Journal of The Sugiura Memorial Foundation Vol.4 July 2015 へき地に出向く医療サービスにおける 拠点からの市街地への移送サービスの 構築に向けて 大久保 健作 氏 社会医療法人社団 大久保病院 理事長 大分県竹田市は、 大分県の南西部に位置し、 くじゅう連 活に関しては、本サービス利用者を拠点より市街地への 山、 阿蘇外輪山、 祖母山麓に囲まれた中山間地域である。 移送サービスに関する実証を実施する。実証を行いなが 人口は23,570人であり高齢化率が42.4%を超えて大分 ら、実際にかかった距離・時間・人員・経費を集計し、 実 県内1位である。その竹田市内においても、高齢化率が 現可能な費用を分析する。地域住民やタクシー協会、 そし 50%を超えている地域が5か所ある。そういった地域で て当該地域で買い物に関して重要な役割を担っている移 「医療」 を受けるのに 「手段」 「距離」 「時間」 が課題となって 動販売業者の方々を含む地域に関係する人や団体と、次 いる。 その課題は、 買い物等の住民生活に関しても同じよ 年度の運営を含めて様々な視点で毎月検討を行っていく。 うに影響を与えている。そのような地域に医療機関の専 本取り組みは、各機関が医療等のサービスを地域の拠 門職がチームを組み、地域の拠点に「出向く」医療等サー 点となる場所で開催し、拠点に人を集めることで人の集 ビスを展開することで、 課題の改善に向けて、 住民や関係 約化が図られる。集約することで、拠点から市街地への移 機関と検討を行っていくことを本活動の目的とする。 送サービスの効率化が図ることができ、拠点から自宅へ 対象となる宮砥地区は、人口が627人で高齢化率が 送迎を行うことで住民の利便性が向上する。そして費用 56%を越えている。毎日運航していた民間のバスが撤退 的にも採算を考慮することで、住民を主体として継続し し、週3回の市のデマンドバスが走っている。1999年に たサービス展開が可能となる。 地区唯一の医院が閉院し、2003年に地区内にあった唯 また、本取り組みは地域の拠点となる場所があり、 そこ 一の小学校も統合し廃校となった。廃校した校舎の再利 に集める仕掛けがあれば、どこの地域でも可能であると 用に福祉への活用が住民の要望で決まり、2005年より、 考える。人的・社会資源が少ない地域でも各機関のス 市内の事業所で週2回のデイサービスが開始された。し タッフが周期的に出向くことで、住民の集約ができ、 住民 かし、回を重ねるごとに利用者が減少し、看護師等のス にとっても距離と時間の効率化が図られる。この取り組 タッフの確保も難しくなり2009年に休止となってい みが市内の同じような地域で地域に応じた取り組みに変 る。そういった中で、地域住民の方々と 「出向く医療・介 化し発展することを願いたい。 護・福祉サービス」に関して2011年より検討を重ねてき た。 そして、2014年8月に地区住民へアンケートを行い、 この取り組みに関して249人中71人 (28%)の方が利用 したいと回答している。将来希望の89人を加えると、 160人となり全体の62%の方が利用に関して前向きな回 答をされている。 その結果を踏まえて、巡回診療を主軸において地域に 当法人の医師、 看護師、 セラピスト等専門職スタッフが拠 点となる宮砥分館に週1回のペースで出向き、自宅から 拠点への送迎による医療サービスを展開する。そして生 45
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