1 高尾台住宅における住民主体の健康づくりの取り組み

高尾台住宅における住民主体の健康づくりの取り組み
八王子市医療保険部東浅川保健福祉センター 荒川理絵 小池明子 阿曽沼里奈 角田知美
小松原彩和子 波塚美千代 石川玲子 保坂七美
岡部美帆 柿崎可奈子 竹井梓 二見恵梨香
大森瑞紀 近藤明日香 廣瀬重美
1.はじめに
3.関わりの発端
少子高齢化が進み、高齢者の一人暮らし、高
平成 25 年 9 月、住民の一人から健康意識向
齢者夫婦世帯の増加は、地域の中での孤独死や
上のために、住宅内で健康講座を企画したいと
老老介護の増加など課題は大きく、住民同士の
いう相談があり、高尾台住宅の実態把握を行っ
支え合いや住民が自ら主体的に健康づくり活動
た。高齢化率をみても市全体に比べかなり高く、
を行えるよう支援していくことは行政として重
山を切り崩し建てられた住宅街であるため生活
要な役割であるといえる。
環境は急な坂道が多く、ほとんどの家は門扉か
一人の住民からの健康づくり活動の相談を受
ら住宅の玄関までに階段がある。今後更に高齢
けたことをきっかけに、住民組織へ地域の健康
化が進んでいく中では閉じこもり問題等が心配
課題や高齢化に対する課題を投げかけ、一緒に
された。そこで単発での講座ではなく、長期的
考える機会を持ってきたことで、住民自らがそ
な健康にかかわる取り組みを提案することとな
の健康課題解決に向けて考えていく組織を立ち
った。
上げ、各種活動の中に健康という視点を意識し
た住民主体の健康づくり活動へと変化してきた
経過について報告する。
4.高齢者連絡協議会発足まで
まず関係づくりと課題の共有にむけて老人会
会長、自治会役員との話し合いを重ねた。自治
2.高尾台住宅の概要
会組織との話し合いが開始された当初、役員の
高尾台住宅は八王子市の西部に位置し、昭和
中からは「70 代は青年である」「クラブ活動が
50 年代に一斉に分譲され入居してきた戸建て
活発である」と健康意識の高さを主張する声が
が 500 世帯立ち並ぶ住宅街である。八王子市の
聞かれる一方、
「地域内では外を歩いている人が
高齢化率が 23.5%(H26.4 月時点)であるのに
いない」
「近隣の状況が分からず手助けが必要か
対し、高尾台住宅は 46.3%とかなり高齢化が進
どうかも分からない」など住民の中で日頃感じ
んでいる地域である。
ていることや、地域の繋がりが希薄化してきて
自治会の組織は単年度で役員が交代となり、
いることでの将来の生活に対する不安等も語ら
前年度からの継承はなく、自治会の役員となっ
れた。更に地域内の具体的な高齢化の現状を数
たメンバーが独自で事業計画を立てるような仕
値で示したことで、今後の生活に対する危機感
組みとなっている。また、老人会や仲間同士の
と対策の必要性を感じ、平成 27 年 3 月高齢者
サークル活動、自治会主催での夏祭り等の行事
が安心して暮らせる高尾台住宅を経年的に検討
は活発に行われているが、高齢化が進む中で高
する「高齢者連絡協議会」が発足された。高齢
齢者の独居や老々世帯が増え、日頃からの近所
者連絡協議会の役員は自治会役員・民生委員・
付き合いが希薄化している地域である。
防災会及び災害時要援護者支援会などの役員の
他地域の支援活動サークルの主催者で構成し、
自治会組織の下部組織に位置付けられた。
5.住民主体の活動に向けた関わり
6.地区活動から見えてきたこと
地区活動を進める中で、自治会の中に組織と
今回、住民に対し地域のデータを提示するこ
して位置付けられた高齢者連絡協議会に対し、
とにより健康課題や高齢化による課題の共有が
下記のような目標を掲げ取り組みを行っていっ
できた。組織化においては、自治会役員会議の
た。
みならず、サロン活動や自治会主催の行事に参
① 地域の課題について住民間で共通認識を
加するなど、フォーマル・インフォーマルな形
持ち、地域全体が健康に対する関心を高
で役員や住民との顔の見える関係構築に努めた
める。
ことで、活動のキーパーソンになる住民の存在
地域の関係機関等の社会資源を活用し住
を見つけるきっかけとなった。
②
民が主体的に継続的な健康づくり活動を
取り組むことが出来る。
高齢者連絡協議会が発足するまで
(H25 年 9 月~H27 年 3 月)
組織化へは約1年半を費やしたが、住民と行
政で活動を共に行ったことで、住民自身が健康
を意識した取り組みの必要性を実感したことは
大きい。ひとつひとつの講座について「楽しか
・老人会やキーパーソンと話し合い
った」「また企画してほしい」などの声を拾い、
・役員会で地域のデータを提示することによ
主体的に考える事のできる住民が多く存在した。
り、健康課題を共有。
・保健福祉センターの活動を理解してもらうた
めに健康講座を実施。また介護予防活動の必
要性について啓発。
・自治会役員や住民との関係づくりのために、
それが組織運営に必要な機動力となったとも考
える。
住民組織全体が健康を意識した取り組みを開
始したことは、自分たちの健康づくり活動だけ
地域のサロン活動や自治会主催の夏祭り等
ではない取り組みへと視野が広がった。希薄化
の行事に参加。
しつつある住民同士に区画毎の情報交換会の企
発足 1 年目
(平成 27 年 4 月~平成 28 年 3 月)
・健康づくり活動の啓発の場として防災訓練に
参加し、介護予防運動を紹介。
・高齢者連絡協議会と老人会主催による健康講
座を一緒に企画し実施。
画や、次世代を担う子育て支援の観点から子育
てグループを立ち上げるなど、新たな地域の活
動が生まれてきている。
地域の中には核になれる力を持った住民が存
在する。地区組織活動においてその核となる住
・関係づくりのためサロン活動へ参加
民同士を繋ぎ、組織化しエンパワメントするこ
・高齢者連絡協議会の定例会へ参加。また次年
とで住民自らが主体的に活動を継続していくこ
度計画へ助言
発足 2 年目
(平成 28 年 4 月~)
・生活習慣病予防の講座の実施
・包括支援センターと連携した介護予防体操講
座の開催
・防災訓練の一環として介護予防運動を実施。
介護予防運動ボランティアの活用
・区画毎での情報交換会の企画
・子育てグループへの支援介入
とが出来ると考える。
7.おわりに
高尾台住宅での地区活動を通し、住民と関係
を築きながら活動していくことで、地域の健康
意識の変化を感じるとともに、地域での活動の
大切さを学んだ。この学びをこれからの地区活
動に活かしていきたいと思う。