260 人
219 人
299 人
7人
(救急車使用
160 人)
平成 26 年 12 月の紹介患者数
紹介患者
数
1831 人
市内
市外
紹介率
逆紹介率
一般病床
利用率
1350 人
481 人
83.1%
70.4%
87.2%
〒857-8511
佐世保市立総合病院の理念
私たちは患者様を中心として、安全で安心できる
心暖まる医療を提供します。
1.チーム医療の実践
2.インフォームド・コンセントに基づいた医療
3.先進的な高度医療
地域連携室の
モットーは
1.笑顔
2.親切
3.丁寧
長崎県佐世保市平瀬町 9-3
佐世保市立総合病院 地域連携室
室長 : 中村 昭博
担当 : 緒方 福田 酒井 野田 後藤 田渕
楠本 外尾 空閑 藤木 斉藤 北村
TEL(0956)24-1515(内線 6921)
FAX(0956)24-0474(連携室直通)