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RFID World Watcher Monthly
December 2014
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目次
特集 – 2014 年 RFID 十大ニュース ................................................ 3
RFID 関連ニュース ......................................................................... 6
プロダクト .......................................................................................................................... 6
ソリューション ................................................................................................................... 6
企業・規制・標準化・レポート ......................................................................................... 7
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特集 – 2014 年 RFID 十大ニュース
2014 年は全体的に RFID 業界の進路が徐々に変わりつつあるのかな、という印象を感じ
る一方で、じゃあどの方向に向かうのかということが見えないもどかしさもあった一念だ
った。来年はもうすこし方向性が見えてくるのだろうか。自動認識から Internet of Things
へと業界の関心の中心が転換する方向にあるのだとは思うのだが…。
Internet of Things のブレイク
アメリカでは RFID Journal が Internet of Thing Journal を創刊したし、日本では日経
BP からムックは出たし、状況的には Internet of Things がブレイクした(というかハイプが
始まった)ようなのだが、個人的にはピンと来ないでいる。何か画期的な新技術が登場した
わけではないし、Wal=Mart の時のような象徴的な案件が発表されたわけでもない。こうい
う形でハイプが始まることもあるのだな、と思う。
Apple の NFC 対応
新モデルが発表されるごとに噂だけが流れていた Apple の NFC 対応、ようやく今年の
iPhone 6 で実現した。但し当初の対応は Apple Pay という独自の決済インフラのみでの利
用に限定され、それ以外の機能は特定パートナーに限定して開放予定、現時点では開放が
決まったパートナーは発表されていない。NFC の現状の普及状況を考えると正直中途半端
な感じは否めないと感じる。Apple はリアル店舗での決済系には iBeacon と店舗アプリの
組み合わせで当初は参入しようとしていたはずで、リアル世界との接点での囲い込みは意
図したとおり進んでいないということなのだろうか。
NFC の認知度高まる
Apple が現時点で対応していないにもかかわらず、NFC、特に非決済分野での利用の普
及は着実に進みつつある。一見マイナーだが一般への普及・認知度拡大を示す事例として
へぇと思ったのが NFC 内蔵のジュエリー。日本では CORE JEWELS 社、アメリカでは
Cuff 社といったあたりが出している製品は、テックギーク向けのものではなく、普通にジ
ュエリーとして利用することを想定したもの。こういった製品が一般層に受け入れられる
日が近づいてきたんだな。
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Bluetooth ソリューションの進化
Bluetooth を採用したアクティブタグ、およびそのソリューションは Bluetooth Low
Energy の導入によりじわじわ普及が始まり、iBeacon でのサポートで一気にメジャーにな
ったが、今年はさらに普及が加速した気がする。導入事例の増加に加え、今年印象的だっ
たのはソリューションの応用範囲の拡大。スマホの各種センサーと組み合わせた測位ソリ
ューションや環境電池を用いた無給電動作が登場し、Bluetooth4.2 では IP によるインター
ネット直接接続などがサポートされた。ある技術が標準と認知されるとこれほど技術開発
が急速に進むものかと感心する。
UHF パッシブ案件の変化
今年を代表する UHF パッシブ RFID の導入案件は Zara だということは多くの人が同意
すると思う。導入規模もさることながら、僕にとって一番印象的だったのは導入が株主総
会で発表され、それまでは徹底して秘匿されていたことだった。ビジョナリーの CIO が
RFID 業界カンファレンスで導入を発表する、という時代は UHF パッシブ案件ではもう終
わったのだろう。
UHF パッシブタグのセンサー化
UHF パッシブ案件が上記のような状況になっている背景には、UHF パッシブタグが従
来の基準ではほぼ成熟したということがある。読み取り能力は通常の環境ではソリューシ
ョンの制約にならなくなって久しいし、価格も近い将来劇的に低下することはないだろう。
そんな中で今年気になったのは、パッシブタグのアンテナをセンサーとして利用する技術。
これは温度や湿度、圧力などでアンテナの周波数特性が変わるように製造し、その感度の
変化で温度を検出するもの。Internet of Things の関係で、こういうバッテリーレスのセン
サータグで面白い製品・事例が今後も増えていくのだろう。
UHF パッシブアンテナの RTLS 対応
一 方で UHF パッシ ブの アンテナ 側では RTLS 対応の 進展が目 につい た。 Mojix
StarSystem の鮮烈なデビューの後は、製品発表はあったがなかなか普及が進まなかったが、
今年は 3DTAC 社の同名の製品、Impinj 社の xArray など廉価な製品が増えてきた印象があ
る。RTLS よりもリアルタイム性が低い用途を切り開いてくれると面白い。
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業界再編の進展
今年の業界再編の最大ニュースは Zebra 社による Motorola Solutions 社の買収だろう。
Motorola Solutions 社自体が 2 年前に Psion 社を買収したばかりで、海外の業界再編のペ
ースは速いと改めて思う。また、中国の EAS メーカー中瑞思創科技が Alien Technology
社を買収したニュースも興味深かった。来年には Internet of Things を手掛ける大手ベンダ
ーによる買収が起こるだろうか。
900MHz 帯周波数移行終盤へ
UHF 帯 RFID の旧周波数である 900MHz 帯での移行が進み、この周波数を利用するソ
フトバンクモバイルの LTE サービスが地方から開始されつつある。予定より遅れ気味とは
いえ、当初の状況を考えるとよくここまで追い上げたと感心する。関係者の方お疲れ様で
した。
RFID のキャズム越え近づく
RFID Journal 編集長 Mark Roberti 氏が今年最終号の編集後記で「RFID はキャズムを
ほぼ超えた。ベンダーもユーザーも爆発的な普及が始まった時点での問題に備えるべき」
と書いていた。彼は業界のインサイダー情報を踏まえてこういう記事を書くことがある。
状況的にはいつキャズム理論で言う所の「トルネード」に入っても不思議ではない状態な
ので、来年早くに何か良いサプライズがあることを期待したい。
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RFID 関連ニュース
プロダクト
[ハードウェア]
TI 社はセンサー用途向け NFC チップの新製品 RF430FRL15xH を発表した。この NFC チ
ップは ISO 15693 互換で通信が可能なほか、MCU と AD コンバータ、内蔵温度センサー、
SPI/I2C インタフェースを搭載している(一部機能を外した廉価版も存在する)。また、チッ
プはパッシブモードとセミパッシブモードの両方に対応しています。小ロットでのチップ
の単価は 2.50 ドル。開発キットは 19.90 ドル。
[ソフトウェア]
(該当記事無し)
ソリューション
[パッシブ]
Audi は工場で完成車の所在を管理する RFID システムを全世界で導入する。このシステム
は、完成車のバンパーに UHF パッシブタグを貼付して製造エリアで所在管理を行うと共に、
出荷エリアの駐車ロットにやはり UHF パッシブタグを貼付し、作業員のハンドヘルドリー
ダーで両方のタグを読み取って紐付けする。
スイスのスーパーマーケットチェーン Migros Ostschweiz 社では店舗への商品配送に
RFID を利用している。同社は輸送器材とフォークリフトに UHF パッシブタグを貼付し、
ドックドアにリーダーを配置することで、トラックに正しい輸送機材が積み込まれたこと
を確認する。同社は EPCIS 対応のデータベースを利用している。
ドイツのエンジニアリング会社 Ludwig Pfeiffer 社は建設現場での作業員と機材の管理に
RFID を利用している。同社は HF パッシブタグを器材に貼付、作業員にはバッヂとして配
布し、ハンディリーダーで読み取ることで管理を行っている。
ヨーロッパの携帯電話販売会社 Dixons Carphone Group 社はイギリスの物流センターでの
修理機材の取り扱いに RFID を利用している。同社は TrackerPoint 社のソリューションを
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導入し、修理する機材を入れたケースに UHF パッシブタグを貼付。修理が完了するまで機
材を入れたままにしておくことで修理の進捗状況を管理する。
カナダの大手ダイヤモンド鉱山は機械工に貸し出す機材の管理に RFID を利用している。
この鉱山が利用しているのは ToolHound 社のシステムで、器材に UHF パッシブタグを貼
付し、器材室の出入り口にポータルリーダーを設置して読み取りを行う。ポータルリーダ
ーは既に利用中の LF パッシブバッヂを用いた入退室管理システムと連動している。
[アクティブ・RTLS]
イギリスのウェールズ国立博物館は Bluetooth ビーコンを用いた展示品解説システムを導
入した。ウェールズにはローマ時代の遺跡・遺品などを展示する博物館が多くあり、それ
らの展示品の意味や意義を文書や図解で説明するためには展示エリアのスペースだけでは
不足することが課題になっていた。同博物館は無料の iPhone/iPad アプリケーションを作
成し、訪問者がアプリをダウンロードして展示品の前に行くことで、解説を iPhone/iPad
で見ることができ。
図書館で Bluetooth ビーコンを利用する動きが広まりつつある。図書館では蔵書の管理や
貸出業務のためにパッシブタグを利用することは広く行われていたが、Bluetooth ビーコン
では利用者の貸し出し状況、予約図書の到着、イベントの開催などの情報を発信する。
病院グループの Lifespan 社は医療品や血液の病院間の移動のモニタリングに AeroScout 社
の温湿度計搭載 WiFi タグを利用している。この分野での利用効果が認められたため、同社
は医療器材の所在管理にも RFID の利用を拡大することにした。
企業・規制・標準化・レポート
12 月 3 日に Bluetooth 規格の新バージョン 4.2 がリリースされた。この規格では IP 通信を
サポートする新プロファイル Internet Protocol Support Profile (IPSP)が追加されたほか、
128 ビット AES 対応の暗号化通信のサポート、通信速度の 2.5 倍の高速化などが導入され
た。
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