「サイクルタウン鶴来」の実現

我がまちづくり(いしかわ地域の魅⼒創造まちづくり事業)
「サイクルタウン鶴来」の実現
鶴来⻘年クラブ
1. 活動の⽬的
◆地区概要
⼿取川が形成する扇状地の頂部に位置する鶴来地区は、旧鶴来町の中⼼として栄えてき
た。しかし、⾦沢都市圏の拡⼤によって徐々に活⼒を失いつつある。特に平成 17 年の
⽩⼭市発⾜や平成 22 年の⽯川線中鶴来駅・加賀⼀の宮駅廃⽌は、鶴来地区中⼼部の⽴
地的優位性を低下させた。危機感を抱いた住⺠は、まちづくり活動の実⾏組織「まちづ
くり協議会」を発⾜させた。現在では、この協議会が中⼼となり、地元商⼯会や観光協
会を巻き込んだまちづくり活動が展開されている。この協議会に参加する鶴来⻘年クラ
ブは、⾃転⾞による来訪者を増やし、まちとしての価値を⾼めるため、「サイクルタウ
ンプロジェクト」を実⾏することとした。
◆⾃転⾞のまち
鶴来地区⻄側を流れる⼿取川には⾃転⾞道が整備され、
良好なサイクリングルートとなっている。週末にはロー
ドレーサーから家族連れまで幅広い利⽤者がいる。また
近年では、都市交通の⼿段や余暇としての⾃転⾞の評価
が⾼まっており、⾃転⾞利⽤環境の向上に向けた取り組
みは、⽇本に限らず世界的に広く⾏なわれつつある。⾦
沢市も例外ではなく、街なかでの⾃転⾞貸し出しサービ
スが導⼊されており、⾃転⾞利⽤の機運が⾼まっている。
北陸鉄道⽯川線では、⾃転⾞持ち込み可能な⾞両を運⾏
しており、⾃転⾞で鶴来を訪れることも可能である。こ
のような状況から、⾃転⾞を利⽤した来訪者獲得の取組
みは、継続していくことで効果を上げられると考えられ
る。
▲打合せ⾵景
2. 活動概要
◆駐輪場整備
駐輪場は、⾃転⾞を駐輪するのみならず、休憩スペースとしても計画することにより、
短時間から⽐較的⻑時間の利⽤まで対応でき、歩⾏者の利⽤も可能となるなど、幅広い
利⽤に繋がることを想定している。
◇実施概要
①駐輪スタンドの設置 ・・・ 実施⽇:4/9・11/6
地区中⼼部の 2 箇所で駐輪場整備を⾏なった。駐輪スタンドは、主に⽴てかけ型と吊る
し型の 2 種類ある。地元住⺠の需要もあると思われる駐輪場については⽴てかけ型を採
⽤し、来訪者による利⽤を狙った箇所では吊り下げ型を設置した。
▲スタンド設置作業
②駐輪スタンドの試作 ・・・ 実施⽇:9/27
4 ⽉の活動では、実験的取組みとして市販の駐輪スタンドを⽤いた。しかし、耐久性能
の⾯で不安があるため、より丈夫なものが必要であると判断し、⼯事現場の⾜場で⽤い
られる単管を使⽤したスタンドを試作した。11 ⽉の活動で仮設置を⾏なったが、冬期
は雪の影響で⾃転⾞利⽤の需要が低いため、2015 年春から本格的に設置する。
▲駐輪スタンド試作
③プランターの設置 ・・・ 実施⽇:4/9・11/6
駐輪場には植物を植える。これは、「管理された空間」としての安⼼感を利⽤者に与え
る狙いがある。将来的には、背の⾼い⽊の植栽によって緑陰を作り、休憩する空間とし
ての充実を図る計画である。プランターは、管理の容易さやデザインを考慮し、⽊製の
プランターを製作することとした。
▲⾃作プランターとその運⽤⽅法
◆⾃転⾞ツアー企画とガイドマップ作成
⾃転⾞を利⽤したまちづくりの将来像として、⾃転⾞による街なか周遊の実施を⽬指し
ている。その⾜がかりとしてモニターツアーを実施し、周遊ルート設定に必要な情報を
集めた。
◇実施概要
①⾃転⾞モニターツアー企画 ・・・ 実施⽇:4/19
⾃転⾞によるまちめぐりのモデルコースを策定することを⽬標に、ボランティアガイド
を⾏なう NPO に協⼒していただき、モニターツアーを実施した。モニターには、⾦沢
⼯業⼤学で都市計画を学ぶ学⽣や、その学⽣と学会を通して関係する都市計画の専⾨家
を中⼼に募集した。ツアーは 2 グループに分かれて⾏動し、順番は前後するものの同じ
箇所を⾒て回った。各グループの先頭にはガイドが 1 名おり、各ポイントに着くと⾃転
⾞を⽌めて案内を⾏なった。また、ツアーではフォトコンテストとアンケートを実施し、
参加者が注⽬したスポットや利便性・安全性に関する意⾒など、ルート策定で必要と思
われる情報を収集した。
▲モニターツアーの実施⾵景
②ガイドマップ作成 ・・・ 実施⽇:7/4・11/6
⾃転⾞でのまちめぐりに利⽤するガイドマップを作成するため、街なかの資源をまとめ
たマップを作成した。今後はこの地図をもとに、設定するルートに合わせた情報の追加
を⾏なっていくとともに、⾒やすさを重視したデザインを検討する。
▲作成した街なかガイドマップ
3. 成果
◆駐輪場整備
駐輪施設の設置は、⾃転⾞で巡れるまち「サイクルタウン鶴来」の実現に向けた基盤的
取組みで、今後の活動の布⽯になるものである。本事業での取り組みは地域の広い範囲
で知られるようになっており、来訪者増加に向けた具体的活動として、地域の刺激にな
っているとの声がある。
◆⾃転⾞ツアー企画とガイドマップ作成
モニターツアーで実施したアンケートや写真コンテストにより、地区内の社寺や伝統的
建造物に対する関⼼が⾼いことが分かった。このことから、街なか周遊のルート策定で
テーマ別でのルート設定を⾏なったり、マップに載せる情報の選別を⾏なうなど、具体
的な活動展開を計画することが出来た。また、周遊時の利便性や安全性についての情報
も集まったことから、⾛⾏環境(主に交通安全関連)の課題を明確にすることができた。
モニターツアーでは、建物の意匠や裏道など、住⺠が気に留めなかった地域資源の発⾒
もあった。それをマップとしてまとめたことで、地域内の観光資源を改めて確認するこ
とができた。
4. 課題と展開
◆駐輪場に関する課題
①利⽤者の増加
今年度は拠点づくりを中⼼に⾏なってきたが、今後はその存在を周知するため、駐輪場
にサインを設置し、誘導する必要がある。その際、街並み景観を壊すことが無いよう、
デザインには⼗分に配慮する必要がある。また、モニターツアーでのアンケート結果を
もとに、来訪者の動線を意識した拠点整備を⾏なう必要がある。平成 27 年春には、来
訪者の需要がある⽩⼭⽐咩神社などで駐輪施設を設ける予定である。
②設備の充実
駐輪場は休憩空間としても利⽤できるようにするため、休憩空間としての整備を進める。
その際、将来的に緑陰を設けることも踏まえ、植物の選定や各設備の配置を具体的に計
画する必要がある。
◆ガイドマップ作成に関する課題
今年度は、街なかマップ(地域資源マップ)の作成まで⾏なったが、ルート策定や時間
設定の作業では、ガイドとしての経験不⾜から、踏み込んだものを作ることが出来なか
った。この点については、地元でボランティアガイドを⾏なう NPO との協⼒が必要と
なる。今後は、地域内の他団体と連携をとり、⼀体となって活動を⾏なう。
また、マップを使った情報発信は、紙媒体だけでなく電⼦媒体も積極的に利⽤する。
◆その他
鶴来では、地域の活性化に向けて、各店舗や団体がそれぞれ様々に活動している。しか
し、それぞれの取組みが繋がりを持っていないため、⽅向性はバラバラである。本事業
をきっかけに、様々な団体の活動を繋げながら活動を⾏なうことで、「まち」としての
個性・価値は強まるということに気付かされた。今後は、関係する諸団体や店舗を巻き
込み、街全体で相乗効果が出るような取組みとして活動したい。