表面科学 Vol. 36, No. 7, pp. 345-350, 2015 研究紹介 第一原理分子動力学法によるカーボンアロイ触媒における 酸素還元反応機構 池田隆司 1・Zhufeng HOU 2・Guo-Liang CHAI 2・寺倉清之 2 日本原子力研究開発機構 〠 679-5148 兵庫県佐用郡佐用町光都 1-1-1 2 東京工業大学 〠 152-8552 東京都目黒区大岡山 2-12-1 1 (2015 年 1 月 28 日受付;2015 年 2 月 26 日掲載決定) Mechanisms of Oxygen Reduction Reactions for Carbon Alloy Catalysts via First Principles Molecular Dynamics Takashi IKEDA 1, Zhufeng HOU 2, Guo-Liang CHAI 2 and Kiyoyuki TERAKURA 2 1 Japan Atomic Energy Agency, 1-1-1 Kouto, Sayo-cho, Sayo-gun, Hyogo 679-5148 2 Tokyo Institute of Technology, 2-12-1 Ookayama, Meguro-ku, Tokyo 152-8552 (Received January 28, 2015 ; Accepted February 26, 2015) Carbon alloy catalysts (CACs) are one of promising candidates for platinum-substitute cathode catalysts for polymer electrolyte fuel cells. We have investigated possible mechanisms of oxygen reduction reactions (ORRs) for CACs via first-principles-based molecular dynamics simulations. In this contribution, we review possible ORRs at likely catalytic sites of CACs suggested from our simulations. KEYWORDS : carbon alloy catalysts, fuel cells, oxygen reduction reactions, first principles molecular dynamics 1.は じ め 空気から取りこんだ酸素を正極で還元することで,化学 に エネルギーを電気エネルギーに変換する。固体高分子膜 カーボンアロイ触媒(carbon alloy catalyst, CAC)は, (電解質)を用いる PEFC の動作温度は 80℃程度であ グラファイト状炭素に窒素やホウ素などのヘテロ原子を り,正 極 で の 酸 素 還 元 反 応(oxygen reduction reaction, ドープすることによって触媒活性を付与したもので,近 ORR)が極めて遅いため反応を促進する触媒が必要と 年,白金触媒に代わる燃料電池の正極触媒として国内外 なる。ORR に限らず多くの反応の促進に触媒が使用さ において活発に研究開発が行われている。現状の CAC れているが,白金やパラジウム等の遷移金属が専ら用い は,水素を燃料とする固体高分子形燃料電池(polymer られており,その触媒作用に d 軌道が重要な役割を担っ electrolyte fuel cell, PEFC)の動作環境である酸性条件で ていることが知られている。一方,CAC では,微量の は白金触媒より性能が劣るが,独立行政法人新エネルギ 鉄を添加することで ORR 活性が向上するが,鉄を添加 ー・産業技術総合開発機構(New Energy and Industrial しなくても触媒作用を示すことが確認されており,sp Technology Development Organization, NEDO)の策定し 軌道しかもたない炭素を骨格にもつ CAC での触媒作用 た PEFC ロードマップ で本格普及期と位置付けられて の発現機構に興味がもたれている。 1) いる 2020 年代には実用化されることが期待されている。 我々は 2007 年から NEDO プロジェクトにおいて第一 水素を燃料とする PEFC では,水素を負極で酸化し, 原 理 分 子 動 力 学(first principles molecular dynamics, 第 回表面科学学術講演会( にて発表 年 月 日∼ 日) FPMD)に基づいたシミュレーションにより CAC にお ける酸素還元反応機構の解明を目指した研究開発を行っ てきた。本稿ではその成果の一部を紹介する 2)。なお,
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