一般入試/化学(中期) 出題のねらい

一般入試/化学(中期)
分 子内に共有電子対を 4 組、非共有電子対を 4 組
出題のねらい
もつ。
一般(中期)の化学は、化学基礎・化学全般から出 (2)ドライアイスでは CO 分子が面心立方格子の構造
2
題しました。いずれの問題も基本的な内容を理解してい
をとっている。単位格子内に含まれる CO 分子は 4
るかを問うています。また、今回は周期表に関する問題
が、中問として出題されていますが、各金属の性質を整
理して確実に覚えておきたいところです。
2
個であるので、密度〔g/cm 3〕は、CO 2 のモル質量
が 44 g/mol より、
【1】 二酸化炭素の分子の構造と状態・化学反応式に
関する問題と反応の経路と反応速度に関する問題
を出しました。化学反応式のつくり方を理解して、き (3) 二酸化炭素を石灰水(水酸化カルシウムの飽和水
ちんと立式できるようにしておきましょう。
溶液)に通じると、炭酸カルシウムの白色沈殿が生じ
【2】 電池の仕組みとダニエル電池を題材に酸化還元
反応について出題しました。酸化・還元の定義をしっ
かりと理解し、酸化数の決定の仕方、酸化剤、還
元剤についてもおさえておきましょう。
る。
Ca(OH) 2 + CO 2 → CaCO 3 + H 2O
さらに二酸化炭素を吹き込むと、炭酸カルシウムは溶
けて、炭酸水素カルシウムの溶液となる。
CaCO 3 + CO 2 + H 2O → Ca(HCO 3) 2
B 反応の経路と反応速度
【3】 周期表と元素の性質について、基本的な内容を (1)1 mol の AB が単体 A と単体 B から生成すると
2
2
問いました。周期表に関連して、価電子の数、イオ
きの熱化学方程式を書く。
ン化エネルギー、電子親和力なども確認しておきましょ
う。
【4】 アルコールの構造と反応を題材に、アルコールの
分類、酸化、ヨードホルム反応について出題しました。
(2) 反応が起こるとき、反応物はエネルギーの高い不
安定な状態となる。この状態になるために必要最低
限のエネルギーを活性化エネルギーという。
無機化学においては、生成物の色にも注意しましょ (3) 触媒を用いると、反応経路が変化するので活性化
う。
エネルギーの値は小さくなるが、反応熱の値は変わら
ない。
【5】 タンパク質の構造とアミノ酸の反応について、設問 (4)温度を10 K 上げると反応速度が 2 倍になることより、
文の空所補充式を中心に基本的な知識を問う問題
温度を 30K 上げると反応速度は、2 3 = 8 倍になる。
です。アミノ酸の結合様式の確認や酵素の反応条
件、はたらきについて確認しておきましょう。
【2】
【解 答】(28 点)
【1】
(1) ア ②
【解 答】(36 点)
A(1)ア 4
イ 4
ウ 直線
(各 3 点×3)
(2)1.7 g/cm3
(5 点)
(3)CaCO3+CO2+H2O→Ca(HCO3)2
(5 点)
B(1)
(5 点)
(2)活性化エネルギー
(4 点)
(3)⑧
(4 点)
(4)8 倍
(4 点)
【解 説】
A 物質の構成と状態、化学反応式
(1)二酸化炭素を電子式で表すと次のようになる。
イ ④ (各 3 点×2)
(2) 965
(5 点)
(3) (a) ダニエル電池
2+
(b) Zn → Zn
+ 2e
(4 点)
-
(4 点)
(c) ③
(4 点)
(d) +0.32 g
(5 点)
【解 説】
物質の変化(電池の仕組みとダニエル電池)
(1) 電池では負極から電子が放出されるので、負極で
は活物質が酸化されている。よって負極では活物質
は還元剤としてはたらく。
(2) 電気量 (C) =電流 (A) ×時間 ( 秒 ) より、
0.500 A × 1930 秒= 965 C
一般入試/化学(中期)
(3)(a)図 の電池はダニエル電池で、イオン化傾向の 【4】
より大きい亜鉛板が負極となる。
【解 答】(30 点)
(b)両極での反応は次のとおりである。
(1) ア ヒドロキシ
正極 Cu 2 + + 2e - → Cu
負極 Zn → Zn
2+
+ 2e
イ 高
ウ 多
(2)(a)①,⑤
-
(c)負 極側の溶液では陽イオンが増加するので、
電荷の釣り合いをとるために、正極側から負
極側へ SO 42 -が移動する。
(d)流れた電子の物質量は、
(各 3 点×3)
(各 3 点×2)
(b)名称 アセトン
(5 点)
構造式
(5 点)
(3) ④
(5 点)
であり、2mol の電子が流れると 1mol の Cu 【解 説】
が析出( 増 加 ) する。この放 電で析出した 有機化合物
銅の質量は、
(1)
ア アルコールは炭化水素の水素原子をヒドロキシ基
で置換した構造をもつ。
イ アルコールはヒドロキシ基をもつため、分子間で水
よって、+ 0.32 g となる。
素結合をつくる。
この水素結合を切るためにエネ
ルギーが必要になるため、同程度の分子量をもつ
【3】
炭化水素に比べるとアルコールの沸点は高い。
【解 答】(32 点)
(1) ア ③ イ ⑤ ウ ⑥ エ ①
エタノール
(分子量46)沸点 78℃
(各 3 点×4)
(2) ハロゲン
(5 点)
(3)(a) P4O10
(5 点)
(b) ②
(4)- 0.555℃
(5 点)
(5 点)
プロパン
(分子量44)沸点 -42℃
ウ 炭 素鎖の炭素原子の数が多いアルコールほど疎
水性の部分の割合が大きくなり水に溶けにくくな
る。
(2)
( a)2 -プロパノールCH 3 CH(OH)CH 3 にはヒドロキシ
基-OHが1個あるので1価アルコール。
ヒドロキシ
基-OHが結合した炭素原子には、2個の炭素原
【解 説】
無機物質
(1)周期表では、元素は原子番号の順に並べられてお
り、1・2 および12~18 族の元素は典型元素、3~11
族の元素は遷移元素である。典型元素では、18族を
除いて、族番号の下1桁の数字と、その族の原子がも
つ価電子の数が一致している。
(2)周期表17 族の元素は、ハロゲンと呼ばれる。
(3)
( a)
リンP を乾燥空気中で燃やすと、十酸化四リン
P 4O 10 が生じる。
4P +5 O 2 → P 4O 10
( b)P 4O 10 は吸湿性が強い。
(4)周期表の第3 周期の、2 族の陽イオンと17 族の陰イ
オンからなる物質はMgCl 2 であり、水溶液中では次の
ように電離する。
MgCl 2 → Mg 2++2Cl-
これより、凝固点降下度は、
子が結合しているので第二級アルコールに分類
される。
(b)第 二級アルコールは酸化されるとケトンになる。
2-プロパノールCH 3CH(OH)CH 3は酸化されると、
アセトンCH 3COCH 3になる。
(3)
アルコールX にヨウ素と水酸化ナトリウム水溶液を加
えて加 熱 すると沈 殿が生じたことから、
アルコールX
はR-CH(OH)CH 3の構造をもつことがわかる。
よって、
アルコールX はCH 3CH 2CH(OH)CH 3。
①C H 3 CH 2 CH(OH)CH 3は第二級アルコールであり、
酸化されるとケトンになる。
アルデヒドにはならない。
②アルコールにナトリウムの単体を加えると、水素が発
生し、
ナトリウムアルコキシドができる。
2 R-OH + 2Na → 2 R-ONa + H2
ナトリウムアルコキシド
③アンモニア性硝酸銀水溶液を加えて加熱すると銀が
析出するのは、
アルデヒドなどの還元性をもつ物質の反
応。
アルコールには還元性はない。
④C H 3CH 2C*H(OH)CH 3のC*は、異なる4つの原子また
よって、凝固点は-0.555℃。
は原子団と結合している不斉炭素原子であるので、
ア
ルコールX は光学異性体をもつ。
一般入試/化学(中期)
【5】
【解 答】(24 点)
(1) ア ① イ ⑤ ウ ⑪
(各 3 点×3)
(2) ⑤
(5 点)
(3) ②
(5 点)
(4) ④
(5 点)
【解 説】
タンパク質・酵素
(1)(2)タンパク質は、多数のアミノ酸がペプチド結合
(- NH - CO -)で次々と結合したポリペプチド構造
をもつ高分子化合物である。天然のタンパク質では、
構成するアミノ酸の種類は約 20 種類である。
タンパク質を構成するアミノ酸の配列順序をタンパ
ク質の一次構造という。
タンパク質では、分子内のあるペプチド結合中の
H と、別のペプチド結合中の O との間に水素結合を
つくる。これにより、らせん状になった構造はα-へリッ
クスと呼ばれ、シート状になった構造はβ-シート(β
構造)と呼ばれる。α-へリックスやβ-シートはタンパ
ク質の二次構造である。さらにこれらは複雑な高次
構造をつくる。
酵素は、タンパク質を主体とした高分子化合物で
あり、生体内の化学反応において触媒としてはたら
いている。
(3)タンパク質に濃硝酸を加えて加熱すると黄色になる
反応は、キサントプロテイン反応と呼ばれ、タンパク
質およびアミノ酸に含まれるベンゼン環がニトロ化され
るために起こる。
(4) 酵素が触媒として作用するとき、多くの酵素では、
40 ℃ぐらいまでは温 度 が 上 がると反 応 速 度は大きく
なるが、それ以上では反応速度は小さくなっていく。
60℃以上では酵素の触媒作用が完全に失われてしま
う。このように酵素が触媒作用を失うことを失活とい
う。