487 - OMソーラー

日本建築学会大会学術講演梗概集 (関東) 2015 年 9 月 41235
空気式太陽熱集熱システムを採用した実証住宅に関する研究
その 2. CFD 解析による床下蓄熱方式の検討
太陽エネルギー
CFD
床下蓄熱
空気式太陽熱集熱システム
付加蓄熱
シミュレーション
正会員
同
○森田舟哉*1
同
井上隆*2
同
前真之*3
高瀬幸造*4
同
軽部達也*5
同
盧炫佑*6
1.はじめに
表1 定常解析条件
既製システムの吸放熱の改善のため,床下吹き出し方式検討
および床下空間に水入りペットボトルを用いた付加蓄熱材の
計算
メッシュ数
定常解析
約990万メッシュ
検討を CFD 解析(汎用ソフトの FlowDesigner を使用)にて
収束判定条件
乱流モデル
1×10‐4
標準k-ε モデル
行い,最大限に集熱量を活用できる仕様の決定を目的とする.
浜松実験棟を用いたシミュレーション精度検証
外気
7℃(浜松12-2月平均気温)
土
7℃
乱れの強さ
10%
境界条件
立ち下がり 長さスケール
0.05m
ダクト
流量、温度
720㎥/h、40℃
1)より概ね
良好な再現結果を得られたため,本報においてはこの手法を用
いて実住宅を対象としたシステム設計検討を行った.
図1 浜松実証住宅モデル
床吹き出し口 開口率
40%
(上図:定常解析 下図:非定常解析)
2.立下りダクトからの床下吹き出し方式検討
床下吹き出し方式検討では,定常計算を用いて床下空間にお
空気の流れ
ダクト
浴室下
ける温度分布および居住空間における室内の温度差を把握す
ることにより,日射をとりこむことが難しい北側をより温める
ことができる床下吹き出しの適切な位置を検討する.
浴室下壁
開or閉
2-1.検討モデル,条件および計算方法
図 1 に対象物件である浜松実証住宅の再現モデル,表 1 に本
図2 床下吹き出し方式検討モデル
を想定し 720 ㎥/h,40℃とした.なお,換気・給気口は自由流出
20.0
7.0
とし,床吹き出し口はグリルを想定し開口率 40%とした.
床吹き出し口
本検討に用いた検討モデルを図 2 に示す.本検討では初期設
2方向吹き出しモデル
ダクト短モデル
初期設計モデル
検討の解析条件を示す.立下りダクト風量及び温度は最大出力
玄関
トイレ
計モデルに加え,北側の基礎に温風を当てるダクト短モデル,
30.0
温度(℃)
40.0
機械室
ユーティリティ 洗面所
キッチン
リビング
寝室
床下中央部までダクトを引っ張り分岐させる 2 方向吹き出し
モデルの 3 モデルにおいて検討を進めた.また,浴室下へ流入
する空気が問題であると捉え,浴室下開閉による検討を各モデ
る室内の温度差を評価する.居室空間温度分布検討概要を図 3
に示す.
床吹き出し口
高さ600mm 平均温度
高さ600mm 平均温度
28
平均温度(℃)
平均温度(℃)
26
2-2.床下温度分布の結果
24
2 方向吹き出しモデルの床下温度分布の結果を図 4 に示す.
左図が浴室下開,右図が浴室下閉となっており,浴室下閉とし
たモデルの方が浴室下へ空気が行かないため北,東へとより温
かい空気が広がっている様子が見られる.この事から浴室下を
図4 床下温度分布図
(左図:浴室下開、右図:浴室下閉)
図3 温度分布検討概要
22
高さ1100mm 平均温度
高さ1100mm 平均温度
28
初期設計
初期設計
28
26
平均温度(℃)
平均温度(℃)
ルで行った.これらを踏まえ床下温度分布及び居室空間におけ
浴室下閉の方が
北側まで温まる
各部屋床上600mm,
1100mm地点を比較
ダイニング
26
24
24
ダクト短
ダクト短
22
22
20
20
20
ダイニング キッチン リビング 寝室
洗面所 ユーティリティ トイレ
ダイニング キッチン リビング 寝室 洗面所 ユーティリティ トイレ
初期設計 ダクト短
2方向
標準偏差σ [℃]
1.05
0.88
0.64
平均温度[℃]
25.22
22.80
25.42
解析領域
床下吹き出し
方式検討
20
ダイニング キッチン リビング 寝室
洗面所 ユーティリティ トイレ
ダイニング キッチン リビング 寝室
洗面所 ユーティリティ トイレ
初期設計 ダクト短
2方向
1.01
0.89
0.61
25.37
22.92
25.51
標準偏差σ [℃]
平均温度[℃]
15m(x方向)×15m(y方向)×1.5m(z方向)
標準k-εモデル
メッシュ
380万〜990万メッシュ
定常計算
流入条件
非定常計算
配置検討
低い結果となり,平均温度では 2 方向吹出しモデルが最も高い
結果となった.これらのことから 2 方向吹き出しモデルが最も
22
乱流モデル
おける平均温度及び標準偏差を図 5 に示す.標準偏差は両地点
共に初期設計モデルが最も高く,2 方向吹き出しモデルが最も
24
表2 非定常解析条件
分かる.
先述の 3 モデル(浴室下閉)の各部屋床上 600mm,1100mm に
2方向
二方向
二方向
26
図5 床上600mm,1100mmにおける平均温度及び標準偏差
閉じた方が熱を損なわず床下全体に空気を広げられることが
2-3.居室空間温度分布の結果
28
容器検討
室内の温度差を解消できることが分かった.
図6 検討フロー
A Study of Demonstration Houses with Air-Based Solar System
Part2. CFD analysis of underfloor heat storage method
― 487 ―
立下りダクト:720㎥/h
温度:集熱運転を考慮
自動計算、吹き出し口開口率:40%(グリル考慮)
流出条件
乱れの強さ:10% 長さスケール:0.05m
定常計算
収束判定条件
立下りダクト:720㎥/h
温度:20℃(室内循環を考慮)
非定常計算
1×10-4
1×10-2
物性値
設計図から拾った仕様を設定
非定常解析計算対象期間
24時間
計算時間間隔
1min
躯体、蓄熱体温度
初期温度20℃
基礎外周の境界条件
7℃、0.625(㎡・℃/W)
床表面の境界条件
20℃、0.043(㎡・℃/W)
地盤の境界条件
7℃、11℃、15℃と3層に分割、熱抵抗は自動計算
MORITA Shuya, INOUE Takashi
MAE Masayuki, TAKASE Kozo
KARUBE Tatsuya, ROH Hyunwoo
3.付加蓄熱材の検討
1)立ち下がりダクトからの吹き出し方式の違いにより床下空
さらに床下吹き出し方式検討で求めたモデルを用いて吸放
間の温度分布,室内の温度差,付加蓄熱材の吸放熱量が異なる
熱量向上のために,床下に付加蓄熱材を用いることとし,付加
ことを示し,床下空間や居室全体を温め,大きな吸放熱量を示
蓄熱材配置,容器検討を行った.本検討では吸放熱量の比較を
すのは 2 方向吹き出し方式であることを明らかにした.
行うため床下空間のみ再現している.
2)付加蓄熱材の吸放熱量は設置位置,設置間隔に大きく依存し,
3-1.検討モデル,条件および計算方法
これらを考慮した 2L 水入りペットボトルモデルは初期設計
検討種類は床下吹き出し方式,配置,容器検討の 3 種の検討
を行った.断面性能等は設計図から拾った仕様を設定しており,
モデル(浴室下開)と比較し,吸放熱量が大幅に向上した.
参考文献 1)軽部達也ら 空気集熱式太陽熱暖房システムにおける蓄熱部位で吸放熱量
に関する研究, 日本建築学会大会学術講演梗概集, 2015 年 9 月
図 6 に検討フロー,表 2 に本検討の解析条件示す.(配置検討及
105mm
び容器検討の概要は図 7,8 を参照)床拭き出し方式検討,配置検
討は 2L 水入りペットボトルを 1000L 床下に設置し,容器検討
大引き
居室床面
床下空間
付加蓄熱材 25mm
855mm
基礎床スラブ
基礎床
50mm
200mm
で用いる水パックは水を 20L のパックに入れたものを設置し
横置き・上置き
た.また,計算は初めに非集熱時の室内循環を想定した定常計
30cm
30cm
算を行った際の計算結果が収束した後,その解を初期条件とし
縦置き・上置き
縦置き・下置き
図7 配置検討概要
10cm 8cm
て集熱時を想定した非定常計算を行った.
6cm 6cm
27cm
25cm
3-2.付加蓄熱材における吸放熱量の結果
13.8cm
図 9 に 3 種の検討における基礎等及び付加蓄熱材の吸放熱
横6cm*縦6cm*高さ13.8cm
横8cm*縦10cm*高さ25cm
500ml水入りペットボトル
2L水入りペットボトル
量を示す.床吹き出し方式検討では吸放熱量においてダクト短
モデルの吸放熱量が最も大きいが,これは中央にある基礎立ち
討より大きくなっている.また,北面に温かい空気が溜まり,南
面のダイニングや東面の寝室床下に十分に空気が流れていな
い.よって,付加蓄熱材の設置を考慮に入れ,ダクト短モデルで
60 16.64
16.64
40
16.63
16.60
11.36 38.44
2.30
39.93
020
11.36 38.44
吸熱量 放熱量 吸熱量
42.08
11.08
42.08
2.13
11.08
放熱量 吸熱量
20
39.93
80
40
20
浴室下開け
浴室下閉じ
19.87
26.12
38.88
14.12 34.32
2.27
0
吸熱量
放熱量
横置き・上置き
19.87
19.87
11.32 38.88
6.07
11.32 38.88
放熱量 吸熱量
14.12
2.27
14.12
放熱量
浴室下閉じ
浴室下閉じ
24.76
18.59
20.78
2.19
吸熱量
放熱量
縦置き・上置き
33.91
吸熱量
14.39
2.57
放熱量
34.65
15.16
2.03
吸熱量 放熱量
2cm
縦置き・上置き
縦置き・下置き
配置検討
熱量が大きくなった.温められた空気は上昇する性質があるた
80
吸放熱量(MJ)
置きモデルと比べ,狭い間隔で配置されているため空気が流れ
水パック
60
の距離が広く,床下空間に大きく露出していることにより吸放
置された 2cm モデルは横 6.5cm,縦 9cm 間隔に配置された縦
横30cm*縦30cm*高さ27cm
2L水入りペットボトル
2.27
2.30
2.13 ダクト短モデル 6.072方向吹き出しモデル
初期設計モデル
初期設計モデル
浴室下開け
浴室下閉じ
浴室下閉じ
浴室下閉じ
吸熱量
放熱量 吸熱量
放熱量 吸熱量
放熱量 吸熱量
放熱量
床吹き出し方式検討
初期設計モデル
初期設計モデル
ダクト短モデル
2方向吹き出しモデル
0
きモデルが最適となった.縦置きは,横置きと比べ居室床面と
め上置きが下置きより吸放熱量が大きくなった.2cm 間隔に配
16.60
16.63
40
吸放熱量(MJ)
討は吊るされた横 5 本×縦 10 本に配置された縦置き・上置
横8cm*縦10cm*高さ25cm
80
とし,以降の検討においても 2 方向吹き出しモデルを用いる.
図 10 に 12 時における横置き・上置き,縦置き・上置き,縦
横30cm*縦30cm*高さ27cm
横6cm*縦6cm*高さ13.8cm
500ml水入りペットボトル
水パック
500ml水入りペットボトル
60
はなく 2 方向吹き出しモデルを本検討において最適なモデル
置き・下置きの xz 面の床下温度分布を示す.結果から配置検
横8cm*縦10cm*高さ25cm
2L水入りペットボトル
2L水入りペットボトル
図8 容器検討概要
■基礎等
■基礎等 ■付加蓄熱材
■付加蓄熱材
80
吸放熱量(MJ)
吸放熱量(MJ)
上がりに吹き出した空気が当たり,基礎等の吸放熱量が他の検
横30cm*縦30cm*高さ27cm
横6cm*縦6cm*高さ13.8cm
水パック(施工上、下置き)
水パック
500ml水入りペットボトル
60
34.34
11.23
40
37.28
32.41
20
にくく,吸放熱量は小さくなった.
0
29.26
23.53
4.55
4.32
吸熱量
また,容器検討では 2L 水入りペットボトルが最も吸放熱量
放熱量
が大きくなった.水パックは施工上,下置きとなり上昇する空
17.98
1.65
1.76
吸熱量
放熱量
2L
水入りペットボトル
容器検討
水パック
36.69
吸熱量
放熱量
500ml
水入りペットボトル
図9 付加蓄熱材吸放熱量の違い
ダクト
気に接しないため吸放熱量は小さくなった.500ml 水入りペッ
トボトルは 2L 水入りペットボトルと比べ,表面積は約 2.5 倍
大引き 居室床面
基礎立ち上がり
z
温度(℃)
40.0
と大きいが水入りペットボトル間が狭まるため吸放熱量は小
y
x
基礎床スラブ
基礎下断熱
土
横置き・上置き:居室床面と付加蓄熱材の間隔が近いためうまく放熱できない
さくなった.
30.0
4.総括
本研究では, 空気式太陽熱集熱システムを用いた住宅にお
縦置き・上置き:床下空間に露出するため吸放熱が高くなる
20.0
いてシミュレーションにより蓄放熱の検討を行った.以下に主
な知見を示す.
設置箇所
7.0
縦置き・下置き:温かい空気は上昇する性質があるため下に置くと温められにくい
図10 12:00におけるxz面床下温度分布図
*1
*2
*3
*4
*5
*6
東京理科大学 大学院生
東京理科大学 教授 工博
東京大学大学院 准教授 博士(工学)
東京理科大学 助教 博士(工学)
東京大学 大学院生
OM ソーラー 取締役・技術部長・博士(工学)
*1
*2
*3
*4
*5
*6
― 488 ―
Graduate school,Tokyo Univ.of Sceience
Prof., Tokyo Univ.of Sceience,Dr.Eng
Assoc.prof., The Univ.of Tokyo,Dr.Eng
Assistant.prof., Tokyo Univ.of Sceience,Dr.Eng
Graduate school, The Univ.of Tokyo
Director, R&D Department, OM Solar Inc., Dr. Eng.